04
学校の授業が終わり、放課後
やっぱり時間通り、校門ではリムジンが私たちを出迎えていた
「あれ、雄夢様はどちらに?」
「有給取らせた」
「…そうですか」
━━十数分前の出来事
《行けば?》
《…え?》
彼は健康を気にしてるようで、スマホはなるべく目から離していじる
私が覗ける位置まで
《休み取ってないでしょ?最近。収録ひとつぬけたところで大したことないよ》
《…でも》
《あなたは私のボディーガードじゃないんだから。1から10まで私についてこなくていいの。…まあ、お父様がいらっしゃる時はそうはいかないかもだけどさ》
《それ、命令?》
《じゃあ、命令ってことにしたげる》
《わかった》
もうそろそろ上映する時間
今ごろ彼は、増田さんと何を話してるんだろう
有能ないないだけで結構たいくつ
「今日は新しいシングルが発売されて7日経ちますね。デイリーランキングとウィークリーランキング、両方1位だといいですね」
「入って当たり前」
「あっ…えと、そうですね」
「雄夢の真似してるんでしょ?むりして話さなくていいよ」
「す、みません…」
「あの人がすごいだけ。あなたは普通だから」
「…」
目的地に到着して周りを見る
誰もいないのを確認して建物の中へ
「輝香様入りますー」
今日はアテレコ
輝香は紛れもない
私のこと
父がうちの事務所の社長と一緒にスタッフを人選
経歴しっかりしてる人しか雇ってないから、私の正体がばれることはない
「捺香は、今日クラスメイトと遊ぶからこないってさ」
私は、今ごろ映画を見ているだろう2人を想像する
「わかりました。本当に能天気ですね…」
「責任は自分で負うだけ。私はどうなっても知らない」
「…さすがです…」
「んで?私のことは捺香にはばれてないよね?」
「はい、もちろんです」
本日は割と大事なシーン
感情を表すのが苦手な主人公が頑張って好きな人に告白する
キャラ的に声で表現するのが難しいとされてる
だから私にオファーがきたんだけど…
私からしたら、今同じような状況にあるからむしろやりやすい
けれど、今回は珍しく時間がかかった
家に帰っても、有能な執事はそこにいなかった
テレビをつけると、CDランキングは捺香が全ての部門で1位を取っていた