第22話 アースアイ
下船時にナギから連絡があった。目的地は一緒だから合流しようといった内容であった。
旅の仲間が増えることは良いことだと思えたので合流する事になった。
客船ターミナルで合流した。
訓練施設へ行くには中央施設から列車に乗換えて向かうとのこであった。
降りて中央施設まで歩いていくのかと聞くとアミはムサシを見てフムと言ってから答えた。
「この辺は治安はそれなりに悪いんだ。ムサシなんかが予備知識無しで歩いていたら間違いなく何かしらを盗られる。悪い場合は強盗に会うって感じかな? ナギやクリスだと問題なく散歩ができるだろうけど」
俺がゲンナリとしていたらクリスが話しに割って入ってきた。
「アミ? 私は問題ないけれどナギがこの辺歩いたらジャンク品やら車やらに夢中になって大変なことになるわよ」
「うん。ここの生産品って質が良くて、あたしが働いていた店にもよくあったよ。コストパフォーマンスが良いってのもあるけどマニアックな品が結構多く見つかるんだって。鹵獲品やら前線からの回収品やら発掘品やらが出回ってて……いけない。こんな話ししてたら掘り出し物を探したくなってきた。少し店を見てきてもいいかな? クリス? 」
「あんたは……資金なんて無いでしょ? サイバネ化の借金で首が回らなくなって外の仕事を受けられるように訓練しに来たんでしょ? ほら歩いた歩いた」
「あぁ、後ろ髪が引かれる……」
クリスがナギを引っ張っていった。ナギは子供が駄々をこねるようなすねた顔をしている。
年上のはずなんだが威厳がどこかに行方不明になっている。しかし、情けない声をしてクリスに甘えている姿は可愛くも思えた。
それを見透かしたようにアミが俺を怪訝な目で見てくる。 ジト目がとてもオレの心にこそばゆい感じがする。
「ムサシも行きたい? 」
俺の勘ぐりは間違っていたらしい。俺が車や機械に興味が行っているとアミは思っているらしい。
「戦車にも興味があるけどさ、どちらかって言うと俺はやっぱり軍艦の方が気になるかな? 」
「そっか、車は手に入りやすいし、カスタマイズも出来て愛着が沸く人が多いからね。ムサシも欲しいのかなと思ってさ」
「正直、どうやって稼いでいけるか不安で何をするかも決めかねているんだ。一応はお勧めされた船に乗って輸送護衛任務をするってのを第一候補としているんだが……」
「それでいいと思うけど。探索は探索で魅力が多いよ? 残念だなぁ? 指導してあげようと思ってるんだけどなぁ? 」
「魅力的な誘いだな。思わず乗っかりたくなってくる。アミは凄腕だったよな? 技術を学ぶにはそれもありかな……」
「まぁ、訓練で適性が見えてくるからさ、それからゆっくりと決めてみたら? まぁ、私は探索についての魅力をしっかりとムサシに教えるつもりだけど」
アミがコロコロとした笑顔で笑っていた。
アミの先にナギとクリスがいる。その先には3連シャトルバスが見えた。それに乗り込むようだ。
「2連バスまでは見たことがあったが3連バスは初めてだ」と言うと「まだまだこんなもんじゃないよ? こんなんで驚かないでね」とアミに言われた。中央施設にはこのシャトルバスで行くとのことだった。
車内に入るとざわついていた。乗り込むとバスは走り出した。バスの走行音もあって、さらに話が聞き取り難くなった。
アミにこのざわめきは何事かと聞いてみる俺に耳打ちして話してくれた。
なんでも防衛隊が大物敵性体の群れを倒して帰って来たらしい。これから解体業者やら買取業者やらで大賑わいになるとのことだ。
よくあることで街が潤って色々と羽振りがよくなる連中やら商品が飛ぶよう売れるやらで街全体で盛り上がるとの事だった。
そこの電光掲示板にでてるよとアミが教えてくれた。
教えてくれたことに礼を言った。ざわめきがひどくなってきて話を中断した。
アミがしかたないねとジェスチャーをしている。
街を眺めながら先程のアミの提案を思い出していた。
正直、その提案に乗っても良いと思う。ツテがあるのは大事なことだ。
アミはこれまで俺をこの世界に順応させてくれた。少々エッチなことを俺がやらかしても許してくれていた。それもあって十分信用できると考えていた。
しかし、それはそれとして、どうにも最近、軍艦の事が気になっている。
モテるという話を聞いたのもあるが軍艦の雄々しく猛々しい姿が妙に脳裏に焼き付いていた。
船に乗りたいという心の衝動が段々と強くなってきている事を自分自身でも感じている。
船に乗ってお宝探索の旅に出るという理想像がなんとなく目標として存在していて、選択してみてもいいんじゃないかと思えている。
それで敵なんかを倒しちゃったりして部品取りするハンターだか海賊的な感じなんかだったら夢が膨らんで広がり興奮して鼻息が荒くなってくる。
大体の方向性は決まったが、とりあえず今は訓練に集中しようと、そのために出来る事をしておこうと思っていた。
やがてバスは中央施設に入っていった。
長いトンネルを進み行き交う車はかなり増えていた。
輸送車両が多かったが戦闘車両もそれなりにいた。
たまに大型敵性体の素材を荷台に乗せて走る大型輸送車両も通っていた、周りの反応を見るに当たり前の光景であることがわかった。
そのうち、かなり開けた空間に出た。そこは巨大なトンネルのような長い空間であった。
天井が10階建てのビルぐらいの高さで巨大なトンネルに沿って幾重にもビルが並んでいた。
バスは止まり乗客は下車した。
アミ達に誘導されるまま歩いていった。
人々の流れができていて、流れに乗るようにひとつの建物に入って行った。
アミが切符を買ってくるから待っててと言ってどこかに行ってしまった。
ナギとクリスもアミと一緒に行ってしまった。
周りは待合室のように椅子が沢山、並んでいた。
周辺にいる人々も荷物を置いたり座ったりしていた。
俺は切符という単語や施設案内板等から、ここは駅施設である事、そして今いる場所がやはり待合場である事に納得していた。
よく見回してみれば遠くにホットドッグの売店やカフェなんかがあった。道理で似ているはずだと思った。そして世界が変わっても、この手の施設はそれほど変わらないことに安心していた。
そんな感じで和んでいると俺の横辺りで何か音がして視線を移動した。その辺りにショールを頭から肩にかけて被っている小柄な人物が座っていた。
横目でちらりと見てみると歳は自分より年下で身長から中学生ぐらいだろうか……海外といってもここでは人種の坩堝となっていて、どこから来たとかはあまり関係がないが、おそらく東欧辺りもしくは北欧ら辺にいるであろう整った顔の美少女がそこに居た。
東欧あたりの旅番組で見たバザーのおばちゃん辺りが防寒の為に頭から肩まで覆えるようなデカイ生地を身に着けた、白ベースの民族的な模様が描かれたショールから覗くプラチナブロンドの髪が控えめに煌き、目鼻立ちが綺麗でどこからどう見ても超絶クオリティのお人形さんとでも言いたくなるような美少女であった。
そのうちお互いの視線が重なる。俺は美少女の吸い込まれそうになる青みが強い褐色の景色を閉じ込めているような瞳を見つめて呆けていた。
「何か? 」と少女が透き通るような声で俺にコンタクトをしてきた。
あまりに綺麗で見つめていたと言いかけたが流石にまずいと考えて「その頭に被っている布地がとても綺麗で気になってしまった」
と伝えた。
「そう、ありがとう」と感情に起伏がない感じで彼女は答えた。
会話のキャッチボールが続かない。俺は言葉に詰まってしまい二人の間に微妙な空気が漂い始めた。
俺はこの状況をどうにかしようと必死に考えていた。
考えるが彼女の瞳に見つめられると何も言えなくなってきてしまう。そんな不思議な魅力のある瞳であった。
俺は薄水色と淡褐色の混じったような、あえて言うなら瞳の中に地球を閉じ込めたようなアースアイに見つめられていた。




