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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第1章 ながされて歩行軍艦
13/71

第13話 酒 飲まずにはいられない

 店に着いてタクシーを降りた。


中華風とアメリカ的な雰囲気を混ぜていい感じになった不思議な店構えだ。


地下の入り口ではあったがそれなりに圧倒される。


入店してチヤイナドレスを着た自動人形に案内されて2階に昇り、個室に通された。


店内は控えめではあるが中華風といった装飾がされている。


中に入ると市長ともう一人アメリカンティストな女性が居た。


「やぁ 来たね。 お疲れお疲れ」


「もうはじめてるよー! 二人にカンパーイ」


「イエー!!」


陽気に盛り上がる二人の美人さんが居た。


「私はビールを。ムサシ君は?」


「俺、お酒飲めないのでウーロン茶を」


そういやこの世界のお酒が解禁されるの何歳だろう?


岩清水さんが席に座る


市長が端末で操作している。オーダーしているようだ。


かなり楽しそうにフンフンと音符が付きそうな陽気さだ。


テーブルには前菜と幾つかの酒のアテがある。上品な感じに盛り付けされている。


市長とアメリカンな女性の空いている席に座る


「九頭 アレクサンドラ渚です。 よろしく」


「よろしくです、ムサシです 苗字は分からないんです」


ちょいちょいと反対側から裾を引っ張られる。


「ハウブス、サラステークです。改めてよろしく」


市長がかしこまって自己紹介を始めた。


「今はプライベートなのでサラと読んで。そっちはナギサで。こっちはクリス。みんなもいいでしょ?


「いいよー」「うん」


「よろしく、サラさん、ナギサさん、クリスさん」


「日本人だねぇ、呼び捨てでいいのに」


「あんたもどうせ。サラ派にはいるんだろ? なら仲間だ フレンドだ」


「この子、なれなれしいの ごめんね。こらナギ、いきなりフレンドリーすぎるわ」


「いえ、そうしてください僕もそちらの方が気が楽です。でもなんかサラさんはサラさんってイメージになっちゃうのでさん付けで呼ばせてもらっても?」


「市長モードの時は凛々しいものね」


「酔うと可愛い生き物になるけどな」


クリスが市長を見て微笑んでいる。ナギサはからかっている様だ。


「そう言えば。私も君付けだ。ま、好きなように呼んでください」


ウェイターが飲み物を持ってきた。


「料理は適当に頼んでるよ。それではムサシにかんぱーい」


「カンパーイ」


それぞれドリンクを楽しんでいる。


サラはワインのカクテル。ナギはビール。クリスは黒いビールだ。そして俺はウーロン茶だ。


「いい店ですね。雰囲気が素敵です」


「でしょー、お気に入りなの。料理も抜群に美味しい!!」


「それに個室で静か!! あんたは酔うといらんことするからねぇ!」


「ん? それはなにかなぁ?」


サラさんとナギサが妙な牽制をしている。


サラさんの挙動が変にになっているが少し顔が真面目になった。


「いつも密会で使ってる部屋で盗聴対策もされてるよ。だから問題なし。大いに飲みたまえ。そして私を介抱するのだぁ。ここのおじちゃんの出店の世話をした時に恩義を感じて協力してくれてるの」


お酒がガンガン減っていく。


「だってここの料理絶品だよ? 外郭街でチンピラにイビられておじちゃんが困ってて、おじちゃん達と美味しい料理たちが可愛そうじゃない? 人類の損失よ?」


サラさんの顔が緩んだ。


グラスを掲げて力説している。グラスの中がカラになって手酌を始めた。


美味しいのは認める。実際に話を聞きながらアテが美味しくてガンガン食が進む。


ナギサが神妙な顔で語り始めた。


「ここの中華はアメリカ風にアレンジされていて好みに合うんだ。 持ち帰りBOXの店じゃこの味は出せない……揚げ物はパリパリで味にメリハリがあって美味しいんだ」


「貴方はデリバリーの安い食材とかで調理された柔らかい食感にしたふにゃっとしたお肉とか苦手だし、あれは食べなれてないからしょうがないじゃないか?」


「でもね中華は繊細で豪快で複雑なのよ? ふわっとろ、カリッとしてたり、ぐにゃっとしたたりしてそれを楽しむ事も……兎に角楽しみかたは色々あるのよ」


サラさん…残念な解説ありがとう。気持ちは伝わった。


「中国四大料理…中国八大料理…地方ごとの特色がある調理法。 特に香港で磨かれた広東料理をベースとしたフランスや日本料理の影響を受け、中華料理の特色を残しながらの独自進化したヌーベルシノワなんて、個人別の皿に芸術的に盛り付けられ、美しく、そして絶品!!」


なんかクリスが手振り付きで解説しだした。うっとりしている。


ナギサはビールグラスでグイグイいっている。


酒のペースがやばくないかこの二人?


そして俺はお腹が減ってきた。


配膳係が来てテーブルに料理を並べていた。


数種類の点心、北京ダック、彩の良い野菜炒め、海老チリソース煮込み、黒酢の酢豚、揚げた魚料理、チャーハン、スープ、ティーポット、そして追加の酒もビン単位で幾つか並べられた。 


そして、次に取り皿や調味料がところ狭しと並んだ。


最後に四川風マーボー豆腐ですと給仕が説明しながらワゴンで運ばれてきた。。


配膳ワゴンからテーブルに載せかえられた蓋のある大皿に注目が集まる。蓋を開けると蒸気が舞い上がる。


特に香辛料の効いた美味しそうな食欲をそそる香りだった。


鉄鍋にコマかく切れたちいさな豆腐ではなく手のひら大の熱々豆腐が丸ごと乗っている。周囲は赤く辛そうな鮮やかな色をしていて、ひき肉が多めにあり、ネギの緑が鮮やかに彩られている。熱々なのは湯気を見ればわかる。とてもスパイシーな中華山椒の香りがする。


給仕人形がナプキンをご用意ください。油がはねますゆえ…と言っていた。


みんなは手馴れているようですでに準備をしていた。俺は慌てて用意する。


給仕が熱々の赤い油を豆腐にかけて仕上げをしている。


豆腐の水分と熱々の油が反応して静かに跳ねている。


これは絶対にうまいヤツだ…確信。


ご飯を…しろご飯を…イヤ…五目チャーハンも捨てがたい。


給仕人形が取り分けている。


ナギサがチャーハンに取りつき皿に取り分けている。


「ここのチャーハン好きなんだよ。普通のでなくてなんていうか? お肉が美味しい。 食べたい人いるー? よそるよー」


「あんたいい加減覚えなさいよ。 ここのはステーキチャーハンって教えてくれたでしょうに…チャーハン下さい」


「あたしもチャハーンください」」


サラさんがさっきから変なことになっている。


「もぅ酔っぱらってんの? いつも貴方はペースがおかしいのよ」


クリスが呆れていた。 チャーハンを受け取るとすぐに上機嫌になった。


「広東風だと、繊細で優しい味、素材を活かした調理法にするって聞くけど…どうなのかしら? ムサシ君しってる?」


「高級店は行った事がなくて、すいませんわかりません。うまみ調味料を大量に使ったヤツしか知らなくて」


「あれはあれで好き。それとって」


ナギサが会話に加わってきた。機敏に幾つかの獲物も確保しながらだ。


「ジャクフード好きめ!! 我慢して苦労して!! 日々カロリー計算する私に謝りなさい」


サラがプンスコと可愛く怒っている。


「最初は色々アレだったけど…サイバネも悪くないってね。 いまとなってはお勧めかもしれないわな?」


「太らないもんね」


ナギサとクリスが同調している。食べている料理も酢豚で同じだ


そして間髪入れずに皿が空き次第、ナギサが肉料理を中心に狙っていく。


「あたしもサイバネ化しようかしら?」


サラさんがふつくしい二の腕をプニプニしている。


「美容や老化も気にしなくていいし…特に宗教上の理由無ないし…ダイエット気にしなくていいし。いいなぁ」


クリスが魚料理を綺麗に切り分けている。


「お金があるならそれもありだけど? 自然な肉体はそれだけで価値があるんだから。 貴方はお魚をたべなさい」


サラに魚料理を渡している。


「とりあえず毎年スキャニングだけしておいてバックアップを用意しとけば良いじゃない? 私達みたいに事故でも会わなければ自然のままが良いよ?」


「それに貴方はサイバネ化したら、ますますワーカホリックになって、下手すりゃ人間辞めちゃいそうだし」


クリスが心配そうに見つめていた。


「それはそうだけど……」


サラがしゅんとている。さっきからこの人はコロコロと表情が変わっている。見ていて飽きない。


「ムサシ君がついていけてないじゃない? ホラ食べて食べて」


サラが適当に料理を盛り付けて持ってくる。手早く乗せているのに奇麗で料理雑誌に載るよう盛り付けている。


次々に料理が消えてゆく。


「ごめんね、私達ついこないだ事故にあって、なんやかんやで市長の政策に救われてサイバネ化したの」


「おかげで借金背負って外仕事するハメに…よよよ」


ナギサが演技泣きしている。


「まぁどのみちサイバネ化はする予定だったし。私達みたいな移民系は手っ取り早く市民権を得るのには外仕事するか商業や貢献で一発当てないととね時間がかかるからねー」


ナギサが料理をぱくつきながら説明してくれる。


「ちょっと無理してでも上層階都市の恩恵に預かりたくてね」


「危険から逃げて数十年のあまりよろしくない環境で仕事するのも嫌気してたからちょうどいいと考えてた時期だったしね。あたしは重いもの結構持つからしんどかったし」


ナギサが遠い目をして語る。


「やっぱり市民権の取得は魅力的なんですか? 安全を確保したかったんですが?」


俺はこの世界に放り出されてからの、軍艦と荒野を眺めていた時を思い出していた。


「外部? から来たんだったかな?」


クリスが優しく尋ねてくる。


「ハイ。この都市で起きたわけじゃないです」


何気に食べるのと話すので結構忙しい。


「ムサシ君はうちの子です」


サラさんが勢いよく言う。そしてグラスを煽る。 


「ハイハイ よっぱらいは黙っときなさい」


「なにをーー?」


ナギサとサラが会話をドッチボールしている。観察するに二人は中がよさそうだ。


それはそれとして俺以外の面子が先ほどから凄いペースでお酒を飲んでいる。


そういえばしょっぱなから手酌だったな。


「都市から離れた施設で起きました」


「あら残念。この都市生まれじゃないんだ」


ナギサが残念そうな視線をこちらに寄せる。


「まぁ、確かに安全は大事なのよね」


クリスが頷きながら先ほどの俺の言葉を納得している。


「うん大事だ。 ホレ食え食え」


さっきから、ナギさんが豪快に盛り付けて料理を渡してくる。


そして、美味しいから箸がやたら進む。


「内部の仕事にするの? 」とクリス。


「まだ決めてないんです? 期限に余裕があるんですよね? サラさん?」


「まだムサシ君は来たばかりでこの都市を知ってもらってる最中なの。まだお客様期間中なの」


そう言って少し落着いた感じのサラさんが皆にお茶を用意している。酔っ払い特有の動きに不安を感じる。


「洗礼を受ける前かー。そーかーそーかー。今のうちにご飯食べとけ」


ナギサが俺の肩をゆする。


「お茶どうぞー」


お茶が分配される。 熱いジャスミン茶だ。 油っぽい口の中を爽やかに流してくれる。


「外部の仕事にしたほうがこれからはいいと思うよ? ありがとサラ」


「じゃあ、簡単にお話しますか? お茶ですよーどうぞークリスティー」


クリスはサラの渾身と思われるアレをスルーした。ニヤケ顔が曇る。


「気にはなってたのでお願いします」


「そうね…どこから話したらいいか?」


サラが神妙な顔に戻る。


「血の代償とかでいいんじゃない?」


ナギサがグラスを傾けながら言う。


「この都市が最初から安全だったわけじゃないの。施設地下から出て、外壁を作って、周辺の安全を確保して。


多くの血を流して築きあげた都市なの。


そして外の探索や防衛で昔から街を発展させてきた血で代償を支払ってきた人達がおいそれと部外者の進入を許さなかった。


相互補助が機能している内は特に問題がなかったが一方的な搾取、サボる連中に与え続ける苦痛を味わった人が出てきた。


拒む気持ちも分かるし、甘いところだけ吸おうとした一部外部の連中が居てね…。


セーフティーネットも準備したけど制度的に限界が来てね。


多くの問題を解決して、今の状態になった。血の代償の伝統は変わらないし。


これはこれで効率がよかったのも事実……


そんなワケで苦労しないで甘い汁だけ吸うヤツラは許されないと……」


「それでもマシなほうなの。他の都市じゃ、色んな主義が主張しあって内乱状態だったり。一党独裁や勘違い王政だったり…」


クリスが溜息混じりに説明してくれる。


「ありゃ最悪だった。 ともかく、あの都市は滅ぶべきだ」


黒いオーラを纏ったナギサが居る。


各自の酒の酒の勢いが増した。ナギサの黒オラーは酒の神によって浄化された。


気がつけばなんか空き瓶が凄い事にいなっている。


気にしない様にしていたが給仕人形の出入りが激しい。


先ほどから、サラさんが端末で酒の追加をしている。


「やめなさいその話は……ナギ…そしてあんたもそんなに酒を頼まないのサラ」


クリスがナギサとサラを宥める。


「えぇーん いいじゃないたまにはー」


サラさんがブーブー言っている。


「でもねぇ…他の都市に比べてやたら治安がいいって話だったけど…あちらこちらから来てれば荒くれモノも増えるからね。


外郭街でも色々アレなのよ」


ナギサが簡単に概要を説明してくれた。


最近この都市は準市民の生活圏が危険になってる。細々とした事例を教えてくれる。


「近隣遺跡発見による技術的なゴールドラッシュもあったし、余計にね」


クリスが話をまとめてくれた。


物音がして横を見るとサラがなんとも情けなく、かわいそうな顔をしていた。


「あぁ、サラごめんごめん。あんたの政策は間違ってないと思うよ。 気が狂ったような爆速の政策実行だし」


「並みの統治者なら崩壊都市コース。 秀才クラスの人物なら内乱コースと言った感じだろうか? サラだからもっている様なもんだからね」


「だね」


クリスとナギサは二人は各自勝手に同意している。


「ごめんねー私も頑張ったけどー! AIちゃん達が凄いのであって……私はすごくないのー。 派閥を解体して、連合組んで、色々ヤル事多かったんだよー」


サラの様子がおかしい。頭の中で数えてみたら酒量が凄い事になっていた。


「就任してやっと力蓄えて…色々邪魔されて自由に動けなくてー!」


サラさんが崩れてふにゃふにゃになっていく。都合よく料理の皿が消えていた。


何かモゴモゴ言い出したら急に早口で話し始めた。


「緩やかな格差是正が必要だし、富裕層が義務と高貴な精神を忘れのさばると禄なことにならないしー。上層界を開放して内と外の軋轢をなくしてー。税金格差で死にそうだけどー富の再分配をうまいことやってー。富の固定化防止とインセンティブの調整をねー」


右に倒れ込む。


「準市民のすこーし悪い人たちの協力を得て極悪なの潰してー。ドラック問題だってすぐに対処したしー。それでも安全面や治安の良さの話に尾ひれがついて移民が増えて…傭兵制度や外部人部隊経験者は市民権を与えるとかで対応して…治安維持部隊も予算増やして」


左に倒れ込む。


「傷痍軍人やハンター達の癒し系施設と運用も強化したいし。医療や保険だってまだまだ足りないしー。。人口増加施設で種と卵の補完システムを稼動させて…保育から孤児院、教育機関、就職支援もー!! そんなこんなできつい事をすれば市民権が得られる可能性が高くなる制度が大当たりで…宗教勢力が協力してくれたのでセーフティネットがかなり機能して…」


謎のアピールをする。


「職業安定所も準市民に用意して段階的に開放も行ってるしー改革派と保守派の共闘もできはじめてきたしー部下ちゃん達や外注さん達の教育体制や育成計画もしっかり動き始めたしー」


机をバンバン叩き出した。


「なんやかんやで、きっとうまくいくから、うまくいくから、みんなで幸せになろうよー!! だから、私に仕事させてよー」


途中から席を立っていたサラが変なポーズで捻ってヨガ的なストレッチを始めた。


「サラーおトイレそっちじゃないよー むこうー」


「貴方が良くやってくれたのは知ってるから ホラいじけないの」


「ホラ行ったいった」


ナギサとクリスが絶妙なコンビネーションでサラを宥め誘導していく。


「こんな感じだけどいい政策で幸せな住民を増加させてる。銅像が建つような仕事をしてるんだけどね。あの子は……。たしかにAIの使い方はすさまじいけど本質は別よ、みんなもそれをわかっている。だからみんなはサラに市長を任せているのよ」


「みんなに愛されてますよね。少ししか見てないけど周りの皆さんの動きを見れば分かりますよ。酔って可愛い事になってますけど誤解はしてませんよ…クリス」


「今じゃ外郭街の対抗組織暗殺員でファンクラブができる始末よ……」


「そうね、異常ともいえる。でもねーサラだからしかたがないじゃない? 見ていて可愛いし頼もしいしサラだし…」


優しく二人は微笑んでいる。


「あー。なにいいかんじにーなってんのよー」


サラさんの口調が少し変だ。


「そしてムサシ君はお肉食べなさいお肉」


とばっちりが俺の所に来た。


「サラ。あんたこそそんあ華奢でグラビアスタイルで…お肉食え、肉」」


ナギサがフォローしてくれている様だ。


「太るーいやー」


いつの間にか座ったサラが酒を取ろうとする


「その体型を維持して何を言っているのだ? あぁ! もうー憎たらしいこのセクシーボデーめ」


ナギサがサラをつつき始めた。


サラは悶えているその動きがすごくエッチです。


「じゃぁー飲むー」


「まったく、この体にして良かったのはダイエットを気にしなくて良いことだな。あと二日酔いもね」


「普通に酔えるけど分解能は格段に良くなったみたい」


サラさんはグラスを傾け。ナギサとクリスがしみじみしていた。


「ずっるーい私は食べたい物我慢して仕事頑張ってるのにー!」


「あんたの仕事は趣味でしょうが!!」


ナギサとクリスがハモった。


「そうそうムサシ。明日の訓練は私達も加わるんだ。明日のサイバネ調整が段取りがついてね。午後にならしで参加するんだ」


「そうなんですか? ナギサも? クリスも?」


「サラが準備してくれたのよね? サイバネ体にはやく慣れたほうがいいって」


「ムサシ君がおっさんだらけの訓練になってかわいそう思って」


ナイス市長、ありがとう市長。


「だから明日の能力測定は頑張ってね」


「サラさん…無論、頑張ります。ええ頑張りますとも」


サラさんが微笑んでいる。


「歳のわりに……だね、君は?」


「いやーねークリス? こんなもんでしょ? 男なんて幾つになっても」


「あー俺 成長してるらしいいんですよ。寝てる間に強化されてるみたいで。16歳なんですよ。」


「ん゛?」


二人が驚いている。


「そのフケ顔で?」とナギサが驚きの顔で……


「その落ち着きで?」とクリスが感心した感じで……


「俺も困ってるんですよ。 未だに鑑で自分の顔見ても慣れないし…」


ナギサが慌てた様子で俺のグラスを取った。


「サラ!! ちょっとサラ!! 早く言いなさいよ! 未成年にお酒を飲ますところだった。 危なッ! 酔ったらどうなるか徐々に試そうとしてたところだった。ごめんね。 酔っ払ったら面白いことになるかと思って……」


「ごめん…私も少し見たかったからナギが悪戯するの気がついたけど黙ってた……」


二人は俺に謝罪してる


「いや、二人さん。そんなに慌てなくても……お酒ぐらいで……」


俺は何か言葉を捜したが良い言葉がでて来なかった。


「んにゅ~?」


サラは潰れて眠そうにしている。


「あー? 駄目だコレ……限界来てる。 おねむモードだ。 サラ? まだ寝ちゃ駄目!! 部屋まで待ちなさい!!」


クリスが慌てている。


「サラ? デザートまだだよ? 忘れてるよデザート?」


「デザート食べるー」


サラの目がはっきりした。


「よし!! 起きたな」


ナギサはサラの目が覚めたようで笑っている。


「ここの杏仁豆腐を食べずに帰らでか!!」


「酒は止めてお茶飲みなさい、ホラお茶」


「ありがとー」


ナギサがお茶を勧め、クリスが注文している。


「みんな、杏仁でいいわね」


「オーケー」


みんながハモって答える。


「お酒……」


サラが思い出したように言う。


「もう仕舞いだ。酔っ払いめ」


「じゃあ、杏仁食べる」


「今、注文したから」


ナギサがサラさんをなだめている。 なんかよしよししている。


「さっきの話に戻るけど。未成年にお酒とか悪いものを経験させてしまうと厳しく取り締まられるの」


「機械のセンサーが感度良くてね。すぐバレる」


「飲ませたほうも飲んだほうもね」


「ドラックとか外郭街で厳しく取り締まってる建前上、内郭街でも厳しくってね」


「俺も気をつけます」


「ある意味、奇麗な科学力の使い方ってね。トイレで直ぐにばれちゃう」


「タクシーでもばれるよね。気体センサーの感度ヤバイもの。こないだ整備して大変だった…」


ナギサとクリスが次々に話してくれる。


技術的にかなり発展しているのは分かっていたが……感心してしまう。


給仕がデザートを持ってきた。


「サラ、杏仁きたよ」


「アーンニイーンニンイン」


子供のようにはしゃいでいる。なにか可愛い生き物と化している。


杏仁豆腐を食べると独特な薬草の様な、アーモンドっぽいが少し違う香りがした。


味は濃厚なミルクと甘さ、そしてホロホロとした食感が口の中に広がった。


各自思い思いの楽しみ方をしている。


サラはいつの間にかに頼んでいた老酒を杏仁豆腐にかけていた。


彼女は満面の笑みで楽しんでいた。


ナギサとクリスはいつものことだと呆れてた。


しばらくしてみんな落ち着いてお茶を飲む。


「さてと、そろそろ帰りましょうか?」


「会計ついでにタクシー呼ぶわ」


「ほら、サラ? サラ? まだ寝ちゃ駄目よ」


サラさんを起こして脱力した感じで頼りげなく歩く。


前を自分がサイドにナギサがと、フォロー体制になり玄関まで移動した。


意外とサラは階段ではしっかり歩いていた。


そのうち2台タクシーが来た。


「今日は楽しかった。ムサシ。また曲の再生をお願いするかもしれない」


「わかりました楽しみにしてます」


「あたしも楽しかったよ」


「サラをよろしくね」


ナギサが妙な笑みを浮かべた。


クリスとナギサがそう言ってタクシーに乗り込んだ。


「あとで、サラに連絡先を教えてもらうから、また呑みに行こうねー!! あっご飯か!! じゃ-ねー」


二人を乗せて車は走り出して消えていった。


少し意識がうつろだけれど何をしようとしているかは、サラさんは理解しているようだ。


「市長事務所までお願いします。ほら、ムサシ君も乗って乗って」


急かされるまま乗り込んだ。


「久しぶりに飲んだー。 楽しかったー、ねー。ムサシ君」


「後半のお酒のペースがやばかったですよ。サラさん」


「あんなの普通よ普通」


お気楽にサラさんは楽しそうに話し出した。


やたらボディタッチがある。そのたびに香水も混じって少し甘ったるく感じた。そして酒臭いのに香りにも襲われた。……プンプンしてる。


車内で美味しかったのベスト5とかやっているうちにサラさんが静かになっていた。


香水は普通に使える生産体制なのかなとか考えていたら、サラさんが寝息を立て始めた。


そのうちタクシーは市長事務所に着いた。


サラを起こして、会計を済まして二人で社外に出る。


サラさんは少しご不満になっていた。


「眠いーおんぶー」


もはや駄々っ子になっている。


しかたなしに背負う。


「事務所の2階ですよね。 行きますよ」


普通にしていたが俺はぶっちゃけドキドキしていた。


だって、アレがこうなってサラさんのそれが俺の背中に素敵な事になってて。


程よい感じの体重をささえる俺の手はサラさんのコングラッチレーションな部分にそっと添えられて。


俺の首筋やら耳やらに素敵な吐息が……寝てるな……


俺の精神は蝕まれつつあり邪心ちゃんが囁く。


出番だぜ? おおかみさんよ? YOUやっちゃいなよ? なにがどーするんです邪心さま?


夜闇に男と女が二人……(注意 街灯はしっかり二人を照らしています) 


俺の暴走特急が!!機関車トータスがスタンビードにクラッシュしそうで!!サラさんの麗しいが素敵な事になっていてありがとう!

私が俺が大変です!!


事務所に入り、階段を上がり、玄関がそこに……一歩一歩。サラさんを感じつつ昇ってゆく。


いつぞやのパンジャンの神様!! 俺は俺絶好調です。


俺はひとまず暴走しそうだったので精神統一した。


ユナイテッドキングダムが原産のボーダーコリーはとても優秀な牧羊犬として有名です。


ボーダーコリーは大きめな中型犬で毛色は白黒、こげ茶と白、青みがある黒と白、チョコ色と白、白黒茶の3色、大理石模様の黒白等や前例色の混合した毛色が多く確認されています。一般的には白黒のイメージを想像される方が多いと思われます。


最も作業効率が良い、最も知能が高い犬種とされています。


運動面でも抜群のスタミナと機敏さを誇り、ドックショーなどでは常に大会上位に入る常連犬です。


体つきはしっかりとした骨格を持ち、俊敏な動作と優雅さを持ち合わせた豊かな双丘が美しい楕円形に膨らんでいる。


長いスラリとした手足にスタイリッシュでスマートかつキュートな印象を受ける臀部がドーーン!!


突如明かりが灯り俺はしこたま驚いた。広めのフロアにある玄関前にぽつんとしている。


サラさんを背中に背負い呆然とフロアに立っていた。そのうち、扉が開いて中からメイドの格好をした女性が……自動人形がそこに居た。


「ナギサ様より承っております。主人を見送って頂きありがとうございます。寝所まで運びますので恐れ入りますが後ろを向いてください」


状況がつかめない。 俺はこれからサラさんをベットにそっと優しく移動させて。 苦しいーとか言ってるサラさんの服にあるボタンを外して……ラッキーが転がってアレがソレして…


そのうちメイドは寄って来た。


「ムサシ様? 向きを変えてください」


肩をちょっとした力で押され指示に従って回転した。


しばらくすると背中から心地よい重さが徐々に消えていった。


振り返るとお姫様抱っこされたサラさんとメイドがいた。


「伝言を言いつかっております 。それでは、再生いたします」


そう言うと聞きなれた声がしてきた。


「ムサシー? 送迎お疲れ様でしたー。 サラは良く寝ていたかな? サービスはここまでだ。 残念でしたー」


「こら、ナギ! 悪ふざけが過ぎる。 ごめんね。ムサシ。ナギに止められててね。こういった事は双方の合意の上でゴホン。まぁ、うん。とにかく、見送りをありがとう。それでは失礼する」


後ろでクスクス笑っているナギサの声がしていた。


「それでは失礼致します」


メイドはお姫様抱っこされたサラさんと共に部屋の奥くへと消えていった。


扉は閉まり俺はフロアに取り残された。


まーねー、俺だってねー、許可なくねー、そんなつもりは……色々と段取りしてね……正々堂々。


みなまで言うまい……敗北者は去るのみだ。


男は去る。酒精と香水と甘い香りを背負い苦い味を噛み締めつつ自分の部屋に帰っていった。


街に流れる風は少し冷たく感じた……夜の街は静かであった……。



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