第2話 ファンティアの街と市長ハウブス
目覚めた世界は軍艦が歩行していた。
艦の横腹から2脚や4脚の脚がある。
荒野を進んでいる光景が違和感を覚えつつも
振動と轟音で現実が殴りがかってくる。
目覚めた施設の付近で日焼けの似合う少女に保護されてから、数時間車に揺られている。
この世界の状況について途中で尋ねてみたところ、都市管理部と組合が後で詳しく説明してくれるとのことで、今は簡単な概要だけ教えてくれた。
人類は冷凍睡眠により絶滅をかろうじて逃れたが瀕死もいい所だった。
多少の差もあったが、いくつもの施設が次々に目覚めさせていった。
1期生存者たちは、冷凍睡眠施設を利用してシェルターを作って生活した。
生存に必要なものは、自動工場や特殊なプラントで賄われていた。だが、正体不明の動力源や資源を必要としないそれらの施設を恐れる人々や、その不思議な仕組みに好奇心を抱いた者たちが、外の世界を求めるようになった。
外に出てみると人類を襲う敵性体が多く存在して、とても危険だという事が分かった。
しかし、人類の進歩は止まらなかった。
文明で使われていた車や武器、物資が生産可能であったため、人々はそれらを精神的な拠り所とした。
それらは、正体不明の設備とは異なり、理解できる範疇のものであり、安心感を与えた。
経験を通じて倒せる敵と倒せない敵を把握し、多くの困難を乗り越えることで、人類は、この世界への適応を果たした。
少女が運転をしながら、そのことを説明してくれた。
「すっごい簡単に言うとこんな感じ、ここ100年の話だよ」
「最初に起きた人たちは100年前かよ、ツッコミたい情報が多すぎて困る」
「まぁ、徐々に慣れていきなよ、都市にいればそんなに命の危険にはあわないからさ」
「そんなに……外は危険なのか」
外は変わらず荒野の風景だった。
きっとひどい顔をしているだろうな、と自嘲気味に考えていたその時、窓の向こうに、あるものが目に飛び込んできた。
「なぁ、アミ? 歩く船って他にもいるって言ってたよな」
「あー? うん、あるね」
「ちょっと離れたところにさ、なんかいるんだが、さっきの戦艦よりは小さいと思う」
少女は俺の居る側の窓を見た。脇見運転をしているが問題はなく、デコボコがある荒野を器用にひたすら走らせた。
車両はバウンドはするがでかい岩も少なく、しばらく手放運転をしでも安全走行できると思えた
そう思えたので彼女が見やすいように座席を少し倒し、窓が見えるようにした。
「あーあれはー? 駆逐艦だね、最近ここいらをうろついているって言ってたやつっぽいね。こっち来ちゃったんだ」
「なぁ、アミ、あれも危なくないの?」
「野生の歩く船は基本的に中立だよ、攻撃されれば反撃してくる」
「野生? その、船は街にはいかないのか? 」
「野生艦が街に近づいて来たって話は特に聞いたことがないかな? 」
「4本脚か、、、、、、2本よりはましに見えるな」
「2本脚を見れたんだ。きっと良いことあるよ。ここいらでは幸運のクローバーみたいなもんなんだよ。あたしは2本脚、違和感あるんだけどね。でも、4本は可愛いよね。それ以上増えると6本だとか、虫みたいであんまり好きじゃないかなぁ? 」
「可愛い? 可愛いって何よ?」
「可愛くない? 船体に大き目の4本脚、ちょこちょこ動かしてさ、一生懸命でさ。2本より、きっと安定感があるよ」
「まぁ、安定感はわかる気がする」
遠くに居るから小さいのか大きいのかよくわからないが、構造物は全体的に低く縦方向には長さが少ない、横方向に流れるラインはシャープな印象を受ける。
「船体に対して脚がでかすぎる、ごついイメージが来るな」
「大型爬虫類の脚って感じよね」
「たしかに、ワニとかを連想させるな」
そうこう評論を重ねていると艦は方向を変え遠ざかっていった。
「もうちょっとで街に着くよ、これから手続きが大変だよ、頑張ってね」
「いつの時代もお役所は手続きが大変なのか……」
役所仕事が遅いのは仕方が無いとフォローをアミは言っていた。
なにせこの世界はやる事が多すぎる、都市防衛から物資分配だとか。
アミが多種多様な仕事の苦労をしみじみと語っていた。
話を聞くのに飽きてきた頃、街が見えてきた。
とても大きな平べったい台形の山の上に防壁と建物が見える。
中央に小さめの山があり、そこにちょっとした城のイメージを受ける建物があった。
だんだんと近づくとその大きさに圧倒される。
巨大な台形の岩山に、かろうじて見えるほどの小さなゲートが張り付いていた。
近くに行けば、かなり大きく人口的な金属のゲートがあり、そこを守るように建物がある。
「ちょっとガードの人と話してくるから待ってて」
「わかった」
ゲートに近づくとアミはすぐそばの建物に消えていった。
代わりに男が出てきた、近づいてくる、日に焼けたごつい男だった。
「新顔か? よく来たな、ここはファンティアの街だ!! クー! 久しぶりにこのセリフを言えたぜ! やっぱ、門番やっててよぉ、お約束を言えるのはやっぱ気分がいいぜ」
「あっ、どうも、ムサシです、こんにちわ」
「俺は門番Aだ よろしくな」
そんなやり取りをしているとアミが帰ってきた
「おっちゃん、何時もの言えてうれしそうね」
「おうよ、門番の楽しみの一つだ」
「それはなにより、うれしいついでに門を開けてくださいな」
「悪い悪い、新入りからかってたたらあけるの忘れてたは」
男は建物に戻る、しばらくして門は重たい金属の音を立てて開き始めた。
中は明るく、広く、多くの金属の大きな支柱が沢山見える。
「このまま市長事務所まで行っちゃうね」
「よろしく頼む、さっきから圧倒されてばっかふだよ」
「疲れるのはこれからだよー」
アミはなんとも言えない小悪魔的な笑顔を見せ運転に集中した。
「外と違って狭いから少し集中するね」
道は地下駐車場を思わせるコンクリートの壁、金属の柱を持つ空間だった。
ただそれがやたら巨大な事を覗けばの話だが。
荒野と違い道は幾つにも別れ、多くのトンネルが横道にあった
狭いと言っていた事に疑問を持つがだだっ広い紺屋に比べれば
およそ50mの幅を持つ道路にすれ違う車両が存在するこの道は狭いのかもしれない。
すれ違う車両が門を過ぎたあたりから見え始めた。
輸送車輌が殆どだがまれに戦闘用車輌が通り過ぎる
技術的には自分がいた時代に近いようだが、後でこの世界の科学力を聞いてみよう。
所々に信号機もありそれなりに交通ルールもあるらしい。
ふと気がつく、書かれている文字が左側通行となっている。
英語もあった、そして見たことのない字もあった。
何故かそれらを理解することができた。
英語は苦手だった、まともに読めるはずがないのだが……
だいたいあの文字はなんなんだ、俺は知らないはずだが理解できる。
その事を聞したが車が止まった、どうやら目的地に着いようだ。
駐車場らしきところに車を止め、促されるままkるまを降りる。
「まずは市民登録から行くよ、着いてきて」
そう言うと彼女は駐車場付近にある扉に向かった、階段があるようだ。
市長事務所と書かれたプレートに単純化された階段のピクとグラムが描かれている。
重そうな扉を金属音を立てながら開く、内部は冷凍睡眠施設と同じように
無機質で温かみの無い素材だった。
「この階段結構長いよ、大丈夫?」
「起きてからすこぶる順調だ、前より健康になった気がする」
「最近起きた人達はなぜかみんな体力があるんだよね、あたしなんか息切れてきちゃった」
「体力はそんなにあったほうじゃないんだがかなり楽に登ってるな俺」
少女は少し呆れたような不思議な顔してまた階段を登り始めた。
しばらく登り続け幾つかの扉を通過して市長事務所と書かれたプレートのある扉まできた。
「やっとついたいい運動になるよ、まったく」
「不思議だ、まだまだ登れそうだ、、、、どうなってんだ?」
不思議に思っているとアミは扉を開けた、開かれた扉の向こうには綺麗な事務所があった。
「ムサシ、こっち来て」
アミが少し離れた場所で手を振っているのが見えた。事務所の中は数えるほどしか人がおらず、がらんとした空間が広々と感じられた。
少し歩いて、対面式カウンターに向かう。
そこには西洋人的な感じがする女性が居た。
アミと楽しそうに話している。
「はじめまして市長のハウブスです、目覚めたばかりでアミに見つけてもらえるなんて幸運ね」
「本当にそう思う、人類が酷いことになったと言われて、放り出されて、歩く戦艦見て
頭が混乱してる時に麗しい案内人に見つけてもらえて助かったよ」
「彷徨って不幸な事になるケースもあるので、定期的に人を派遣しているんです。では現状についての説明をしますので、こちらの部屋にどうぞ」
「市長、私に案内のポイント付けといてね、今日はご馳走にするんだ」
「アミちゃん、お仕事お疲れ様でした。また、よろしくね」
市長とアミは、お互いにコミカルな動きでジェスチャーサインを送りあった。
「アミ、きちんと礼を言ってなかったな。ありがとう案内してくれて助かったよ」
「どういたしまして、あっそうだ市長ムサシに連絡先登録してよ、案内してあげる」
「わかりました。見つけたのアミちゃんだしね。そのほうがいいかな。それに案内のポイント結構高いもんね」
「そゆこと。ありがと、市長。じゃ、ムサシ、またね」
アミは、そう言うと愛想のいい笑顔で部屋を出て行った。
「本当に幸運だったんですよ、出てすぐ見つかる人ってまれですから、それにあそこは……まぁ、まずはご説明ですね」
「ええ、お願いします」
部屋に通されると、まるで小さな会見場のような光景が目に飛び込んできた。プレゼンにでも使うのだろうか、机と大きなモニターがあり、その前にはソファーが並んでいる。
「私と貴方の二人しかいませけど、こっちのほうが大きいし。こちらで説明しますね。では始めましょうか」
ソファーに座ると急に落ち着いてきた。
そう言えば、市長って美人で若いよな。
スレンダーな姿が事務服ともスーツとも取れるいでたちで、全体の雰囲気は映画の中にでもいる感じのエルフっぽいイメージを抱かせる。
耳は普通の人間型だけど。
こんな状況でエルフ耳について考えているなんて、随分と心に余裕ができたものだと、自分でも呆れてしまった。
これから大変だというアミの言葉を思い出し、改めて気を引き締める。




