第29話 VR訓練ですよね?
地雷を踏んだらコンニチワ!!
ヤバイ地雷を踏み抜いたマヌケのムサシです。
詳しく言うとナギのバルジをあれこれできる人生の勝利者となった思ったら虎の尾っぽを踏んでしまいました。
何を言っているかわからないと思うが俺にとってバルジは勝利のシャンパンのようなもので、つまりエロに走り込んで自爆しました。真面目に俺のことを考えて色々と苦心していたアミさんの親切を踏みにじりました。罰は受けるべきなのです。と自分に言い聞かせていた。
現在現場は異様な雰囲気に包まれております。アミさんの足音がいつもと違って、やたら同じリズムとキビキビした動作に変わっております。歩行速度も、やや早いように感じます。アミを先頭にナギとクリス、少し離れて私、ムサシが続いて歩いております。
施設の廊下に嵐の前の静かさかと思えるようにコツコツと規則正しい足音が響き渡る。もっとも、その嵐を引き起こしたのは俺であるが……
スタジオのムサシさーん? 中継を返しまーす。と台風前の風雨にさらされながらリポートする現地アナウンサーの真似事をしてみた。そして、その脳内スタジオでは第1回ムサシ会議が行われていた。
脳内ムサシは5人いた。地、水、火、風、空のムサシ達であった。
地のムサシは言う。
「最も適した時機を見計らって好機を掴むんやで? つまり今は最悪のタイミングやで? わかっとるか自分?」
水のムサシは言う。
「平常心って大事じゃん? 相手に合わせて柔軟に対応して常に先手を取って主導権を握る感じじゃん? つまり今は流れる濁流に身を任せる感じじゃん? たぶん流されて溺れるけど……」
火のムサシは言う。
「相手より、いかに有利に戦うか? あらゆる手段を講じて躊躇わず行動せ。じゃっどん、心理戦で負けてはいけん。きばれ」
風のムサシは言う。
「何事に対しても、型などの決まり事や技術さ固執するが、これではいげねぁー。戦いの中さ身を置いで柔軟さ対応しにゃば勝利を掴めねぁー。勝つれでにゃばそれまでよ」
空のムサシは言う。
「いやあのね。頭が混乱してたのね。そんで、命を落とすって何もなくなる事だと思って、それなりに考えてたら、ナンデモって言うから、ヤリィって思って反応したっけ勢いついちゃって、もぅWinnerさ?」
俺は頭の中で意味のわからない脳内会議をして現実逃避していた。
何かあったとして……ナギにナンデモしてもらえる……これはもう勝利者である……いや? なぁ? これ冗談なんだよな……ナギもそう言ってたし。そんで、アミの保証は……この感じでは無効だよな……やっぱり……。
アミは行動で示せ的なこと言ってたし、希望の道標はできているわけだし……これはもうやるしかない感じだよな?
男としてこのままアミに見捨てられるのは……人としても駄目だと思う。
あれだ……死ななければ、どうという事はない!! 医療技術やらサイバネやらで再起不能は回避できるんだしな!! たぶん!
よーしよしよし、やる気が出てきたぞ? 現実逃避は終了だ!! 現実を見つめよう!! オーケー?
そんな感じに健全な精神を取り戻して現実を見ようと努力していた。
一行は歩みを止めた。アミは受付のアンドロイドから携帯端末を渡されていた。
ロッカールームに向かうよと告げられた。そして、それぞれのロッカーの番号を言った。
「男の子はあっち、女の子はそっち。ロッカーに近づくと教えてくれるから、荷物を中に全部置いてきて。中に入ってるVRスーツに着替えてね。身体とVRスーツだけで帰ってきて。何かあったらここに戻ってきて、ここで待ってるから」とそう言って傍にあった椅子に座った。
俺は男子用ロッカールームに入る。
少し歩いた所に俺の名前が点滅しているロッカーがあった。どうやらこれが俺のロッカーのようだ。
ロッカーを開けてみると、ビニールに包まれた新品に見えるラバースーツのようなものがあった。
荷物を全部入れて、スーツに着替える。
とても柔軟性があって伸びる。体にピッタリくっつく感じだ。
ロッカーの内側にある姿鏡を見るとSF映画でよく見るソフトな宇宙服に思えた。
着替えて終わり準備ができたのでアミのもとに戻る。
扉を開けるとアミが座っているのが見える。アミはいつもの普通な感じである。
「サイズは問題ないようだねムサシ。違和感はない? 」
「ピッチリしているけど嫌な感じはしない、問題ないと思う」
話していると、ナギとクリスが出てきた。
「あぁ、クリス、ごめんね。メガネはしてても良かったの」
「そうなのか? でも大丈夫だ。あの眼鏡には度が入っていない。ダミーなんだ」
クリスがそんな事を言う。そうか……伊達メガネであれはファッションだったのか……クリス……イイ、センスだ。
「それじゃ、行こうか? 」とアミが歩いていく。
俺達は後に続いた。
次の場所はエレベーターを降りて地下に移動した。扉が開くと、とてもSF的な雰囲気の天井が高い大きな部屋があった。
広い空間に数人が余裕を持って入れるくらいの卵型の大型カプセルがあった。
それが100個近くあるのだろうか? とにかく沢山あった。
アミ以外があっけにとられて呆然と眺めていた。
「手前のやつでいいかな? そこの3台を使おうか」とアミが言っている。
「なぁ? アミ、これから何をするんだ?」
「戦闘訓練だよ、完全疑似体験装置で戦闘訓練を行います。脳内シミュレーターって言ったらわかりやすいかな? 完全没入体験? 夢の中で起きてる感じっていうのかな? まぁ、そんな感じ?」
「風の噂で聞いていたのだが実際に体験できるとは実に興味深いな? ナギ?」
「電脳空間なのに体験中は現実として認識されてて死の戦場の恐怖を嫌というほど味わって、体験が終わったらしっかりと記憶に残っているってやつ? 」
「おまけにここの機械は脳内信号を外の機械に飛ばして加速時間の電脳中で体験させて元の脳に記憶を植え付ける、他にない特徴がある」
「これなのか? 安全なのにかなり怖かったって聞いてるけど? これなのーかー? 」とナギとクリスが興味津々でカプセルを見ていた。
「それじゃぁ、私はオペレーションルームに行くから、あとは通信でフォローするね。カプセルが開くから、中で座ってて」そう言ってアミは部屋の隅にある部屋に入っていった。
カプセルに近づくとSF感溢れる小粋な空気作動音がしてカプセルが開いていった。中には豪華なマッサージチェアに見えるシートがあった。
「ムサシ? ビビってる? 心配しなくって大丈夫だって、怖くないからさ」
ナギが俺を茶化してくる。
「へっ!! びびってなんていないさ!! 面白そうだと思ってたところさ!!」
そう、ナギに返してカプセルの中に入って座った。座るとカプセルは閉じた。薄暗かったが中は壁面が薄っすらと明るくなっていた。
アミの声が聞こえてきた。
「みんな、聞こえる? 返事して?」
「聞こえるぞー」
「オーケー、みんな聞こえるね」とアミの説明が始まった。
「ヘルメットが上から降りてくるから、それを装着してください。そして、ヘルメットからナノジェルが出てくるから驚かないでね。少し、ひんやりする程度でスグに落ち着くから。ついでに皮膚や髪の質が良くなるトリートメント機能もつけといたから。お得仕様にしておいたからね。ちなみに間違って飲んでも大丈夫です。呼吸補助ナノシステムまで付いてます。と言うのも椅子が倒れて最終的には水に浮く感じになるから心の準備をしておいてください」
いつものオーバーテクに髪質が良くなる親切機能や生命維持の安全設計が施されている。なんなんだろうなこの技術は? とか考えていたらヘルメットが降りてきた。
普通のヘルメットっぽい感じだ。被ってみるとピピッと音がする、その後に液体の感触があった。
ナノジェルが頭全体から背中の方に流れ込んでくる。最終的にはスーツの中にも浸透してきた。
「アミ? ごめん。今更なんだけど……トイレ行きたいときはどうしたらいいんだ?」
「そこでしちゃっていいーよ。ナノジェルがうまいこと包んで廃棄するから。身体やスーツに汚れがつかないようになってるから安心してくださいさ」
「おっおう、凄いなオーバーテクノロジー」
椅子が倒れて、体全体にナノジェルが纏わり付く感じになってきた。
椅子がフラットになってナノジェルが壁の隙間から出てきた。水に浮いているような感じになってきた。
いい感じにフラットになってベットのようになったシートに寝そべり、ナノジェルに包まれていた。
「はーい、皆さんリラックスしてー、次第に気持ちよくなって眠くなるから、そのまま夢に落ちていってねー」
「なー、アミ? 戦闘訓練って言ってたけどVRだっけ? やっぱり、シミュレーション訓練の中で死んだらヤバイことになったりするのか?」
「んー? 死ぬほど痛いぐらいかな? あと、すんごい怖い? 大丈夫大丈夫、実際には死なないから。ちょっと擬似的に死ぬだけだから。今まで実際に死んだ人いないから、問題ないよー。気楽に気楽にね」
「おい、待って、待って、いま死ぬとか聞こえたが?」
「そろそろ眠くなるよ? ムサシ? 大丈夫だって、向こうで戦って死んでも擬似的に死ぬだけだし」
「んー? そーなのーかー? そうだよなー」
「ナギとクリスはもう夢の中だよ? ムサシもさ、ほら寝ちゃってよ? 安心して、夢の中で死ぬだけだから? 死ぬための訓練なんだからさ、死なないと意味がないんだよ? 訓練なんだしね? VR訓練空間での擬似的なやつだからさ、VRで死亡だしね、安全安全!!」
先程の失態からだろうか? 編みがやけにトゲトゲしい。エロで失敗した際の恨みは怖いって誰かが言っていた事を思い出す。アミの何々だしねの部分が先ほどの失態からくるアミの失望と怨念じみた態度でで何々だ死ねに聞こえる気がする。
具体的にうと訓練だ!! 死ネ!!
俺の邪念がそう思うのだろう……俺はアミを信じている……アミはそんな事言わない子……
アミの声が聞こえる
「ムサシー? まだ起きてる? 起きてるねぇ……脳波的に起きてるなー? ちょっと気持ちよくなるオクスリ増やしましょうねー 」
聞いてはいけない様な単語が聞こえた。おいちょっと待てと言いかけた頃には意識が遠のいていた。
俺は眠りに入った。




