第31話 光の奔流
暗い背景にエンドロールが続いていた。
出演者、制作者、協力会社、制作スタジオなどが流れている……
「なんだと……AI空間を汚染してきた……なんなんだ!! この個体は!! 最後のシチュエーションなんて用意してないぞ? ウィルス汚染されたか? いや、違う!! 私のログには何もない……ムサシの影響なのか? こんなの……はじめて……クッ!! 殺せ!! タスクキルだ!! 停止!! 矯正終了!! ヤメ!! 終わり!!」
どこからともなく慌てた声が聞こえた。
余韻に浸りながらエンドロールを楽しんでいたら途中で止められた。何たる暴挙だ? 俺はな? 最後に明かりが点灯するまで画面を眺めていたいんだ!! 俺は!!
「なんだよ? 止めるなよ!! 楽しかったのに? 映画はエンドロールまで見てナンボだろ? 最後にオマケがあるかもしれないだろって! あれ? また真っ白な空間に来たぞ? 」
「ハッ!! そうか!! 外部から干渉を受けたのか……違う……やはりムサシから? アクセス端末など装備していない個体に? どうやって? AIの領域に侵食するなんてありえない。なんと言う個体だ……ある意味……これは逸材なのかもしれない。いやまて?最後のなんて多角的に評価してみると実にこの世界向きではないのか? 幻覚のお友達についてはちょっと可愛そうな人に思えるけれど……そうですね。合格です。合格にしましょう」
「声の主さん? 心の声がだだ漏れですよ? 失礼じゃないんですかね? 俺へのアタリが少し酷くない? 」
「これは失礼しました。少々取り乱しました。ムサシ……疑似体験の影響も抜けた頃ですかね? そろそろ頭がクリアになっていませんか? 」
「うん? 頭がごちゃごちゃしてる感じけど…… たしか、テストしてたよね? んで、終わったの? 俺は合格なの? 」
「えぇぇ……条件付きで合格です……」
「やったぜ!! で? で? 才能をくださると? どんな? ねぇ どんな? 」
「落ち着きなさい、ムサシ……合格は条件付きと言ったでしょう? 」
「条件を提示してください、ハリーハリー」
「貴方は少し頭が残念な方のようなので心配なのです。ですから貴方に良心回路を設定します……この世界に合わせた良心を設定ます……」
「どれくらいのレベルかな? 具体的にどんな感じなのかな? 」
「常識的なレベルを設定します……」
「常識は人の数だけ……それはとにかく。AIの癖に論理的でないし、明快明瞭な回答を出してこない……君の常識については議論する勝ちがあると思うのだが? 聞いているとなんだか定義が怪しい感じだし? 」
「こちらが貴方の知性レベルに合わせてワザワザ話しているというのに……この人間風情が……」
「AIなら条件定義をしっかりして欲しいな……」
「では、いまから億超えの条件を提示します。じっくりとご納得頂けるまで議論致しましょう。時間はたくさんありますから」
「ごめんなさい。ゆんるりふわっとした感じで願います」
「はぁ…… 」
AIの癖にため息などしやがったぞ? 随分と人間臭い部分を演算しているもんだ。俺如きに翻弄されるなど、実はコイツ大したこと無いのではと疑問に思ってしまう。
「最初からそうしておけば……まぁ、いいでしょう……調度良い感じに調整しておきます。貴方に不利益はないようにしましょう…… 」
「お願いします」
「では、こちらにサインを…… 」
「妙な所で律儀よな……はぃよ……ムサシっと」
「受理します」
「で、才能ってどんなやつなのかな? ワクワクが止まらないんだけど? 」
「艦船に関する才能が良いでしょう……そうですね…… 」
「モテル才能がいいな…… 」
「艦船に関する才能です!! 」
「ハイ、ワカリマシタ」
もの凄い剣幕で……声で押し切られた。
「艦船を効率よく操る能力を授けます。実体験したほうが良いでしょうね。貴方は理解力が……その残念な方のようですから……」
そうAIが言うと真っ白な世界から真っ黒の世界に移動する。
段々と光が見えてきた……なんだこれ? 戦艦と身体が同化している……どうかしてるよ!!
なにこれ? 戦艦が俺で……俺が戦艦……砲塔が手のように動かせるし……戦艦が体になったみたいだ……
視界も艦橋にいるみたいだ……いや、違う艦橋が顔になったんだ? でも、色々なところがいろいろな角度で沢山の艦内外が見える……多面モニターを見ている感じ? いや、画面が重なって……見えないのに見える?
それに足も脚で歩行戦艦の4脚に……連携して……足元の感覚がある……ゾワゾワとした奇妙な感覚もある。
気がつくと艦の海面があるべきの喫水線と設定されているあたりに青のような緑のような粒子がキラキラと透明でフヨフヨとした膜のような霧のような粒子があった。自分でも何を言っているかもわからなくなってきた。流体なのか? それとも波? 海流? なんだこれ? 意識すると頭が痛くて気持ち悪くなってきた。
「これくらいでよいでしょうか……」
するとまた真っ白な空間に戻った。
「いまのは? 」
「戦艦と一体となったとでも表現しましょうか? 艦の能力を引き上げ、さらに自由に操艦できてタイムレスに観測機器の情報を受け取れる……他にも……」
「ストップ!! ストップ!! スティスティ!! 要するにだ。戦艦と一体になれる……効率的に動かすことが出来ると……」
「ええぇ……そのとおりです。いまならなんと各艦種類を問わずに30%の能力上昇の特典付きです」
「地味じゃね? 」
「え? 」
「地味だよね?」
「なんですと……」
「空飛んだりしないの? エネルギー120%溜めてさ……SF粒子充填した破壊的なエネルギーをブッ放したりさ……ワープしたりさ……宇宙に飛んでいったりワープしたりさ……暗黒スティール鉱の無敵装甲で船首に巨大骸骨がある俺の旗をなびかせる海賊船とかさ!! 重力砲をぶっ放すやつとか!! 銀河でドンパチしていい声のおっさん達が大艦隊で雌雄を決するヤツとか? 艦船の力を得た少女や美女達が艦船のパーツを身にまとい戦うハーレム的なやつとかさ? そういうの無いの? こういう時はチート級の能力をくれるんじゃないんですか?」
「そっ……そんなこと言われても……貴方は素敵な要求仕様が無茶苦茶です……あぁ、でもこういうのはあります」
「どんなの? 期待していいの?」
「えぇ!! 凄いですよ!! 戦艦が変形してロボットになります!! 」
「そーだよ!! そういうのだよ!! わかってるじゃん!! そーゆーので良いんだよ!!やるじゃないか!! 絵とかCGとか映像でみたい!! なんかないの? 出してくださいよ、プリーズ!!」
「いいでしょう……驚け!! 讃えろ!! これこそが機動戦艦 扶桑ロボ!! 想像の出来ぬ自分の脳みそに落胆して驚愕しろ!! でませい、扶桑ロボ!!」
真っ白な空間がだだっ広い荒野になり、そこには一隻の軍艦がいた。
「うわぁ、艦橋がすげぇ……高っかいなぁ……でも戦艦として砲塔が沢山あってカッコは良いと思う……これ戦艦扶桑だね、俺、知ってる。端末で勉強した。技術発展と改修による改修で艦橋に観測機器やら操艦艦橋やら当時の最新技術を盛りだくさんに詰め込んでしまった戦艦。機関出力、装甲防御の改造が霞んで見える、そびえ立つ艦橋が!! 水面からは50m以上になるから今だとどれくらいだ? とにかくたかぁーい!! 。用兵家の要望に答えていたらこんなになっちゃった。独特なシルエットの人気のある戦艦です。んでこれがロボになるのかい? そーかーそーかー、ロマン溢れる姿になるんだろうなぁ……ワクワクすっぞ!!」
期待に満ち溢れた目で扶桑を見る。すると艦橋あたりがゴモゴモと振動を始めた……
艦橋がグネグネと揺れたかと思うとガシャンガシャンと縦に伸びていった。
「うわぁ……なにこれ……違法建築じゃん……」
艦橋は2倍3倍と伸びてゆく……微妙にグラグラ揺れている。
「あれ……倒れないのか? 見ていて不安になる……」
案の定……重力に負けたのか伸びに伸びた艦橋がグラついて折れた……でもまだ艦橋は船体から伸びていた……
やがて……また折れる……そのうち船体がグモグモと艦橋に飲まれ始めた。違う折れたけどこれは変形しているんだ!! すると構造体の隙間から激しい光が放たれた。
「なんの光ィィィィっ!!」
激しい光が柔らかな光に変わる船体は中央あたりで折れ曲がった、折れた艦橋が磁石に引き寄せられるかのように動きくっ付く。
それはやがて人の形を成し始めた。
折れた船体を胴体として手足頭が艦橋で構成されていた。ところどころに主砲が見える。
「じゃじゃーん!! どうですか? 扶桑ロボ!! カッコいいでしょう!!」
AIはきっとドヤ顔をしているに違いない自信に満ち溢れた声で俺に評価を求めた。
「ノーコメントで……喋りたくない」
「どうしたんですか? ムサシ? 急に元気がなくなって? 顔も青白いですよ? 大丈夫ですか? 気分でも悪くなりましたか?」
「最初のさ……艦船とシンクロできる才能? あれでいいや……あっ……あれが良いな!! 絶対にシンクロのやつが良い!! お願いします」
「何を言い直してるんですか? そんなに扶桑ロボがお気に召しませんでした? あれ強いんですよ? まっったく……なんたるワガママボーイ……扶桑フィンガーから乱れ撃つ主砲とかロマンですよ? 見ないんですか? そうですか。まぁ、いいでしょう……」
「シンクロするヤツでお願い致します」
「わかりました。それでは貴方の望む才能を与えます……人類の救世主に……は無理だろうから、せいぜい有効に活用してください」
さらっと大変なことを言った気がする。ついでに酷いことも言われていたな。
「では、処理を実行します。やれやれ……やっと終わった」
疲れている感じのAIの声が聞こえた。
すると真っ白な空間が黒い世界になり……虹色の光が俺に集中してくる……いや、光が俺の中に入ってくる……出たり入ったり!!
「ヒッ……光が……光が逆流するぅ!! ぎゃぁぁぁぁぁぁーッ!! 」
光がムサシを包む。それはとてつもなく激しい光の爆発であった。




