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はじまり
『平手くん!』
先生の声が聞こえて、凡夫は身体がびくっと動いた。
授業中にうとうとしてしまったようだ。
隣の陽子さんがクスっと笑って教科書の46ページを指さした。
「ハイっ。今から46ページを朗読します!」
凡夫は大きな声で元気よく発生し、起立した。
「違います。朗読ではなくて、そこの問1を解いて答えてください」
「ハイっ」
と元気よく答えて隣の陽子さんを見るとにっこりと優しく微笑んでくれる。
尋常小学校に上がって、隣の席が陽子さんになると授業中でもすやすやと寝てしまう。
いつも優しく微笑んでくれて、あったかくて、いい匂いがする。
(続く)