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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第2章 タンクウォッカ
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第14話 身体調査

 宴の後、自宅に帰ってからナビ子に訓練関係の連絡が来ていることを知らされた。

それは早朝から軍施設に行って欲しいといった内容だった。


が、昨日は色々あって疲れていたのでナビ子に出発時間に合う様に早めに起床するように設定し力尽きて、そのまま寝てしまったようだ。


だが、なんとかナビ子に叩き起こされ、俺は早めに起きて訓練の支度をしていた。


こちらに来てから睡眠時間が少なくなったように感じる。それでいて疲れは無く体は快調だった。


まぁ、脳みその方は寝ぼけてはいたが。シャワーを浴び、寝ぼけている脳みそを叩き起こしていた。シャワーを終えて着替えが終わる。次に自分がしなければいけない作業のことを考えていた。


コーヒーを啜りながら冷凍睡眠施設から持ってきた荷物を見ている。

考えてみれば中身をろくに確認していなかった。

丸ごと持って行けそうだったのでそのまま背負って以降とも考えたがそこそ時間があったので確認してみる事にした。


テーブルと床に並べてみているが、いまひとつ理解することができないものがある。

護身用の拳銃形のテーザー銃、スタンガン機能を持っている大き目のサバイバルナイフ、水筒、サバイバルキット、緊急治療キット、携帯食料、腕につける携帯端末、多目的端末、よく分からない大き目の袋が幾つか。


これらをバックから取りだして確認していた。


とりあえず、マニュアルがあった事を思い出して多目的端末で読んでいた。

その中で護身用武器についての情報を発見したので実際に色々と試した。

一通り問題なく使えると思う。


銃に関しては撃つわけにもいかないので安全レバーを弄ったりバッテリーの確認をした。


スタンガン付きナイフに関しては電撃の破裂音が正常に稼動していると判断して確認を終えた。


そして服についていた良く分からなかった出っ張り、大きめの収納スペース、取付金具等の情報を見つけたので試していた。


よく分からない大き目の袋のひとつに護身用武器のホルスター、タクティカルベスト、タクティカルキャップなどが入っているとの事なので取り出して、色々な部品と悪戦苦闘していた。


これらと格闘しているとアミから通信が来た。


「おはよー。起きてる? 心配なので早めに着ました。」


「おはよう。起きているよ。今、装備品と格闘しているところだ」


「もうすぐ部屋に着くけど手伝おうか?」


「助かる。このタクティカルベストって言うのか? こいつにつけるオプションが正直分からない」


「OK、すぐ行くよ」


しばらくして、アミが部屋に来たので迎え入れた。


朝からこの娘は元気ではつらつとしている。


笑顔がとてもまぶしい。


「お邪魔します。 どれどれ。 うわー。随分とまぁ、お店開いてるね」


「最低でも護身用武器を身に着けられる状態にしたかった、ホルスターを先につければいいか? ベストを先に着るかすらわからないんだ。とりあえず腰の辺りにホルスター付けれそうだったから付けてみたんだ。 合ってるかな?」


そう言って後ろを向いて格闘した成果をアミに見せた。


「間違っては居ないけど……ムサシって銃とか使ったことないよね? ムサシのいた時代と日本の事を資料で読んだけど、銃とか必要のない所だって……」


「あぁ、狩猟でもしない限り民間では銃は持てないね。ましてや、子供じゃ持てないな」


「良いところだね。 私なんか10歳でライフル担いでたかな? まぁいいや、とりあえず。そこにあるテーザー銃を腰のホルスターに入れてみて。 取り出しやすかったそれでいいと思うよ。 今はね」


今はというのが気になったが言われるままにテーザー銃を入れてみて、取出し具合を確認した。


「すんなり出せるからこれでいいのかな?」


「無理してる様子もないからいいと思うよ。 それでどこまで確認したの?」


「武器についてマニュアルを読みました。 それでこのベストやホルスターのところを試しながら読んでいたところです」


「そうだね。 他はっと。 携帯端末はまだいいかな? 緊急関係は…シェルターについては見た?」


「見ても居ません」


「すぐ終わるから説明するよ」


アミの解説が始まった。


サバイバルキット、緊急治療キットについてはさらっと終わった。


次にシェルターについてだ。


この世界では異常現象アノーマリーがあり大規模レベルの異常気象が起こることがたまにある。


一般的には磁気嵐、電磁気嵐、ごくまれに正体不明で様々な現象が起こるそうだ。


正体不明と言うのは妙な事が起こるが再現性の少ない現象が多いので取り敢えず正体不明とされているそうだ。


1例としては突然回りに炎の柱が発生するが近距離ではそれほど熱くなく温い程度、だが炎の柱に接触すると爆発的に炎上する。


そんな感じに様々現象が報告されているがとてもバリエーションに富んでいて危険らしい。


これらの障害に遭遇して建築物や乗り物等に退避不可能な場合、屋外作業中で間に合わない場合に使用するシェルターが存在する。


そのシェルターはこぶし大に圧縮されており、ボタンひとつで人間二人程が入れる寝袋のような柔らかであるが頑丈なシェルターに展開する。


そしてまたボタンを押せば収納され、こぶし大の大きさに戻る。。


実際に動作を見せてくれて部屋にシェルターが広がりった。


俺はシェルター生地に埋もれた。


「おわ!! すごいなこれ。とりあえず退けてくれ。生地しか見えない」


「ごめんごめん、ここでやるには狭すぎたね。 戻すよ」


そうアミが言うとシェルターは収縮して元の大きさに戻った。


「すごいもんだな。 そのアノーマリってのは結構発生するのかい?」


「軽いヤツなら1ヶ月に1回で1時間位ほどかな? やばいやつは年に一回位ってとこかな? 来る時にはだいたい磁気や電波に障害が起こるから退避準備はできるよ。 たまに急に来る時もあるけど…」


「前の世界では砂嵐とかなら映像で見たことがあるけど。想像もつかないや」


「磁気嵐や電気嵐は砂嵐で暗くなった所に雷が凄い発生する感じかな? 兎に角ね、風と雷が五月蝿いんだ。 あと少し焦げる」


「やばそうだな。外に行く時は必ずシェルターを持っていくよ」


「そうした方がいいね。 あとで野外活動の説明もあるからきちんと覚えるんだよ」


「了解した。 教官殿」


「ふふっ。 きちんと鍛えてあげよう! 新兵!! さてとベストはまだ要らないから収納して。 残りの道具をバックパックに詰めてっと」


二人で手分けしてバックパックに詰めていく。


「さてとちょうどいい感じに出発時間になりましたっと。 行こうかムサシ?」


「了解」


ナビ子に後始末とドアのロックをお願いして外に出る。


少し歩く。市長舎地下の中層通用路に出た。


小さ目のバスターミナルを連想させるつくりで多くの車が停車している。


「この時間はタクシーが居るから捕まえるのも楽なんだ」


アミはタクシーを呼び寄せて颯爽と乗り込んだ。


天井がないジープスタイルなタクシーだ。


俺も乗り込みタクシーは発進する。


「なぁ、アミ? 今日はどこ行くんだい? たしか、連絡では軍施設に行くとかあったけど」


「まずは健康診断だね。その後に身体調査で少し体を動かすよ」


「いよいよ、強化人間の力を知る事が出きるのか…体の違和感も取れてきたし、気になってたんだ」


「もう自分の顔には慣れた?」


「だいぶ老け顔だけどそんなに悪い気はしなくなってきたかな?」


「1個上の年なんだよね。 たいぶ見た目はお兄さんだけど」


アミが笑いを我慢している。 頬がピクピクしている。


「俺だっていきなりこんな良い体になって…おっさん顔になって戸惑っているんだ。 そんなに笑うなよ」


「ごめんごめん。 見た目とか、なんか実年齢のギャップがね…可笑しくて…ごめんね」


アミは深呼吸して気持ちを落ち着けようとしている。


自分でも気が付けば背がでかくなってガタイが良くなって顔が老けた。 それは十分理解している。


この状況に対応しようとそれなりに努力はしているつもりだがアミが楽しそうにしているの見ているとどうでもよくなってくる。


老け顔以外はそれなりに慣れてきて少しは気に入りだしてきた。


そんな事を考えて社外の風景を眺めているとアミが問いかけて来た。


「昨日は大丈夫だった?」


「昨日は酔っ払いの相手で大変だったよ。サラさん…市長が可愛い生き物と化しててさ。 楽しかったよ。 帰ったら疲れててすぐ寝ちゃったけどね」


「市長と飲んだんだ。 いいーなー! 私まだ一緒にご飯もしたことないよ。 楽しそうー! どんなだった? 可愛いのは噂に聞いてるの」


人の醜態をあれこれ言うのは良くないかなと思って当たり障りなく可愛い部分を強調して伝えた。


「まだ少ししか見てないけど普段の仕事が凄いからイメージとのギャップがね。 凄かったんだ」


「そっかー。 今度ご飯を一緒するのお願いしてみようかな」


「また、ご飯行くから俺からもお願いしてみるよ。 そうそう市長と仲の良いお姉さんが二人居たよ」


さりげなくサラさんの呼び方を市長に戻す。


俺的に何も意味はないよ? なんとなくだよ?


アミを見てみると少し不安げにしていた。


「そっか昨日は聞取りだったよね? 大丈夫だった?」


「ん?」 


「曲作り大変じゃなかった? 下手な人には凄い厳しいって言ってたから。 たぶんそのお姉さんのうちの一人が有名な人だと思う」


「有名? 平気だったかな? 途中から音楽の聞き取りになって。 そのうち作曲? メタルとかスラッシュとか結構聞いてたからうまく再現できてたと思うよ? 仕舞いには体を動かして表現したりしてたから色々と大変だったけど。 楽しかったよ?」


「そっそう……下手な人だと頭に電極付けられて脳みそいじくられるとか? 噂に尾ひれ付いていたのかな?」


「クリスはまともそうな感じだったけど? クールビューティな学者肌な感じに思えたよ?」


「そう? まだ合ったことが無いからなんとも言えないけど。 兎に角。 噂の様な酷い目にあわなくてよかったね」


アミの含みのある言い方だったがそこはスルーしとこう。


一瞬、クールビューティクリスがマッドサイエンティスト的な何か得体の知れない道具を持ち出して不敵な笑みを浮かべ近づいてくる。 そんな絵が浮かんだ。


クリスがサラさんを甲斐甲斐しく世話するのを見ているので、まさかねと言う気持ちでばっさりとその邪念を切り捨てる。


噂に尾ひれが付くのは良くある事だ。


しばらく走ると様相が変わってきた。


周りは開けた空間になり。天井はかなり高く明るい照明があった。


そして駐車されている車が軍用なのかとても物騒なものが色々と付いていた。


「軍のハンガーゾーンのひとつだよ。ムサシこういうの好きでしょう?」


たしかに格好良いとは思う。


前の世界では人を殺す道具として五月蝿く言う団体や教育のせいで碌なイメージを植えつけられていた。


だが、俺は好きだった。 道具は道具だ。 兵器が悪いのではなく、人が悪いのだ。 人が人を殺すのだと思っていた。


だいたい、機能美に溢れ人の叡智で作られた金のかかるロマンの塊が無残に壊されるのが見たくなかった。


大金をかけた技術の結晶が命の引き算に使われるのが無性に嫌だった。


命は大切。 道徳の時間に戦争なんかしないでお偉いさん同士で殴り合いでもしてくれれば良いのにと言って学校の先生に反省文を書かされる事もあった。


そういった人の尊厳や命の大切さを除いた上で、純粋に機械が好きな気持ちを持っていたと自分では思う。


それに泥と破損による風貌変化、現地改修による変化、撃破により放置されて朽ちてゆく姿は、それはそれで美しいと思う。


平原の花畑の中にたたずむサビだらけで破壊された朽ちた戦車の美しいことといったら。


花畑の平和の中に使い捨てられて必要とされずに朽ちてゆく。その光景だけでグっとくる。


平和と兵器と見方によって色々な思想が矛盾したりしなかったり、そのなんとも言えない部分も嫌いではない。


もっともそういった朽ちた系は写真や画像でしか見たことが無いけれども……


そんな考えのまとまらない間抜けな自分を感じていたところ脚のついた戦車を見つけた。


脚がついた戦車がある、それにやたら古い時代の戦車もある。なんだか色物とあって博物館みたいな一角を見つけた


4脚や6脚が多く目に付く。だが古い世代の戦車もあった。 


カバーをかけられているものも結構ある。


中には図鑑で見た記憶がある第一次大戦の英国で生まれた有名な戦車もあった。


「あれは使ってないモスボール処理された戦車達だね。 この辺だと使いにくいから眠っているんだよ」


「そういうのもあるのか」


「ここのは余り使って無くて、せいぜい練習用ぐらいじゃなかったかな?」


ハンガーを通って軍施設に着いた。


個人的には使われていない戦車達でも少し眺めていたかった。


タクシーを降りて軍施設へ向かい、中に入ると受付を済ます。


「ムサシはこっちね。 話しを通してるから、ここのスタッフの指示に従ってね。 私は次の準備してくるから。 それと荷物頂戴、ここでは必要ないから先に持って行っとくよ」


「それじゃ、お願いするよ」


アミと俺の荷物は通路の奥へと消えていった。


そして俺はスタッフに引き渡された。


スタッフは慣れているようでことがスムーズに運んでゆく。


裸になって身体スキャン。 


すぐに検査用の服に着替えさせられる。


血液を採取される。肌の角質を少し取られる。


次々と工程が進んでいく。


よくある健康診断がSFチックになった感じだ。


検査器具や機械がメカメカしいのにシャープな印象を受ける。


病気系のワクチン投与される。 注射は圧力式なのかちょっと押された程度の感じで痛くなかった。


最後にピチピチのスーツを着せさせられた。


黒のラバーだかゴムだが分からないけど肌に密着するヤツだ。


着る時は引っ張って体をねじ込む、着たら圧迫感があったが案外、着心地が良かった。


更衣室に戻ると俺の名前が機械音声で呼ばれる。


呼ばれて音のする側に近づいていくと俺の名前がついたプレートが光るロッカーがあった。


更衣室で着替え、脱いだ服とは別の運動服の様な軍服の様なものが合った。


その下には元の服が入った袋があった。


機械音声でスーツを着用したまま着てくださいと言われ指示に従う。


着替え終わったら、ロビーに来てとアミから通信があった。


部屋を出てロビーに向かう。


途中で頭だけが人間で体が機械のように見える人と犬とすれ違った。


すれ違う時に静かな駆動音が聞こえた。 また犬は介護犬と書かれたベストを着ていた。


静かなロビーを歩いていくとそのうち静かにざわめきが聞こえてきた。


どうやらロビーにきた様だ。


目立つところにアミがいた。


「お疲れ様、ピチピチのスーツの着心地はどう?」


「悪くない、最初は驚いたけどね」


「それより、さっき介護犬とサイボーグかな? そんな感じの人が居たんだけど」


「たぶん、傷痍軍人だと思う。 ここで調整したりしてるんだ。 犬はお助け係りかな」


「自然に歩いてたぞ? 何不自由なく」


「んー。 たぶん慣れないサイボーグ化とかで精神的にパニックになったりしたら補助する感じかな? 他でもなんか困ってる様子を見かけたらムサシも助けてあげてね。 では次に行こう」


「おう」


この世界では軍人に手厚い支援があるのだと知った。


俺はまだ、この世界の厳しさを知らないが、この都市では人々の優しさは存在していることを知れた。


少しほっとした。


しょっぱなから歩行戦艦とか激しい戦闘とか脚のついた戦車とか物騒なものをみていたので最初はかなり不安になっていた。


アミやサラ市長のお陰でかなり緩和されていたから不安は減り、今ではかなり平常心を取り戻している。


ちょいちょい胸の高鳴りを覚えるがしかたがない。


それ高校生だし? 男の子だし? 鉄量の多い機械は格好いいと思うのはしかたがないことではないか?


女性にも慣れていないしな。 色々としかたがない。


歩きながらそんな事を考えていた。


さてと次は運動だな、強化人間の能力を確かめる事としよう。


次の期待に俺の胸は高鳴りつつあった。

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