ボードの前に立つ
自室に、コルクボードを貼り付け、付箋には沢山の付箋が貼られている。
東は、最初のタイムリープと書かれた付箋を仕上げに貼り付けコルクボード全体を見渡す。
次に白ペンを持ち、思い当たる事象を描き尽くす。
「こんなもんか。」
コルクボードより、3歩後ろ下がり、腰に手を当てて、首を傾げる。
「うーん」
円を描くようにコルクボードの前を歩き回る。
何も浮かんで来ない。
東にこの状況を松田妹を明かすという選択肢もある。しかし、自分がこれを明かしたことで、状況が好転する様にも思えない。むしろ自分の周りだけでは済まされなくなり、状況がむしろ悪化するという懸念も出てくる。
「わからん!」
発せられた声は、見事に防音の壁に吸収される。
そのまま背中からベッドにダイブし、目に掌を当てる。グッと力を込め、そのまま一気に力を抜き脱力する。
「ふぅ...」
そのまま、5秒ほど停止すると木管の様な音が部屋中に響く。
東はすぐに枕元にあるスマホを手に取り、スワイプ。
「あ…東先輩?」
スマホから少し覇気のない声が聞こえる。
「如月か、悪いなさっきは突然電話かけて」
「ホントですよ。連絡先交換していきなり電話掛けてくるんですから」
如月の語尾が少し強くなる。
「驚かせて悪い、だが少し情報量が多くてな、意見を聞きたい」
「意見…ですか?」
東は腹筋を使い状態を起き上がらせ、コルクボードの前に立ち付箋に手を触れる。
「ここ数ヶ月の松田に違和感はなかったか?」
電話越しに、小さな息遣いが聞こえ、バフン!とベッドにダイブすることが聞こえる。
「兄さんですか…難しいですが、気持ち悪く無くなった..ですかね」
「おい」
間髪入れず東がツッコミを入れる。そんな事思っていたのかと、少し東は落ち込む
「え?」
「いや何でもない」
この松田妹の発言な少なくとも、俺がタイムリープした後暫くは、意識があったと事がわかった。
「で、3日前に意識を失ったんだよな」
東が確認を入れると「はい…」と弱々しい声が電話越しから聞こえる。
「やっぱり何かしらの負荷がかかっていたということか…」
ボソりと東の口から言葉が漏れる。
「負荷...ですか?」
「いやっ…何でもない」
「何でもない..!ですか?」
松田妹の探る様などこかすがるような口調で問う。このままダラダラと悪い方向にいってしまうのではないかと懸念したことと何より、松田妹の松田への想いを東なりに感じとり、決心する。
「それは…明日話すよ」
「やっぱり何か心当たりあるんですね?、いやです。今話して下さい。早く兄さんに…会いたいんです。」
その時、松田妹はぎゅっと手元にあるクマのぬいぐるみを強く抱きしめていた。
「…いや、複雑なんだ。だから口だけじゃ説明しづらい。」
「じゃあ今から東先輩の家に行きます。」
「ちょっと待て、うちには家族いるし、そもそもこんな夜に女の子を外に出歩かせられない。」
「じゃあ、東先輩がウチ来て下さい。家族もいないですし。」
場が一瞬沈黙する。
「え?」
「え、じゃ無いです。来て下さい」
松田妹は、抑揚のない声音で言い放つ。
ここで行かなかったら、明らかに意識している事になる。
「なんですか、何か問題でもありますか?」
たったそれだけの言葉なのに、言い訳の文句が全部喉の奥で潰されたのだ。




