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過去に戻れたと思ったら俺の身体じゃなかったんだか!?  作者: パリトン
2章

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30/33

放課後、ドレス教室

 文化祭前日の17時半をすぎた頃。東は、会場設営後の写真を撮る係に任命され、教室に誰もいない時間を狙って訪れた。

 東は、少し気怠さを感じながらも、教室のドアを開けた。


「おっ、優秀」


 誰かしら、前日の熱気に当てられて居残っている人がいると思っていたが誰1人残って居ない…


 と思った時、カーテンの陰からひょっこり顔を出す銀髪おさげ――白坂葵。


 突然の物音に、東はびくりと身体を震わす。


「お疲れ、東。どしたの」

「びっくりした、白坂か。会場の写真撮影撮影だよ」

「へぇ〜?盗撮じゃないよね?」


 白坂は口元の部分までカーテンで隠す


「本当にそうだったら、問題になっちゃうよ」


 その言葉が真であるならば、教育委員会も黙って居ないだろう。


「つまんなーーい」


 白坂はバッとカーテンから飛び出し、東の目の前に立つ。


「それにしても、凄いよね。このクオリティ」


 白坂は、装飾のついた机を触りながら呟く。


「そうだな、みんな頑張ってたし、劇までもあるんだから、エネルギッシュだ」


 実際、他クラスはダンボールである所、実家材木店である林君の力もあってハイクオリティ。


「劇…そうだね。結羽綺麗だったよね。あんなの見たら絶対大盛り上がりだよ」


 実際白坂の言う通り、盛り上がることは間違い無いだろう。ドレスを着た時、クラス中の男子のみならず女子もガン見していた程だ。


「そうだろな、でも白坂の裁縫技術あってのものだろ」

「お役に立てれてればいいねぇ…」


 と、白坂は言うが煮え切らない顔をしていた。

 自分の裁縫技術に自信を持てて居ないのだろう。


「お役に立ててるって、少なくとも、大林はそのドレスを白坂が着たら似合うって言ってたぞ」

「へぇ…じゃあ、東くんは似合うと思う?」


 白坂は、疑うように身を乗り出してくる。


「それはいいだろ、白坂は素材いいし、モテててるだろ」

「え、口説いてる?」


 白坂は目を丸めてこちらを覗く。


「いや、一般論をな」

「奈緒がいるのにそんな事言っちゃっていいの?」

「なんで三間…てか口説いてないし」


 東はプイッとそっぽを向く。

 それを見て思いついたのか、白坂はふっと笑みを浮かべる。


「ちょっと目つむってて」

「は? なんで――」

「いいから」


 結局、東は言われるがまま直立し、目を瞑る。しばらくすると布の擦れる音がする。


 数分後、ホウキで背中をツンツンされ、いいよ」の合図とともに俺はおそるおそる目を開いた。


 目の前にはドレス姿の白坂が立っていた。


 ◇


 ひらりと衣装を翻し。俺の前に立って見せる。


「王子様、これからどちらへ?」


 白坂は、袖をつまんで優雅にお辞儀をし、ニコッと笑って見せる。


「ちょっと劇の練習付き合ってよ。王子様役、今いないんだもん」

「いや、俺セリフ知らないし」

「大丈夫。台本なんて飾りです!」


 白坂は自信に満ちた顔で、胸を大きく張る。


「じゃ、たとえば――」


 白坂は教壇をステージに見立て、ドレスの裾をつまむと、俺の方へ一歩ずつ優雅に歩み寄る。


「偽りの平和に酔う王国よ、聞け。真の勝利は誰の手に――ってくだり、どう?」

「中二入ってないか? 姫じゃなくてラスボスだろそれ」

「ふふ、ギャップ萌えってやつだよ? ――さ、王子様の返し」

「え、俺のせりふ? えーと……“我が剣は真実にのみ下される”?」

「あはは、全然ダメじゃん!」


 白坂は笑いながら、パチパチと拍手。


 そして、


「最後に私が勝ってればいい」


 そう小声で東に聞こえるか聞こえないかの音量で言った


 そんなセリフあったっけ。


 東が眉を寄せると、白坂は口元だけでくすりと笑う。


「姫って、結局ハッピーエンドを掻っさらう役だから」


 童話の結末は知っている――でも、この“姫”が何を狙っているのかは、まだ分からない。

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