修学旅行だって!?
--通学路
あれから数日、戻ることはなく、俺は少しづつこの生活に慣れ始めていた。
「おはよ!」
学校の最寄り駅を降りた所で三間に声を掛けられる。
「あぁ、おはよう」
「それは、そうとお前はどうだ。この前、図書室で朝田さんと仲良くしてたが」
「朝田さん。図書室で見てたけど、最近昼休み康太と一緒にいるっぽい」
「仲良さげではあったが、そんなに?こんな事してていいのか?」
これは、勢力図を改める必要があるな。少なくとも河北、朝田、三間の三つ巴になっている可能性が大だ。
「だから、同時並行で色々やる」
「おぉ…。例えば何やってるんだ?」
すると三間は、ニッコリと笑い。
「それを考えるから、朝日さんの情報も収取しておいてね」
「へいよ」
なんか、満面の笑みでこっち見てくるし報酬ももらうことにかなったし、もう逆らえない。
「そうだ、早速お弁当作って来たんだ。お昼持ってきた?」
「購買だが。」
「昼休み、一緒に食べよ」
「当たり前。ちゃんと情報集めて来てね」
「おぉ」
少し昼食が楽しみになった。
◇
--教室
ホームルームまで10分前と言ったところか。ポツポツと、人が増え始めていた。
ふと、大林の席を見るといつも通り河北と会話していると思ったら、朝田がいた。何を話しているかは、聞き取れない。
「おはよ」
そんなことを考えていると、気怠そうな声で白坂が挨拶してきた。
「おはよう」
挨拶を返す。
白坂は、席に着くや否や顔を突っ伏し、睡眠体勢に入る。朝に弱いのだろう。
前の席を見るとそいつも顔を突っ伏していた。いつもなら雛月ヒナミの話をしてくるのだが?
「おい、今日調子悪いのか?」
体調が悪いのか。声をかけてみる。
「...」
反応がない。
「おい、生きてんのか?」
「...」
何度か揺すったが起きない。
「いつもの雛月ヒナミは、どうした?」
雛月ヒナミがトリガーだったのかガバッと顔を挙げた。
「雛月ヒナミに彼氏いるかも知れない」
「え?マジ?」
そんな噂。一周目であったか?当時雛月ヒナミは、見まくっていたのでそんな事件があったら覚えているはずだが
「男の声がしたんだ。彼氏しれない...」
当時の俺は、雛月ヒナミにガチ恋気味だったので当時の俺だったらこうなるかも知れない。
「そうなのか」
「そうかもって...くそ...」
「いや、男の声ってだけで家族かもしれないだろ。」
「いや、声が若かったしヒナミ自身が兄妹居ないって言ってた..」
もう、声に覇気がない。
「いや、それも本当か分からないだろ。」
「そうかなぁ?そうかもなぁ?やっぱそうかなぁ..」
めんどくさいな俺。やっぱり、沼から引き摺り出す為にこんな事言わなきゃよかったか。
「これが、問題の動画なんだが...」
「うーし、ホームルーム始めるぞ」
東が俺に動画を見せようとすると七瀬先生が教室に入ってきた。
「やべ」
急いで、東がスマートフォンを隠す。
しかし、どうするかな。三間とも約束しちまったし。ぶっちゃけ大林とも接点無いし。
そんな事を考えていると
「...で、最後だが今日のロングホームルームで修学旅行のチームでどこ回るか決めるから、候補絞っておけよー」
七瀬先生がダルそうに告知をする。
そう言えば、この季節に修学旅行があった。行き先は高校生なのに京都。どうせなら、北海道とか沖縄に行ってみたかった。
「あー、もうすぐ修学旅行だよ。ダリぃ」
そんな言葉を東が吐く。
当時の俺はこんな事言っているが、実は内心楽しみにしている。
「お前は、どこ行くとか決めてんのか?」
「何も決めてねぇ」
「私は、金閣寺と銀閣寺は絶対行きたい!」
そんな会話をしていると白坂が乱入してきた。
「あれ?俺たち同じグループ?」
「ん?私は、大林くん達とだよ?」
...グループ違うのかよ
「何故、さも同じグループのように振る舞った...」
「だって修学旅行の話したいじゃん。松田君チームは、金閣寺行かないの?」
「メンバーと相談する必要あるが、多分行くんじゃ無いか?」
「そっか、タイミング被ったら一緒に写真撮ろうね」
「まぁ...いいが」
こうしてクラスの美少女と写真を撮る約束をしてしまった。嬉しいような、悲しいような。複雑な感情になった。