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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第1章 ながされて歩行軍艦
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第2話 ファンティアの街と市長ハウブス

何度も言う、目覚めた世界は軍艦が歩行していた。

艦の横腹から2脚や4脚の脚がある。

荒野を進んでいる光景に違和感を覚えるが振動と轟音で現実が殴りがかってくる。


目覚めた施設の付近で日焼けの似合う女の子に保護されてから、数時間も車に揺られている。

途中でこの世界の状況を聞いてみたが都市管理部とか組合で詳しく説明することになっているので二度手間になるよと彼女は言った。しかし、色々と気になって仕方がないのでそれでもいいから頼むから教えてくれと頼むと「じゃぁ、簡単にだよ」と運転をしながら話してくれた。


その内容はだいたいこんな感じだった。

人類は冷凍睡眠により絶滅をかろうじて逃れたが瀕死もいい所だった。

多少の時間の差もあったが幾つもの施設が次々と稼働を始め、人々が目覚めていった。


最初の1期生存者達は冷凍睡眠施設を利用してシェルターを作って生活した。

施設は自動工場や特殊なプラントで生存に必要なものを得られていたが正体不明の動力やリソース資源も必要としない自動工場や特殊プラントを恐れた人々や好奇心旺盛な者達が外に出ることを望んだ。

外の世界を探索してみると、外は人類を襲う敵性体が多く存在してとても危険な事が分かった。


しかし、人類はそこで歩みを止めなかった。

何せ自分達のよく知る車や武器弾薬、戦う為に必要なものは自動工場やプラントで生産され、手に入れていたからだった。


それらはよく分からない不思議で謎の多い、シェルターの設備に比べればとても心強く、そして安心できた。

武器を手にした人々は倒せる敵、倒せない敵を経験で知っていった。

人類の驚異となる敵性体の事を知り、傾向と対策を見つけた。

理不尽な環境にも多くの挫折と不幸を経験するも犠牲を払って、なんとか生き残る希望を見つけることが出来た。


そうして、安全な施設に籠もる者、危険を顧みずに勇敢に探索に出る者、それぞれで世界に適応していった。




少女が運転をしながら説明してくれた。


外の風景は代わり映えのしない、赤茶けた荒野が流れている。


「すっごい簡単に言うとそんな感じ、ここ100年の話だよ」


「最初に起きた人たちは100年前かよ、ツッコミたい情報が多すぎて困る」


「まぁ、徐々に慣れていきなよ、街にいればそんなに命の危険にはあわないからさ」


「そんなにね、、、、外は危険なのね」


きっと、自分は苦虫を噛み潰した間抜けな顔をしているに違いない、そんな事を考えていると窓の景色に気になるものを見つけた。脚のある歩く船だ。


「なぁ、アミ、歩く船って他にもいるって言ってたよな」


「あー? うん、いるね」


「ちょっと離れたところにさ、なんか居るんだが、さっきの戦艦よりは小さいと思う」


少女は俺の居る側の窓を見る。一瞬、運転中で危ないと思ったが平坦な荒野がひたすら続いている、ここでは地形で多少バウンドはするがでかい岩も少なく、しばらく手放しでも安全に走れるものだと考えを修整した。

そう思えたので彼女が見やすいように座席を少し倒し、遮っている俺の体をずらして窓が見えるようにした。


「あーあれ? 駆逐艦だね、最近うろついているって言ってたのこっち来ちゃったんだ」


「なぁ、アミ? あれも危なくないの?」


「野生の船は基本的に中立だよ、攻撃されれば反撃してくるけど」


「野生? 」


「野生っていうのはね。AI制御で動いてる何処で作られたのかもかわからない、それで野生の船」


「すげぇなそれ。その野生の奴は街には来ないのか? 」


「街に近づいて来たって話はあんまり聞いたことがないかな?」


「4本脚か、、、、、、2本よりはマシに見えるかな? 」


「そうだね。4本は可愛いよね、6本だと虫みたいであんまり好きじゃないかな? 」


「可愛い? 可愛いって何よ? 」


「可愛くない? 小さい体に大き目の4本脚、ちょこちょこ動かしてて、一生懸命でさ。だいたいさ、2本より安定感があって、どっしりと大地を踏みしめてる感じが良くない? 」


「まぁ、安定感はわかる気がする」


遠くに居るから小さいのか大きいのかよくわからないが駆逐艦と言われたその船の構造物は全体的に低く、煙突と思われるものも戦艦に比べかなり小さくまとまっている。


船のの印象としては横方向に流れる舷側ラインがとてもシャープな印象を受ける。


「船体に対して脚がでかすぎる、ごついイメージが沸いてくる」


「大型爬虫類の脚って感じよね」


「たしかにワニとかオオトカゲとかを連想させるな」


そうこう評論を重ねていると艦は方向を変え遠ざかっていった。


「もうちょっとで街に着くよ。これから、お役所の手続きが大変だよ。頑張ってね」


「いつの時代もお役所は手続きが大変なのか……」


お役所仕事が遅いのは仕方が無いことなのとをアミは謎のフォローをしていた。


なにせ、この世界はやる事が多すぎる。都市運営、防衛、物資分配、人の問題から敵と自然環境、きりがない。


アミがこの世界の苦労について、しみじみと語っていた。

大半が訳がわからなかったが……




少し愚痴を聞くのに飽きてきた頃、地平線に重なる白っぽくも赤茶色にも見える太い線が見えてきた。

地平線はボヤケてゆらゆらと揺れているように見える。

近づくにつれ、それがとても長く大きく平べったい形状をしていることに気がついた。

アミが双眼鏡を渡してくれた。揺れる中で覗いてみると、とてつもなく長い白と茶色の台形があった。その台形の中心辺りにちょこんとした緑に覆われた山が覗いていた。


てっぺんに何かあったように見えた、揺れと格闘しながら確認すると山頂に、ちょこんとした構造物があることがわかった。


山頂に気を取られ、近づく台形が視界に入ってきた。改めて見てみると荒野に水平線を埋め尽くす位の膨大な長い岩山があって、岩山の上方が灰色の壁できていた。


スケール感覚がおかしくなってくる。


だんだん近づいてくると、その大きさに圧倒される。視界を埋め尽くす巨大な岩壁になる。

その手前にはごちゃごちゃとした建造物や岩肌と同じ色をした四角い建造物があった。

双眼鏡を外して、あれはなんなんだと聞いてみる。

少し笑ってあれが街だよと教えてくれる。


巨大な台形の岩山にくっついた見えないくらいの小さなゲートに気がつく。

その周辺には岩壁よりは低いが城壁の様なビル集合体に見える構造体があった。


しばらく走ってると視界から空が消えた。

窓から乗り出して壁の上の方を確認すると先程見えていた中央らへんの緑に覆われた山が見えなくなっていた。横を見てみると幾つものビルの屋上が連結して出来たアーケードのバケモノみたいな構造物が連なっている巨大集合建築物があった。それは一つの屋根を共有して作られた集合ビルの街であった。




近くに行けばかなり大きく人口的な金属のゲートがあり、そこを守るように建物がある。


「ちょっとガードの人と話してくるから、そのまま車で待ってて」


「わかった」


ゲートに近づくとアミはすぐそばの建物に消えていった。


代わりに男が出てきた。なんだか近づいてくる、よく日に焼けたごつい男が歩いてきた。


「新顔か? よく来たな、ここはファンティアの街だ!! クー! 久しぶりに言えたぜ! やっぱ!! 門番のお約束を言えるのは気分がいい」


「あっどうも、ムサシです、こんにちわ」


「俺は門番Aだ よろしくな」


そんなやり取りをしているとアミが帰ってきた。


「おっちゃん、何時もの言えてうれしそうね」


「おうよ、門番の楽しみのひとつだ」


「それはなにより、うれしいついでに門を開けてくださいな」


「悪い悪い、新入りをからかってて、開けるの忘れてたわ!! 」


そう言って、男は建物に戻る。しばらくして門は重たい金属の音を立てて開き始めた。


中は明るく、広くて多くの金属支柱が見えた。


「このまま、市長事務所まで行っちゃうね」


「よろしく頼む、さっきから圧倒されてばっかだよ」


「疲れるのはこれからだよー」


アミはなんとも言えない小悪魔的な笑顔を見せていた。


「外と違って狭いから、少し集中するね」


道は地下駐車場を思わせるコンクリートの壁、そして幾つもの金属柱が見えた。

やたら巨大な空間であったが不思議と外の自然光並の明るさがあった。


そのうち、ゲートをくぐり道はせまくなり幾つもの分かれ道を通過する。多くのトンネルが横道に見えた。

すれ違う車両がゲートを過ぎたあたりから増え始めた。輸送車輌が殆どだがまれに戦闘用車輌が通り過ぎていた。技術的には自分がいた時代に近いようだが、後でこの世界の科学力を聞いてみようと思った。


狭いと言っていた事に疑問を持ったが、およそ50mの幅を持つこの道では、だだっ広い荒野に比べれば、すれ違う車両もあって狭くも思えるのだろうと勝手に納得していた。

所々に信号機もありそれなりに交通ルールもあるらしい。

ふと気がつく、書かれている文字が左側通行となっている。

英語もあった、そして見たことのない字もあった。

何故かそれらを理解することができる。英語は苦手だった、まともに読めるはずがない。だいたいあの文字はなんなんだ。


とそんな事を考えていると車は停車した。アミがシートベルトを外して車を降りた。俺もアミに続く。


「まずは市民登録から行くよ、着いてきて」


そう言うと彼女は駐車場付近にある扉に向かった、奥には階段があるようだ。


市長事務所と書かれたプレートに単純化された階段のピクトグラムで描かれている。


重そうな扉を金属音をさせながら開く、内部は冷凍睡眠施設と同じように


無機質で温かみの無い素材だった。


「この階段、結構長いよ。大丈夫?」


「起きてからすこぶる順調だ、前より健康になった気がする」


「最近、起きた人達はなぜかみんな体力があるんだよね、あたしなんか息切れてきちゃった」


「体力はそんなにあったほうじゃないんだが……かなり楽に登ってるな、俺」


少女は少し呆れたような不思議な顔してまた階段を登り始めた。


しばらく、登り続けて幾つかの扉を通過した。市長事務所と書かれたプレートのある扉でアミが止まった。


「やっとついた!! いい運動になるよね」


「不思議だ、まだまだ登れそうだ……どうなってんだ? 俺の体」


不思議に思っていると困惑する俺をそのままにして、アミは扉を開けた。開かれた扉の向こうには綺麗な事務所があった。


「ムサシ、こっち来て」


アミが少し先で手を振っている。事務所には数人しかいなくて、がらんと広々とした空間であった。


少し歩いて、対面式カウンターに向かう。


そこには西洋人的な感じがする女性が居た。亜麻色の艶のある髪をローポジションのポニーテールをベースにアレンジヘアさせて纏めていた。洒落っ気もあるが事務服のようなスーツにも見える服装のせいでキリッとした印象を受けた。

顔立ちは北欧的な冷たさを感じる雰囲気を持った美女ではあるが、ころころとした笑顔のおかげで柔らかで温かみのある優しい印象を覚える。

その女性はアミと楽しそうに話していた。


そのうち、視線をこちらに移して微笑んだ。


「はじめまして市長のハウブスです、目覚めたばかりでアミに見つけてもらえるなんて幸運ね」


「本当にそう思います。人類が酷いことになったと言われて、放り出されて、歩く戦艦見て、頭が混乱してる時に麗しい案内人に見つけてもらえて助かったよ」


「さ迷って不幸な事になるケースもあるので定期的に人を派遣してそのういます。では現状についての説明をしますのでこちらの部屋にどうぞ」


「市長、私にポイント付けといてね。今日はご馳走にするんだ」


「アミちゃん、お仕事お疲れ様でした、また、よろしくね」


市長とアミはお互いにコミカルな動きでジェスチャーサインを送りあっていた。


「アミ、きちんと礼を言ってなかったな、ありがとう案内してくれて助かったよ」


「どういたしまして。あっそうだ市長! ムサシに連絡先登録してよ。近いうちにきちんと案内してあげる」


「わかりました。見つけたのアミちゃんだし、案内のポイント結構高いもんね」


「ありがと、市長。じゃ、ムサシ、またね」


アミはそう言うと愛想のいい笑顔で部屋を出て行った。


「本当に幸運だったんですよ。出てすぐ見つかる人ってまれですから。それにあそこは、、、、

まぁ、まずはご説明ですね」


「ええ、お願いします」


部屋に通されると、小さな会見場の様なこれからプレゼンを行うぞといった感じの机や大きなモニター


それを見る観客席があった。


「私と二人ですから、こっちのカウンターで説明しますね、こちらへ」


そういうと壁の隅にあるモニターと小さなカウンターがある場所へ案内された。


「では、始めましょうか」


そういや、市長って美人で若いよな、スレンダーな姿が事務服ともスーツとも取れるいでたちをしてるけど


映画に出て来るエルフっぽいイメージを抱かせる、耳は普通だけど。


随分と心に余裕が出来たもんだと自分で呆れながら、アミが言っていた、これからが大変だと言う言葉を思い出しつつ、席に着いた。

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