11話 幼馴染み
小さな女の子が泣いている。
なぜ泣いているか、わからない。
その横には男の子が立っている。
どうやら男の子は、女の子を泣き止まそうと必死になっている。
男の子が話しかけ、『何か』を手渡すと、女の子は泣き止んだ。
嬉しそうな笑顔をしている女の子。
とっても嬉しかったんだ、わたし……。
「ピリリリィ――」
静寂の中に鳴り響く音で目が覚める。
「……っん、あぁ、夢?」
鳴り続ける、目覚まし時計に手をのばすと、時間を確認する。
いつも通りの時間。
カーテンを開けると、日差しが少しまぶしい。
いつも通りの暖かい光。
支度を調えて今日もいつも通り家を出る。そして目の前の人に挨拶をする。
「おはよう、タカちゃん」
いつもの朝。
☆★☆☆★☆☆★☆
「おはよう優衣乃」
学校に着くと、未来と若松くんが校門で一緒になる。
「相変わらず、朝から子守なんて大変よねー」
「誰が子守だ、俺は一人でも問題ないぞ」
「別に誰かさんとは、あたしは言ってないんですけど」
「なんだと、このスピーカー誤報女が!」
「なんですって!! もっかい言ってみなさいよ!!!」
「朝から騒がないでくれ」
二人がじゃれ合って、タカちゃんが止める。見つめる私。
それが私達のいつもの光景。
いつからだろう。何をするにも、四人で行動するのが普通になっていた。
でも、最近はその光景に大きな変化があった。
「おはようございます。先輩方」
教室に向かう途中で出会った、とても綺麗な女の子。
「おはよう、葵ちゃん」
後輩の朝倉 葵ちゃんだ。
タカちゃんや私とは、小さいときから知り合いだった事が最近わかった、VRスポーツの学生チャンピオン。
「先輩聞いてください」
そしてタカちゃんを慕う、女の子の一人。
「面倒は勘弁してくれよ」
それでもタカちゃんが話を聞かない、なんてことは無い。
口ではいつも面倒だとか、言ってはいるが、そんなことはない。
いつだって話を聞いてくれるし、必ず助けてくれる……いつでも。
賑やかなのは、朝だけではない。
特にお昼休みはさらに賑やかになる。
「今日は特製、地中海の詰め合わせだ」
「もはやそれは食べ物でもないだろ」
「ほんとカラフル」
目の前に広がるのは、残念ながら食欲をそそるとは、決して言えないランチ。
そのランチの作り手を見ると、無邪気な笑顔で微笑んでいる。
小さな彼女も私達の同級生、ラーラ・シレア。
ララちゃんと呼んでいる。
「ほれほれ、視覚ほど曖昧な情報だけでは料理の旨さはわからないぞ」
とは言っても食べるには勇気がいる見た目。
それはさすがにタカちゃんも同じ……。
「この色はもはや意図的に作らないと出来ないだろう」
「おホホホ。それでも食べる。それがタカオ」
「お前の作るものは色はまずいが味には問題ない」
この光景や、やりとりもいつの間にか普通になってしまった。
沢山の人に囲まれてご飯を食べる。それは楽しいことだ。優衣乃自身も嫌いじゃない、むしろ皆の笑顔があふれる、今の状況は彼女自身も楽しんでいるのは事実だ。
しかし彼女の気持ちは複雑だ。
それは、決して口には出さないが、優衣乃自身の性格だから、どうしても解決できない不満の一つになっている。
「ねえ、大丈夫?」
「え、ううん、ごめんごめん。ちょっとね。ボーとしてた」
「そう? 気をつけなさいよ。優衣乃はトロいんだから、怪我しないようにね」
「お前と違って繊細なんだよ」
「なんですって!! 大悟ぶっ飛ばすわよ」
二人のやりとりを眺めながら、少し先に映る彼を見つめる。
さらにその先にある手元をみて思い出す。
「そういえば……」
彼女にとって、きっかけが生まれた瞬間だった。
☆★☆☆★☆☆★☆
「そんなに久しぶりか」
靴を脱ぎながら優衣乃がどれくらい、俺の家に足を踏み入れてないか聞いてみた。
「そうだよ、一ヶ月以上は来てないもん」
「まあ、久しぶりって言える期間ではあるか」
ちなみに下校から今までそんな話をしながら帰ってきたのだ。
「おじゃまします」
「いいよ、誰もいない」
「そんなことないよ、タカちゃんが居るよ」
何となくその笑顔に俺は……。
「面倒だ。その性格……おう、上がってけ」
「もう、なんでそんなに上からなの」
お互い笑っている。いつもの俺たちだ。
「じゃあ準備をはじめるから、キッチン借りるね」
「たのむ。俺は着替えてくる」
優衣乃にことわりを入れると、自分の部屋に向かった。
制服から部屋着に着替えながら、今日のやりとりを思い出す。
「え? ご飯何を食べてるかだって」
「うん、いつも何食べてるの?」
「その辺にある物を適当に食べてるよ」
「それじゃあ、だめだよ……」
気のせいだろうか、『よしっ』と小さく聞こえた気がする。
「……じゃあさ、私が作ってあげるよ」
「優衣乃がか?」
「うん前はよく作ってたよね。ほら、最近は色々あってタカちゃんの家にも行ってないし……だめ、かな?」
「いや、来てくれよ。たまには普通の飯食べたいからな」
まさか優衣乃から言い出すとは、何かあったのだろうか。
「ねぇーちょっと、手伝ってくれると嬉しいんだけど」
下から助けを求める声が、聞こえてくる。コレに答えないと旨い飯にたどり着く時間が、長くなってしまう。
「今から降りてく」
返事はないが、きっと通じているだろう。
いつものことだから。いつもの? そういえば少し前まではコレが普通だった。
階段を降りて、リビングに入るとなにやら香ばしい匂いを感じる。
キッチンに進むと、何かを焼いている。
そういえば帰りに寄ったスーパーで肉系を食べたいとリクエストしたんだった。
「ごめんね急かして」
「問題ないさ。ほれ」
俺は調味料を早速渡す。
「ありがとう、次はアレとって。それとお皿もね」
優衣乃の指示に従いながら、準備を進めていく。
お互い付き合いだけは長い。少ない言葉で何をすればいいのか理解できる。
いつの間にか食卓には、ここ最近見たことのない光景が広がっている。
「さあできた。時間もいいね、食べよう」
俺がご飯を、優衣乃が味噌汁をお互い分注ぎ、席に座る。
「……いただきます」
全てが旨そうだ。いきなりだが、メインである肉料理。
「しょうが焼きにしたけど、やっぱりハンバーグがよかった?」
優衣乃が心配そうにこちらを見ている。
「どっちも優衣乃が作る物は旨いから大丈夫だ」
「そっかよかった」
「でも次は、ハンバーグにしてくれ」
「うん! 次はそうするね。じゃあまた作りに来るね」
「先の話もいいが、今はこいつの続きを食べよう。せっかく旨いのに、冷めたらちょっとは美味しくなくなるだろ」
冷めても旨いが、出来たての物を食べたい。
「ああ、ごめんね。じゃあどうぞ続きを召し上がれ」
「もちろん、そのつもりだ。おお、卵焼きも作ってくれたのか」
卵焼きは昔からの大好物だ。
「だって、好物でしょ」
優衣乃が作るのが当たり前と言わんばかりの、笑顔で返してくる。
なんだかとても元気そうだ。
よかった。
「早くお前も食えよ、俺が食べちまうぞ」
「まってよ、今日はタカちゃんとご飯食べるって連絡したから、帰ってもご飯無いんだからね」
なんだろう、久しぶりのこの感覚は。最近は周りに人が多くて、いつも騒がしかったけど、優衣乃と二人の時間も今思えば悪くない。
楽しい時間と、おいしい食事はあっという間に無くなった。
片付けを終え、何となくその後喋っていたら、いつの間にか外は夕闇に染まり、街灯がつき始めている。
「もうこんな時間、久しぶりにタカちゃんといっぱい喋ったから、遅くなっちゃった」
「俺のせいにするなよ、でもいい時間だ送っていくよ。隣だけど」
「ありがとう。でも大丈夫だよ、隣だもん」
お互い家は隣、つまり本当にご近所の幼馴染み。
でも最近はすれ違っていたのは俺も気がついていた。
玄関まで送ると俺は優衣乃に問いかけた。
「元気が出たみたいでよかった。……何かあったら言えよ。面倒だけど、やれることは助けてやる」
少し恥ずかしかった俺は、ぶっきら棒に偉そうに言った。
「タカちゃん……ありがとう! もう大丈夫だよ。元気いっぱい」
優衣乃の顔が少し赤くなっている。やっぱり俺の台詞は恥ずかしかったのだろうか。
「じゃあ帰るね」
「ああ。また明日」
優衣乃が玄関を出る前に振り返えった。
「タカちゃん、いつもありがとう」
そこにはいつもの、俺の知っている優衣乃の笑顔があった。
11話目でした。
最近のエ〇ゲ業界はこんなご時世でもあり
巣ごもり需要で売り上げも良かったみたいです。
このまま全盛期……とは無理でも
新たな天才クリエーター元で復活して欲しいですよね。
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