02
少しずつ暑くなっているこのごろ
ブレザーを着てない分肩が軽い
送迎はもちろん車
駐車場には、いつもの車掌さんが待ってくれていた
学校に向かう道中で、私たちの予定を聞くのは彼の日課
移動時間には必ず待ってくれてるからとても頼もしい
「今日の予定はどうなっていますか?」
「15:40までがっこー。今週は掃除当番あるから少し遅くなるかも。そのあとはいつもどーりね」
「俺も一緒でお願いします」
「わかりました」
学校について、教室に向かう
偏差値は高めの有名進学校
私は性格上あまり自分のことを話さない
しかも親が有名な投資家
友達作りはほんとに苦労する
今考えてみれば、こんなにいい友人ができたのは奇跡に近いかもしれない
「おっはよーりょーちゃん!あいかわらずクール決めてんねぇ~。」
「あ、おはよ。」
この子が、その友人
名前は浅野優那
「ねねね聞いて聞いて!!昨日ほんっっとうにすごかったんだから!あの演出といい、声といい…。ファンと一体化してたのよ!りょーちゃん誘ったのに来なかったから…」
「はいはいよかったですねー」
「もう素っ気ないなぁ…。まあそれがりょーちゃんなんだけどね!円盤化したら強制的に見てもらうからね!もう絶対行けばよかったって後悔するもん!」
いつも明るい優那
私もいつか彼女みたいになれるかな
「『なつきら』ほんとにすごいのよ!2人ともやばくてすごくてほんとになんてゆーの?もうすっごいんだから!」
「優那、語彙力」
「いやいやそーいうもんだいじゃなーいっ!そんなもんなくてもすごさは分かるでしょ!?」
「うーん…どうだろ」
『なつきら』というのは、声優の輝香と捺香が組んだコンビ名
それぞれ別々で活動しててそれなりに人気あったけど、2人が共演した時にこれがまたすごい反響があったらしい
周りに耳をすませば、みんなライブの話で盛り上がってる
「めっちゃ話変わるけどさ、きみの彼氏すっごい人気よねぇー」
「彼氏ではないんだけど…」
雄夢は女子に囲まれて勉強を教えていた
ちなみに、優那は私と雄夢の関係を知らない
まあばれるのも時間の問題はだと思ったりはする
顔よし、ルックスよし、性格も明るくてみんなの王子様的存在の雄夢
少女漫画でいう、かっこいいセリフをさらっと言えちゃうようなイケメンとか
私は比較的静かに過ごすタイプ
いわゆる『陰キャ』
それに比べて、雄夢や優那は明るくみんなと接する『陽キャ』
私たち3人と、あと1人でつるんでるんだけど…
今日彼は部活の大会みたい
「あ、そーいや今日サッカー部公欠だっけ?あいつ、1年のくせにエースやってるもんなぁ…。入部してあまり日が経ってないのに」
「そうだね」
4月にあった仮入部ですごいプレーをしたらしく、大歓迎されたらしい
本人も喜んで中旬に入部
あまり日が経ってないのにもうレギュラーとして活躍している
「…しかもチャラいし」
「ん?優那なんか言った?」
「う、ううん。何にも」
「そう」
優那はリーダーシップがあり、雄夢は頭脳明晰。そして今日いないあのチャラ男は運動神経よくていいムードメーカー
「なんで人ってこんなに差があるんだろうね」
「え?なんか言った?」
「あ、ううん。なんにも」
「…そう」