如月さん
如月優奈。くりくりとした大きな瞳に、艶のある黒髪。左右非対称のボブカットは、右の頬に軽く触れるように流れる。一部の層から人気のある彼女。俺たちと同じ班と一緒になる時点で少し変だと思っていたが...
「松田くん!え...っと一目惚れで...その好きです!付き合って下さい!」
そう言う事だったとは...
まさかの如月からの告白。
三間と付き合っているの知らないのか。
「ごめん。好きな人がいるんだ。だから...」
「そっか。わかった!」
食い気味に返事が来る。
良かった...。彼女も良い気はしないだろうがもう少し待ってくれ。
しかし、ホッとしたのも束の間如月の雰囲気が変わる。
「そうだ。質問良いかな?」
何か企んでいる様な圧を感じる。
「なんだ?」
「なんで今日、三間さんと一緒にいたの?こんな、ストラップなんて付けちゃってさ」
ふわふわした高い声から突然高圧的な低い声に変わる。
恐れていた事態が起きてしまった。
松田の身体を使っている時点で経過しなければいけなかった。
「何で三間さんと付き合ってるって嘘つくの?」
「え?どう言う事だ」
「だって、昨日言ってたよね付き合ってないって。昨日と言っている事全然違くない?」
昨日?...まさか本物の松田と話したのか?
そうだ、入れ替わった松田は三間とカップルを演じている事を知らない。そこで、漏れたのか。
三間には、申し訳ないが話す。如月が勇気を出して告白してきたんだ。
「説明足りなくて悪かった。本当は付き合ってなくて...」
「君...誰?私1年生の頃から松田君を見てきたんだけど。君が松田君じゃない位分かるよ」
「そこまでお見通しって事かよ」
今まで起こった事を話す。変に隠して疑いをかけられるよりは良いだろう。
「あはは、本当に松田君じゃないの?君?カマかけただけだったけど本当なんだ!?」
「はぁ!?カマかけただけ?」
「あはは、本当に入れ替わりが起こってるなんて普通思わないっての。でも、確実に振られる雰囲気がした。だから悪あがきしたってだけ。印象に残りそうだし」
「お前、ぶっ飛んでるな」
「でも、他の子も感じてると思うよ。東が松田君じゃ無いって。でも確信が持てないだけ。こんな事起きてるなんて思わないもの」
如月がクスクスと笑う。
「て言うか信じるのな」
「信じるも何も、嘘つく必要ある?それとも言いふらして欲しい?」
妖艶な笑みを浮かべてこちらを見る。
「ちょっおいやめろ!」
「でしょ?録音もしてるし、信じてあげた方がお得でしょ?」
「と言うことは、何か要求があるって事だな
「正解!東の癖にわかってるじゃない」
「俺歳上なんだけど...」
「要求は、簡単。松田君と付き合える様に手伝って欲しい。簡単でしょ?」
「具体的には?」
「三間さんと別れて私と付き合って?」
「何でだ。俺は松田じゃ無いんだぞ」
「鈍いね東。君が松田くんの身体で付き合ってもう、別れられない様にしてしまえばいい」
「それは...」
「録音だけじゃ弱いか...。それなら...」
彼女は、俺の袖を引っ張り倒れ込む。その状態は、俺が覆い被さる形になっていた。
--パシャリ
スマートフォンカメラのシャッター音が聞こえる。
「これをばら撒いて、松田君を孤立させれば。悪い虫はつかないよね?」
「ちょっと待て、松田が戻って来てからでも良いじゃねぇか」
「それっていつ?1日後?1週間後?1年後?それとも...10年後?入れ替わるタイミング分からないって言ってたよね?私そんなに待てないよ」
「いや...」
「それに、三間さんとか白坂さん。あと、義妹もいるんだっけ?夏休み前は、仲良さそうには見えなかったのに。悪い虫つき過ぎだよ」
流石にこの写真をばら撒かれるのは不味い。致し方無い。
「...わかった。具体的には、何すれば良いんだ。
「とりあえず、三間さんと今日中に別れて?」
「待ってくれ。あいつなりに頑張って立てた作戦なんだ。あいつの告白が終わるまで待ってくれないか?」
「ダメ」
ニコニコしながら、画面を見せつけてくる。
完全な主従関係が出来上がってしまった様だった。
◇
「三間悪い。お前とのカップル関係解消させてくれ。勿論、かかった代金等は修学旅行から帰ったら弁償する」
「な、なんで?私変な事した?」
「いや、違う。同じクラスの如月と付き合う事になったんだ」
「そっ...そっか。おめでとう...」
少し、悲しそうに言う。てっきり、怒られると思ったが違った。
「だが、全力でサポートはする。何かあったら言ってくれ」
「じゃあさ、翔太は如月さんのどこが良かった?」
「え?俺?俺の聞いても参考にならないだろ。趣味一緒とは限らんし」
無理やり付き合わされているので、どこが良いとか無い。
「参考程度に!サポートはするって言ったじゃん!」
「えーーあーー、優しいところ?」
「...それ本当に好きなの?」
じっと此方を疑う深く見てくる。
「まぁ、照れ隠しって事だ」




