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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第1章 ながされて歩行軍艦
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第7話 神社とは

市長舎前広場に着いた。


アミが色々と建物の役割を教えてくれる


「土曜日の朝早くからバザーとかやってるね」


どうやら週間の概念があるらしい。慣れた文化にほっとする。


「休みの日とかあるのかい?」


「普通は土日だね。防衛関係とか輸送とか警察消防救急とかは3交代制だね、余裕があるトコは4交代制。外に出たら休みなんて素敵なものは存在しなくなる」


「外は過酷なんだな」


「ちょっと言い方を失敗しちゃった。正しく言うと安全な所ではきちんと休むよ」


深く息を俺を吐いた。


「そいつはありがたい」


アミはクスクス笑っている。


「そういや、市長はこっちにいないのか?」


俺は市長舎を指差す。


「普段はこっちにいるよ。これはね、特別な問題だったの。ちなみにね、市長事務所は実は正式名称を市長趣味の仕事事務所って言う」


「趣味?」「そう趣味」


「ほっとくと何時までも仕事を続けるの。見かねて市民と市長舎に勤める人たちがね。いい加減休めと無理やり休ませたの」


「ん? 無理やりですか? 何が彼女をそこまで駆り立てるのか?」


「でも、仕事しないと見る見るウチにやつれて、しまいにはゾンビの様に徘徊しだして仕事をせびったそうなの」


「うわぁ……何がそこまで彼女を駆り立てるのだ」


「色々あったらしい、市長もあまり語ってくれないの。すごく軽めの時は失恋したとか言ってた」


「重い時のは想像したくないな」「うん、聞くに聞けなかった」


苦笑いをふたりでする。


そのうち市長舎の側面に出た。


市長舎の影になっていて気がつかなかったが大きな山が見える。神社になっているそうだ。


全周どれくらいだろうか? そんな事を考えながらアミの美味しいもの紹介を聞いている。


門前仲町とでも言うのだろうか? 和風だけでなく色々な国の形式がゴチャ付いている。


中には香ばしい匂いや甘い匂いがあちらこちらからする。


街の住民もあちらこちらにある小さな公園でそれらを食べている。


そのうち開けてきた。鳥居が見える普通の鳥居だ。


この周りは市民の森公園になっていると教えてくれる。


それなりに高い山で長い階段を登る様だ、上を見上げると幾つかある鳥居、階段を中央に左右にある森林帯が見える。


アミは結構階段あるよと少し笑っている。


下を見て頂上を見ない様にして登ると気持ちが楽だよと言う、実際そうしている。


俺も同じようにして階段を昇る。


長い階段が続く。時折、公園の雰囲気やお気に入りスポットについて話すアミの声が応援しているように思えてきた。


最上段に近づく。


「ちょっと振り返ってみようか?」


アミの提案に乗っかる、体は疲れていないが精神的にきている。


何時までも続く階段に心で悪態をつきながら登っていた。


振り返ると町並みが見る。かなり高いところまで来た事を知る。


外壁のところまでかなり距離があり街がかなり大きいことが分かる、その先は荒野が続く。


地平線にはうっすらと雲があり、上空に行くほど青が奇麗になる感じを覚えた。


空と荒野の色合いが奇麗で静かな気持ちになるのを覚える。


アミがこっち見てと言い、俺は振り返った。


階段の途中に少し違う鳥居があることに気がついた。そばには狛犬がいる。


犬の首輪がある部分に違和感を覚える。


犬の頭に対して少し大きい位の車輪の様な物体できていた。首に車輪をはめられた様な変な具合だ。


不思議に思いながらもあと少しだよと言うアミに元気付けられ登りを再開する。


最後の階段を昇りきる頃は下を向いて残り階段を見ないようにしていた。


昇り上がり。顔を上げる。境内が見え神社の正面が見える。


が……神社の上に軍艦があった。


神社の正面入り口に対して船体の横腹を見せるように屋根の上にめり込む様に乗っかっている駆逐艦がいた。


艦の中央辺りに屋根の頂上が来て前部後部側それぞれに屋根が斜めに下がっている。

そして、神社を跨ぐように前部後部から脚が出て艦体を支えている。


山の上に駆逐艦と合体した神社がある。


前の世界で良く見たことがある日本風八幡造りでできた神社と境内である。


境内の端にはお御籤を結ぶ金属製で作られた灰色の柱と紐で作られた結び所が置いてある。


社務所には軍服の様な巫女服を着た人が見える。


「あれは神社仕様の機械人形なんだって、中々可愛いよね」


アミは社務所を向いて俺の腕を引いている。


「祭られパンジャンが奇麗になってる」


神社の横にある小さな祠にあるお狐様が居るような配置に台座に乗った奇妙な物がある。


どうやらそれが祭られパンジャンと言う物らしい。


アミが言うにはもっと薄汚れていたといっている。


それが奇麗になっていたようだ。


俺にはでかい車輪のお化けに見える。


少し眺めてから俺はとりあえず駆逐艦が気になるのでアミに引かれながら駆逐艦をチラチラ見ていた。


アミはパンジャンに飽きたのか神社の方へ進みだした。 


俺は神社の建屋の中が気になったがアミは違う所に顔を向けていた。


「市長が居る、珍しい…おめかししてる」


アミがぼそっと呟いた。


神社の脇にある屋根のある通路から軍服と神主の服を混ぜた装飾を着た女が居た。


良く見れば市長であった。


そこには真面目モード市長がいて、神主か? 後ろから着いてくる巫女達が儀式めいた動きで何かをやってる。


何かを運んでいるようだ。その妙な儀式めいた動きを眺めていた。


アミを見ると静かにとジャスチャーをしている。


祝詞が唱えられる。後ろでは巫女が神主辺りが持って振る白い紙がギザギザに棒の先に着いた例のアレを振るっている。


確か……御幣とか言ったかな? 


アミが俺の肩をつつく、耳を寄せると小さな声で語りかけてくる。


何か重要な事があるとき、都市で重要な事を決めるときとかプラントや自動工場に特別な仕事をさせる時にこの儀式をするとの事だ。


都市の運営上必要な儀式ってなんだろうかと? 疑問が頭をよぎる。


必要品とか出力計画を奉納する儀式をやってる、ついでに駆逐艦の中に関係者用エレベーターがあるとか色々と教えてくれる。


なんかもう、耳がこそばくて幸せになる気がする。


とうとつに邪な気持ちがわき出でる。いかんいかんここは神聖な神社だ!! 駆逐艦様が見てる!!


しばらく儀式を眺めていると中央の箱に持ってきていた小さな箱を収めた。


出てきた所に神主市長と一段が戻っていく。


市長と一瞬、目が合う。しかし何事も無く通り過ぎていった。


儀式が終わって雑談してる。


駆逐艦に軍隊の監視塔、マストの先端に送受信機カメラセンサーがあって兵隊さんが通信室につめてると教えてくれた。


駆逐艦の歩行機能や攻撃機能は無くなっているが通信機能や監視機能は現役な事を教えてくれた。


また駆逐艦はこんな山に登れない。都市施設が初めて稼動して最初の人が目覚めた時すでにこの状態だったらしい。


アミから神社のご神体は火災事故に巻き込まれて残った本だと教えられた。


焼け残った本を保護する樹脂で囲みご神体にしていると……


ちなみに狛犬の名前はネビル様とシュート様と言われとても大切にされているらしい。


祭られパンジャンについて聞くが名前を呼ばれて会話は中断された。





そこには先ほどの格好をした市長が居た。


「やぁやぁ諸君、今朝ぶり」と近づいてきた。


彼女が近づいてくると衣装に気をとられ、気がつかなかった点に意識が向かう。


アイメイクがいつもと違う。


目の外側縁の一部から耳側に少し赤く化粧がされていた。


中華系のお祭りメイクにあるようなやつに似ている。控えめなのでワンポイント的な感じだ。市長の奇麗さに磨きがかかっているように思えた。


「さぁ!! 褒めろ!! 敬え!! 奉れ!!」


そしてくるりと回り、市長は神主服を強調する。


「これいいでしょ!! 滅多に着られないの!! 嬉しくて見せに着ちゃった。アミちゃん一緒に写真撮ろう!!」


気のせいか何時もより無理に明るく振舞っているように思えた。


彼女の動きが服の装飾によって、少しぎこちなかったからそのように思えたのかもしれない。


市長は裾をゴソゴソすると小さな端末を取り出す、少し弄ると俺に渡してきた。


「これね、ここを触ると録画するからちょっと持ってて。時間無いから急いで!!」


急かされるまま撮影を開始した。


アミの手を引いて神社の正面に小走りした。アミは困惑している。


数分撮ると市長が終わりと言い端末を確認している。


「んー!! 良く取れてる、アミちゃん、ムサシありがとねー!! すぐ始まるからここいらに居てね」


そう言うや手をこちらにバタバタと優しく振りながら、後ろ歩きをはじめる。そのうちくるりと回り普通の歩き方になった。


市長はやりたい放題して本殿脇の社務所に早足で消えていった。


アミと俺はお互いに顔を見合わせクスクスと笑いあった。

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