始まりは突然に
俺の名前は湘野 純。33歳。
仕事は都内某所のレストランで調理を一任されており、毎日忙しく生きていた。
ある日の事、俺はいつも通り仕事を終え帰宅すると、あるはずの自分の部屋があらず真っ白な空間になっていた。
夢でも見ているのか?疲れすぎて見えた幻覚か?
真っ白な空間の中央には巨大な石碑があり、その石碑の前には手帳と巾着袋がいくつか置いてある。・・・他には何もない。
しばらくの呆然としていたが次第に落ち着いてきたので、まずは袋と手帳に手を伸ばしてみることにした。
袋の方は中を覗くが何も入っていなかった。
手帳もパラパラと中身を見てくが何が書いているが全く読めない。
・・・謎が深まるばかりだ。
石碑を見てみると文字が彫られているがそれも読めない。
完全にお手上げ状態に陥り、溜息をを漏らしながら石碑に触れる。
すると途端に石碑と俺の体が光りはじめる。
俺は急な発光に慌ててしまうが、光はすぐに収まる。
なんだったのか疑問しか浮かばないがまずは自分の体を確認して見る。
うん。どうやら異常は無いようだ。
再度石碑を見てみると何故か文字が読めるようになっていた以外は・・・。
『 異界より迷いこみし者よ
石碑に触れ知識と力を得ろ
迷いし者に幸多からんことを 』
石碑を読む限りでは、触れることで読めるようになったという事なのだろうか。
もしや手帳も読めるようになったのでは?と、再度見てみるとやはり読めるようになっていた。
手帳の内容は今いるこの世界?で生きていくための情報だった。
この世界には魔物がおり、人々は武器を持ち魔法を駆使して日々戦っている。
また、人間以外の種族もいると書いてあった。
石碑に触れることで手に入る力は【鑑定】【マップ】それと文字の読み書きができ、会話ができるように言語理解の知識を授かる事が出来る。
極稀に【特殊スキル】を獲得するとのことがある。
異世界物のラノベか?なんかゲームみたいだなってのが第一印象だ。
ページを捲っていくと、石碑に触れることでステータスを得ると書いていた。
手帳に書いてある指示に従いステータスウィンドウを見てみる事にした。
「・・・ステータス」
【 名 前 】 ジュン・ショウノ(20)
【 レベル 】 1
【 体 力 】 50/50
【 魔 力 】 1/1
【 攻 撃 】 69
【 防 御 】 22
【 敏 捷 】 39
【 スキル 】 鑑定 マップ
【 魔 法 】
【 特 殊 】 コネクトショップ
「おお~ホントに出た。・・・魔力無いじゃん。しかも歳が若くなってる・・・まぁとりあえずスキルを使ってみるか」
手帳に向かって鑑定してみると、【導きの書】と出てきたが急に頭痛と吐き気に襲われそのまま意識を失ってしまった。
目が覚めるとまた同じ真っ白な空間だった。
「ん・・・あれ?何してたんだっけ?」
記憶を遡りスキルを使用した後の記憶がない・・・?
ステータスを再度確認してみると魔力が2になっていた。
「あれ?増えてね?」
また謎が増えたなと思いながら手帳を読み直すと、ちゃんと注意書きがありました。
どうやら魔法やスキルを使い過ぎると急激な倦怠感に襲われ、使い切ると気を失ってしまうらしい。
魔力を使いきり負荷を与える事で総量が増え、失った魔力は自然と回復していく。
「なんとも不思議な現象だな」
確認の為に特有スキルを鑑定を使ってみることにした。
【マップ】(常時発動型)
行ったことがある場所を表示する地図。
脳内で念じることで縮小拡大ができる。
【コネクトショップ】
異界の商品を取り寄せることができる。
使用可能レベル10
調べたところで再度気絶したが、目が覚めてステータスを確認して見ると魔力が3になっていた。
どうやら本当に使い切ると魔力は上がるらしい。
しかたない後で増やしとくか。
手帳の最後には、奥の部屋に外に出るための転移魔法陣がある。
魔法の袋を1つ持っていくといいと、手帳はまた誰かが迷い込んだときの為に置いて行ってくれっと書いてあった。
巾着袋みたいなやつの事かな?袋を鑑定してみる。
【魔法の袋(小)】
見た目以上に大量の荷物が入る収納袋。
生命がある物は入れれない。
時間停止機能付き。
見た目以上に?まさか・・・
俺は慌てて袋の中に手を突っ込んだ。
パンや干し肉が大量に、水筒、剣、盾、金貨20枚など入っていた。
これは助かるな。
剣に盾本物だよコレ・・・金貨は貨幣かな?純金かは解らないが、まぁ売っても結構な値段しそうだ。
俺は非現実的な出来事に心が躍っていた。
出口らしき扉を開くと小部屋があり、足元に転移魔法陣もちゃんとある。
ここは安全そうだし少し魔力増加しといた方いいだろう。
手帳には魔法の習得方法も書いてあった。
食料もまだまだあるし、習得してから出る事にしよう。
外の世界は今までいた日本じゃない、準備は念入りにしないとな。
まずは魔力の増量だな。
俺は、倦怠感に襲われながらも手あたり次第鑑定していく。
ある程度魔力が増えたところで、魔法の練習だ。
属性には、[火][水][風][土][光][闇]の6つあり、これが基本属性と言われる。
他の属性もあるのだが失れた魔法と言われ、使い手はもういないかもしれないと書いていた。
ここで調べられるのは基本属性のみ。
石碑に触れ魔力を流し調べたところ、どうやら俺の属性は[火・水・土・光]の4つだと解った。
手帳を見ながら魔法の発動に取り組む。
魔法は一度発動できれば後は感覚で使いこなせるそうで、そこから形や威力を変えるのはイメージ次第なのだとか。
練習を始める事5日目。
まだまだ納得はできてはいないが魔法を発動できるようにはなった。
最初はまったく理解が出来なかったが、体内にある魔力を感じ取る事が出来てからは成長が早かった。
今はまだ水魔法だとコップ数杯分を出せる程度だが、それでも初めて魔法が使えた時は嬉しくて叫びましたとも。
魔法の発動を繰り返す事で無駄が無くなり、消費魔力も抑えれるとならば毎日訓練はしないといけないな。
後は・・・そろそろちゃんとした所で寝たい。
風呂にも入りたいし、歯も磨きたい。
魔法の練習に没頭し過ぎて気が付かなかったけど、結構な臭いが・・・。
【 名 前 】 ジュン・ショウノ(20)
【 レベル 】 1
【 体 力 】 50/50
【 魔 力 】 40/40
【 攻 撃 】 69
【 防 御 】 22
【 敏 捷 】 39
【 スキル 】 鑑定 マップ
【 魔 法 】 火 水 土 光
【 特 有 】 コネクトショップ
ステータスを確認してみると魔力が40になっている。
「まぁこのぐらいあればなんとかなるだろ。忘れ物はないな、よし外の世界に行くか」
俺はまだ見ぬ外の世界に心を踊らせ転移部屋に向かう。
床に書かれた魔法陣に乗り、手を触れ魔力を送る。
すると魔法陣が光りだす。
眩しさがおさまり目を開けると俺は外に出てきていた。
「あっという間だな・・・」
外は木々に囲まれた森の中。
建物や魔物は目に見える範囲にはいないようだ。
日が暮れる前に人里には着きたい。
現在地と目的地を見つける為にさっそくスキルのマップを念じると、脳内に地図が浮かんでくる。
自分を中心に映し出されたマップには、赤い点が数個、離れた所には緑の点が多数密集している。
実はこの数日間魔法の練習だけをしていたわけでは無い。
マップの機能も確認しており、自分に敵対する者は赤、無害な人種は緑に表示する様に設定してある。
「あっちの方に人がかなり集まっているな。先ずは行ってみるか」
久々に人に会えるかと思うとドキドキしてくる。
逸る気持ちを抑え、森を小走りで抜ける。
敵対表示に合わないように避け森を抜けると、遠くに城壁らしきものが見えてきた。
マップには街の全体図が映る様になり、かなり大きい街だと解かる。
日本ではないこの世界で俺はやっていけるのか・・・不安はあるが楽しみの方が強い。
まずはここでやっていけるように慣れる事から始めよう。
気持ちを引き締め街に向かう。
「すげぇーでけぇー」
城壁は見上げるほど高く、10mはあるだろうか?かなり高く頑丈そうだ。
入り口になる城門の前には人の列が出来ていて、鎧を着た兵士らしき人が話しかけていた。
鎧を見て改めて日本ではない事を実感した。本当にファンタジーだな・・・。
どうやら街に入るにはあの検問を通らなければならないみたいだ。
俺は見よう見まねで並び、待つ事にした。
城壁や並ぶ人々を眺めながら待っていると遂に自分の番がやってきた。
「次!身分が確認出来る物を出せ」
「あ、すみません。持ってないんですが入れませんか?」
「ふむ、初めて来たのか・・・では、この石に触れてみろ」
「あ、はい」
兵士に言われるままに石に触れる。
触れるが何も反応がない?どうなってんだ?
「よし問題はないな。入国料は銀貨1枚だ。入国手形をこれから渡すから少し待っていろ」
「あ、あの・・・これって使えます?」
そういって魔法の袋に入っていた金貨を渡した。
どうやら今現在使用されていない硬貨だったらしく珍しそうに見ていた。
一応問題なく使えるようでお釣りとして銀貨9枚を受け取った。
ただ街中では使用できない店があるかもしれないので、換金所で両替しとくようにとも教えられる。
その後、入国手形は無事に貰う事が出来た。
発行された入国手形は仮の身分証なので、1週間に1度必ず戻ってきて更新するように。
もし来ない場合は不法入国者扱いにされ処罰されるとも脅された。
紛失した際は再び銀貨がかかる為無くさないようにしないと。
「では改めて、ベリルにようこそ。たのしんでくれ」




