魔物と初遭遇
初心者講習は四日目まで順調に進み、いよいよ明日は野外実戦。
この四日で俺は結構強くなった気がする。
剣の使い方を習い、魔法も素早く発動出来るようになったし、他にも薬草や魔物の事、野営地の作り方から見張りをした際の注意点なんかまで勉強した。
明日の実践に向けて準備万端だ。
後は毎日寝る前に見るのが楽しみになっている、ステータス確認したら寝るか。
【 名 前 】 ジュン・ショウノ(20)
【 レベル 】 1
【 体 力 】 24/71
【 魔 力 】 5/64
【 攻 撃 】 79
【 防 御 】 35
【 敏 捷 】 50
【 スキル 】 鑑定 マップ
【 魔 法 】 火 水 土 光
【 特 有 】 コネクトショップ
5日目、持っていく道具を確認しながら揃え、昼食を食べたら出発だ。
俺は緊張で食が進まなかった・・・。
クリフ・マリナ・アイアは、狩りで魔物とやり合ったことはあるそうで意外とリラックスしている。
ちなみに今日から教官が2人体制。
ここ数日、ギルド付近で不穏な動きが見られるらしく念の為なのだそうだ。
何があったのか詳細を知る事は出来なかったが、気を引き締め行動するように言われた。
何事もなく街を出れた俺達は、街の東にある森に着く。
此処はラビット系の魔物ばかりしかおらず、弱く数も少ないので初めての実戦にはうってつけの場所との事。
「ではこれより2日間ここで実践演習を行う。日がある内は連携しながら魔物の討伐と食材の確保。野営地を自分達で作るところから始め、夜は交代しながら見張りだ」
「「「「はい」」」」
「俺達は少し離れた位置から見ている。仲間と力を合わせ無事に街に戻るのが目的だ」
「「「「はい」」」」
「では健闘を祈る」
教官たちは俺達から離れて行ったところで最終訓練の始まりだ。
俺達はまず森の中に入り拠点に適した場所を探す。
「ここなんかいいんじゃない?」
森の中に少し歩いたところで、マリナがキャンプに適した場所を見つける。
見通しも良くここなら安全に過ごせそうだ。
4人で話し合い俺とアイア、クリフとマリナのペアに分かれ周辺の安全確認に向かう。
焚き火用の薪を集めながら散策していると、俺達は魔物と出会った。
体長30センチ位の毛むくじゃらな兎だ。
「おっ!アイア待ってくれ、この先にボアラビットが3匹いる。左側からアイアのゴーレムで仕掛けてくれ」
「わかった」
魔物との初戦闘だ。
俺達はゴーレムの反対側に静かに移動する。
先にゴーレムに攻撃させ引き付け、その隙に後ろから襲う戦法だ。
ゴーレムが近づくのに気が付いたボアラビットは、ゴーレムとの距離を測り勢いをつけ体当たりする。
確認したところで俺は突っ込み、一番手前にいたボアラビットに剣を突き刺す。
血を撒き散らしながら暴れたがすぐに動かなくなった。
アイアのゴーレムも拳を叩きつけ1匹仕留めている。
残りの1匹は俺に向かって突っ込んできたが、華麗に避け剣を振り下ろし首を切断した。
「無事倒せたな」
「このぐらいなら問題ない。魔石を取って血抜きしたらすぐ離れよ」
「あ、あぁ」
「緊張した?」
「まぁな、でももう大丈夫だよ」
緊張はしたが、初めて魔物を殺したことに対して変に気負うこともない。
俺はこの世界でやっていける!そんな自信がついたぐらいだ。
ボアラビットからビー玉サイズの魔石を取り出し血抜きをしていく。
この魔石はギルドで買い取ってくれる。
詳しくは教えて貰えなかったが、主に魔道具
の材料に使われているらしい。
「アイア、近くに魔物がいるぞ」
俺が指す方角にはホーンラビットが2匹いた。
額には鋭い角が一本生えている兎だ。
刺されないように気を付け連携しながら戦う。
2匹とも無事に倒せたので先程と同じように処理していく。
処理が終えると周辺の安全確認に戻る。
「もう近くにはいなそうだし拠点に戻るか」
「うん。食べれるのいっぱい取れた」
今夜の食材に焚火の薪もだいぶ集まったのでクリフ・マリナ達と合流する事にした。
合流するとクリフ達の方でも魔物が出たらしく、「今夜は御馳走だ」とアイアは喜んでいた。
日も落ちてきてたので素早く行動し始める。
俺は食事の準備、クリフとマリナでテントを張り、アイアが竃づくりだ。
兎を捌き一口大に切り下味を付ける。
野営の為充分な食材や調味料なんかは無いが、背負い袋の中から牛乳、小麦粉、玉葱、芋を取り出し下拵えをしていく。
「アイア・・・俺の料理の姿を見て感心するのはいいけど、竃作ってくれないと料理ができない・・・」
「料理上手?」
「料理の仕事をしていたからな、楽しみにしててくれ」
「解った」
アイアを急かし急ぎ竈を作ってもらう。
火も付いたところでお湯を沸かし手早く調理にはいる。
作るのは兎肉シチューだ。
材料は買ってあったので、しっかりとホワイトソースから作っていった。
出来上がったところで全員呼び食事にする。
アイアだけはずっとシチューの側にいたけどね。
「じゃ食べようか」
異世界の食材と魔物で出来た訳だが、みんなの口に合うだろうか?
この世界の食文化は結構低そうだしシチューも無さそうなんだよな・・・。
「「「「美味しい・・・」」」
「そ、そっか。よかったよかった」
みんな気に入ってくれたようで作った甲斐があるってもんだ。
マリナが作り方を知りたいと身を乗り出し聞いてくるので、羊皮紙に材料に調理手順、注意点を書き込んで渡してあげた。
食事をしながら話し、夜の見張りは二人ずつ交代でと決まった。
食後アイアが眠そうな仕草をしていたので、先に俺とクリフが見張りをする事にした。
【 名 前 】 ジュン・ショウノ(20)
【 レベル 】 3
【 体 力 】 75/91
【 魔 力 】 69/78
【 攻 撃 】 92
【 防 御 】 46
【 敏 捷 】 61
【 スキル 】 鑑定 マップ
【 魔 法 】 火 水 土 光
【 特 有 】 コネクトショップ
見張りながらステータスを確認したのだがかなり強くなっている。
訓練した時程ではないが、簡単にこんな強くなってるのにはビックリした。
コネクトショップが後7レベルで開放か、この分だと直ぐ使えるようになりそうだな。
見張りは俺とクリフの二人だけ、女性陣の前では聞きずらい事も聞きながら夜を過ごしていく。
意外とクリフもそっちの方は好きなようで盛り上がってしまった。
初野営では無事何事も起こらず朝を迎えることになった。
何かが起こって欲しい訳ではないのだが・・・絶対何かあるはずと気を張っていたので、拍子抜けしてしまう。
荷物を背負い森の外に出ると教官達が待ち構えていた。
街へ向かいながらレディックが今回の野営についてその場で評価してくれたのだが、及第点はあげるけどもっと緊張感持たないとダメだってさ・・・。
襲ってくるのは魔物だけじゃないから気を付けないと、見張り中だけで何度も殺せるタイミングがあったぞと注意された。
街に着きまっすぐギルドに向かうと入り口には屈強そうな人達が集まっている。
俺達は不思議に思いながらも中に入って行こうとすると、呼び止められ質問された。
「お前達の中で魔法の袋持ってるやつはいるか?」
「どうしてだ?」
ん?魔法の袋だと?
レディックが聞き返すと男は淡々と語りだした。
「最近ここらで不審な人物が目撃されているんだが、つい先程一人捕まえる事が出来てな、調べたところそいつは裏家業のやつだった。それで尋問したら【魔法の袋を持った男】を探していたらしいんだ」
「裏家業?」
なんとも物騒な話だ・・・それに探しているのは俺の事じゃないろうな・・・。
魔法の袋を欲しがっている?・・・いずれにしろ情報がもっと欲しい。
「金さえ払えば何でもする危ない連中だ。誰かに雇れて探しているらしいから気を付けろよ。たとえ持っていなくとも痺れを切らして手あたり次第に襲ってくるかもしれんぞ」
「街もおちおち歩いてらんねーじゃねーか」
男とレディックの話を聞く限りじゃ、俺の顔と名前はバレて無さそうな気がするな。
絡んでくるぐらいならまだなんとかなるけど、裏家業ね〜絡まれたく無いなぁ・・・直ぐに街からでるか。
皆知らないと告げ、俺も便乗して知らない振りをしてから俺達はギルドの中に入る。
ギルドの中でも同じく騒いでいるようだ。
「中も騒々しいな・・・受付にさっさと終了したと伝えに行くぞ」
「「「はい」」」
受付に報告し買取もして貰ったので、初心者講習は完全に終了だ。
これで皆ともお別れだな、短い間だったがいい奴等で良かった。
またいつか会いたいものだ。
「じゃぁ皆元気でな」
「これからどうするの?」
俺はさっさと逃げようとしたのだがアイアに捕まってしまった。
服を掴まないで欲しい・・・。
「えっと、これから旅に出るよ。アイア達はどうするんだ?」
「私とアイアは王都に行くわ。用事もあるし」
「僕はここでもう少し鍛えるよ」
「そっかじゃここで皆バラバラだな」
「ジュンは王都に来ないの?」
「ん?王都に?いや俺は行く気はないな」
「・・・一緒いこ?」
ぐっ・・・アイアめ・・・可愛いがそんな目で見てもダメだ、俺はダンジョンに行きたいんだ!!
何とか自制を保ち断った。
なんでこんなに懐いたんだ?飯のせいか?
このままここにいると「いいよ」って言いそうになる、早く離れよ。
俺はアイアの手を服から離させ、皆にお礼を言いギルドから出る。
早めに魔法の袋のカモフラージュとして荷物入れる鞄でも買わないとなぁ。
俺は城門に向かいながらも必要そうな物を大量に買っていき、路地裏で隠れながら魔法の袋に詰め込んだ。
城門を何事もなく出ると森に向かって歩く。
レベルはあげときたいからね、よし誰も後をつけてきていないな。
ここから森の中を北東に進み、迷宮都市【ジルコン】に向かう予定でいる。
森の奥は魔物が多い。
ボアラビット、ホーンラビット、クローコニーのウサギ類を数匹ずつ倒したのだが、死体の処理が追いつかない。
鹿なのにマッチョなマウントディア、無音で寄ってきて噛みついてきたサイレントウルフ、急に角で刺してこようとしてたブラッドホーンブル、こいつらがどこからともなく襲ってきやがる。
サイレントウルフなんか俺の兎奪って逃げるし・・・。
それと本気で死ぬかと思ったクレストベア。
髭生えている熊なんだが、見た目に反してすごく機敏で何度か体当たりで吹き飛ばされた。
訓練してなかったら絶対死んでたなってぐらい強かった。
日が暮れた頃に食事しステータスの確認をしたのだが、レベル8にもなっていた。
かなり魔物を倒したからなぁ〜レベル10まではもうちょいだな。
今夜はマウントディア食べてみるか、かなり筋肉質だが鹿は鹿だろう・・・。
川辺に鹿肉を持っていき水に漬け込み臭み抜きして置く。
待っている間に竈作って網を乗せ焼肉の準備だ。
後は卵もパンも油も大量にあるので鹿肉のカツだな。
料理もさくっと出来上がり、さっそく食べてみる。
臭みは完全にとれなかったが、あのムキムキの肉なのか?って程に柔らかく美味しかった。
「焚火の明かりしかないくらい森の奥での一人焼肉」
言ってて虚しくなってきた。寝よ。
次の日も森の奥で魔物退治。
レベルの恩恵は凄くて、昨日苦戦したクレストベアがかなり楽に狩れるようになっている。
体のキレが良く、動いても動いても疲れないので日が落ちるまで狩りに狩りまくった結果、レベルが14になっていた。
狩った魔物は魔法の袋に入りきらず、美味しくないと聞いていたサイレントウルフは丸々埋めることにした。
魔法の袋もパンパンだし、レベル10も超えたから明日から本格的に迷宮都市に向かうか。
ステータスを見るとかなり強くなっているし大丈夫だろ。
【 名 前 】 ジュン・ショウノ(20)
【 レベル 】 14
【 体 力 】 79/214
【 魔 力 】 83/157
【 攻 撃 】 162
【 防 御 】 110
【 敏 捷 】 129
【 スキル 】 鑑定 マップ
【 魔 法 】 火 水 土 光
【 特 有 】 コネクトショップ
コネクトショップを調べる前に飯にするか。
今日はクレストベア食べてみるか、熊だしそんな美味しくないと思うんだよな~。
鍋に油引いて肉焼いて、肉の表面が焼けたら切っておいた玉葱入れて炒め、赤ワインとニンニクと香草に潰したトマト入れて煮込む。
アクもしっかり取っていく。
香草は訓練中に採取していたローズマリーモドキだけでいいか。
味付けは塩と胡椒だけ、味噌とか醤油があればもっといろいろ作れるんだけどな~。
まぁ~贅沢言っても仕方ないか。
できたぞ。
さて、どうだろうか・・・。
「んっやっぱ臭いな・・・あと味付け足りなかったな・・・」
失敗失敗。
でも食べれないことはないので、気にしない様に口に運んだ。
ではそろそろ特殊スキルのコネクトショップを見ていくか。




