表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第1章 ながされて歩行軍艦
8/70

第8話 艦隊、愚連隊、戦車隊

なんだったんだろうねと市長の格好について話をした。


良かった所を評論家気取りで話していた。


しばらくすると通信機を持って激しく何かを言いながら大慌てで市長が社務所の渡り廊下を通っていった。


何か慌しく指示を出している様だ。


階段から人が集まってくる、みな息を切らしている。


ぞくぞくと人が集まってきて境内には人が混雑した、お祭りのようになっている。


突然、空間映像が出力される。かなり大きい。


静かな曲が始まった。映像は黒っぽくなっている。


荒野のアップ、歩行艦隊、戦車の群れが映し出された。


車両の天井開放部から爺さん達や兵士達が上半身をだしている光景が見えた。その姿はボロボロで汚れていてた。


「こいつらは歴戦の兵士達だ、前線で体を張って生延びてきた。だが懲罰行きをくらった」


映像から声が聞こえる。


「やらかしたり、素行が悪く懲罰部隊へ転属していた。それはしかたがない」


砲塔から舐めるように上へカメラが移動する。


「艦隊の艦齢平均は70を超え、修理が必要な艦が多く居ます」


「だが乗組員は古参兵だ。そんな連中がやるって言ってるんだ」


相変わらず誰がしゃべっているかはわからない。


カメラは艦隊に近づく、駆逐艦1隻、巡洋艦1隻、最後から戦艦が1隻の艦隊と言うには寂しい数だ。


甲板上には乗組員達がいた。


正直ガラが悪いのは容易に理解できた。


なかなかファンキーでパンクないでたちの色の主張が激しいボロイ者達がいた。


赤いモヒカン男がやけに目立つ、戦車も派手にノーズアートを書き込んでいる。戦車の砲塔を顔に見立てて、目とサメの様な大きい口を描いていた。


主砲は鼻のつもりらしい。


軍服を着ているものが半数いたがボロボロで正直どっちも酷い格好に思えた。


その後ろに多くの車両がいる。


砂煙を上げ疾走している。


意外と歩行軍艦は早く移動できるものだと思った。


それとも車両が遅いのか? などと考えていた。


映像から罵り合う声が聞こえる。


誰が言っているのかわからない。映像は鉄の塊の集団を映している。


「この間の激戦を生き抜いて!! 修理もろくにせず。傷が残っている。だが,やつらは戦いに来た。」


「こいつらは望んで来ている。彼らの要望だ」


違う男の声になった。


その声はしゃがれているが優しい感じがする。そして緊迫感がある。


「なにを望むのかね?」


「ひとつ仕事をお願いしたい」


映像は砂埃を上げて進む鉄の群れを映している。


実にバトルシップである。




街にサイレンが一発鳴る。


各自の携帯端末から警報が流れる。


「この放送は緊急放送です。なるべく多くの方が見てください。住民が協力して大勢見る様に努力をしてください」


何回か繰り返した後に市長の上半身が机と共に映った。会見場の様なところに居る。


「皆さん注目してください」


市長よりマイクを通して大きく聞こえる。


「今朝方、市議会で緊急課題が可決されました。ある都市と部隊の保護を決定しました。」


「彼等は遠く離れた土地で前哨基地で勤めを果たしていた懲罰部隊です」


「都市はそれらを支える補給都市です」


少し間を置く。


「敵性体は新型で情報はありませんでした」


「軍の本体は陽動にかかり奇襲を受けて壊滅的損害を受けました。近隣都市の救援に間に合いません」


「中央軍令部は戦術的に失敗と判断、撤退命令がでました」


「そして先ほど、懲罰部隊と近くの都市を取材をしていた撮影隊から連絡がありました」


「軍令部は損耗を避けるため撤退と決定。しかし敵の強襲により前哨基地が破壊され、そこでは未だ抵抗している部隊がいます。さらに逃げ遅れた都市があったことがわかりました。都市で懲罰任務に着いていた彼等は都市を住民を守るために……

懲罰部隊は乾坤一擲の強襲を実施すると決定しました」


「その都市軍の残りは真っ先に逃げ、住民は取り残され、懲罰部隊は住民を守る為に出撃しました。」


「懲罰部隊のリーダーの宣言が次になります」


市長の声は止まった。


「クソッたれのお目付け役は消えちまった。俺達はこれまで散々好きにしてきたんだ、これからも好きにさせてもらう」と


男の声が聞こえる、深く渋くいい声だ。


また市長の声に戻る・


「そしてある音楽データーを俺達の映像と共に流してくれと……酒でも片手にド迫力映像を楽しんでくれと。 その方が俺も部下達も喜ぶ」


「私はかれらの生き様を放映します…これからすぐ戦闘がはじまります」


「それを見て、各自判断し、その後の協力をお願いしたい」


「私達のこの都市は自由都市、この戦いの決着を持って住民投票を行います」


「この放送は緊急放送です、なるべく多くの方が見てください」


彼女の声の後ろに戦闘準備!! とかすかに聞こえた。






音楽は静かに印象的なギターの調べが続く。そして乾いたドラムの音も続く。


俺は後ろで何かが壊れる音を認識した。ガラスの割れ音もする。 原因を見つけたガラス棚が横になり壊れていた。


街のほうで金属音が鳴り響く。


俺は驚いて鳴った方角を見る。


街に明かりが次々についていく


ロック調の伴奏が聞こえてくる。しだいにはっきりと音楽が流れ始めた。


周りはどたばたと五月蝿い、何処からともなく人が集まってくる


アミが戻ってきた。ここのが一番でかいんだとアミが言う。


なにやってんだか全然わかんねぇ。


「若いの!!」


歳をとっているが目が鋭い、そして顔には深い傷もある。


「なにを呆けて突っ立てる、そこの映像を見ていろ」


凄みを感じて思わず従う。


「はい、見ます」


肩を叩かれる。別の爺だ。


この人は隻腕だ。半袖のシャツから出る腕があるべきところに無い。


「おい、外回りに行くやつじゃろ?」 


「そのつもりです。 空気に呑まれ自然と口走る」


「こうはなりたくないだろう? 古参兵から多いに学べ」


そう言うと無い腕のところに反対側の手をやる。


「わかりました へへ」


なぜか最後に愛想笑いをしてしまった。


「耳をふさいでろよぉー!!」


花火が打ちあがる。


映像の中では軍艦が警笛を鳴らしている。


アミや周りの人たちが耳を塞ぐ。


俺は驚き、あぜんとしていた。


横の爺が肩を叩く。


「初めてだろ!! その間抜けな動きで分かる。いいから耳を塞げ!! コイツの音に腰を抜かすなよ」


突如、駆逐艦から激しい警笛がなる。蒸気を激しく吹き上げる、腹に響く大音響だ。


「ご機嫌に吼えてとる!!」


負けじと爺が声を張り上げる。




映像は軍艦の映像から変わり艦長らしき人が画面に映っている。


しばらくして「艦長と」男の声がする。


カメラは横に振り、別の男を映す


「入電です、スカウトから旗艦へ、大型、八機確認 砲戦距離、いつでもいけます」


「損傷艦や車両はどれくらい脱落した? 役半数脱落、メンテ中に無理やり出したやつから急造車両まで」


「いつも感謝しているが今回より一層、技術班に感謝しなければだな」


「かなり無茶をしましたからね、今頃退避もせずに気絶する様に寝ていることでしょう」


「自動人形を駆り出して、自動艦制御機構も怪しい動きだ」


「退艦して尻尾巻いて逃げますか? 全部オートにして、自動人形に汎用性思考を持たせて突っ込ませますか?」


「それも良いんだが大逆転でないと街を守りきれぞ?? 多少揺さぶりをかけ意表を突かないと」


「有効なのは認めますが……」


「やるだけやって勝ちに行こうか? な?」


映像は場面を変える。


「弾薬は? あぁ、あるだけ引っ張り出したがな、たかが知れ取る」


報告を受けた人物は通信機を取る。


「応急班長はいるか?」


「いま、やっとりますぜ」


「すぐに戦闘だ、時間が無いんだ。急ぎで頼む。」


「わかっとる。今終わった」


音楽はノリノリで流れている。映像とやけに合っているのが印象に残る。


「まだ死にたくねぇ!」


映像からなさけない声が聞こえる。


ぶん殴られて担がれている男が居る。


カメラが変わる。


バーナーで懲罰部隊と描いてある看板を焼き切っている。


「晴れ舞台だ。あんなもんを掲げてたら興冷めだ」


艦長が葉巻を吸いながら言い放つ。


「まったくですな艦長」


「副長!!」


「はっ」


「お前もこいつをやれ」


「こいつは、すみませんなぁ、取って置きでしょうに」


「今やらんでいつ吸うよ」


「そいじゃ、失敬して」


慣れた手つきで葉巻を吸う、じっくり吸う。


口の中に貯めて十分に味を楽しむ。


そして深く吐き出す。


「うまいですなぁ」


「最高の舞台だ」


艦長と副長はご満悦である。


「先月娘に会えた。誕生日にワシのコートをねだりおった……もうちっと別のもんを欲しがるだろ普通……」


「17歳でしたか? 誰に似たんでしょうな? 奥様も貴方の艦長コートを羽織るのがお好きでしたな」


「影響は受けるもんだな」


「それはそうでしょう?」


「ワシとしてはもう少し違うものをねだられて困惑したかった」


「よいご趣味で」


なにやら娘の話をしているようだ。


二人は和やかに葉巻を曇らしている。


「艦隊は半分。修理中を引っ張り出した。戦車隊もボロボロだ。骨董品まで持ち出した」


「オマケに急ぎで来たから弾薬すら満足でない」


「艦長……これまで準備万端で望めることが幾度ありましたかな?」


「ハッ!! いつだって突然で不十分!! こっちの事情なんて構わない予算が無いから隠れて軍資金稼ぎだ。まぁそれでも上手くやってきた」


「そうですな……これまでもやってこれました、いつもと違うのは部下達の士気が最高潮になっております。カメラクルーだってノリノリです」画面の端からサムズアップした手が出てきた


「そう言えばいつの間に乗り込んだんだ? こいつら……フッ! ならば最高の絵を撮ってくれ」


「まかせてください、邪魔はしません」


カメラは変わり、懲罰部隊の看板が次々に捨てられる、中には看板に激しく中指を立てて殴って雄叫びを上げている者もいる。


その横ではバーナーで葉巻に火をつけるヤツがチラホラいる。


葉巻は標準装備らしい。


カメラクルーが乗った別のカメラ車両にアップする。


むこうもノリノリな様子だ。


派手に鳴り響く曲にヘッドバンドをしている。


戦艦の映像に戻り、号令が聞こえる。


「機関前進全速」


「全艦全機前進全速」


「全艦全機前進全速 アイサー!!」


カメラは艦橋から歩く映像に切り替わる。


「どうだ?」


「ばっちりだ」


威勢異の良い声が聞こえる。


カメラは通路を通る。


ごつごつとした隔壁扉を抜け、慌しくクルー達が駆け回る。


余裕のあるカメラに気がついた者達は狭い通路で敬礼をする。


分厚い鉄の板の壁がある。


カメラは甲板に出る 甲板に居るクルーの内気が付いた者が号令を上げる。各員敬礼する


風が砂煙を上げる。


カメラが変わる。


「一番砲塔!!中央装填完了」



「きたぞー!! キター!!」


「装薬装填!!よーし踏ん張れよー!! 落としたやつは地面に叩ッき落すからなッ!!


激しい叱咤激励が飛ぶ。



「三番砲塔!!」


「左舷、装填完了」


「右舷、装填完了」


「中央!中央どうした? トラブル発生!! 間に合いそうもありません」。


「やるだけやって戦闘開始前に配置に着け」


「三番砲塔!! 中央を除き準備良し!!」


カメラが変わる砲撃指揮所に変わる。


計器盤のメモリが激しく変わっていく。


「諸元入力完了!! 作戦会議ん時のデータで本当によろしいんですね?」


「その話だ!!」


リーダーと思われる中央で指揮を執っている男が指を2本立てて両手で奇妙な仕草をしている。


別のクルーがワタワタと慌てている。


その横の老人の古参兵がとぼとぼと肩を落としてリーダーと思われる男に近づく。


「本当に俺らがやるんで?」


「あぁ そのようだ。と言うか俺達が一番巧く早くやれえるだろう」


「夢みてぇだ」


二人は苦笑している。


曲はゆっくりと止まった。








映像は巨大な山肌を映していた。


BGMはしずかにロック調のギターリフとドラムの音がする。


あわせて人々の唸り声の様な合唱が聞こえる、徐々にボリュームを上げていく。


歌声は高いしゃがれた声だが魂を揺さぶる熱さを感じる。


そして一気に爆音になった。音の暴力だ、耳が痛い。


山肌の切れ目から何かが見える


あれが敵なのだろうか。


黒い物体が徐々に露出している。その光景が以上に思えて鉄塊の大きさがわからりずらかった。


初日に見た遠くにいる歩行戦艦を思い出す。そんなイメージがあった。


重たい金属がこすれるような、または生物的な重厚な咆哮が響く。


軍艦の様相はあるが艦全体に樹木の様な根が絡みついている。

戦艦の主砲の太さぐらいの触手とも樹木とも見えるものが絡み付いている。

艦の中央ほどそれは巻きついており艦を覆い隠している。

それは揺れる事も無く艦の壁に張り付いているようだった。

艦底からうじゃうじゃと脚のようにかなり太い硬そうな根が脚のように生えてうまく動かして艦を歩かせている。

脚の多すぎる甲殻類に見える


「作戦はしっかり頭に入ってるな?」


「敵が発砲してから次弾までのカウントを取れ、空いてるやつ、発砲箇所も頼む!!精確にだ」


「了解!!」


「お前等、いよいよだぞ! 用意はいいか?」


『フゥッーヤァー!!』多くのクルーの声が重なる。


「いいか!! ブチかますぞ!! あのクソったれに!!」


『フゥッーヤァー!!』


叫び声は力強くとても頼もしかった。



戦闘開始


敵側で発光があった。


「敵発砲」


「カウント!!、場所も確認しろ」


「場所捉えました!! 次の発砲まで死んでも確認します!!」


間を置いて激しい砂煙が舞上がる。


「着弾、自軍損害なし」


「まだだ、まだ引き付けろ」


味方全体が進む


しばらくしてまた発砲する。


「どうだ?」「50.2秒」


「着弾誤差修正含めて、そんなもんか?」


「十分ですかな?」


「気休めの目安としては十分だろ」


「では、目を潰しますかな?」


「煙幕弾発射!! 次弾一号鉄鋼爆裂弾」


「アイサー!! 煙幕発射……次弾一号鉄鋼爆裂弾」


戦艦の主砲が第一砲塔から順に火を噴く。


「いつ聞いてもいい音じゃな?」


「ええ、お気に入りの音です」


「じゃが一番気に入ってるのは値段だ!」


「何人分の年収が吹き飛んでいる事やら……」


「だから無駄なく、確実にじゃよ」


煙幕が立ち上がり徐々に敵の姿を隠す、敵の予測進路にまで長い煙の壁ができている。


「景気良く煙幕張りすぎたかの?」


「これくらいでよいのでは? 足りないよりよいでしょう」


「ふむ」


艦長、副長はずいぶんと余裕がある。


「敵発砲!!音だけですが」


轟音がして煙に凄まじい流れが発生する。


発砲の勢いは周囲の煙を巻き込むが煙は晴れない。


「な、丁度良かろう」


「着弾、至近弾外れました。」


「おみそれいたしました」


先ほどより、煙の壁との距離が近づいている。


着弾による砂煙が舞上がり後続部隊を隠す。


「しかし、せわしないのう」


「あれでは当たるものもあたらんのでは? 観測や誤差修正はどうなってるんでしょうね?」


「知らんよ、あんなもん見たこともないて」


数回、発砲音がする、壁は相変わらず晴れない


「じゃが、敵さん腕はいいようじゃな、発砲間隔平均何秒だ?」


「50秒です」


「記録確認はもうよいぞ、ご苦労、配置に戻れ」


「アイサー、配置に戻ります」


「しっかし、バカスカ撃ちやがって……だが、ちと焦り過ぎだ」


「ええ、馬鹿メと通信でも送りましょうか?」


「あれはたしか、儀礼通信文の伝統的なやり取りで、戦闘開始前に実施するものでは?」


「まぁ、煙幕で暇じゃし、送っておくか。腹でも立てて乱れれば儲けもんじゃな」


「そのような思考形態をしてるんですかね?」


二人で首をかしげる。


「敵に通信、馬鹿めと遅れ」


「アイサー!馬鹿メと送ります」


通信担当は含み笑いをしている。


「味方艦から発砲許可が来てます」


「まだ当たらんよ、もうすこし後だ」


「こちらの交戦距離入りました」


「まだだ、こっちは無駄弾を撃てんのだ」


「味方から発砲許可が矢継ぎ早に来てます」


「やれやれ、若いやつは礼儀を知らんな」


「まったくですな、艦長ここは彼らに鼓舞を、多少時間が稼げるでしょう」


ふむと髭を触りマイクを取る


「各隊に通信!! 俺達に間抜けな早漏野朗でもいるのか?、もう少し我慢しろ!! 女神様がスカートの裾をたくし上げるまでも少し待て、しっかり堪えろ」


「第一突撃隊より入電、ヒャッハー我慢できねぇ、イッチまいそうだ」

「第二戦車隊 突撃一番のおかわりを要求する!」

「駆逐艦春風、旗艦発砲開始と共に雷撃を狙う!!ウラー!!」

「巡洋艦二俣 右側から回り込む、あとは好きにさせてもらう!! 女神ちゃんをいただくのは俺達だ」

「寄集め戦車隊、俺達、遅いから群れからはぐれたやつを狙います。ヒーハー!!」


「バカどもめ。弾け過ぎだ。戦車の連中は艦影に隠れてギリギリで突撃させるように再度連絡を」


「サー!! 了解しました連絡送ります」


通信担当が戦車隊へ連絡を送る。


「イキイキして頼もしいですな、昔を思い出します」


「ワシ、正規軍での……お行儀がよかったんだ。こいつ等は今まで大人しくしてくれてたんだなぁ」


艦長は葉巻を曇らせ、深い息では吐く、煙が静かに流れてゆく。


「艦長のお人なみがあってこそですよ。しかし……愚連隊ですなこれでは……」


副長が実に晴れやかな顔をしている。


「懲罰部隊だぞ? わしら」


「失礼、懲罰された愚連隊でした」


艦体に激しい衝撃、凄まじい音がする。


「至近弾が出たか」


「あぁ、流石に間抜けでは無いようで」


敵艦の銃座が射撃を開始した。


閃光する線が幾重にも出る。


煙幕の効果が徐々になくなっている、予測進路方向の煙幕の終わりに敵艦の先端が見える。


「そろそろだな」


「そろそろですな」


少し間を置き、艦長が熱を込めた号令を放つ。


「回等用意」


「アイサー! 回等用意」


「敵さんと仲良く並ぶぞ」


「アイサー」


「各隊に通信、我に続くな、好きにやれ」


「アイサー」


通信担当が命令をだそうとするが艦長が再び指示を飛ばす。


「すまんの修正じゃ、我に続くな、好きにやれ!! 我に続くな、好きにやれ!!」


「各隊に告ぐ!! 我に続くな、好きにやれ!! 繰り返す、我に続くな、好きにやれ!!」


「発光信号継続発信します」


「単縦陣が出きる腕がないのでな 機関出力が安定しないわ、ときたま脚が気まぐれに動くし」


「好きにやるしかありませんな。せめて整備が間に合えばよかったんですが」


「しかたあるまい、ここまでやれれば十分よ」


艦長はにんまり満足そうにしている。


「艦首回頭、敵に並べ!!」


「艦首回頭、敵に並ばせます!!」


敵の艦体は中央付近まで煙幕の壁から出ている。


「碇を下ろして戦艦ドリフトしたいんだが?」


「なにを言ってんですか?」


「開幕戦艦ドリフトからの敵の砲撃をかわして…からの一斉射撃って俺の夢だったんだ?」


副長は呆れ、艦橋クルーは笑いを堪えている。中には吹きだして副長に睨まれている。


「あなたは……あれはドリフトできる環境があって意味がある大技でしょうに? 伝統芸のひとつですよ?」


「いかんか?」


副長は声にならないくぐもった唸り声をしている。


敵艦の前部一機が発砲


着弾、かなりの至近弾。


「両舷イカリ用意」


「アイサー両舷イカリ用意」


「いいのか?」


艦長が副長を見る。副長は頷く。


「砲撃から何秒たった?」


「40秒経ちました」


「イカリを下ろせ、機関急停止、対ショック姿勢」


「イカリを下ろせ、機関急停止、対ショック姿勢」


ほぼ同時に通信担当は指示を飛ばす。


戦艦は地すべりをしながら脚を止める、イカリがロケット噴射をして地面に刺るが地面を削りながら制動をかける。


さらに急制動がかかる、艦首がかなり下がる。戦艦の前脚が地面に食い込み後脚は突っ張っている。


戦艦の急制動からすぐ敵艦が発砲する。


敵弾は戦艦前部をギリギリ外す。


艦橋クルーは衝撃に耐えながら指示を待つ。


「一斉射撃」


「アイサー、一斉射撃!! ッてーッ!!」


戦艦の主砲が一斉に火を吹く。


発砲により各砲塔から凄まじい煙が生み出され、艦の周辺は日光がさえぎられ影が出来ているところもある。


「命中命中、ざまぁみろじゃ、くっくっく急制動も効果的だ。しっかし火薬しけってんな」


「まぁ、懲罰部隊ですし……本部が碌な物廻してきませんし。……敵艦外しましたね。暴発事故が起きないだけでましかと……全弾命中」


「この距離で外したら……そうとう恥かしいぞ?」


「部下を信じて祈りましょう」


「はなから信じとるわい」


「敵艦損傷大!! 大穴が開いてます」


「動きが鈍らないの。効いとんのか?」


「動きに影響は無いようですが」


「もっとぶち込めば止まるじゃろ」


「敵艦後方より、大型種!!! 小型種!! 多数きます」


金属性動物、金属性樹木とも表現しがたい奇妙な物体が戦艦もどきの後方から現れた。。そしてそいつらが自軍に砲攻撃を始めた。


「各銃座砲撃開始。追加が来おったわ」


「アイサー!! 各銃座砲撃開始」


艦長達がのん気に話していると通信兵が叫ぶ。


「巡洋艦二股、前に出ます、続いて皇族から駆逐艦春風が!!」


敵の発砲音がする、前方で巡洋艦二股から大きな爆発が起こる。


敵側でそれより大きく爆発と勢いよく上昇する爆炎まじりの黒煙が立ち上がる。


「二股やりおるな、雷撃を当てよった」


「痛みワケどころか金星ですかな?」


「向こうさんムキになって銃撃を集中させとるわ」


「二股より入電、してやったぜ! 横っ腹に大穴だ」


「もうちっと、マシな報告の言い方は無いのか? あいつら」


「まぁまぁ、戦果だしてますし、撃つだけ撃たせて離脱させます。」


「そうしてくれ」


「通信!!」


「今のを送ります!!」


通信担当はすぐさま指示を飛ばす。


巡洋艦は黒煙を吐き続ける、小さな爆発が幾度か起こる。


「激しい打撃戦だな、何年ぶりだろうか?」


「ここまで無様なのは記録に無いのでは?」


「無様て…費用対効果を見ればメダルが貰えるレベルだろう?」


「美女のキス付きで沢山貰えますな、しかし足止めではなく撃破が必要です。」


敵艦は動きを緩めずに砲塔を戦艦の左側少し下に向けている。


駆逐艦巡洋艦の外側から突入し砲撃を加える。


さらにその外側から戦車隊の攻撃が始まった。小型種狙いをメインに戦闘を開始する。


戦車隊の中には敵艦の脚に砲撃するものがいる。赤いモヒカンが一瞬映った。


「戦車隊突撃開始したな、敵艦の狙いは駆逐艦春風か?」


「そうですね、あの角度は……そのように思います」


「指揮所へ!! 副砲を艦橋付近に狙いを整い次第自由発砲、三回狙って、後は中央に集中」


「アイサー 各副砲!!敵艦艦橋付近に照準!! 整い次第自由発砲、三回狙って、後は中央に集中」


「大口径銃座も狙いますか?」


「そうだな」


「大口径各銃座、余裕があるヤツ、これから1マガジン艦橋付近に嫌がらせしろ、無理はするなよ」


「当たるとよいですなぁ」


「当てるんだよ、三回チャンスをやった」


「外したら懲罰ですかな?」


「いや、無茶言っとるからの、外したら惜しかったなぐらい言ってやるさ」


「お優しい事で」


「駆逐艦春風、敵と本艦の間に入ります」


副砲塔は敵の艦橋に向けて砲身を向ける。


駆逐艦の後部に大きなドラムの様なものが見える、数台発射台にドラムが乗っている。


「さて、次の雷撃は如何ですかな?」


「早くて細こいからの、敵さんびびっとるじゃろ」


「自分だったらあの距離は諦めますな、よけられるもんじゃない」


「春風への援護になれば良いが」


戦艦からの副砲並びに銃座の攻撃が当たる。


「うほッ!! 副砲が初撃で当てたぞ、良く当てたな、銃座も奇麗に当てとる」


敵艦の銃座が一瞬止まる、しかしすぐ撃ち始める。


駆逐艦春風は砲撃を加えながら急激に向きを変える横腹を敵艦に向ける。


腹を若干、敵に見せたそのときドラムが発射された。


発射されたドラムは地面に転がり、少し膨れる。


ドラムの外周が飛び出し、真ん中にドラムを抱えた2つの車輪となった。


「いつ見ても奇妙な光景だな…パンジャンドラム」


「わたしもです」


パンジャンドラムと言われたその奇妙な物体は発射されバウンドしながら敵艦に転がっていく。


可能な限りまっすぐに。微妙に進路を調整しながら転がって行く。


敵艦の近くまでくると跳ね上がった。


「跳ねたな」


「跳ねましたな」


跳ね上がると丁度敵の横腹付近で爆発した。


「あたりよった、奇麗に転がってくれたな」


「整備兵が徹夜で仕上げました。味のある気品のある攻撃ですな」


「紅茶が飲みたくなる」


「私もです、あとで秘蔵のダージリンを入れます」


敵艦の動きがかなり遅くなる。


やり返しているのか? 駆逐艦の中央付近に敵の主砲が炸裂する。


駆逐艦の砲撃はやまず撃ち続けている。


艦のスピードが徐々に落ちるが止まらない。そして駆逐艦は煙幕を張る。


手前で動きを止めた巡洋艦は大型種、小型種に発砲を続けている。


撃破も多数あるが取り付かれそうになっている。


敵艦が発砲する狙いは駆逐艦だ。


「巡洋艦に気を取られすぎだ、あやつ優先順位がわかっとらんの」


「えぇ、動きに一貫性がありませんな」


敵艦から再び、閃光と轟音。


煙幕は砲撃によって吹き飛ばされてしまう。


順次射撃によって煙幕の効果は薄れてしまっている。


駆逐艦に先ほどとは違い複数個所中央から火柱と煙が上がる。


「そろそろ、こっちに砲身を向けるぞ」


言い終わると同時に敵艦主砲は軍艦に向け始めた。


「総員衝撃に備えろ、来るぞ」


「総員耐ショック姿勢」


通信担当が叫ぶ


閃光、衝撃、轟音、戦艦が激し衝撃を受ける。


後方の後部艦橋に近い主砲塔が吹き飛ぶ


全員が激しく揺さぶられる。


「被害報告」


副長が叫ぶ


「艦の後方に着弾、第三砲塔連絡がありません」


「見張り員!!どうだ?」


「第三砲塔が吹き飛んでいます」


艦長は深くため息をして静かに言う。


「艦をやつに向けろ、艦首がヤツを遮る様に」


「アイサー!! 艦首を敵艦前方へ」


「総員白兵戦用意、各充座は弾が無くなり次第、艦内へ、再び飛び出るからな」


「白兵戦用意、各銃座は撃てなくなり次第、艦内に退避、白兵戦に備えよ」


艦橋の人員が慌しく各担当に連絡をする。


「間に合わんだろうな」


「さすがにこれは」


「すこしでも引っかかればと思うのじゃが」


「準備は大切です、おっ敵の脚が鈍いですな」


「どうだろうな」


敵艦は鈍い動きながら動いている。


戦艦の主砲が敵艦の前部主砲郡を吹き飛ばす。


「悪くないな、上出来だろう」


「贅沢を言えば主砲塔は全てやりたかったですな」


敵艦発砲し戦艦の中央腹に直撃する。


「被害報告、機関室損傷大、火災発生、被害甚大です。負傷者多数」


「もう少しだけ、やれんか?」


「やってみます」


スピーカーから報告がされる、


「戦艦が簡単に沈むか!! ぼさっとしてないで消化服急げ、大体お前達ッ!!」


通信をきり忘れたのか、声の主が大声で怒鳴りつけている様子だ。通信が途中で切れた。


機関室では絶望的な状況にもかかわらず、各自義務をまっとうする。


「主砲塔敵艦中央、雷撃の大穴を狙え、オールフリー!!」


「主砲塔 照準敵艦中央、雷撃の大穴を狙え、オールフリー!!」


脚を止めた味方艦は大鋸t、小型を駆逐していく。


駆逐艦は小型種に群がられている。


しばらくすると駆逐艦より発光信号


「駆逐艦に敬礼」


戦艦に着弾する、衝撃はあるが爆発は無い。


「跳ねたか?」


「装甲に感謝しましょう」


巡洋艦が大爆発をする。大型種を巻き込む形で命を終える。


「巡洋艦に敬礼」


敵艦は動きを緩やかに止めつつある。


かなり動きが遅い。


「機関室より入電、火は止まりましたが限界です」


「主砲塔周りだけでも動かせんか?」


「それならもう少しいけます」


「艦の速度を落とせ、主砲砲にエネルギーを廻す」


通信担当は悲痛な顔をしている。


「そろそろ主砲の弾薬もきれるころか?」


「主砲塔、残弾報告」


「前部1番次で看板です」


「前部2番、中央損傷動かず、左右砲は行けます装填済み、後三発です。」


「1発1番砲塔に持って行け」


「1発持って行きます、中央砲塔担当聞いたな」


「終わり次第に白兵戦だ、甲板近くに行け」


戦艦の主砲は大穴に吸い込まれていく。


大爆発、そして敵の腹内部から爆発と黒煙がでる。


「総員、白兵戦が近いぞ、気合入れろ」


「艦橋、全員白兵用意、甲板に行け、副長指揮を頼む」


「わかりました、お前等聞いたな! 艦長に敬礼」


艦長に向かって全員敬礼をする。


艦長は笑顔でねぎらいの言葉を送る。


「外部スピーカーで指示を出す。ワシに構わず撤退なり、好きなようにしろ」


「良い戦闘でした。ありがとうございました。失礼します」


艦長を残し、副長が最敬礼をして階段に消えていった。


敵艦は動きを止め、戦車隊は残存小型種の掃討にかかる。


「やれやれ、目的は達成できそうだの」


駆逐艦が大爆発する。艦の前部を残して残りがバラバラに大きく吹き飛ぶ。


群がっていた小型種が巻き込まれる。


敵艦の周りを味方の戦車郡が取り囲み激しく砲撃を行っている。


敵艦は銃座の攻撃や副砲塔で応戦している。


味方の攻撃でかなりの損傷を与えている。多くの銃座が破壊され火災や吹き飛んだ跡が見える。


だが味方の損害も激しい。幾つもの擱座した戦車があり、乗員が飛び出して小型種と戦闘を行っている。


彼らを守ろうと味方戦車が小型種をひき殺している。


突然、放映しているカメラが激しく揺れる。ひびが入り無茶苦茶な事になった。


車両に直撃弾を受け映像が乱れ地面に落ちたようだ。すぐに他の映像に切り替わる。


戦艦から長めの警笛が鳴る。


しばらくして戦艦から最後の一撃が放たれた。


中央の大穴に吸い込まれる、何度も打ち込まれ広がった巨大な黒い穴だ


内部構造が剥きだしになっている。数々の穴から出血の様に青味があるどす黒い粘性のある液体が流れている。


巨大な穴には根の様な黒い青く光るスジを持っている根が見える。それが内部にいくほど多く広がっている。


敵艦の大きく広がる複数の大穴から小さな爆発と激しく炎上している様子が見える。


敵艦を守るように大型種や小型種がいる。


数はだいぶ減ったが大型種には味方の大型戦車が肉薄している。


何度も砲撃を行い、脚や砲塔が吹き飛んでいる。


戦艦の外部スピーカーから指示が出る。


「白兵開始!! 戦車に随伴するように後方から援護に入れ!! はぐれたヤツを中心に狙え!! 白兵開始」


戦車隊は小型種掃討戦に突入していた。


白兵隊は戦車隊や味方艦の爆発に巻き込まれた瀕死の小型種に駆け寄る。


小型とはいえ実際に人と並ぶと軽自動車程の大きさに見える。


泥臭い戦いが展開されている。


囲んで叩く、正確には一定距離から重火器をぶち込む。


蟻が獲物に群がるように兵士達は戦う。


そうこうしているうちに味方戦車は弾切れになり体当たりを始めた。


体当たりをしたり、踏み潰しをしている。


カメラは変わり。戦車同士で大型種を間に挟み動きを拘束していた。乗員が上部ハッチから逃げ出している。


彼等は大型種に銃撃を加えながら逃走している。


その後ろでは大型多脚戦車が小型種を脚で蹴散らし、下に回りこんだ数匹の小型種に乗上げて戦車の腹で押しつぶしている。


カメラが変わり敵艦を映している。


敵艦は銃座だけ動き、樹木の発光する線が色を薄めていく。


機動性のある足の速い無限軌道の戦車にRPGや爆薬を詰め込んでいる一段が居る。走りながら物を受け渡している。


赤いモヒカン頭の男が戦車の上で陣頭指揮を取っている。




敵艦の生残った副砲が火を噴く。


戦艦の艦橋に直撃する。


爆発と衝撃と轟音、艦橋構造物が小破した。戦艦の他にも戦闘音はあちらこちらで起こり爆発も連続して発生する。


数人が艦橋の破壊にに気が付く。無残に艦橋周辺が吹き飛んでいる事に気がつく。


略式敬礼をし戦闘に戻る。


崩壊した艦橋上部構造物の破片に戦車郡が飲み込まれる。




俺は頬を伝う熱いものに気がつく、最初はなんだか分からなかったがしばらくして涙が流れている事を理解した。




先ほどの赤いモヒカンの戦車だ。準備が終わったのか詰込作業を行っていた幾つかの戦車の連中が離れる。


モヒカン男は運転手を引き揚げ横付けにした最後の戦車に飛び乗らせる。運転席にモヒカン男が飛び乗る。


派手な顔を持つ戦車は後部から黒煙を吐き、加速して敵艦の腹に向けて走り出した、一直線に爆走している。


しばらく小型種や大型種の残骸を器用に避けて走り、穴に十分に近づくと赤いモヒカンの男は戦車から飛び降りた。


男は激しく転がっているがそのうち止まった。


頭を抱えて横たわっている。


男が乗っていた戦車は吸い込まれるように敵艦下側の大穴の奥深くに走りこんでいく。


敵艦の腹に突撃した。


時間がゆっくりと流れている。


閃光が起きた。大穴から大量の火炎と黒煙が噴出している。


大きな爆発が何度も起こる。それと同時に小さな爆発が艦の中心から広がっている。


ほぼ同時に敵艦の砲塔郡が吹き飛ぶ、今までで一番激しい巨大な爆発が起こる。


閃光が収まり、少し立ってから黒煙が薄くなる。


敵艦は爆発によって二つに分離している。 破壊された構造に広がっている樹木の光が消えてゆく。


銃座の射撃もゆっくりと止まっていく。


その敵艦の後方にいた最後の大型種が爆発する。


味方の動いている戦車は少ない。


副長が指揮車の屋根から指揮している。


声が拾われ音が出て来る。


「敵の残りを叩け、終わりは見えた。ここから死んだやつは俺が殺す。いいな!!」


『フーヤー!!』


「声が小さい!!」


『フーヤー!!』


長い時間がたつ、そのうち兵士達は動きを止めた。


副長が勝どきをあげた。


最初はまばらだった。しかしそのうち多くの者が同調して大音響となった。


彼等は勝利した。


ある者は銃と銃をぶつか合い、ある者は激しいハイタッチ。ある者は激しく抱きしめあう


ある者は座り込み呆然としている。


それぞれ思い思いの喜び方をしている。


戦闘は終了した。


そして軽快な曲が静かにフォードアウトして終わっていった。




境内では彼らの雄叫びが始まるとしばらく静かにしていた。


そのうち人々は歓声を上げた。


そこらじゅうで大騒ぎしている。


境内で色々なものが飛び交う。


大体は帽子などである。


画面の中と同じようなハイタッチをしているものもいる。




映像は消えた。


「ライブ中継は以上を持って終了します。明日の午前八時から6時の間で投票を行います。不在者はこれから3日間受け付けます」


耳が五月蝿く聞こえ辛い。くぐもって聞こえる。


しばらくして人々は落ち着きを取り戻した。


俺はアミに引っ張られる。


「ひとの流れが出きる。少し境内の端っこに行こう。 ムサシ目が赤いけど大丈夫?」


アミが俺の目を覗き込んでいる。


「さっき、目にゴミが入ってな……」


「そうだね、凄かったね」


アミは優しい言い方だ、彼女が俺を気遣っていることが分かる。


周りの喧騒は耳鳴りがしてほとんど聞こえなかったが、その声だけは何故か聞こえた。


とても優しく……慈悲深く……心地よかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ