表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第4章 じゃじゃ馬ならし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/71

第58話 その者達、トラブルにつき

 ややこしくも希望に満ちた話題で盛り上がりを見せる中、サラとムサシたちは幾つかの契約の確認を精力的に行っていた。そして合間には久々の憩いの時を楽しんでいた。ムサシが必死こいて書類を見ている横では初対面であるサラとアーニャが妙に馬が合ったのか仲の良い姉妹であるかと思える程の勢いでじゃれていた。


「んもぅ!! アーニャはなんて可愛いのかしら? おねーちゃんメロメロよ!! あぁ、天使だわ。可愛い」


サラにぬいぐるみの様に抱きしめられて、いじられ倒されているた。サラの腕の中でアーニャが半ば諦めの心地で訴えていた。


「サラ、あの!! サラ? そんなに抱きつかれると暑苦しい。もう少しソフトにね。お願い?」


会話からは嫌がるそぶりを見せるが声の調子を考えるにワリと喜んでいる様にも思えた。


「私の時とは違う反応で少し寂しく感じる。もんの凄く可愛いアーニャがいるぅ」その様子を眺めていたナギが微妙にしょんぼりしていた。


「ナギ、あなたねぇ、戦友としてリスペクトもあってベタベタしないようにするって自分で言ってたでしょ。まったく何を考えているのかしら。チームの中では私の次に年長者でしょ、しっかりさないな。残念そうな顔してないで。ほら手が止まってる。契約書を今日中に確認し終えるわよ」


「え~、サラが組んでくれたプランでいいじゃない? これ完璧よ? 」


「それはそうだけど。こういうのは自分でも確認して理解しなければならない。だいたいアナタのオファーが多いのが原因じゃない? ファッションに関する事は自分の好みも出てくるから自分で確認なさい。はいこれ、追加の資料 」


「グヌヌヌ」


ナギとクリスがなんだか、やかましかった。


ナギの憤りは腹いせついでにムサシに向かう。適当にお菓子の包み紙を丸めムサシに軽く投げつける。


「さてと。起きろぃ!! ムサシ? 」


投射物は綺麗な放物線を描きムサシにぶつかる。


「んぁ? 」


「ほれ、起きろぅ。それで、コーヒー飲んで。頭がシャッキとしたらコレね。私たちが見終わったやつを最終チェックする。いいね」


「へぃ!!」


ムサシは少しばかりの居眠りをしてしまっていた。だが程よい眠りの効果で頭がすっきりとしていた。


ムサシは準備が整うとひたすら書類やデータを確認していった。仲間が資料をまとめてくれていたので確認は捗った。数時間後、作業をして疲れきったムサシの目はシパシパしだして限界を迎えつつあった。


それでも仲間の励ましもあり確認を続けた。再び睡魔が襲い始めた頃にはムサシの担当パートは終えることができた。仲間たちは自分たちの分の確認に集中していた。


ムサシは仲間に悪いと思うがソファーに項垂れて作業が終了した達成感の余韻に浸っていた。そして、普段は煩くも思える女たちの話し声を心地よいと思える程の境地に至り、誘われる睡魔に意識を委ねるムサシであった。


そんなムサシをよそに女たちの話題は弾み艶を帯びて行き盛り上がっていった。


「うはぁ、まだ沢山残ってるぅ。ナギへのオファー凄い多いよ。金髪モデルの需要って凄いのね」


オファーを見るとやたらセクシー路線が多い、洋物のエッチな雑誌を連想させる感じのデザインが多くそこには写されていた。アミはその資料を見比べながらナギに話しかけていた。


「これなんかナギに似合うんじゃない? 」


「アタシ、もう少しミリタリーファッション系って言うのかな? どっちかって言うとストリート的な奴がいいんだけどね。あっこっちの車のヤツいいな。もっと戦車とか装甲車とかセットのCMなら多少のセクシー路線も我慢するけどさぁ~ぁ?」


「どうしてもナギは男の視線集めるよねぇ。ナギの知らない所で訓練生に注意してたくらいだからね。よそ見するなって。見られて凄かったよ。ナギはさ? ファンティアの頃からラフな格好で街うろついて視線集めてたでしょ」


「ん~ん? 慣れちゃったよ。それに減るもんでもないし。車の整備でいつもツナギでいるわけよ。休憩なんかやジャンクヤードに部品漁りに行く時なんかさ、いちいち着替えてられないからね。車をいじってればどうせ汚れるわけだし? ツナギのままで歩いたりしてさ。それだと暑いじゃない? 上のツナギを脱いで腕の所をこう、腰に結んでさ。タンクトップになるじゃない?」


ジェスチャーを加え身振り手振りでナギは説明を続ける。


「そしたら事務のオバちゃんたちによく怒られたよ。身だしなみしっかりしろって。でもそのオバちゃんたちに機械の調子が悪いからってさ、その場で修理と機械の具合を見るわけよ。そしたらやっぱり汚れるわけさ。そのうちにいいじゃないどんな格好してたってなってさ。でもね、一応お昼休みの時とかの機械は触らないぞっ!! ての外出時なんかはパーカーとか体のラインが隠れるやつをちゃんと着てたんだよぅ?」


「あんな微妙に隠れるラインがチラリズム全開なパーカーなんて余計に問題よ。だいたいアナタはねぇ」


クリスのツッコミにいつものが来たとばかりに構えるナギであった。


「おっとぉ? その件に関しての説教なら聞かないぞぅ? だいたい格好のことはクリスだって問題あるでしょーよ」


「私は問題ないでしょ? 研究所から出ないもの。白衣着ているからな」


「白衣の何が悪いの? 私は研究所所属なのだから当然の格好よ?」


「白衣の下が問題よ。やたらパンクな格好するじゃない? ロックな感じとかバンドのシャツとか。所内で色々言われてたんだよ? 」


「好きに言わせておけば良い。所内の規定では問題はないと確認している」


「白衣にビリビリのちびシャツとかホットパンツとかどうなのよ?」


「あれはいいのよ。気が乗らない研究の時とかに勢いつくから必要なのよ。それに外出時はきちんとした格好をしてたわよ。だから問題ないの」


「そんなもんかい」


「そうよ」


呆れ顔のナギがクリスに言いくるめられている。何か逆襲するネタを見つけたのかナギがクリスにしたり顔で仕掛けようとしていた


「情熱的なセクシーなヤツ。もっと綺麗めなやつが似合うと思うんだけどな、ホラこんなのとか…」


軍服を連想させる凛としたスーツや洋物ドラマで出てくる秘書スタイルの資料をナギは取り出しては次々にクリスに突きつけていた。


だが、そのいずれもセクシー路線がチラホラと伺えるどこか扇情的なデザインであった。


その煩さに目覚めたムサシはなんとなく目を瞑りながら会話に意識を向かせた。その中にセクシーと言う惹かれる単語が聞こえたのでムサシはうっすら目を明けて様子を伺うことにした。


なぜなら、男の自分が入ってはいけない気がなぜかしていたからである。そっと見てみると江戸時代辺りの花魁の格好をベースとした活動的な警備服を着たモデルに喧嘩キセルを持たせ優雅に勇ましく写る資料が見えた。


ムサシはその資料があるアミの手元に意識を集中させた。


「これカッコいいな。どこの文化圏のやつかな? 」


「アミぃ、それは日本の花魁だな。だがそれは駄目だ、絶対駄目だ。オファー元の吉海花魁警備保障はしっかりした所だが…駄目なんだ。あの頭の飾りが受け付けないんだ。これ邪魔だろう?」


「そこが理由なの?」


「あんな重りつけてたら動きにくいし。ガチャガチャ動いて繊細なセンサーに支障が出るだろ? 色味も派手過ぎて鬱陶しいしな……」


「それはそうだけど…えっ? じゃぁ、服に関しては問題ないんだ」


「着物か? 着付けに手間取りそうだが綺麗だと思う。私は結構好きだぞ。もう少しラフに着れる物なら部屋着として使ってもよいかなぐらいには思う?」


クリスの言う格好を想像してしまいムサシが戸惑って僅かに物音を立てた。


窓際に艶かしくもたれかけるアンニュイな、そして色艶のある光景を想像していて姿勢をくずしてしまったのである。その様子にアミが気が付いた。アミはなにか形容しがたい胸の内を蠢く感覚をムサシに抱いた。だがそれに関して特に気にかけるものでも無いと判断してナギとの会話を楽しんだ。


「いいなぁ~オファーが沢山来てて。あたしの訓練の時は私自身がちんちくりんな上に同期に美人さんが多かったからさ。モデル系の依頼が来なくてさぁ。少し寂しかった記憶があるよ。でもそのおかげで硬派な武装メーカーなんかと知り合えたりしたんだけどね」


「アミを発掘できなかったとは。マヌケが奴がいたもんだな。美少女モデルで大ヒット間違いなしでしょぉ」


「しかたないよ。その頃のアタシ装備マニアみたいなもんでさ。センサーとかテンコ盛りのゴテゴテ盛りの頭装備に身体能力アップ用のガチガチアーマーを使ってたから。見た目は完全にちっちゃいメカゴリラよ」


「顔とかも装備で隠れてたの?」


「顔全体を覆う鉄面スタイルの奴かな。目の所は透明なヤツだけど。殆ど隠れてたね。でもね性能は凄いんだ。網膜投影型の拡張現実タイプの奴。アタシ、その頃はセンスも悪くて自分の能力を使いこなせなくてさ。機械で補ってたんだ。だからさー、見た目はちっこいサイボーグよ」


「アミにそんな頃があったなんて……」


「お師匠のおかげさまで機械に頼ることも無くなるくらいに強いハンターになれたんだよ」


アミの話を興味深く仲間たちは聞いていた。


「でもさ普段はラフな格好でいたんだろ? なら……」


「その頃は無駄に気を張ってね。普段も重装備でいたの。そう言う格好が流行の時期でもあったってのもあるけどね。皆もたまに見かけたでしょ? サイバーサムライさんたち。あの人たちが来たばかりの頃がね。皆ね、サイバーサムライに負けまいと見た目を厳つくして見た目勝負みたいなのをしてたのよ。治安が悪い時期でもあってね、厳つい格好をしてればトラブルから身を守れるとか重装備でセンサーと意識を張ってれば怖くないとかなんてね。今思うとマヌケな話なんだけどね。当時はなぜだか流行ったのよ」


「そう言う時期があったのか……」


「シルバー侍たちは別にトラブル起そうってのはなかったんだけど。行き違いが多くてね。よくトラブっていたのよ。今はお互いの文化を尊重して上手くやってるけどさ」


「うむ、相互理解は大切だ。相手の歴史と文化を知り尊重する。そうすれば物事はたいてい上手く収まるからな」


アミとクリスが何やらお互い苦労したよ言わんばかりな視線を交わして頷き合っていた。


アミとクリスの会話にナギが唐突に絡む。


「いよおし。終わった」


どうやらナギは資料の確認が終わったらしい。


ナギが微かなうめき声で何やら言葉にならない文句を言っていた。そして気が済むとソファーでひっくり返っていた。


「確認は終わったようだね、サンキュー、お疲れ様。ナギ」


アミはそう言ってナギの資料を整理していた。


その様子を寝そべって眺めていたナギは動かないムサシを悪戯を仕掛ける子供の様な目で見つめる


「あっれ? まーたムサシ寝てるよ」


ナギがムサシの様子を指摘するとアミがノールックで動く。


「ほれ、起きろー、まだ終わってないぞ? 」


アミは寝こけていたムサシにちょっかいを出した。またもや丸めたゴミをぶつけられるムサシである。


「寝てないよう!! 」急に名前を呼ばれ驚くムサシであった。だがその投げられた物体に当たり、なんともマヌケな顔を晒していた。


そんな、ソファーで横になりまどろんでいたムサシはアミの問いかけにしどろもどろに答える。


「こういうのもさ、今度はチームリーダーとしてムサシにもしっかり対応してもらうからな? 」そう言うとナギが小冊子ヒラヒラさせていた。そこにはランジェリー姿のモデルが艶やかに映える写真があった。ムサシの目はそれを見逃さなかった。


「頼むよーリーダーさん」


アミが上目使いでニヤニヤしながら語りかけてくる。


ムサシは戸惑いながらもすぐに腹をくくった。


「俺が選ぶの? よっしゃ選びましょうとも! 」


「冗談よ。バカ」


「まっ今回は居眠り見逃してやろぅ。そもそも寝てても問題なかったんだよ。ムサシ、だってさっきまではあたしたちが着るファッション関係の確認だったからね。実はムサシが寝落ちしたタイミングで大事なことは終わってたんだ」


「なんだよ、それならそうと言ってくれよ。そっか安心したよ」


ムサシが言うと皆はクスクス笑っていた。


「さてさて、確認は終わりだな。そういえば連絡が来てたよ。祝賀会は明日の夕方からやるそうだよ」


「あれ? なぁアミ、なんか日程が伸びそうとか言ってなかった? 」アミの唐突な話題の変化に疑問を持つムサシであった。事前に言われていたスケジュールと少し違っていたからだ。


「訓練生のメディチェックで長引きそうだった人が良い感じに回復したみたいだし。関係者の予定も詰まってたことなので急遽、決定しました」


「関係者?」


「アタシ、教官の仕事してた。そして自分で言うのもアレだけど腕利きハンターさん…OK? まぁ、アタシの都合ってだけじゃないんだけどね」


「他の訓練生の世話でもするのか?」


「それは他の担当の人がしっかりやってる。イサム教官辺りはもう少し処理が続くと思うけどね」


「んー? それじゃ犬たちへの挨拶か? 」


「それはあなたたちがしたいんでしょ。あのね。あなたたちと街で買い物するって話してだでしょ。それに色々仕事の引継ぎとかもあるのよ、時間作るの大変だったのよ」


「訓練終わったと思ってたけど色々と仕事が残ってるんだな」


「まーねー。殆ど終わってるけどね」


「そっか、大変なんだな」


「まぁ、それもそうなんだけどさ。そんな事より。犬たちにキチンと挨拶しておきなさいよ。いっぱい世話になったんだからね。今夜が最後だから犬たちと一緒に寝なさい。それでお世話になった分しっかり撫で回して感謝するのよ」


「そうか……最後か……」


「寂しくなる」


ムサシたちは急に元気をなくした。


元訓練生たちは皆この洗礼を受ける。犬たちとの別れ。動物たちによるアニマルセラピー。そのリラックス効果は訓練生たちを精神的に支えてくれた。そしてこの別れの辛さも戦士となる為の通過儀式でもあった。


「連れて行っちゃ駄目?」


アーニャが呟く。


「それはできない。規則なの。ごめんね。特例も無いワケではないけど。今回は無理かな。アーニャ…耐えるのよ」


「悲しい、寂しいけど…戦士になる為に我慢する」


「うん」


アーニャは強い決意の目をしていた。


「さて、話がそれちゃったけどさ。私がね、忙しい理由はね。誘われてた他のハンターさんたちにご挨拶とかある訳なんですよ。しがらみが色々とあるの。既に色々な所から誘われてたのさ。お誘いを袖にした事を根に持つ人はいないだろうけど。ハンター仁義的なものとかね。そう言うのがあるわけよ。挨拶回りしなきゃならんのですよ。でもでもね。一番楽しみにしてるのが皆との約束だよ。お買い物するって言ったでしょ。忘れるわけ無いよね? 無理して時間作ったんだから。だからね、楽しむぞ?」


アミはそう言うと皆を見渡す。それを聞いていたサラはふくれっ面を作り抗議した。


「私は仕事なのに? みんなぁでぇ? 遊びに行くのぉ? えぇー!! わーたーしーもー行きたぃー!!」


サラさんおかんむりであった。ジタバタして訴えている。


「あなたが自分で無理に仕事を入れちゃうからでしょ? 完全休暇で来てれば良かったのに。この仕事ジャンキーめ」


クリスが擁護せず、ドストレートに言い放つ。


「さすがに優しい言葉かけられないわ。土産物ぐらい買っといてあげるからさ。我慢しぃ」


「ナギのお土産センス悪いんだもの。また変な戦車の模型とか送ってくるつもりでしょ?」


「へっへっ。バレたか」「んもぅ。せめて可愛いのにして」


大人組のサラ、ナギ、クリスの三人は童心に返った様なハシャギ振りで会話を楽しんでいた。


「厳しい訓練だったでしょ。明日は楽しまないとね」


アミが慈愛に満ちた眼差しを送る。


それもそのはずである。ナギなんかこれを心の支えにして訓練を頑張ってた。明日の楽しみを我慢しきれずに彼女は今にも泣きそうな顔で握りこぶしを作って全身全霊の決めポーズで喜びを表現していた。


クリスはそんなナギを受験に合格した子供と一緒に感動を分ち合う親御さんの様にナギをなだめていた。ちなみにアーニャはサラに膝枕されていて既に眠りの淵へと落ちつつあった。サラはアーニャを撫で満面の笑みと不満の顔が交互にしている。よっぽど行きたかったらしい。


「いいわよぉー!! 明日はめちゃくちゃ仕事してやる!! それでストレス発散してやるわ! 」


「と、サラは申しており、反省の色は無い模様。それじゃ、オチもついたし。いい時間になったと言う事で明日に備えて寝るとしますか」


深夜にまで続いたお茶会は明日への期待を胸に幕を閉じた。




翌朝、タップリと睡眠を取り目覚めた感覚で起きた。しかし、体が慣らされていたのか早朝に起きてしまった。最初に聞いた声は一緒に寝ていたアニマルセラピーの犬たちであった。ボンベイには犬たちの多さに呆れられて少し困っていた。そんな事をしながら朝支度を終えた。


体内バイタルセンサーで起床した事を知ったアミから連絡が来ていた事に気が付く。本日の予定を確認して準備を行った。スケジュールに関してはボンベイがデータ処理をしてくれた。割と便利な奴だなと感心する。


軽く朝食を済まし荷物をまとめた後に、世話になった犬たちとの別れを惜しんでタップリと犬たちを撫で回した。


感謝してもしきれない世話になった犬たちに礼を尽くして別れの儀式とした。遠吠えと共に部屋から送り出される。


アミに指定されていた時間にロビーに向かう。


「それでは訓練センターはこれで終わりになります。忘れ物はないね」


「新たに増えた荷物はお土産に貰った武装ぐらいだ。荷物も少ないから忘れ物なんかしないさ。ちゃんと指差しで確認したさ」


「よしよし、戦士としての躾もしっかり守られているようだね」


アミと雑談していると他の仲間たちが集まってきた。


全員揃うと軍用車に荷物を乗せて開拓街に向かった。


来た時と違って道が広くなっているように思えた。その事を聞いてみると変っていないとのことであった。そんな不思議な感覚に囚われているとトンネルを掘った戦艦が森の隙間から見えてきた。


「なぁ、あの軍艦ってさ、まだ生きているんだっけ?」


「開拓街の出入り口を見張る基地としてって事なら生きていると言ってもいいね。でもメインリアクターが死んでて動けないどね」


「そうなのかぁ。動くトコ見てみたかったけどなぁ」


「山にトンネル作って、山谷を削って開拓街のベースを作って、最後に敵性体からの防衛戦闘で大破しちゃってね。あの艦は大活躍の働き者だよ。それでもさ、いまだにサブリアクター動かして、健気に頑張って門番としてさ、街を守ってるんだもの。偉いよね、凄いよね」


「動けないけれど武装は生きているから拠点として残ってるってワケか」


開拓街への唯一の通路となる谷間を守る軍艦を眺めていると当時の雄姿が浮かび上がるようであった。


そんな艦が守る街を眺めた。山の切り崩した空間には両側に階段状の街を抱き、中央には列車を覆うように構造物があった。全体的に駅に付属する列車を中心線とした左右に広がる駅ビル街という感じの印象を受ける。


列車の上にある構造体を移動しながら圧迫感もあるどこか懐かしさを覚える雑居ビル群に囲まれ、流れる街の風景を楽しむ。


「そぅそぅ。ムサシ、今日の祝賀会に着て行く服のイメージってできてる? 他のみんなはムサシが書類を必死こいて確認していた時にイメージ作ってたんだよ」


「なんだそれ? この格好じゃ駄目なのか? 」


「あれ? ムサシ、今朝の連絡メールに書いといたんだけど? 見てない? 別にそのままでも良いんだけど。お披露目会も兼ねてるからオメカシする人多いんだ。そうだね。祝賀会に行く前に着合わせるよ」


「お任せします。そう言うのあまり得意じゃないんだ」


「女性陣はそれぞれオファーがあった所から衣装や装備が用意されてるから、大体のイメージはできてるよ。サラが気合を入れて選んでると思うから問題ないと思うけどね。あの人、人の服を選ぶときはセンスいいのよ」「さよけ」


「そういや、昨日、俺が必死で契約書読んでる間にキャッキャと騒ぎながら衣装の話してたな」


「ムサシが難しい顔してる所、悪いとは思ったんだけど盛り上がっちゃってね。賭けに勝った分の資金もあるし奮発したんだ。期待していいと思うよ」


「そうなのか? 」


「と言ってる間に到着しましたよ。さぁさぁ、おめかしのお時間だ」


中に入るとやたら興奮したサラが待ち構えていた。


契約した広告主であるスポンサー各社の担当に取り囲まれ。紹介を受けた後にそれぞれ装備を整えることとなった。


ムサシはミリタリーウェア、歩兵装備の一般的なタイプが用意されていた。


だが女性陣には各種スポンサーが付いて様々な衣装ガ用意されていた。サラのチョイスにより幾つかの趣向にまとめられ用意されていた。それを楽しみながら彼女等はフッティングを行っていた。


アミは白色主体のさながら女子高生とも見える服をベースに軍用プロテクターとタクティカルベスト等のミリタリーアクセサリを使用した可愛らしくも無骨な戦闘仕様に仕立て上げられていた。


ナギの格好はへそ出しワークスタイルの安全とセクシーが融合したエンジニア風の装いをベースとして、シンプルな金属棒が目立つアシスト外装骨格を装備していた。腰から脚の外骨格は身体側面の一部分を沿うように細いフレームが存在しており、脊柱が存在するフレームに接続していた。


背部中心にある接続部にアタッチメント交換によって様々な状況に対応できる第三の整備用の無骨な多関節腕が存在した。装甲は無く不恰好ではあったが機能性を重視している事がデザインから読み取れた。


クリスはライダースーツと思える衣装にフード付きマントを装備していた。

マットな加工を施した黒を基調とした光の反射を抑える複雑な織りで作られた身体ラインが綺麗に出るレザースーツの様なデザインが艶かしく見えた。独特な模様を見せる灰色のマントは熱、電磁、光学に干渉するメタマテリアル素材に表面が形状変化可能な機構が施されている。


これらは周囲の状況を外套表面に出現させるステルス機能の塊であった。マントに隠された身体には所々に装着型各種複合センサーを装備していた。外観は野暮ったいが中身はデジタル機器がアクセントとなる総合的にスマートな印象を与える格好であった。


アーニャは機動性の高い軽装の鎧といったデザインに思えた。それはアーニャお気に入りの爆発推進システムを備えていた。関節部や身体の重要箇所を防御するプロテクターがあり、アーニャの肩口から首元を大きくガードする襟状のプロテクターが小さいアーニャを重厚な印象を与えていた。


その鎧にはプロテクターや薄い装甲の隙間から外骨格機構が内蔵されている様子が見えた。全身に小さな噴射機構の突起物があり、その可動式ノズルが小さな突起物ではあるが全体的に丸みを帯びた少々ゴツイ印象を与えるデザインであった。背中には大きな金属製のバックパックがあり、どこかで見たアニメのロボットを想像させた。

驚かされたのが衝撃吸収関連のオーバーテクノロジーだった。


アーニャに惚れ込んだ広告主が少しでも安全性を求め特別な装置を提供してくれた。それはオーバーテクノロジーによって産み出される空間粒子によるエアバック効果を狙った衝撃吸収装置が組み込まれているとの説明を担当者から受けた。が、内容はムサシやアーニャにはさっぱり理解できなかった。


最終的に緊急時に自動で噴出され衝突事故等の衝撃を防ぐ事を理解してくれれば良いと投げやりに説明された。例の如く原理は不明だが運用面と効果は理解した。ムサシたちはそうしなければいけなかった。なぜならばすぐ横でクリスが説明したそうにウズウズしていたからだ。クリスを除く全員はややこしいのは前日に散々やったので今日は勘弁してくれという気持ちであったからだ。


それぞれ、それなりの装備であるが頭装備は身に付けていなかった。チームには広告塔であるために顔を見せるために頭部をある程度露出しなければならない契約であったからだ。危険を鑑みて特に顔面をガードするオーバーテクノロジーによる防御装置がある。これにより安全はある程度の保障がされていた。


もっとも、ムサシたちはそれぞれ勘が鈍るやらセンサーと干渉するやら理由をつけて頭には装備をあまりつけない傾向があった。せいぜい砂塵を防ぐためのゴーグルやセンサー複合装備などをつけるぐらいなのでこの契約はあまり問題にはならなかった。


そして、いずれの者もムサシとアーニャのギフトにより産み出された新型のグラップリングアンカー2機を装備し、立体移動が可能なセットアップとしていた。


装備を身に付けるとスポンサーの確認を行い問題がなければ幾つかのポーズを取らされ写真や映像を撮られっていた。


おそらくコレが広告の仕事なのであろう。だが、その作業は数十分で終わってしまった。最後にムサシを含めチーム全員プラスサラとの集合写真を撮る。これはサラの要望であったらしい。


そして、スポンサー会社の各担当とサラたちにに見送られ、ムサシたちは新たな装備を身に着け新鮮な気持ちで待ちに待ったショッピングに出かけた。




街はVR訓練で使ったシステムを利用した闘技祭で異常とも言える熱気で包まれていた。そしてどこにでも闘技祭の映像が流れ人々を楽しませていた。


巨大列車の駅舎の上にある構造物を中心に山をくり抜いた谷間にある街に到着する。谷間を埋め尽くすように建物があり、左右からの圧迫感が独特な雰囲気を与えていた。闘技祭のイベント会場となった街は大きく二つのエリアに分かれていた。


平時は飲食店等がある落ち着いた通りであったエリアはイベント時は様々な屋台や移動店舗が並ぶ娯楽エリアとなっていた。普段は大きな広場や駐機場となっているエリアがロボットや車や人型装備の兵器見本市といった様相の会場となり、あちらこちらで商談が行われるビジネスエリアとなっていた。


街は闘技祭で人が集まり普段よりも賑やかな喧騒を奏でていた。


娯楽エリアは大きめの車道がありイベントの為に屋台が所狭しと並び、元々ある飲食店等では店先にテーブルなどを並べお互いに商売を競い合っていた。屋台では飲食品以外にも開拓街特産の敵性体から得られる生体パーツや機械部品などの剥ぎ取り品の土産品や生活品が売られていた。装飾品というよりは生活に密着した道具類が多く置かれていた。


訓練試験が公開され人気者になり囲まれサインをねだられる有名人的な扱いをされるかもと警戒していたムサシではあったがそんな事はなかったメインは別にあったから。ムサシたちではなく有名ハンター等が戦うメインイベントがあったからだ。


ムサシたちの人気はたまに買い食いした屋台の親父に応援していたとよ声をかけられ、オマケをしてくれるぐらいであった。


人知れずにこっそり天狗になっていたムサシには少し残念ではあったが、仲間たちに広告の仕事が入って有名になったらこんなこともできなくなるかもしれないな等とまた無駄に呑気な想像をしていた。


祭りの雰囲気に呑まれ、浮かれ気分で仲間たちと楽しんでいるムサシであった。


しかし、娯楽エリアまでは良かった。ビジネスゾーンに入る頃には仲間たちの雰囲気が少しつづ変化を見せた。


目つきが変化し、獲物を探す物欲ハンターとなっていた。


平時ではおおよそ常識人の仲間たちだった。だがしかし、ムサシは気を許した仲間たちではあったが彼女らの異常な趣味趣向を完全に理解してはいなかった。


その彼女たちの琴線に触れる事柄や商品に関しては恐るべきトラブルが。


それは訓練で散々溜め込んだストレスが原因な一過性のモノであるのか、彼女たちの見せていなかった本性なのかはわからないが彼女たちは次から次に興味を持った店を渡り歩き、行く先々で彼女らの起すトラブルに見舞われた。


なかでも一番酷かったのは意外にも普段はストッパー役の多いクリスであった。


彼女は店に置いてある古美術品を巡ってトラブルを起した。正しく言うと違法な商いをしている店主と商品の取り扱いで特に揉めた。


文化的遺産となる本や、データメディア、貴重品などは、売買前に先んじて都市の研究施設に調査を依頼すべきだと取り決めがあった。


その事を彼女が主張する。しかし、店主は様々な後ろめたい事情やいわくつきの案件で入手した商品をさっさと手放したかったり、売買チャンスを逃す事を恐れ、ハンター組合等の発掘品売買手続きを誤魔化したりする傾向があった。そこで揉めたのだ。


一番厳しい都市の発掘委員会でも音楽メディア等は甘く処理するのであるがクリスはそれを許さなかった。彼女の音楽に対する執着は何よりも強かったからだ。ぞんざいな扱いをしている店主を見つけては怒鳴りつけ説教を行い、直ちに管理部署を呼びつけ対応を迫った。それに気がついた商店は街からはそういったトラブルになる商品を根こそぎ隠してしまう始末となった。


その浅はかな対応が逆鱗に触れたのかクリスの能力をフル活用して片っ端から近隣の店舗に迷惑をかけまくり、そのうち軍警察が出てくるほどの事件となった。アミの顔の広さで何とかお咎めを逃れることができた。それでもしばらくクリスのお怒りは収まらなかった。最終的にお気に入りのパンクロックの音源を発見することで機嫌を戻すことできた。


この事でムサシは精神をかなり疲弊した。


ムサシは無慈悲に襲われる身内の起こすトラブルを収めた。そしてその精神的な代償として自分を慰める為の御褒美として、とある機械をついでに買った。それは多少機能が失われているジャンク品であるが幼児教育用だが高性能な携帯型歩行軍艦設計システムとして使える代物であった。


少し触ってみて、いろんな第二次世界大戦頃の軍艦のデータを元にした歩行艦たちの雄姿を拝めることができた。また、簡単な設計変更も可能だった。理想の歩行艦が設計できると思うと、なにか天啓めいた電撃がムサシに走った。これは良いものだと。


ムサシは全てのトラブルを処理し終えた時、この艦船設計システムを心の支えとして辛い時も懸命に生きていこうと心に決めたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ