第45話 大自然でサバイバル
最終試験 第1部終了後、俺たちはVR準備ルームにて試験担当AIから説明を受けていた。
「プライバシー保護の為に第1部ゴール後の記録はデリートされました。また放映前の削除になりますのでご安心ください。あなた方の名誉は守られます。AIの性能生命にかけてお約束致します」
試験AIから注意事項を丁寧に噛み砕いて説明されている。
惨劇の映像は保管されない。参加者にとって不都合な事は記録されずプライバシーは保護される。トイレ事情とか当たり前にプライバシー保護されるべき部分は自動で処理され、雑談もある程度保護されているとのことであった。
プライバシー保護が必要な場合はインターフェイス通信で設定ができる。
そんな内容を聞いた。ちなみにこの空間に来た段階で怪我や不調などが消え正常な状態にされるようだ。当然、惨劇の被害も無かったことになっている。早い話が試験ごとに状況がリセットされる。
説明が終わると皆の様子が目に入りはじめる。ものすっごい落ち込んでいるクリスが目の前にいる。惨劇のことを気にしているようだったので俺から気にしなくていいなどと声をかけた。
我ながらもっと他に言い方があったろうにと思うが、その時はそれぐらいしか言葉が出てこなかった。
クリスは俺の目を一瞬、見つめてから謝られた。ナギにはめちゃくちゃ激しく謝られた。両人とも誠意はとても良く伝わってくる感じであった。
彼女たちの尊厳を守るべく謝罪をもって、この件にはケリをつけようと思っていた。するとアーニャから慰めの言葉があった。
急ぎの撤退中に体調が優れない状態で散々揺らされて、最後には爆風で激しく回転させられた。これでは仕方がないと私でもきっとああなるとアーニャは優しく彼女等に伝えた。
アーニャはナギにもフォローをした。
アレを貰ってしまうことはよくある。私の下の家族もよく連鎖を起こしていた。私がよく片付けていたよ。ナギには悪いけど、ちょっと懐かしく思ったと、慰めのような、よくわからない優しさを見せていた。
俺に対するフォローはなかったが。まず先に女性陣の心のケアをしていたのは正しいことであったと思う。アーニャいい子、気遣いのできる子である。
俺たちは仕方がない悲しい事故であり、この件は謝罪をもって不問とする事にして収集をつけた。最後に次に備えて頑張ろうとありきたりな励ましにもならない言葉を送り、それぞれに気持ちの整理をした。
ちなみに第1部の順位はドンケツであった。
「アンカーマンのチームとして幸先がイイ、なんせアンカーからのスタートだ。気合が入るぜ!! 行くぜ皆、オー!!」
「「おー? 」」
そうして、締りのない感じに第2部が始まった。
[DAY1]
第2部は遭難からのサバイバルといった内容でロケーションは森林地方、開拓街からかなり離れているが同じ地域帯であった。
試験が開始されてVR空間に飛ばされてから俺とナギで現状をひたすら愚痴っていた。
「遺跡に向かう途中に事故に遭遇。俺たちは下船中だったので辛うじて脱出できたが探索資材は歩行駆逐艦もろとも崖から湖に落下、炎上して爆発四散。残骸はコレまった都合悪く深いであろう湖に飲まれて消滅。艦の生存者無しで救援信号も出せずに森の中に放り出されたと」
「ついでに街までは数100キロ離れてて、極秘情報の探索なので辺りに他の探索者もいない……が、3ヶ月後にはロケーション情報が公開される……ハンター組合定期便は同じく3ヶ月後あたりに予定……なにこの腹立つ設定」
「俺たちは定期航路から外れた所に発見された遺跡を優先的探索権利を獲得できたので極秘裏に探索に来ましたと……駆逐艦しか通れない近道航路の途中で自然災害による事故に巻き込まれると……そんな感じだね」
「山の中に駆逐艦で来るなよ。歩行戦車とか歩行PTボートでで来ればいいじゃないか」
「それだと航続距離が足りないし。武装が心配だ。特に継戦能力が心もとない。あと特殊な森林帯の影響で重力制御が狂って動かしにくい。歩行艦なら問題なく移動できるかけど、そもそも道が狭い。それゆえの駆逐艦だ。駆逐艦なら登坂能力と船体の幅的理由で問題なく通れる」
「もっとデカイ船で行きたかった」
「さっきも言ったけど、でかいと登坂能力がな足りないんだ。道も狭いしな。樹木を押し分けるにも重力制御に異常がでる。この規模の山岳路は駆逐艦でないと無理だ。巨石が都合よく道になっている所なんてなかなかないぞ? 」
「じゃぁ、もっと平らな所を……」
「木が邪魔して通りにくい。特殊な樹木で色々障害が出るって言ってるじゃないか。見てみろ周りを鬱蒼と木々が生えているだろ? もっかい言うぞ? 無理やり通れば船体が損傷するし、重力場の影響で能力低下して動かん。砕氷艦のような分厚い装甲や機能があればいけるかも知れないが……そういうのは無いんだろうなこの地域には。ついでに言えば平らな所を行こうとすると膨大な遠回りになる……と、この設定には書かれているね」
「俺は戦艦に乗りたいんだ。俺は」
「ムサシ? 現実逃避して試験設定に文句を言ってもはじまらないよ?」
アーニャが困った顔をしてムサシに言う。
「状況説明ありがとう。諸君、もういいかな? 現状確認ができたところで持ち物を確認しようか?」
「了解、クリス」
「わかったよ」
「では、ムサシから頼む」
「えっと、持ち物は武装M4A1カービン、サイドアームにグロック、銃とナイフ、予備弾薬、水筒、衣類は替えの下着と着替えが少しと。対アノーマリー携帯シェルター等、偵察バッグに入るくらいの少ない装備類と。基本装備はこんなもんか。あとは……メタルマッチにがあった。それと……俺はアウトドアクッカーセットとレーションが少々が入ってる」
「私もそんなもん。M4A1と予備マガジン……うん、やっぱり装備は一緒だね」
「アーニャもそうなのか」
「私もだ」
クリスがバックの中身を確認しながらムサシに言った。
「私もそんな感じ。たまたまに持っていた手持ち袋に応急セット、塩、コンパクトサバイバルセット、マチェット、パラコードが入ってた」
ナギがそう言うと皆で顔を見合わせて沈黙が辺りを包んだ。
「数100キロを踏破するか? 現地に留まるか? それを考えようか?」
「遭難してなけりゃ、絶景の景色なんだがなー……広大な山脈に見渡す限りの森林、そして見事な河川。眺めるだけなら極上なんだよな。ほんとに。野生動物が豊かで、多少の敵性体がいる。周りの雰囲気は森が深い感じだが丈の低い草木があまりない。ロケーション的にはカナダとか? 寒い地域のヨーロッパ的な環境かな?」
「ムサシの世界の話はわからないよ? カナダって? ヨーロッパって何? 地名?」
アーニャが困った仕草をしている。
「広大な自然を誇る場所かな」
ムサシの話を聞くとアーニャは辺りが気になり、皆から少し離れて森の風景を観察していた。
「雰囲気的に日中はそこそこ暖かくて夜は冷える。森林帯でそこそこの湿度、雨もたまに降る地域。水が豊富。どこかに湿原がないかな?」
収まりどころがわからなくなった。俺が独り言を言っているとさらにアーニャが辺りを見廻す為に高台に登っていた。
「クリス。なんかね、私が住んでいたトコと似てるんだ。訓練地域にとても似てるよ」
少し離れて聞き取りにくかったがアーニャは落ち着いた声で語った。
「そうなのか? 言われてみれば確かにそんな雰囲気か?」
「アーニャ知っているのか?」
ムサシとクリスがアーニャの発言に驚く。俺たちの元に帰ってきてはアーニャが語った。
「森の雰囲気が同じだ。私が住んでいた開拓街近くの森と似てる。森の深くで高い場所のところって感じがだけど」
アーニャはそう言うと辺の草や地面を調べていた。
「やっぱり植生が同じだ。どうやら開拓街地域の遺跡の設定みたいだね。ちょっと高い山のその麓って感じ?」
「アーニャ、詳しいな」
「悪さをしてスラム街にいられなくなった頃に森に逃げ込んで生活していたんだ。ほとぼりが冷めた頃には街に戻ったけど。途中では山岳ガイド……レンジャー? なんてい言うんだろうな? まぁ、食べ物取りに行ったり狩人みたいな事もやっていた。この勝負は勝ったよ。私がいるから余裕かもしれない」
「「な……なんだと? 」」
突然の事実に俺たちは驚愕した。
話を詳しく聞くとアーニャの可愛らしくあった幼い頃かた成長して美貌が薄っすらと現れてきた頃にスラムにいた幼女趣味の変態に捕まりそうになって家族と一緒に逃げた。
その時に相手を殺しかけたり、別件で精神的に弱った姉を強奪しようとした悪漢ともめた事など、キツイ過去があることを知った。一同はアーニャの境遇にしんみりしていた。
話が終わる頃に運営からホログラフが出てきて今の記録はプライバシー保護が必要かと問いかけがあったので保護してもらった。
「このVRの機能は便利なんだかありがたいんだが……なんとも複雑な気分になる」
ついでに言えば俺たち全員が今の状況がVRって事も理解している。死の体験の時とは違い試験中といった事やVR空間内にいる事を完全に理解している。
「バーチャルな脳内空間って感じかな?」
「ついでに言えば夢を共有していて相互にお互いを認識できるバーチャル空間であると言うべきか? ふむ、夢や脳内ってのも少し違うな。この辺は説明するとムサシには辛いだろうオーバーテクノロジーで、とりあえず納得しておいてくれ。興味があったら落ち着いた時にでも説明するから」
クリスが饒舌になり説明をしようとするがナギが抑え込む。
「ねぇねぇ、アーニャの過去話やテクノロジーの話はあとで聞くとして今からどうしようか?」
「隙あらば語りたかった」
何故がアーニャが残念そうであった。
「ふむ」
クリスは考え込んでいる。
「森林帯に詳しい者がいる。道具はそれなりにある。ふむ……」
「えーっと、こういう時は……生き残る選択をするだったか?」
「まぁ、サバイバル試験だからね」
クリスが独り言を呟き思考していた。それを察したムサシとナギが相談していた。アーニャは少し歩いて見晴らしの良い所から、また観察していた。
「川下りして街まで行けない設定だしなぁ、最短の救助は3ヶ月弱って所か? 運よく遺跡探索しに来た奴らに見つけてもらえれば。駆逐艦が通った道もこの辺りの樹木の特性で1週間ほどで元通りだし、だから駆逐艦は川を登ってきた訳だからな」
「少し大き目の川には敵性体がいる設定だし。悪意が詰まった設定だよ本当に」
俺たちの相談に辺りを見廻し終えたアーニャが加わってきた。
「この場所は街から離れた地域に似ているとして湖から少しでも離れれば敵性体からは安全だよ。そのかわりに生モノが出てくるけどね。まぁ、それはそれで食料にするからイイんだけど。M4A1があればたぶん怖くないかな?」
「ここをキャンプ地とする?」
「そだね。数100キロ歩くのは危険と思う。森を突っ切るのは恐らく迷う。かと言って川沿いを行くのは危険」
「ココに留まるのが妥当?」
思考から帰ってきたクリスが話に加わる。
「この地に留まり定期便を待つべき」
「クリスはそう思うか?」
「森と山と川を移動するのは正直しんどいし危険だと考える。こんな地域だと生き残るには戦車でもないと厳しいとか座学でやらなかったか?」
「だよなぁ……」
「ココに留まり、シェルターを確保して自給自足で定期便を待つ方針で行こうか? 」
「「了解」」
「では……まずは水源の確保かな」
「頑張って遠回りすれば湖まで行って水の確保ができるか?」
「船が爆散してるから水は何かしら汚染されてない?」
「そう考えた方が良いだろう。水は湖に流れ込む沢を探そうか?」
「長期的な遭難になるからシェルター、水、危険からの退避、食料、あとは生き残る決意だったかな?」
「ナギ、きちんと覚えてんのな」
「そりゃあね。ハンター試験だし? そもそも真面目に座学の内容は覚えたよ?」
にこやかに答えるナギから胸に軽いパンチを受けた。こういう時は元気なナギが頼もしく思える。
「優秀な山岳ガイドもいるし、コイツは勝ったな」
「ムサシ、油断せずに行動しよう。まずは水、次にシェルター。危険は小型敵性体と言っても生物系だからそんなに怯えなくてもいい」
「熊、鹿、リス、鳥、小動物全般? 虫とか?……あとは猪。猿はいなかったな……あと何がいたかな? 水場に魚?」
「大型の爬虫類とか?」
「そんなもんじゃ無い?」
「余計な遺跡などを突かなければ変なのは出てこないはずだ。機械系がうろつくこともあるんだろうけど。大型中型はおそらく気にしなくていいだろう、遺跡でもなければな……」
「無いよな?」
「やめてよ、ムサシ」
「ご、ごめん、ナギ」
「ちょっと心配しちゃった」
「予定していた遺跡まで結構距離があるから気にしなくていいだろう」
「試験の設定……雑すぎない?」
「まーまー。ナギ、怒るとカロリーが減る。良くないんだよ」
「ごめんごめん、アーニャ」
「とりあえず、水場を探そう」
俺たちは安全なルートを見つけ現地点より移動した。沢の近くから30メートルほどの高さの少し広め目の開けた場所を見つけたのでそこをベースとすることにした。そこは人の丈より高い巨石が幾つか寄り添ったような場所であった。
崖崩れや土砂崩れの心配も無く、林が近く、倒木の為に日当たりの良い南向きの場所であった。何より幸運だったのは岩屋があったからだ。岩屋は2この巨石があり中心は人が8人ほどは寝れる空間があったからだ。
地面は乾燥していて具合も良かった。景色は湖と平原が見渡せる、なかなか良い眺めであった。沢までは離れていて水による災害からも避けられるのも理想的だった。
「ここをキャンプ地とする」
「なんだよイサム監督のマネかよ?」
「言わないといけない気がしたんだ」
シェルターの場所を決めた俺たちはさっそく作業に取り掛かった。賢い者は居心地の良い思いをするものだ。最初にシェルターを作るときには少しの配慮をするだけでも快適性が格段に変わるものだ。今はいないがアミの言葉と教官姿を思い出す。
「作業を始める前に乾いた服があって良かったね。汗をかかないようにセーブして動いたつもりでも気がついたらじんわりと汗かいたよ」
「注意してたんだけどアタシもだ」
俺はナギと重い材木を運んでいた。材木といっても斧やのこぎりがないのでマチェットで切り目を付けて倒せるレベルの細い木であった。しかし、岩屋に屋根を作るには十分なものであった。
「あとは雨を弾く木の皮を上に渡せば簡易シェルターが完成だ」
「アタシ、虫とか怖いんだけど」
「んー? じゃぁ、屋根作る前に燻して、床部分に灰でも撒いとこうか」
「教科書にもあったね。それやろう。灰で汚れてもいいからさ、虫が来なけりゃなんでもいいよ」
「一応の気休めだぞ?」
「やらないよりまし。後で掃除するし、ヘーキヘーキ」
「わかったわかった」
岩場に戻るとアーニャとクリスが作業をしていた。
「おかえり、ムサシ、ナギ」
「ただいま、丁度いい材木があったよ」
「それだけあれば。私たちが寝れるだけの屋根ができそうだね」
「うん、そこの岩と岩の間に支柱を立てて横木を通して……うん。かなりマトモなシェルターになるな」
「初日から惨めな思いせずに済むね」
「水場とベースキャンプ地を早めに見つけることができたからな」
「それにしても盛大に焚き木してるな」
「あぁ、寝床に灰を撒こうと思ってな、ナギが虫を苦手なのでな」
「クリス!! 流石わかってる!! 愛してる!! ありがとう」
「長い付き合いだからな。倒木が近くにあるのを見つけて拾ってきたんだ」
「ついでにアーニャが小動物の痕跡を見つけたので罠を仕掛けておいた」
「あんまり期待しないでね。くくり罠と簡単な石罠だからさ。エサだって木の実とかだし。自信はあんまりないんだよ?」
「ヤレることをやっておこう。ありがとうな。アーニャ」
「あとは岩屋の出入り口を塞ぐなにかしらか……」
「屋根にするのは木の皮? それなら私たちが行くよ」
「出入り口を塞ぐもん何にしようか?」
「岩はやだよ? おっきいのしかないじゃん?」
「木は不安じゃない?」
「ナギ、諦めよう。俺たちならやれるさ。寝てる間にでっかい獣に襲われたいか?」
「グヌヌヌ」
「ほらそこらへんの岩なら転がして積み上げればさ……なんとかならない? あとでかまどの建材にすりゃいいしさ。入り口に風よけも必要だしさ」
「居心地の良い寝床を作るためか……やむなし」
「よし取り掛かろう」
倒木を集め岩屋に投げ込んで燻す、ついでに灰を撒く。手短な木を倒して建材を用意する。木の皮は水を弾くものであったので屋根用に取っておいた。程よくそうじして。テキパ掃除し岩場をベシェルターへと変貌させた。
初日はシェルターを作るぐらいで終了した。暗くなる前まで働き、レーションを食べて就寝した。最初の見張りは俺だった。聞き慣れない環境音にビビったけど何事もなく交代の時間が来て眠りについた。
[DAY2]
朝と昼の中間くらいに起きると皆がかなり離れた場所で作業していた。近づいてみると平べったい薄い石があったのでそれでフライパンか大きめの鉄板代わりの調理場を作っていた。
「おはよう、皆。起こしてくれてよかったのに。たくさん寝れたよ。ごめんな。そして、ありがとう」
「気ににしなくていいよ。お疲れだったみたいだし。それより見てよ。御飯食べる所を作りました」
「立派な小型シェルターができるな。これだと雨が降っても火が消えないな」
「アーニャがデザインしたんだ」
「狩りの拠点でよく作ってたからさ」
「ムサシ、褒めれ」
「なんでナギが偉そうにしてんのさ」
「アーニャ。でかした!!」
俺とアーニャで互いにサムズアップをしているとナギが乱入して変なことになってった。その光景が可笑しくて皆で笑っていた。
「さて、私は狩りに行きたいんだけど。だれかお供に来る?」
「俺、行きたい」
「ん、ムサシ来る? じゃ行こうか」
「猪食べたい」
「ナギめ、注文しやがって」
「デカイの捕ってきてやる」
「じゃ、アタシらはシェルターを完璧にしよう。屋根をしっかり作っとくよ」
[半日後]
「なんでムサシは何か担いで半べそかいてるの?」
「アレ? 毛皮っぽいのとお肉じゃない?」
「命の大切さを実感してます。少しほおっておいてください」
「トドメと解体をお願いしたらショックだったみたいで……イノシシはいなくてね。シカでした」
「そ、そう」
「しっかし、立派な鹿だな。幸先がいいな。しばらくはご飯に困らないな」
「干し肉作りたいけど。塩が貴重だから。ここは燻製かな?」
「そのほうがいいだろう」
「ほら、ムサシ。お仕事はじめるよ」
「アイアイサー」
[DAY3]
「トイレは?」
「葉っぱだろ? 甘えんな。我慢とかすんなよ?」
「手のひらに収まる手触りの良い丸石みっけて、沢で洗うんだよ。んで左手でやるんだよ」
「おおぅ、乙女の尊厳は何処に?」
「サバイバルしてんだ。生きてるだけで尊厳は守られる!!」
「そこの大き岩があるところが物陰になって丁度よいだろう。上側を水浴び場で下の方をトイレとしよう」
「たくましいな君ら」
アーニャとクリスがテキパキとルールを決めていた。
「そりゃぁね、訓練で鍛えられたし。覚悟ができていた」
「私は森でたまに生活してたし」
「うううぅ。クリスー」
「いい加減に腹を決めるの」
「ふわぁい」
ナギは泣きっ面であった。
[DAY4]
水浴びしたいとナギの一言から始まり。水浴び場に焚き木を用意して女性陣が水に入っていた。
「水浴びするから覗くなよー」
「この状況下で問題を起こしたく有りません。そもそも君等が見張りしろって言ったんだろ? 反対側の岩にいるんで大人しくしてます」
しばらくして交代になり、俺は水浴びしに行った。
「見張りよろしく~」
しばらく水浴びをしていると女性陣が俺を観察していた。
水の深い所にいたので下半身は水の中で隠れている。
「チッ!」
ナギの舌打ちが聞こえた。
「ていうか君等が覗くんかい?」
アーニャとクリスがもじもじしていた。
「「私はナギを止めようと……」」
「ナギ? ペナルティとして石鹸作れ。イノシシ捕ってきて。油を精製しろや!! それと鳥の巣漁って卵ゲット、無けりゃカタツムリの殻集めて来い」
「減るもんじゃない癖にケチケチして。しかたないなぁ、石鹸はアタシも欲しいからやりますよー、そういや鳥の巣ってどこかで見かけた気がする。ふふん、卵焼きができてもムサシに食わせてやんないからなー」
「ふてぶてしいなアイツ」
「石鹸は私も欲しかった。丁度いいかな」
「ナギ。よろしく」
「アーニャ。狩りの指導をお願いします」
「OK」
[DAY5]
ナギがイノシシ担いで半泣きで帰ってきた。
「ムザジー。ごめんねー。ムザジが泣いでた理由がわかりまじた。ごべんなさい」
「わかればよろしい」
「しっかし、肉が多いな」
「鹿も残ってるし、イノシシ1匹だけども、これだと多いね」
「腐る前に食わないと」
「肉食獣も寄ってくるからさ。ここに帰る前に血は抜いといたけど。干すにしても保存は難しいね。食うか?」
「腐りにくそうなトコはすぐ食べて。残りは意地で食う」
「燻製でいいじゃん?」
「生っぽいほうが美味しかった」
「ナギが逞しくなりました」
「友人として誇り高いよ」
「アリガトウ、クリス」
ナギとクリスが友好を温めているとアーニャが相談してきた。
「それはそうとして、お肉が沢山あるので。明日からね。しばらくは木の実とか集めます。ビタミンと炭水化物が欲しいのです。そしてアタリは付けておいたよ」
「さすがアーニャ。仰せのままに」
[DAY6]
「石鹸班と食量班に分かれます」
「ナギとクリス、石鹸」
「俺とアーニャで食べ物だ」
[半日後]
帰ってくるとナギが盛大に焚き火をしてた。そして炎の前で謎のダンスをしていた。なんとも痛々しかったので俺とアーニャは顔を見合わせて無言で意思を通じ合わせて見なかった事にした。
「バック一杯に集まりました。ついでに野生の鶏がいたのでとっ捕まえました」
「石鹸できました」
俺たちはお互いを讃えてハイタッチした。
「これからが大変。果物はそのまま食べるとして。お茶になる木の葉は別にとっておいて。残りを潰して煮出して……大変な作業ががが」
「そして鶏だ。雄だしなあ、絞める?」
「他のお肉がまだあるし、しばらくは飼っておく。非常食だね」
「まずは木の実をどうするかだ。砕いて煮出して? 鍋は無いしなぁ。俺のコップでチマチマやる?」
「そこで私の出番だ。沢の上流で粘土を見つけてな。これで土器が作れないかと思って。そこで今な、焼いているんだ」
「盛大な焚き火してると思ったらそういう事か。ナイス、クリス」
「水入れて煮ることができたら完璧だな」
「割れないように祈ってます」
帰ってきた時に見えた謎のダンスはお祈りだったか
「うむ。明日まで待ってくれ」
[DAY7]
「土器ができて煮ることができました。こう、トントン拍子で行くと怖いくらいだな」
「文化と歴史のデータを読み漁っていたのがこんなに役に立つとは思わなかったよ」
「クリス。最高」
「ナギ。ありがとう」
「これでクッキー作ってみるよ」
「砕いたやつを煮て渋みを取るアク抜きだ。その後にラードを混ぜてみるん?」
「きれいな油の部分は石鹸使ったからね。カロリー取れるからラードを有効活用したい。食べることができればOKOK」
[DAY12]
「この生活にも慣れましたなムサシさん」
「そうだねぇ。ナギさんや」
「アーニャとクリスが狩猟から帰ってくるまで暇だねぇ」
「干し肉燻製もできたみたいだし、ペミカンだったかな? ラードに乾燥食料を沈めて固めたやつ」
「あれ、スープにすると美味しい。何より長持ちするね」
「ナギたちが土器作ってくれたから保存食が充実したよ。サンキュな」
「後は塩が作れれば長期滞在可能になるんだけど」
「岩塩が取れるとこがこの地域にあるとかアーニャが言ってたけど。この辺で都合よくあるわけ無いみたいだし、あったとして有害鉱物の分離が難しいみたいだし? 温泉でもあればなんとか作れるんだけどなぁ。温泉入りたい」
「温泉地帯あったらガスで死ぬんじゃないかな? 試験だしトラップあるかもよ? 」
「だよなぁ」
「あとは住居?」
「シェルターも弄るとこないくらい完璧にしたし。中に囲炉裏作ったね。あと何しようかね? 」
「カマドも作ったし。炭小屋でも作る? 丸太小屋? 木工細工に手を出す?」
「そこまでやらなくても良くない? 土器作れたから良しとしようよ」
「じゃ、保存食糧問題かな?」
「狩猟が結構うまくいってるしね」
「実際はそんなに困ってないんだよな」
「でも、食糧難はイキナリ来るよ? きっと」
「うーん」
「また、ネズミ食わされるのもなぁ。最初の頃、アーニャが焼いたヤツをパクツイてたのはビジュアル的に違和感があった」
「美少女が串刺して丸焼きにしてたのはアタシも最初はビビった。でもアタシ慣れた。今じゃ、リスも美味しく感じれるようになった」
「こないだ骨ごといったもんな。最初は可愛そうだとか言ってた癖に」
「命を頂くんだ。罠にかかって死なせた以上は食べないと無駄死になるでしょ? それこそ可愛いそうだし」
「まぁな。んー。今度、鹿とかイノシシで血のソーセージとか作ってみる? こないだ脳みそイケたからさ。どうかな? 火を入れたらイケないかな?」
「食べれるものは全部食べマスぅ。ビタミン足りない場合は生で食べたり飲みますー 」
「顔が否定してるけど。心意気は買おう。エライぞ。ナギ。今は食糧難じゃないから安心しなさいな」
「クリスが言ってた土中式も冷蔵庫でも作ってみる?」
「この地域では難しいって言ってなかった?」
「それじゃ、そろそろ。狼煙台作る?」
「そのヘンかな? しっかし、アタシたちよく働くね」
「訓練の時よりはずっと楽だし、なんか物を作るの楽しいし」
「わかる」
「そんなこと言ってたらアーニャたちが帰ってきた。鹿を捕ったみたいだ」
「おかえりー」
「クリス半べそかいてないな」
「ほんとだ。アタシ、泣くかなと思ってたけど」
俺たちはアーニャたちを出迎えた。
「クリス? 泣いてない? 大丈夫だった?」
「研究室で解剖もしてたし、動物実験もしてたからな。敬意をして感謝して祈ってきた」
「クリスは凄い。解体も綺麗でスピーディだった」
「アタシたち、半べそ組だね」
「んだな」
「でも、もう一人前ですよ?」
「先生が優秀なので」
ドヤ顔のアーニャが素敵でした。
[DAY30]
「炭小屋作っちゃった」
「やればできるもんだな」
「どうせ、夜の見張りの時暇だし。火の番はそれ程、キツくなかったよ?」
「炭の具合も良い感じだし」
「2回目だからね」
「それは言うな。1回目は盛った土倉が盛大に崩れたからな」
「火が入った後だから炭小屋が炎上するかと思った」
「やばかったね」
「まぁ、できたから。炭が良い感じだよ?」
「お茶を作る時に煙がうざいとか言ってたのこれからは言わなくて良いんだよ? 」
[DAY45]
「塩でけた」
「石鹸作る工程でドジって灰を顔面に受けたクリスが思い出しました」
「灰塩です。代用塩だけどね」
「少し遠い沼に群生してた草を燃やしてできた灰から塩を作りました。岩塩が近くにでもあるのかね?」
「ついでに魚も取る事ができました」
「味わい深い意外にまろやかな塩でした。化学合成したトゲトゲしたやつより好きかもです」
「塩気のあるジャーキー作っても良い? ムサシ」
「アーニャ? 是非作ってください」
[DAY65]
「試験AIからご連絡が来ましたね」
「他の組が脱落したからアタシたちが1位だって」
「ワリとバカンスじみてたよね。予定の3ヶ月間は耐えられるぞ、たぶん」
「それはムサシだけだって」
「シャワーとかトイレとか心の奥底で欲していたんだよ? それを押し殺して耐えていたんだ。あれはバカンスなんて言わないし言わせないぞ。アタシは」
「「乙女の危機です」」
「それはそれは。まぁこれで終了だからさ」
「お疲れ様って事で」
「ご丁寧にお迎えの駆逐艦が川を歩いてるよ。じゃ、帰ろうか」
「大自然よ。さらば」




