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落ちこぼれの少女は

「おい!待て!」

そんな怒号のような、大声が街に響き渡る。

そして、騎士達は走りだし、目の前の少女を追った。

一方、逃げる少女は、小さな杖を振り、騎士達に向け魔術を発動する。直後、小規模な雷撃が発現する。

「はっ、なんだよその魔術は!」

見下すような、馬鹿にするような声。

騎士は、剣を懐から抜いて、そのまま雷撃を斬る。

簡単に相殺されてしまった。

その様子を見た少女は、目を剥き、また杖を振る。

今度は小規模な炎の玉を騎士達めがけ、飛ばす。

「何度も同じ事だ!魔術の基礎も扱えん奴の魔術なんかただのゴミ同然!」

少女は、その言葉が胸に突き刺さり、しばらく硬直してしまった。

「捕まえました!」

その声にハッと我に返るも、時既に遅し。騎士達に捕らえられていた。

「は、なせ!」

声を荒げ、杖を振ろうとしたが、

「おい、無駄な抵抗はよせ」

騎士に腕を掴まれ、杖を取り上げられる。

すかさず少女は杖を取り返そうとしたが、そのまま杖が折られてしまった。

「これから処刑される奴にはもう必要無いだろう?」

この国に来る前に、母親の形見として受け取った感慨深い杖。

少しボロくさいけど、それでもずっと私を助けてくれた。

その杖が…必要ないだと?

心の奥からふつふつと何かが湧いてくる。

怒り?憎悪?悲しみ?

様々な感情が入り混ざって、グチャグチャになりそうだ。

でも、私は杖なしには何もできやしない。

まず、杖があっても、小威力な魔術しか扱えないから、多分騎士達には到底敵わないだろう。

それでも、物凄く悔しくて、憎い。

私の事は、どう言われても構わないが、母親を馬鹿にするような発言は許せない。

「なんだ、やっと諦めたか?おい、早く処刑するぞ」

今の私は、そんな声だって聞き流してしまうくらいだった。

瞬間、騎士は私めがけて剣を振りかざした。

その時、赤色に染まる花が散った。


…………

『人と言うのは、限られた時間でしか生きれない、実に儚い生物だ。

一般的には、だが。

君は、不老不死、と言う言葉は知っているだろうか?

永遠に老いることがなく、同時に死ぬこともない。

そんな夢みたいなものだ。

だが、それはとても悲しく、哀れだ。

君は、不死者でも無ければ、転生した者でもない。

ただの人間だよ。』


そんな謎の声が聞こえたあと、私の意識は途切れた。


「フィリアさん、フィリア・レゼンフォールさん!」

「ん…」

私はゆっくりと目を開ける。

「もう、授業中に居眠りなんて、貴方らしくもない!」

私は、懐かしのその声に、思わず『え?』と声を漏らす。

すると、私の前に立っている人物は、困惑したような顔で私を見ている。

「フィリア…さん…?寝ぼけているのかしら?」

…それ以前に。

何故ここに先生が?

いや、それに。

どうして私は、ここに居る?

そうだ、ここは、私が昔通っていた魔術専門学校。

でも、私はもう卒業している。

それに、さっき私は確かに─。

「寝ぼけてはいません……あ、の……先生、お聞きしたい事があるのですが…」

少し声が篭ってしまったが、大丈夫だろうか。

「それなら良かった、はい、なんですか?」

良かった、どうやら聞き取れたみたいだ。

「えっと……その、私って、何年生ですか?」

瞬間、『なに言ってるの?』と言わんばかりに、先生は唖然としている。いや、当たり前の反応だろう。本当に何言ってるのこの子って感じだろう。正直私も良く分かってないから。

しばらく唖然としていた先生だが、『えっと…』と若干困惑しながら『何年生って、2年生では…だと、思いますよ?』などと言葉がおかしくなっているが答えてくれた。

そして、私は尚更困惑する。

2年生だって?

おかしい、だって、それじゃあまるで─。


逆行してしまったようなものだ。


先程の先生の様子を見る限り、ドッキリや冗談と言う可能性は低いだろう。

それ以前に、私は確かに騎士達に殺されたはずだ。

ならば、なぜ生きているのか?

考えられる可能性は一つ。

私が昔に逆行してしまったと言うこと。

しかも、一番辛くて苦しかった時期に。

でも、どうして私なんだ。

なぜ私がこんな目に遭うんだ。

まだまだ疑問が残るが、今はとにかく、目の前の状況に専念すべきだろう。

変に目立ってしまっては元も子もない。

そうして、いつの間にか俯いてしまっていた顔を上げ、先生を見上げる。

腰まで伸ばされた癖毛気味の黒髪に、蒼の瞳。

懐かしいその姿に、思わず目が潤みそうになるが、なんとか堪え、代わりに口を開く。


「…そう、ですよねっ!ごめんなさい。

やっぱり、少しだけ寝惚けていたみたいです。」


そう言って明るく微笑むと、いつも通りの私に安堵したのか先生も優しい笑みを浮かべた。

ああ、まさかまたその笑みを見れるなんて。

私の大好きだった優しい笑み…それはもう、二度と見ることは叶わないと思っていた。

先生の笑みに懐かしさを感じると同時に、どうしようもない気持ちで胸中がいっぱいになった。

その激情によって目尻に涙が溜まり始め、溢れてしまいそうになる。

すると先生は目を丸くして、驚いたように

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