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「うわ、ひがし遅刻じゃん」
タメ口で話しかけて来たのは俺と同じコンビニでバイトをしているJK--如月紗奈だ。
...まぁ遅刻したのは事実なので何も言い返せないが.
「東くん気をつけてよ?」
店長からもお言葉。
「すいません、以後気をつけます」
店長と入れ替わり、レジへ入る。
「はぁ、東堂先輩とがよかったな...。ひがし頼りないし。」
東堂先輩とは、同じバイトで如月の2個上の男子高校生だ。
こいつ、東堂君には敬語使う癖に...。
自分より格下だと決めた瞬間タメ口になりやがって。
「そうだな、東堂君には、如月が一緒のシフトに入りたいって言っといてやるよ。」
「なっ...絶対、余計なことするなよ!」
揶揄われるのが嫌だったのか、バシッと叩いてくる。まぁ、実際東堂くんと同じシフトの時、緊張で、何も喋らなかったからな。そこが可愛い所でもあるんだが。
レジで日付を確認すると、修学旅行の日からきっかり10年後の日付となっていた。しかし、昨日の記憶もある、夢であった事は間違い無いだろう。
「ひがし?手止まってるよ?今日なんかいつもより変」
「そうか...」
「何か、今日のひがし変だし、もう品出し行ってきたら?私はもう一人前なんだから!」
ドヤっと胸を張ってネームプレートを見せると、以前付いていた、研修中マークは外れている。
「おー、立派立派」
軽くあしらい、検品を行う為レジを離れる。
数ヶ月ちょっとしか離れていなかったが、飽き飽きしていた作業が少し新鮮に感じられた。
--暫く業務を続けていると、
「ぴぃ!?」
如月の情けない悲鳴が聞こえた。
「お前じゃ話に何ねぇ!店長呼べや」
「え、えっと、現在店長は留守でして...」
涙目で慌てふためく如月。何かやらかしてしまったらしい。
「“一人前”はどうした、一人前は」
後輩のフォローも先輩の義務である。
◇
業務を終えて勤怠を押す。
「ひがし!遅刻した分奢り!」
帰ろうとすると、袖を掴まれ止められる。
「何でお前に奢るんだよ。お金無いし、やだよ」
「じゃあ、奢りの代わりにちょっと手伝ってよ」
何か同じ様なやり取りをこの前した様な気がする,
「...お前もしかして、東堂くんへの告白の為に手伝え的な奴じゃ無いだろな?」
「は!?何で私が...と...というかまず、東堂先輩と私じゃ釣り合わないし...」
よかった。面倒毎じゃ無さそうだ。
「実はちょっと欲しいグッズがあって、それがカップル限定で...」
「その為に、俺が"彼氏"になって欲しいってことか?」
「ち、違っ! カップル限定だけど、本当に付き合うわけじゃないから!」
如月は手をブンブンと振りながら、顔を真っ赤にして言う。
「クラスの男子に頼めば?」
「いや、こんな事したらクラス内で噂立つし、だから苦渋の決断!」
スマホ画面をぐいっと寄せてくる。アニメとのコラボ品らしい。
内容は、カップル限定でスイーツでそのおまけで、ラブコメアニメのグッズが付属するらしい。
ラブコメアニメもきっかけに、リアルのラブコメもやってやろうというものか...鬼畜商法だな。売れんの?
「...まぁ、俺に頼むくらいだから欲しいのはわかるが、もう少し頑張って探してくれ。ほら、それこそ東堂くんとか」
俺もVtuberグッズを集めていたが、手に入らなかったグッズがあった時の痛みはとても分かる。なので俺は最後の砦として使って欲しい。
「東堂先輩、その日予定あるらしいし。探して、ひがしなんだよ...」
「アッハイ」
まぁ、そうだよね。
結局、俺が行く事は決まり日付けは後日決める事なった。
疲労で足取りが重い。今日は帰ったら即寝よう。
店を出た瞬間、女性の声が飛ぶ。
「あっ!東くん?」
振り向くと見た事のある面影...三間だ。
「私、君と同じ高校で同学年だった三間だけど、知ってるかな!?」
「え?まぁ?」
俺の時間軸では昨日会ったばかりだ。忘れるわけがない。
「翔太と仲良かったよね?出来れば、翔太の連絡先聞きたくて」
「変えてるなら、持ってないかな」
確認はするが、スマホの買い替えと同時に高校時代のアカウントはリセットしてしまったので残っていない。
「そっか。ごめんねー急に」
「いや、大丈夫。何か伝えたい事でもあったのか?」
「あはは、実は...」
「え?ひがしに彼女!?」
帰りの支度を済ませ、コンビニから出てきた如月が目を丸くして固まっている。
「はは、違うよー。...てっえ?」
「ひがしの友達に女の人がいたなんて、びっくりしました。」
「あはは、同級生ってだけだけどね」
「まぁ、そうだな」
「えっ、じゃあどんな話してたんですか?」
如月がずいっと三間による。
「え?気になる?東くんの女性関係把握しておきたい?」
三間が如月を煽る様に言う。お前他人の恋愛になるとそんなうざい感じになるのか。
「興味ないです」
食い気味で否定された。何か拒絶された感じになっていて悲しい。
「あらら」
「やっぱり、クラスの男子に頼もうかな」
そう言いながらジト目で如月は答えた。




