魔法本とスキル本
ジェイド爺さんに渡された本は全部で3つ。
魔法本の【雷魔法】【幻想魔法】ついでにと渡されたスキル本の【合成】。
魔法の本はどちらもロストマジックなのだが本当俺なんかが使っていいのだろうか?
後で何か無理難題や法外な値段請求される?かと思うと本を持つ手が汗ばんでくる。
俺はジェイド爺さんに再度確認し本を読んでいく。
・・・結果・・・俺は【雷魔法】と【幻想魔法】を覚えられなかった・・・。
流れ的には手に入りそうな気がしたんだが・・・才能が無かったっぽい。
本の内容は全く解らず、すべての頁を読んでみたのだがなにも変化はなかった。
ジェイド爺さんは首を傾げ「感が外れたのぉ」などと呟いていたが・・・なんかごめんなさい。
気を取り直して読んだスキル本の方は問題なく習得することが出来た。
驚いたことに全ての頁を捲り読むと本が発行し塵になって消えていったのだ。
魔法やスキルの本は一度きりしか使えない代物だったらしい。
ステータスを確認するとスキル欄には【合成】がしっかり残っている。
早速鑑定してみた。
【合成】
複数の物をかけ合わせ新たな一品を作る。
物だけではなく魔法も可能。
命あるものは使用できない。
中々に使えそうだ。
ジェイド爺さんに聞くと合成のスキル自体は珍しいものではないのだが、使いこなせている者が少ないらしい。
新たなスキルを得た俺は、これからどうするかの話をジェイド爺さんとする。
ジェイド爺さんは昔の伝手に連絡してくれるとの事だったが、少しばかり時間が掛るとのことで2、3日欲しいと言われた。
俺はその間奴隷として売られてしまう場合もある為、商会の近場にある廃墟で監視しジェイド爺さんを待つと告げ、ジェイド爺さんにお礼を言いピュナの待つ拠点に急ぎ向かうことにした。
「ピュナただいま。街に行ってきたぞ」
「どうでした?」
「奴隷商会にいってみたが姿は確認できなかったよ。だが噂を聞く限りでは確実にいるとは思う。それで他にも違法なことをいるようだし闇ギルドも関係しているらしいから、協力者に手を貸してもらうことにした」
「そうですか・・・」
「これから街に行き2、3日監視しようかと思う。協力者の準備が整うまでそのぐらいの時間が掛るみたいなんだよ。それまで辛いと思うけど待ってくれないか?」
「わかりました・・・」
「ピュナはそれまで体を治すこと。じゃぁすぐにご飯作るから食べてから街に行こう」
ピュナを説得し俺は飯を作っていく。
今日は何にしようか・・・シチューの後はカレーでもいいかな?
まぁいっか。
作ってしまえば食うしかないしな。
ピュナに見つからないようにコネクトショップを開き、カレーのルーを探し手頃のを
選び買う。
救命セットで100Pのを買っていたのと50P分のカレールーを買った為、コネクトショップの残金は200Pだ。
もっとポイント貯めて気にせず使えるようにしときたいな。
ルーを買ったらさっそく調理開始だ。
食材を切り、炒め、煮込み、アクを取ってからルーを入れれば完成だ。
俺がカレーを作るときには、水の代わりにビールをいるて作るのだが、今回は普通に水で作っていく。
隠し味も無しだ。
今日もピュナは側で調理を見ている。
今回はカレーなので匂いが結構漂っているのだが、獣人は大丈夫なんだろうか?
作る前に聞いておくべきだったな・・・。
「ピュナ?今さら聞くのもあれだけど・・・辛い物や匂いが強い物って食べれる?」
「大丈夫です。いい匂いがしてきました」
問題は無い様だな。
いやぁ〜危ない危ない。
カレーは美味しいって言ってくれるかな?反応が楽しみだ。
「出来たぞ。これはカレーっていうんだ。そのまま食べてもいいけど、パンにつけて食べてごらん?」
そう教えるとピュナは匂いを確認し、千切ったパンにカレーを付け口に運ぶ。
口に入れ何度か咀嚼した後、目を見開き俺を見つめてきた。
「これなんです?舌がピリピリしてきました」
「・・・口に合わなかったか?」
「ですがこれは癖になります。好き・・・これ」
好きで言葉を区切るから少しドキッとしてしまったが、カレーの事だよね。まぁ美味しいようでなによりです。
ピュナは今回も何度かおかわりをしてくれて嬉しくなってしまった。
料理を人に振舞ったことは何度もある。
仕事でも作ってはいたしね。
直接美味しいって言われる事もあったが、それとは比べ物にならないくらい、ピュナに言われると嬉しく、本当に作って良かったと思った。
食事が終わり片付けも済ませ、出発の準備が終えたので二人で街に向かう。
俺はピュナに負担がかからないように、歩幅を合わせる。
ピュナは街の中には入ったことが一度もなかった。
その為身分を証明できるものがなく獣人だし街にはいれるか不安になったのだが、門番に告げると獣人も人と変わず取り合ってくれたので、無事街の中にはいる事が出来た。
街に入るとピュナの顔は驚きで染められている。
村の規模は知らないが、この街はかなり発展しているんだろうなと表情を見て解るぐらいだ。
目を離すと洋服店や屋台にフラフラと近寄っていく。
俺はそんなピュナの手を繋ぎ、初めてこの街に来た時利用した風呂付きの宿屋に向かった。
ピュナの手を引き俺達は今夜泊まる宿【ジェム】に着いた。
店主から一部屋でいいかと聞かれたが二部屋でお願いし、部屋の鍵を受け取ると俺はまずピュナの部屋で少し話しをすることにした。
「さっきはごめん。急に手を握ったりして。決して不埒な考えからあんなことした訳ではないので許してくれ」
「・・・解ってます」
「それでこれからの事なんだけど、明日は朝からピュナの服と装備、それと食材を買って監視が出来る廃墟に移動しようと思う」
「大丈夫です。このまま付いていきます」
「戦闘になった時の為に、動きやすい服装や武器くらいは準備しておくべきだと思う。ピュナの村の人達を無事に見つけ、連れ出せたとしても、敵は追ってくると思う。人を簡単に殺しちゃう奴等が相手なんだ備えはちゃんとしておいた方がいい」
「ですが・・・」
「ですが?」
「お金持ってないです・・・」
「それは俺が出すから気にしなくていいよ。そうだ、ここの宿には風呂があるんだ、温かくて気持ちがいいから入ってくるといい」
俺は話しを止めて風呂に入る事をピュナに進め、風呂場に連れて行き入るまでの手順を教える。
「これで入れるから。あと一人で外に出ないようにな」
それだけ伝えると俺は自分の部屋に戻った。
る
部屋に戻ってきた俺は魔法の訓練に取り組む事にした。
毎日取り組んできたので、スムーズに魔法を発動する事が出来るようになってきているのだが、今日からは同時に魔法を発動する。
まずは左手に水球、右手に土球を出すイメージで魔力を練りこみ発動させる。
なかなか難しく片方の手を意識するともう片方が崩れるが、それでも諦めずに何度も何度も繰り返す。
今夜は2回だけ限界まで発動させる。
最後の方には何とか同時発動はできるようになっていた。
まだまだ歪な形でしか発動できないが初の試みで発動できただけでも大金星だ。
いずれ片手でサッと発動出来るようになってやる。
満足した俺は風呂に入ってから就寝する。
朝、目が覚め朝食を食べながらピュナの顔を見るが、しっかりと寝れたのだろう顔色がだいぶ良くなっていた。
まだ体調は万全では無い筈なので、無理はしないようにとだけ伝え二人で街に繰り出す。
今日もピュナはキョロキョロと街並みを見渡しているのだが、手はつなぐ必要が無くなっていた。
興味があっても俺から離れずに付いてくる。
服装は簡易な物で見すぼらしく見えるが、元が美人な為すれ違う男共がピュナを何度も振り返って見てくる。
男共の視線が嫌だったのか俺の後ろに隠れるようにピュナが歩く。
そんな姿を見て先に服を買いに来た。
「すみません彼女に似合う服を選んでやってください、できるだけ動きやすいような格好で」
「かしこまりました」
ピュナは戸惑っていたが気にしないでいいと伝え店員さんに任せることにした。
用意された服を着て出てきたピュナはとても美しかった。
特別な物を着させられた訳ではないが、今まで以上に人の目を引きそうな出来になってしまったのだ・・・。
店員さんもスタイルがいいから何でも似合いますねって褒めるので、俺が褒められた訳ではないがなんだか誇らしくなってしまう。
ピュナも恥ずかしそうにはしているが嬉しそうにも見えたのでこのまま購入させてもらうことにした。
買い物を済ませたら次はピュナでも使えそうな武器を買いに行く。
狩りでは剣を使っていたらしいので買う予定なのは剣だ。
武器屋に着くとピュナには使い心地優先で選ぶようにと伝えた。
店員にも聞きながらピュナの武器を選んでいく。
どうやら軽い武器が好みらしく、店員に進められた軽くて短めのシミターを何度か素振りをし使い心地を確認していた。
「問題ないです」と言っていたので大丈夫だろう。
店員に購入する事を伝えお金を支払い店を出る。
「あとは食材だな。その前にお昼でも食べようか何か食べたい物とかある?」
「何でも食べれます」
好き嫌いはないって事かな?
俺は野菜スープに串焼きとパンで簡単に済ませることにした。
沢山屋台があるから他に好きな物選んでいいと言ったが、ピュナは俺と同じものでいいと選ぶことはなかった為、二人共同じ食事だ。
美味しいと感動することはなったが腹は膨れた。
その後食材も適当に買い込み、他に必要な物を二人で確認したがもうなさそうなので廃墟へ向かうことになった。
ダブレット商会から少し離れた位置にある2階建ての廃墟にやってきた俺達は、監視がしやすい場所に陣取りそこで張り込むことにした。
中の様子は見えないが通りで何かあればすぐ見える位置だ。
俺達は監視しながらお互いの事を話し時を過ごす。
「ピュナのステータス見せてもらえない?参考までに知っておきたいんだ」
「はい。どうぞ」
【 名 前 】 ピュナ(16)
【 レベル 】 11
【 体 力 】 138/253
【 魔 力 】 50/50
【 攻 撃 】 192
【 防 御 】 101
【 敏 捷 】 261
【 スキル 】 剣術 弓術 夜目
【 魔 法 】 風
見せてもらったピュナのステータスは想像以上の物だった。
レベルは俺よりも低いが、全体的に数値は俺よりも上。
特に敏捷が異様に高い。
あの細い体のどこにそんな力があるのか隅々まで調べてみたいが・・・セクハラだやめておこう。
こんなに強くてなんでやられたか気になって聞いてみたら、相手は魔法使いが数人おりそれにやられたと悔しそうに教えてくれた。
なんでもピュナの種族は豹人族といい皆身体能力は高く、接近戦を得意とするのだが、敵の多彩な魔法に振り回され捕まってしまったと教えてくれた。
不用意な質問のせいで場の空気が少し重くなってしまった為、少し話題を変えピュナの事を知ることにした。
豹人族の村には10数人しか生活しておらず皆ステータス値は高いのだが、高齢や女性が殆どだった。
ピュナはその村で一番若かった為、みんなに可愛いがられていたらしい。
家事が苦手で主な仕事は狩りだったらしいのだが、いつの間にか村の中でも一番強くなってしまい、恋愛には縁が全くなかったとも恥ずかしそうに話してくれた。
俺が「こんなに美人なんだからきっとこれからいい人に出会えるよ」と言うと顔を真っ赤にし否定してきたときは笑ってしまった。
その後もお互いの家族の事や趣味に得意なことなど、他愛もない話を沢山していると日が落ち夜になる。
食事をし交代で監視することにし今日は俺が先に寝ることにした。




