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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第2章 タンクウォッカ

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第24話 物騒な名前ほど美味しい料理

 俺たちは列車に乗り込んだ。


列車の幅はおよそ25mくらいだろうか? 反対側の扉までかなり距離がある。


乗り口付近からは通路、階段、エレベーター、幾つかの部屋が見えた。その広さに俺の中にあった列車の概念が崩れた。


そして、アミを先導に自分たちの部屋を目指した。


「今回は新人割引が使えたので少し豪華な4人部屋にしてみました。ゆったり出来て船での疲れが取れるかなと思ってね。さぁてと着きました。では、ご覧あれ」


アミがそう言って部屋の扉を開けた。部屋は応接間があるタイプでそれなりの広さを持っていた。


「ベッドルームは少し狭いけど個別になってます。そしてなんとお風呂付きです」


アミがそう言うとナギとクリスが喜びの声を上げた。


「お風呂があるの? アミちゃんナイス!!」


「サイボーグ化したとはいえ、生体部分もあるからお風呂があるのはありがたいわ」


ナギとクリスがアミに詰めより手を取り合って喜んでいた。


「私もお風呂に入りたかったの。思わず奮発しちゃった。空いてたのもあるけど、この部屋のタイプは人気があって、なかなか抑えられないんだ。ラッキーだったよ。お二人さん? お楽しみはまだあるよ」


アミが何かを含めた言い方をした。

それを見てナギとクリスが何かを思い出したようだった。


「アミちゃん? あれね?」


「アレだな?」


ナギとクリスが嬉しそうにアミを見ていた。


「ムサシと私は飲めないけどね。二人は楽しめるね。とは言っても他の料理でも楽しめるから。ムサシ。 安心して? 」


アミに雑に話を振られた。話を振られても何のことだか俺はわからない。料理の話をしていることはわかるが……。


「何に安心するかわからないけど? なんか美味しい食べ物とか飲み物でもあるん?」


「そっか、ムサシに説明するの忘れてたよ。お風呂でテンションが上ってて。ごめんね」


「お? おおぅ。それで、どう言うことなの?」


「この列車はテクノロジー的に進んでて、特に食料プラントが充実してるの。それと料理人の腕が良くて名物があるの」


「それは楽しみだな、期待して良さそうだな」


「荷物を置いたら、さっそく行きましょうか?」


とアミが説明してくれてる裏でナギとクリスがゴソゴソしていた。


「準備は出来てるわ!! アミちゃん!!」


「さぁ、いざ!! ゆかん!!」


どうやら二人はウッキウッキで準備をしていたようだ。

アミの荷物は長物と大きめのリュックだった。それらを傍らに置いた。俺は大きい軍用リュックを同じように置いた。

二人共そんなに荷物は多くないのですぐに準備はできた。

腹の具合もいい感じに空いている。体も気持ちも準備ができていた。


「では行きましょう!!」


俺達は欲望に従い颯爽と出発した。

この列車は凄まじく長い。列車の通路を歩いていく、車両を数えるのに飽きた頃にようやく着いた。

そこはカウンターバーがある洒落たウェスタン調の酒場に見えた。

見回してみるとテーブルの作りからダイナーやレストランにも思えた。そこには活気があり、多くの人が料理と酒を楽しんでいた。


「ウエスタン・サルーンって言うらしいよ? ムサシの時代より古いって聞いたかな?」


「あぁ、映画でこんな感じのを見たことがある」


入り口にはパタパタとスィングする胸からひざの高さまでのドアがあった。

店内の装飾は前に乗った船よりかなり豪華に見える。

カウンターバーの奥にはバーテンダーが居て、そのさらに後ろには酒が所狭しと並んでいた。


適当に席に座っているとウェイターの女性がメニューを持ってきた。


「タンクウォッカ2つ」


ナギがクリスと目を合わせて注文していた。


「ムサシ? 私に任してもらえる? パンツァージンジャー2つ、適当につまみをお願い」


アミが流れるように注文していた。

まぁ、問題はないだろうと思い、アミに注文を任せた。

メニューが気になるが後で見るチャンスがいくらでもあるだろうと考えていた。


「クリス? あの有名なタンクウォッカがついに呑めるよ? 」


「私も楽しみにしていたの。散々自慢されていたから。期待値が高まるわ!!」


二人が高揚しているのが手に取るようにわかる。


「なぁ? そんなに有名なのか? そのタンクウォッカって?」


「ムサシは知らなくても仕方ないよね。タンクウォッカはこの地方でとれるハーブと鮮度のいい特殊な素材がないと作れないんだ。

そして、戦う者の間ではゲン担ぎで有名なの」


アミが説明してくれる。


「こいつを呑むと生き残る確率が上がるとか、お宝をゲットするだの、ラッキーになれるだの……あとなんだっけ? クリス?」


「迷信だけどモンスターを寄せ付けないとかの香水的な効果があるとかだったかしら? ともあれ美味しいってのはよく聞くわ」


ナギとクリスが食い気味にアミの説明に情報を追加してくれた。


「それじゃ、俺達のパンツアージンジャーってのは?」


「タンクウォッカのアルコールを抜いて、代わりにジンジャーソーダーを使ったノンアルコールカクテルだね。タンクウォッカのノンアルコール版ってところかな? ジンジャー成分が強めだけどね」


しばらくするとウェイターが注文したそれらを持ってきてくれた。


色は黒系の強い赤茶色をしていた、氷のある上部は鮮やかな薄い赤黒に輝いていた。


先にタンクウォッカが渡された、次に渡されたパンツアージンジャーにはグラスの縁にライムらしきカットされた果物が添えられていた。


それぞれにグラスが渡り、アミが全体を見渡して乾杯の音頭を取り出した。


「んっん!! それでは皆に幸運が訪れますように!!」


グラスをぶつけ合い、グラスの中の液体を喉に流し込む。


爽快な炭酸と爽やかなジンジャーとライムの香りが立つ、後からスモーキーでスパイシーな複雑な味と香りがする。


美味しいことは美味しい、後味が慣れない味なので少し戸惑うが慣れてくると癖になる味と香りに思えてきた。


「結構いけるでしょ? ムサシ?」


「あぁ、なんか爽やかでスパイシーでスモキー? 複雑だけど、うまいなこれ」


そうアミに言うと満足そうな笑顔で俺に答えた。


一方、ナギとクリスを見てみるとリズミカルにむせていた。


「ンゴッフ!! エッフ!! 喉が凄い」


「ンッフ!! これ結構、強いのね? 聞いてはいたけど味わってみると流石ね……」


どうやらかなり強い酒のようだ。


「でも、慣れてくると美味しいって聞くけど? 厳しいかな?」


アミが二人を心配そうに見る。


二口目に挑戦する二人が覚悟を決めていた。


飲み始めると先ほどとは違う反応を見せた。結構、スルスルと飲んでいた。グラスを置いて深い息を吐く。


深い息を吐いて味と香りを楽しんでいるようだった。こちらを見ると一言。


「慣れると、ものすごい美味しいのこれ」とナギが言う。


「二口目から違う世界が味わえるの? これ凄いわ? 何ていうか? 凄い!!」


珍しく冷静なクリスが戸惑っていた。


それを見るアミは満足そうに笑っていた。


「皆、不思議と同じ反応するんだよね? 最初はむせるけど……二口目から美味しいって」


ナギとクリスは二人で見合わせて、それから嬉しそうにグラスを鳴らしていた。


タンクウォッカは二人に気に入られたようだった。


俺はタンクウォッカの味とかが気になったので聞いてみた。


「なぁ、お二人さん。その有名なタンクウォッカのお味はどんな感じなのかい?」


「そうだな……最初はイッキに喉が熱くなり、スグに爽やかなシトラス系のフローラルナ香りが来る、次に甘くてアルコールの苦味が少しあるが嫌味がないスッキリとした感じで、最後にものすごく甘いフルーツ系な余韻とスモーキーな香りがバランス良く味わえて実に心地よい……慣れるとその味と香りがたまらなく美味しく感じる」


クリスがうっとりとしてタンクウォッカを評価していた。


「すんごい美味しい」


一方、ナギは簡潔に表現していた。


「二人が満足そうでなにより、もう一杯いっとく?」


「かなり強いから何かお腹に入れたいかな?」


「それもそうね?」


「メニューメニューと」


女性陣が盛り上がってきた。


アミが二人に説明しながら名物料理のトレインステーキー、チキンウィング、オリーブとチーズ、タンクプロシュット等を次々に注文していた。


俺は流れに身を任せていた、こういうときは流れに身を任せる主義だ。


アミに任せていれば安心と考えていたら俺にメニューを渡してきた。


「ムサシも気になるの頼んでみる?」


アミがメニューを渡してくれた。


「サンキュー、どおれ」


メニューを眺めてみると料理の写真がなかった。

それらは文字で表現されていた。

割とよく見る料理の名前が並んでいたが幾つかは名前の前に物騒な言葉がついていた。


DDパイナップルパンチェッタ、RPGチーズ、HEATポテト、ボムズタリアータ、バクダンサケなど個性的なネーミングだった。


俺は不安になり、まともそうなやつを探した。物騒な響きのやつはきっと辛いとかやたら香辛料を使っているだろう気配がしていた。


「なぁ? アミさん? 無難なやつってどれかな? なんか物騒名前の料理があるんだけど?」


「んー? お腹にたまるのとかでいいかな? 私と同じのにしとく? お肉料理だけど」


「任した」


「OK、任された」


そう言うとアミはステーキやら肉料理を注文していた。

そしてナギとクリスはツマミと酒を注文していた。

俺達はアルコール班と食事班に別れた。


先に運ばれてきた生ハムやらのおつまみ前菜セットがやたら美味そうっだった。

生ハム盛り合わせはかなりのボリュームで彩りのより生野菜と一緒に盛られていた。

チキンウィングはソースが辛そうな色をしているが甘い匂いも漂わせていてお腹に直撃する感じだった。


中でもオリーブとチーズの盛り合わせが種類が豊富で美味そうな色合いをして盛り付けも含めて素敵な様相を漂わせていた。


最初は4人それぞれ手が届く範囲を攻めていたが、そのうちアレが美味いこれが美味いと勧め合い、充実した前菜を味わっていた。


「ハムが美味しいの。クリスこれヤバイ!!」


「はいはい、落ち着きなさい、誰も取らないし足りなければ追加もするから」


ナギとクリスがいつもの役割になってきた。

暴走するナギ、それを抑えるクリス、二人の関係が滲み出てくる微笑ましいやり取りだった。


そのうちメインの肉料理が出てきた、トレインと表現される長く巨大な肉であった。

熱々の鉄板に赤くが滴る、赤肉がソースに絡まれて出てきた。

肉の外側はカリッと少し焦げるくらいに焼かれていて中は赤々しくレアな感じであった。


ナイフで切ってみると重厚な肉質に滴る肉汁、たまらず口に運ぶ。

肉肉しい、実に肉肉しい、脂の甘さとガーリックの香りに塩気、肉の旨味が口内に広がる。


歯ごたえが抜群だが噛めば噛むほど濃縮された旨味に脳が喜ぶ。

野生の旨味だろうか? 溶けるような高級肉とは違う未体験の肉質だった。

無言でがっついていた。


「ムサシ? すごい勢いで食べてるけど気に入った?」


アミに声がかけられるまでモクモクと食べていたらしい。

我に返ると少し意地汚く思え、恥ずかしく思った。


「凄いでしょ、ここのお肉。噛めば噛むほど幸せって」


「こんな美味い肉は食べたこと無い、赤身のお肉を舐めてました。ごめんなさい」


俺とアミのやり取りを見ていたナギが肉を眺めていた。


「あたしもアレ食べたい」


「そういうと思って、ちゃんと頼んでますよ。おつまみ用のステーキを!!」


ナギの要望にアミは先を読んで頼んでいるようだった。

ちょうど、注文したステーキが運ばれてきた。

嬉しそうにするナギの隣でクリスが優しく微笑んでいた。


宴は盛り上がり、酒も食も進み、それぞれが満喫していた。

注文した料理の終盤も超えた頃、食事を楽しみ俺は満足していた。

だが女性陣は別腹がだった。


あんだけ食ってまだ入るんかいと口から出かけたがうまく飲み込めた。

ティラミスやらアイスやらを注文していた。


ナギがアイスクリームにウィスキーを加えたお洒落なモノを注文しようとしていたがクリスに止められてしょんぼりしていた。


アミが部屋でお酒を注文できるからお風呂に入ってから楽しんだらと提案していた。

ナギはナイスな提案とその提案に飛び乗っていた。


俺はそんな眺めを楽しみつつ、パンツァージンジャーをデザート代わりに注文して、優雅なひと時を楽しむことにした。

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