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歩行戦艦ビーケアフォー 絶対対艦歩行主義  作者: 深犬ケイジ
第1章 ながされて歩行軍艦
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第12話 研究所

 研究所の敷地に入り守衛がいる通行所を通る。無機質な建物だ。階段を登り2階の部屋に入った。


自動人形がいてアミが話しかけている。


「ムサシを連れて来ました。聞取り調査の担当者はいますか?」


「少々お待ちください。ただいま呼び出しております」


アミが振り向いた。


「今日の私のお役目はここまで。明日は部屋に迎えに行くから7時ごろには用意しておいてね」


「あぁ、分かった。 今日は有難うな。アミ」


「どう致しまして。それじゃ私は帰ります。じゃ頑張ってね……」


去り際に言った言葉が気になった。特に最後の頑張ってが不吉な音をしていた。何か含めていた様な言い方だった。


しばらくすると如何にも研究者といったいでたちの男が来た。


30代前半かと思われる、ぼさぼさ頭でメガネで白衣を来た冴えないシャツの男が来た。


「やぁ、ムサシ君。担当のテイラーだ。今日は宜しく。こちらに来てくれ。」


そう言ってテイラーと名乗る男は握手を求め、俺を個室に案内した。


対面室だろうか? モニターと机と椅子が置いてある簡素な部屋だった。


「座ってくれ。緊張しなくて良いよ。楽にしてくれ。秘書のステイシーだ。自動人形だけどなかなかだろう?」


いかにもアミリカンが好む感じの女性型の自動人形だった。


適当にお世辞をいい。対面に座った。横にモニターが見える位置だった。


オッサン相手だとなんかテンションが下がる。 勝手な事だがしかたがない。


それから聞き取りが始まり俺の来た世界の概要を聞いていった。


一番近い記憶、世界情勢、技術的なことを質問されて答えて言った。


「君の来た世界は特定できた。この都市でかなり多い人口を有するグループだね。僕も同じだお仲間だね。次は君の学校の話や文化面を確認して行こう」


流行、映画、TV番組、音楽思い出せる範囲を答えていった。


「日本ではそういったのが流行っていたんだね。次は食文化と行こうか?」


好きな食べ物や土地の名物品や製法など知っている事を話した。


少し疲れてきた。何時間過ぎたろうか?


「疲れているところ悪いね。聞取りの後に出発の準備をしなくてはいけなくね。続けるよ、では君の家族の事を聞こうか?」


「それが家族の事や友達の事を思い出せないんです。 両親や弟がいたのは覚えているんですが…親戚も…あと友達やクラスメート、学校の先生とか近しい人達のことを思い出せないんです」


「よくある記憶障害だね。徐々に思い出すと思うけど……思い出せない人もいる」


「そうなんですか……」j 自分ではそんなにショックを受けていたない随分と非情なものだなと思う。


「恐らくだけど……君の時代より数100年とか先の人が目覚めているけど……特に大きな災害や戦争は日本では確認されていない。

きっと平和に過ごして天寿を全うしていると思うよ」


「あれですかね? 僕は神隠しにあったとか?」


「それに関してはまったく分かっていない。すまない情報がないんだ。それも含めて確認しているんだけど」


テイラーはすまなそうに答えた。


「病気とか現代で治せないから未来に託してとか……宇宙人に誘拐……発掘され肉体を再生されたなどと予測はされているが何一つ証拠がない。お手上げ状態なんだよ。僕たちも科学者として悔しいからこうやって調査をしているのだけれど…」


悔しさと残念さが混じった顔をしている。隠し事をしているような演技ではないとそう思えた。


「でもオーバーテクノロジーに囲まれたこの世界もそんなに悪くないよ。夢にまでも見たアンドロイド!! しかもこんなに奇麗で愛らしい!!」


男が暴走を始めた。ご自慢の人形の素晴らしさについて講釈を垂れ流した。


落ち着きを取り戻したところで「あの時間がないのでは?」俺は軌道修正を試みた。


「あぁ、ごめん。ステイシーの事となると白熱してしまって。この子を迎えるにあたってとてつもない努力をしたものだから…」


「そうなんですか?」


「ちなみにどれくらいの費用だと思う?」


「超高級車的なお値段かと?」


「正解だ凄いだろう? この技術が高級車数台分程度の値段で手に入る。 僕はこの世界に来て幸せだよ」


「僕もそう思えられると良いのですが……なにせ来たばかりでよくわかっていないんですよ」


「まだ安全な鳥かごの中で生活できるから安心していいよ」


そんな話をしていたらノックの音が響き渡った。


「失礼。聞取りはどう?」


黒い髪、メガネ、白衣の上からでも分かるスレンダーでスタイルが良い。奇麗で知的な女性がそこに居た。


「岩清水クリスティーナです。よろしく」


俺は立ち上がり握手をした。


しっとりとした、とても柔らかい手の感触があったが少し冷たかった。


「ごめんなさい、サイバネ化したばかりで調整中なの。手が冷たかったでしょ?」


「いえ…サイバネってSFでよくあるサイボーグの事ですか?」


「えぇ、私の場合はサイボーグ化の比率はかなり軽いほうなんだけど……」


言い終わるくらいでテイラーが声を上げた。


「岩清水さん。僕の聞取りは終わりだ。引継ぎをお願いする。ではありがとうムサシ。 ステイシーまとめようか」


テイラーとステイシーは部屋を出て行った。


「ごめんなさい。私の個人的な興味を聞くのだけれどよいかしら?」


「はい、俺に答えられる内容ならば」


そう言って彼女はテイラーの空けた席の椅子を隣と交換して座った。


「ちょっと失礼。モニター!! ムサシ君の世界情報をくれる? ふんふん。世界は同じところから来た見たいね。私ね。日本で育ったのだけど。しばらくして米国に渡ってね。音楽が好きなの。UKやアメリカンミュージック、特にメタルとデスメタルとか……好きなの」


「多少は聞いてましたが……」


「鼻歌でもアカペラでも言いの教えて!!お願い!!」


今日に勢いが強くなる。妙なプレッシャーを感じる・


彼女が指を鳴らすと自動人形が入ってきた。


「この子に聞かせてあげて。細かいところは自動で構築するから。お願い」


彼女は身を乗り出し、俺の手を掴んで懇願した。


正直、高校生には刺激が強い。色々気にしない人なのかアレがコレな感じで色々いい感じに見えている。


俺は求められるまま知っているメタル的なのメロディーラインを歌う。


「歌詞は覚えてるの少ないのでこんな感じですみません」


「ギターリフとかドラムとか他の楽器もできたらお願い」


俺はかなり恥ずかしいがギターの部分やドラムを口で表現してたり歌った。


ドラムなんか手で叩いたりボイスパーカッションで表現した。


なんの罰ゲームだコレ? かなり恥ずかしい。


目の前の女性が期待に目を輝かしているので頑張ってはいるが……これでどうなると言うのだ?


そのうち彼女は空中に表示されたディスプレイを確認してゲージやイコライザを色々と弄り始めた。


「じゃぁ、一章節名流してみようか?」


自動人形がモニターを操作している。


イコライザー画面や色々なゲージが動いている。


そのうち譜面がモニターに表示され曲が流れた。


適当にミュージックラインを表現したのに曲はおおよその形をなしていた。。


「こんな感じかな?」


「だいたい合ってます。ギターがもう少しエコーがかかって、音に渋さを乗せる感じで」


自動人形が幾つかサンプルを流しますので近いものを教えてくださいと言う。


俺は調整を行い指示していった。


そのうち熱がこもり全身を使って曲の盛り上がりや抑える箇所を表現して抑揚を整えていった。


数10分くらいで1曲が出来上がってしまった。


「これ原曲です。こんな感じであってるハズです。 すごい技術だな。これがあればミュージシャンになれちゃうな」


「そう思うのだけれど……やっぱり才能ってあるみたいでパクリの曲はそれなりの感動しか生まないみたいなの。なんでかわからないけど名曲をマネしてミュージシャン気取りの人がたまにいるのだけれどAIが判断して製作者に問いかける。それでそのうち本人から自白してくる。AI判断だから私達には理解できないのだけれど。音楽家気取りには痛烈に響くみたい。」


「オーバーテクノロジーですね」


「ありがたいことに音楽関係はそれなりに復興がされているの……オリジナルからは遠いらいいけどね。発掘品とかがかね、かなりの高値になるし。文化復興も私達の大切な生きる意味になっているの……もっとも生き残ることが優先だけれども」


「難しい事は分かりませんがうろ覚えが数曲ですけどお役に立てるなら光栄です」


「できるだけお願いします」


俺は可能な限り頑張った。人類の宝が俺の覚えてる範囲で復活できるなら力になりたいが……あとで他の人にも聞いてもらおう実は少し自信がない。間の取り方とか音の強さ弱さ振動とか細かいところまで確実ではないからだ。おそらくオリジナルに似た何かだろう。

そんな事を考えていた。


「オリジナルそのものにならなくて良いのよ、可能な限りの努力だから……他のデータとも合わせて研究材料にするから。気を負わないでちょうだい。楽しんで作って頂戴」


なんか、見抜かているようだったが優しい口調でほっこりした。


文化ってなんだろうか?と崇高な事を頭によぎらせながら曲を作っていった。


楽しんではいるが結構疲れる……頭を使いすぎてくらくらしてくる。


ひと段落してコーヒーブレイクをしていると通信が入った。


モニターに写してと岩清水さんが言った。


市長が居た。


「お疲れ様、ムサシ君。クリス。そろそろと思って通信してみました」


「ごめんなさい、ムサシ君が頑張ってくれたから時間を忘れていたわ。そろそろ終わりにするわ」


「ムサシ君。おなか減ったでしょ。ディナーを食べに行きましょう」


そう言えばお腹が空いてきた。自動人形が操作して壁になっていた部分が大きなガラスになった。外はいい感じに暗くなっていた。


「サラ、いつもの所でいいのよね? チャイニーズレストランのトコ?」


「そうそう、先に行ってるから。すぐ来てねー。それではー」


通信が切れた。


「今日はここまでにして、行きましょうか?」


彼女は白衣を自動人形に預けた。


「そう言えばお腹が空きました」


「かなりイケてるから、美味しいのは保障するよ」


そう言って。二人で研究室を出た。


「地下ロビーはそこのエレベーターから降りてすぐだ。ソファーとかある所だからわかるだろう。車を手配してくる」


彼女は自分のデスクに行き通信する。


俺はエレベーターで先に地下ロビーに向かう。


そのうち彼女が合流してきて車に乗り研究所地下から地上階の通路を通り店に向かう。


車内では飽きずに音楽の話をしていた。


彼女は激しい曲が好きなようでストレスが溜まるとデスメタルを良く聞くとか話をしていた。


失恋した時の特効薬としてヘッドバンで頭を激しく上下して音楽を聴いて曲を堪能すると気持ちが楽になるとか変な事を言っていた。

そして論文にも書かれているとか正当性を主張していた。


悲しい時には悲しい曲って聞いてたんと言うとそれも良いが悲しみや不条理にはヘビーさと速さとシャウトが効くと力説していた。


そのうち店に着いたようで車は止まった。


この数時間で最初に会ったときのクールビューティのイメージは吹き飛び、デスメタルライブ会場にいる熱烈なファンのイメージが湧いてきた。口を開かなければシンプルな服装で清楚な雰囲気なのに……。



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