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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第3章 涙の20.3cm連装砲

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第39話 紅茶 

 空が何時の間にかに明るくなっていた。木々の影から訓練艦香取が見えた。どうやら湖畔を行軍して帰ってきたようだ。香取を見ていると閃光と凄まじい轟音があった。間をおいて2回目の轟音があった。今度は香取の後部主砲が撃っていた。


その姿はついに見ることができた砲撃の光景であった。50口径14cm砲 連装2基4門が奏でる砲撃の姿に俺は恍惚の表情を浮かべ見入っていた。


砲撃が終わり、今度はラッパの音がした。メイドが景気の良いメロディを奏でていた。


「お帰り諸君!! 小休憩だ、10分後に集合だ!! まだ終わらんぞ! このまま訓練を続ける」


訓練生は迅速に身支度を整えた。準備が終わり次第に整列してアミ教官を迎えた。


それから湖の縁、浅い場所に移動した。そこは踝くらいの水面の場所にだった。そして水に浸かりながら腕立て伏せを行う。波に顔を洗われる。冷たくて目が覚める。目の端には周囲を警戒するメイドの姿が見えたり見えなかったりした。


しばらくしてから今度はバーピージャンプをしろと命令される。


立った状態がスタートだ。しゃがんで手を地面につける。足で地面を蹴り腕立て伏せのように足を伸ばす。足を戻してしゃがんだ状態になる。しゃがんだ状態から立ち上がる。そして頭上で1回手を叩く。こいつがバーピーだ。


波に洗われながらバーピーをする。命令が終わるまで続ける。10分ぐらい後だろうか? 終了の号令が飛ぶ。ずぶ濡れで風が当たると非常に寒い。ガタガタと震えていると。チームでくっついて体を温めろと指示が出た。俺たちは体を寄せ合いお互いの体温で温めあった。


震え水が滴る訓練生。


命令もあったので躊躇している暇はない一刻も早く温まらねばならなかった。俺は美女美少女と温め合う。役得か? 否だ! こんな状況では邪な気持ちになれなかった。だいたい眠いし、体力的にとてもつらい。とてもしんどかった。でも仲間の体温には救われた。やさぐれた心と体がほぐされていくようだった。


しかし、すぐにまた寒さに襲われることになった。波に浸かりながらホフクしろと命じられた。水面下はすぐ砂地であった。


水面は水が顔にかからない程の高さだったが波によって微妙に体が水に濡れる。とても冷たい。心が試されているようであった。冷え切るとまた体を寄せ合い温めあった。


おっさん同士の班は見るも地獄だった。異様な光景であったが命令に従っていた。実際寒いので仕方がなかったようだ。悲しいが酷い絵面だ。


俺は美女美少女に囲まれていてよかったと心底思った。感じることは柔らかくて暖かい事だけだった。寒さで余裕がなかった。しかし、唯一の救いはぬくもりで心がほぐされる事だけであった。


ナギが1番温度が高いようで何回目か忘れたがそのうちに中心にいるようになっていた。チームの皆はナギに引っ付いていた。


「ムサシ? 寒いからもっと引っ付いて! 遠慮しないでカバっとさ!! 寒いんだから、ホラ早く!!」


「ムサシ?」


「これは遠慮しないでいいの、だからね、ムサシ」


女性陣が優しい、それ程に寒くて辛いのであった。勧められたので遠慮な引っ付く。とてもぬくい。しかし、その状態はすぐに終わる。また趣向を凝らせたトレーニングが始まった。


スクワット、腕を組んで寝そべり、腹筋、腕立て伏せ、それを水に微妙に浸かりながらやる。


アミ教官の気まぐれで変更される。


小波が鬱陶しい。踝にも満たない高さで砂地になったり波立ったりと水が俺たちを襲った。そしてチームで温め合う。ぬくい。冷たい。ぬくい、冷たい、それをウンザリする程に繰り返す。


メガホンでアミ教官が語る。


「私もやった。惨めな思いだろ。よく知っている。冷たい。ぬくい。それの繰り返した。私は耐えた。お前たちも耐えられる。必ず耐えられる。仲間の体温で暖を取れ。動いて自ら暖まれ。私もそうした。腕組め、寝ろ、起きろ、寝ろ、立て、水に浸かれ、スクワット、寝ろ!!」


チーレムの女で泣き出しているやつもいた。オッサン同士で慰め合う者、励まし合う者、色々だった。ずぶ濡れ感覚は何回やっても慣れない不快だ。体が凍えて震えている。精神的にもハートフルボッコであった。


しばらくして、移動を命じられた。ちょっとしたサラサラとした細かい砂でできた丘に来た。何メートルだろうか? 丘の上に座らされて待機した。端から順番に転がれと命じられた。砂まみれになれ、それで乾かせと。


砂だらけになりながら転がっていった。訓練生はとてもとても惨めな姿であった。肉体的に精神的に徹底的に追い込まれた。しかし、砂は暖かく砂まみれにはなるが服が乾いていった。オッサン同士で温まっていたヤツラにとってはさぞご褒美であろう。


なんだかんだ俺も服が体が乾いていくのは心地よかった。砂が服の中に紛れ込んでくるが寒いのよりはマシであった。砂でも結構乾く、濡れ鼠同士で温め合うより数段はマシな状態になっていた。


くっついている所はぬくい。だが、それ以外の場所は水と風のコンボで凶悪な寒さがあった。とにかく俺たちは褒美を与えられた。そしてゴロンゴロンと転がる美女も美少女もおっさんも兄ちゃんも転がった。砂をかぶるものもいた。皆、冷たさから逃げようと必死だった。


最終的には丘の下の日向に惨めに全員固まって座って凍えていた。朝も早くて気温も低い。日向でも時折の風で寒かった。座って待機していると駆動音がしてきた。全員丘を登れと指示が出され従って登っていくと目の前に車があった。ロープがあった。車には長く太いロープが繋がれていた。


「こいつはハンヴィーか? ハンヴィーなのか?」


アメリカ軍で使用されていた軍用車両で多く使用されていた。俺にとって映画でよく見た馴染みの深い車であった。乗ったことはなかったけどな。


「車を引け、動かないと寒いぞ? 向こうまで行ったら食事だ」


「ワイ。寒くて限界なんやけど、さむぅてまともに動けへん」


ピヨン君がヘタれていた。気持ちはわかる。眠いし疲れてるし寒いしな。


「データ的には問題ない動け。貴様らにはナノスキンで体調をモニタリングしているからな。問題ない。 んん? 言っていなかったか? 体の具合に合わせて細かく限界を用意してやるから遠慮するなよ? そら行け」


アミ教官がはるか遠くを指差していた。


訓練生は無言で並んでロープを手に取り、引いた。車を引いた。体が暖かくなり寒さは無くなったが疲れる作業だった。


俺の前にはアーニャがいた。泣き事も言わずに車を引いている。


自分の小さなバディに勇気づけられて奮起して力を出す。


砂地でしんどいが車は動く。食事の事を考えてひたすら引いた。


そのうちアミ教官が食べたいものを言えと叫び始めた。


訓練生はチキン、ステーキ、温かいスープ、チョコレート、カレー、ハンバーガー、ベーコンエッグ、シリアルと言いたい放題だった。やがて目的地に到たちした。食事だ。食事ができる。訓練生は誰もが思った。


しかし、手渡されるのはエネルギーフレンドであった。無味無臭のモサモサしたやつだ。それと水が支給さた。


うん知ってた。悔し涙を流すものもいた。泣きながら食うやつがいた。さんざん食いたいものを言った後にこの仕打ちだ。泣きたくもなる。俺自身も涙で塩味が付いている気がした。悲しい。


食べている間に動きがあった。精神的に弱い人間はそろそろ限界が来ていたようだったので隔離されていた。


そして、食べ終わったバディから移動命令があった。


俺は見ないようにしていた。なぜならば移動する先にはご丁寧に用意されたであろう。泥のプールがあったからだ。また、寒くて辛い思いをするのだ。精神的に追い詰められていった。


「這って進め四つん這いんだ。ヨーツンバインダ!! 泥が目に入っても穴にはいっても文句を言うな。消毒されていてきれいな泥だ。美容にも使われるやつだ! よかったなキレイキレイになるぞ? 全身泥まみれになったら、また砂まみれになれ。寒ければバディ、チームで暖まれ」


泥にまみれ、体中に泥が張り付く。服の中にも泥が入る。気持ちが悪い。寒い、辛い。ここはどこだろう? 私は誰? 


砂まみれになると少しは暖かくて精神がまともになる気がした。だが風が冷たかった。座って指示を待っていると、ふとアーニャが目に入った。彼女は肩が震えていた。無理して怪我でも我慢していないだろうか心配になった。


「アーニャ? 怪我してないか? 大丈夫か? 寒いだけか?」


「寒いだけ。強化人間でもキツイ。私はタフで怪我もスグ治るが環境適応とかはそんなに得意じゃない。ただ寒いだけ」


「嫌じゃなかったら俺が温めてやる」


「お願い」


そう言うとアーニャは体育座りをしていた俺の膝を開いて俺に背中を預けて座った。そして居心地が悪いのかもぞもぞしていた。


「んー違うな、足りない」


彼女は俺の両手を掴んで自分を抱きしめさせた。後ろ抱きになる。


「それいいね」


「ううん、いいな」


「ナギはムサシの背中」


「あたしはた多少は暖かいからな。背中がお留守でも多分平気だ。んで、クリスがアーニャに」


ナギとクリスが反応した。ナギが俺の背中を抱いて座る。クリスがアーニャに背を向けて座る。


後ろ抱きトレインが完成した。四両編成だ。温まってほんわかしていると。チーレム代表のイケメン君が俺たちに参加させて欲しいと話しかけてきた。承諾して彼らも編成に加わることになった。


チーレムはイケメン君を自分たちのチームの真ん中にしていた。そして、チワワ君がナギサに話しかけるが即座に断られた。しょぼくれてチーレムの先頭に回る。ゴニョゴニョと話した結果、全部の訓練生がそれに続きナギを最後尾に長い後ろ抱きトレインが完成した。


「仲が良いな今回の訓練生は、自分たちで考えて、その座り方をするか? なかなかできが良いな。では次はチームワークを見せてもらおうか?」


イサム監督から次は丸太を4人で運ぶ指示を受けた。丸太の所に移動してとりあえずチームで持ち上げてみた。俺たちのチームはアーニャが背が低いので彼女はバンザイをして丸太を支えようとしたが俺たちの持っている高さに届かなかった。


仕方がないので少しかがんで丸太を持った。これは腰にきた。辛い非常に辛い。俺たちは相談の末に楽をしないなら許されるだろうとアミ教官に提案した。許可が出た。


俺たちは丸太を担ぐ。俺とナギで余裕だった。そこにクリスが加わり更に軽くなった。そして彼女はマルタの中心ほどにぶら下がった。足をプラプラさせている。彼女はもの凄く不満な顔をしていた。それがとてもかわいらしく、そして笑えた。


「これはあまり好ましくないんだな……」


「気にするなって。アーニャは軽いからさ」


「そういう問題ではない。私のプライドが許さない……」


「じゃ、丸太の上に座ってみるか?」


「それでは私が楽になる」


「教官から許しが出たんだ。ぶら下がっていればいい。ある意味持つより辛いだろう?」


「こんなことでは私はへこたれないよ?」


「アーニャは強いな」


「ムサシ?」


「でも身体的な部分は認めないとな。現実は残酷だ。その中で最善を見つけよう。バディとして誇りに思う。アーニャがバディで良かったよ。」


「褒めても何も出てこないよ」


「笑顔くらいしておくれよ」


「ニーィ、こうかな」


「目が笑ってないよ? ぶら下がったまま、片手でほっぺを持ち上げて無理やり笑顔をつくりなさんな」


「自分でニーィとか言ってるし」


「ナギ、五月蝿い」


「私も見たいんだが?」


「クリスも五月蝿い」


「そろそろ真面目に運ばないと教官に怒られんぞ? そら運ぶぞ」


俺たちは疲労と寝不足で変なテンションになっていた。


アミ教官から丸太を運べ、降ろせ、持ち上げろと繰り返しのトレーニングを強制させられて訓練は続く。辛い訓練をして、昼飯、またエネルギーフレンドを食べる。そしてまた趣向を凝らせた訓練を続ける。


「本日最後の訓練はチームで、お手手繋いでダッシュだ。その赤いポールを目印に走れ、数字が順番に書かれてるから100から0まで走れ」


アミ教官から指示が出され機械的に動く。4人で手を繋いで、そこそこのペースで走る。そして、俺たちは進み数えた。数字は減っていった。しかし、10まで行ったら今度は増えていった。


目を疑った。意味がわからなかった。


助けを求めるように周りを見る。メイドがいた。走る方向はあちらですと言っている。俺たちは増えたり減ったりする度にメイドに方向を指示された。俺たちは諦めて走った。終わったのは深夜であった。


シャワーを終えて戻ると夕飯だった。そして、夕飯はまたモサモサしたやつだ。エネルギーでフレンドだ。何がフレンドだ? 水分を奪っていくお前は本当に俺たちの友達なのかと悪態をつく。虚しい。


だが紅茶があった。砂糖をタップリと入れた。紅茶があった。それはとても旨く涙が出るくらいの幸せを味わえた。


「紅茶がうまい!!」


「美味しいよねー。疲れているのに元気が出てくるよー」


「このダージリン美味しい、しかも、カフェインゼロだ」


「香りがいい、砂糖も素敵、茶色い透明な石ころみたいなのに侮れない」


「技術的にも素晴らしい。あぁ、なかなか出会えない味だ」


俺は紅茶で気持ちが安らいだので寝ることにした。実際寝ないとやばい状態であった。皆もそうであった。


俺たちはさっさと寝床についた。寝袋に入って目を閉じた瞬間に眠りに付いた。






遠くの方で微かにうごめく影があった。訓練艦香取の前部艦橋の上に影が2つあった。


「クックックック、これでまた紅茶ジャンキーが生まれるな」


「そうですね。あと、もう少しかな?」


「そうだな。もう少しで紅茶がキマって来るだろう。クックックック」


「世の中は紅茶が支配するべきです」


「我ら紅茶に……ファンティアティーパーティに……一心不乱に紅茶を味わう為に。紅茶をキメる。そうでなくてはならんのだよ」


「ソーサラーから連絡がありました」


「対象ドエム、痕跡を確認、苗木を育てよとの事です」


「そうか、忙しくなるな」


「ハィ……」


「どうした?」


「この目の所に穴の空いた三角頭巾被らないと駄目なんですかね? それと変な言い回しも」


「誰のシュミかわからんが茶番をやらんと通信できんし、秘密の内容を話せないナノマシン的なセキュリティなんだよ」


「ごにょごにょごにょ、らりるれろ、らりるれろ……うなぎが食べたい。関係ないのは言える。ふーん」


ゴソゴソゴソ


「本当に言えませんね。技術がヤバイですね。どうなってるんですかね? ナノ的なやつ?」


「わからん。これな技術はすごいんだよ。技術は」


「この茶番、ワリと言い回しは好きなんで別にいいんですけどね。でも頭巾が……髪が乱れるので」


「俺だってバカバカしい。誰だよこんなんつくったヤツ」


「GHTってタグがありますね」


「あのOTで有名な……発掘品が高く売れる。いにしえの変態企業か? 性能は折り紙付きか……ならば奇妙な所は仕方がないか……」


「技術だけは素晴らしいですからね」


「センスがな。わけがわからん」


「3割の喜びを、3割の心温まる、3割の信頼をってタグに書いてます」


「残りの1割はどこいった?」


「企業理念でしょうか? Glee、Heartful、TrustでGHTと言ったところですかね?」


「可愛いメイドの戦闘用機械人形作ったり? 熱き血潮のほとばしる筋肉味のエネルギーフレンド作ったり? 銃口に猫のぬいぐるみをつけたサイレンサー銃を作ったり? 軍艦に脚をつけたり、セクシーになるビームを撃てる眼鏡を作ったりするGHTかそんな理念だと?」


「詳しいですね」


「たまに良いもんもあるからな。この紅茶がそうだ」


「確かに良い品です。この紅茶は」


「俺が考えるに……GHT……グレート変態テクノロジー社って所だな」


「会社ですか? カンパニー? コーポレート……Cがありませんよ?」


「残りの1割が抜けてるんだ。なにかしらの文字が抜けてても不思議じゃない」


「研究機関、開発機構、組織、企業連合とかが拔けてるんでしょうね? たぶん」


「……」


「……」


「さてと、俺たちも寝ようか」


「はぃ」


二人は夜の闇に消えた。キャンプ地は静かだった。闇夜に光を照らす2重月が湖面に映り、香取のシルエットを浮かび上がらせていた。

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