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お弁当

---昼休み


「松田君!一緒にご飯食べよ!」


よくぞ、俺の教室でそれをやってくれた。お陰で、クラス中の視線を独り占めだ。


「えっ三間さんがなんで?」

「えっ?松田彼氏なの?」

「うわ、狙ってたのにショック!」


教室内がざわつき始める。この感じ、三間は学年内でも有名人らしい。


しかし、こいつ加減というものを知らないのか。


朝日さんと机をくっつけて、お弁当を広げている白坂がニッコリとこちらを見ている。怖い。


「へぇー、松田君図書委員の子って三間さんだったんだね」


「へっ?、ははは」


笑って誤魔化し、そそくさと教室を出る。

背中にかかる圧がやばかった。



---中庭


俺たちは取り敢えず、人気が少なそうな木陰を選んで座った。


「はい、お弁当」


お花とか入った可愛らしい弁当かと思いきや、曲げわっぱに入ったガチそうな弁当箱を渡された。


「おぉ、ありがとう」


弁当の蓋を開けると、お弁当定番のハンバーグや卵焼き、プチトマト等が彩りよく散りばめられていた。正直、手作り弁当なぞ何年振りに食べるのだろう。


そんな手作り弁当に感激していると


「...気に入らないなら、食べなくていいよ。私はもっと良い食材使おうとしたのに、男の子ならお母さんがこっちの方がいいって言うから...」


「いや、正直びっくりした。手作り弁当何で何年振りに食べるか」


早速頂く。やっぱり、女の子が丹精込めて作った弁当は五臓六腑に染み渡るぜ。


「美味しい?」


少し不安そうな顔で聞いてくる。


「美味い。正直舐めてました」


「そっか、良かった。お母さんに手伝って貰ったから、大丈夫だと思ってだけど不安になるもんだね」


喜びなのか、安堵なのか分からないがふっと柔らかく三間が笑った。

不覚にもドキッとしてしまった。10も下なのに。


「ていうか、お弁当作ってもらって悪いな。何か、奢るぞ」


正直、お金取れるレベル。


「いいよ、お代はこれで」


パシャっとスマホのシャッター音が鳴る。


「あ、おい」


「これで、手作り弁当初めて人にあげたからその記念」


「そうかい」


「この味、康太にも受けるかな?」


「ああ、大林が偏食でない限りで絶対美味い。賭けてもいいぜ」


「へぇ、何賭ける?」


「やっぱ忘れて」


正直、この賭けで負ける気はしないが...


「えー、どうしよっかなー」


とそんなたわい無い話をしているとチャイムが鳴る。


「やば、こんな話してるんじゃ無かった。松田君のクラスも今日修学旅行の回るとこ決めるんだよね?」


「確かそうだったな」


「縁結び神社、康太と一緒に回れるようにしたい。あっ、でも自然にだよ。偶然一緒に回るーみたいな?」


「そうかい、でどうすればいいんだ?大林と同じ班じゃ無いぞ」


「え?同じ班だと思ってた...」


「おい...」


歩きながら話していると三間の教室の前に着く。


「とにかく、私3時に縁結び神社に着くからお願いね!」


そう言い教室へ入って行った。


俺も教室に戻ると、白坂と東。両方から視線が向けられていた。


「お前、女いんのかよ。くそ、結局顔かぁ?」


自分から恨みのこもった呪言を放たれる。

中身は同じなので、真理はつかれている気がしで自分に貶された。



5限が終わり、10分休みに入る。


ラインには「3時に縁結び神社だから!よろしく!」と書いてあった。


仕方なく、大林の席へ向かう。うぇ、大林と普段話さないのにどう話しゃいいんだ。


「なぁ、大林。お前の班どんな感じで回るが決めたか?参考程度に聞きたい」


「全然決まってないね。あ、龍安寺には行きたいかな」


「じゃあ、縁結び神社とか興味ないか?」


「え?全然?」


「そのさ、三間と...」


「もうすぐ授業始まるけど、何?惚気話でもしに来たの?」


河北が会話に乱入してきた。


「え?いやそんなんじゃ」


「じゃ、なんでわざわざ縁結び神社なんて話してんの?2人で行く様な所の話なのにさ。幼馴染の康太への当てつけ?」


「いや、俺は三間さんとは付き...いやそんなんじゃ無いって」


くそ、大林をさり気なく縁結び神社に誘導しようと思ったのに...


「じゃ?何?普段は、康太と話さない癖に」


ぐうの音も出ない。


するとチャイムが鳴り、先生が教室に入ってくる。


「授業始めるぞー。早く座れー」


チャイムに助けられた...。


そのまま、無言で席に戻る。


「よし、じゃあ各班に分かれて各自話し合って決めてくれー」


七海先生の号令共に、各班に分かれる。

取り敢えず、東と同じ班なのでしれっと東についていく。


七瀬先生は、後ろの空いた椅子にどかっと座り「何で私がこんな恋愛イベントの手助けしないといけないんだ」とぶつぶつ言っている。風の噂では、合コンで大敗したらしい。そういう事は、もっと聞こえない様に呟いて欲しい物だが。


早速、(ひがし)に続いて椅子に座る。

班構成は男女3人づつの6人グループだ。

早速ルート決めと行きたいところだったが女子の如月優奈(きさらぎ ゆうな)が筆頭としてちゃんと決めていてくれた様で10分位で決まってしまった。


本当は、三間の為に縁結び神社をルートに仕込んで置きたかったが、河北に言われた事が楔となり無理だった。


「すまん、縁結び神社にすんの無理そう」とラインで送る。


「そっか、私もルート的に寄れないって言われてダメだった」と返ってきた。


駄目なのかよ!っと思ってしまったが、失敗してしまったので安堵はした。

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