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異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる  作者: ひとつめ帽子
第1章
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第4話

「ジノ、フレイムの魔法が全然ジノみたいに使えないんだけど。

なんで竃の火の代わりみたいな事が出来るんだ?

しかもそれを維持してるし」


 俺は手の平を地面に向けて火の魔法を放つと、地面が大きく燃え上がる。

フレイムという火属性の魔法だ。

これは普通のフレイムの魔法の姿。

しかし、毎日のように台所でジノが扱うフレイムはモノが違う。

地球の竃で扱う火を作り出し、その火力のまま維持しているのだ。

俺はそれがフレイムの魔法だとわかった時はこんなの簡単だろう、と思ったが、全く同じように出来ない。

そもそも、火力を抑えるのが難しい。

抑えすぎたら魔法は発動せず、半端な魔力を使うだけではライターの火のようなモノが一瞬出るだけで終わる。

火力の調節がまず出来ない。

おまけにその火力を維持させるなどとても出来る気がしなかった。


「お前の“魔力操作”のスキルがまだ未熟だからな。

とは言えまだその年齢にも関わらず既にレベルが3を超えてる時点で未熟と言うのも違うかもしれんが。

練習するなら風魔法にしておけ。

火は火事になったら面倒だ。

風魔法を身体に纏わせて動いてみせろ。

このようにな」


 ジノが両手を少し広げると、ジノの身体から魔力が溢れ出す。

風がジノの周りを流れ始め、その身体に集まってくる。

そしてフワリ、とその身体が浮き上がった。


「“飛翔”の魔法だ。

魔力を増幅させる杖も持たずにやるのは高度な魔法使いしか出来ん芸当だが、お前なら出来るようになる。

これが出来るまで練習してみろ。

飛べるようになれば自然と魔力操作のスキルも上達するだろう」


「わかった」


 俺は強く頷いて、風魔法を身体に纏わせる。

風魔法を身に纏わせる術式の根本は“矢避け“に近いが、そこに推進力を与えて自分の身体を浮かせるとなると、複雑な術式が必要になる。

頭の中では思考がフル回転。

魔力を感じ、どのように風魔法を動かせば良いのかを考えながら魔力を放出させるがうまくいかない。

いつの間にか俺の周りには旋風が巻き起こっていた。


「攻撃魔法に切り替わりつつあるな。

うまく制御しないと怪我するぞ」


 ジノが苦笑いしながら言ってくる。


 簡単に言ってくれるよなぁ、いつも。

集中しろ、集中……。


 風が少しづつ俺の身体に集まり出すのを感じた。


 お?これいけんじゃね?


 そう思った瞬間、俺の真下で爆風が巻き起こり、身体が舞い上がる。


 アアァァァアッ!と声を上げて吹き飛ぶ俺。

ジノが直ぐ様飛び上がり、俺をキャッチした。


「集中力が途切れた証拠だ。

練習がまだまだ必要だな」


 ジノが俺を抱き抱えて笑いながらそう言った。


「ビビった。これめっちゃ難しいわ。

でも面白いな。

この世界は練習した分必ず結果に繋がるからやり甲斐があるわ」


 俺も笑い返してジノに言う。


 この世界にはスキルというモノがある。

様々なスキルが存在するが、大抵のスキルは鍛錬を積む事でスキルレベルが上達していく。

スキルのレベルが上がる度に確実な成果として明らかな効果が現れる。

魔法ならば、始まりは単一の弱い魔法を放てるようになり、スキルの上達に伴い強く

数多くの魔法を扱えるようになる。

剣技ならばただ剣を振るという基本動作から始まり、スキルの上達に伴って神業のような剣戟が可能になり、一振りの威力も上昇する。人によっては斬撃を飛ばす事も出来るらしい。


 とは言え、スキルも万能ではない。

つまり、誰も彼もがどのスキルも手に入れられる訳ではないという事だ。

そして、上達の速度もまた人それぞれだ。

その辺りは特性というものが関係するらしい。

特性のあるスキルはすぐに身に付き、上達も早い。

特性の無いスキルは上達も遅く、場合によってはスキルの発現すらしない。


 ジンが俺にどんな特性があるのか鑑定眼で調べた所、魔法に関する適性はすこぶる高いとの事がわかった。

逆に格闘技や剣技といった一般戦闘技術における適性は見られなかったそうだ。

だから、俺は魔法をひたすら鍛え上げる事にしたのだ。

ついでにその他のスキルも手に入れられるモノはとにかく掻い摘み、ジンの持ってる鑑定眼のスキルも手に入れた。

特性が無いので上達は遅いが、只管鑑定を続ける事でいずれ高いレベルになるだろう。

俺のステータスを確認するのはそれまでのお楽しみだ。

ジン曰く、子供とは思えないステータスにマナと魔力だけなっているらしいから。


 そんな訳で俺は日々スキルの上達の為に邁進している。

既に火、水、風、土、光属性の魔法は扱えるようになった。

治癒魔法も初歩魔法ならば扱える。

魔法の鍛錬にはマナがかなり必要になるのだが、未だにマナ切れを起こした事がない。

不思議に思った俺がジノに尋ねると、自然マナ回復のスキルをいつの間にか会得していたらしい。

ジノ曰く、マナポーションを毎日飲ませたせいか?と頭をひねっていた。

ともかく、これのお陰でマナポーション要らずの身体になり、よっぽどの高威力魔法を連発しない限りマナ切れにはならないのだ。

高威力魔法は余波も大きく、里の人たちが驚いてしまうので、使用控えている。

使わないだけで、使えない訳ではない。


 そんな俺は“飛翔”の練習に風を纏いながら、ジノのいる家屋から里まで歩く。

時間にして歩いて二十分ほど。

往復の時間は歩きながら魔法の練習に費やす。


 三歳にして、ジノはもう俺を一人で里へと向かう事を許可したのだ。

リリアとミーシャは一人できた俺を初めて見た時、ジノに凄い剣幕で怒りに行ったものだ。

それでもジノは付き添わないのは、一人で少しづつ色々と出来るようになってもらいたいからとの事だ。

三歳児に何を求めてる、と叱りつけるミーシャ。

しかし、当の本人である俺は勿論あまり気にしていない。

そこまで遠くは無いし、本当に危なかったら光魔法の“フラッシュ”を打ち上げろ、とジノから言われている。

五秒で来るそうだ。

試してみたいが、何も無いのにやったら流石のジノでも怒るかもしれない。


 そうこうしてるうちに里へと着いた。

最初に俺に気づいたのは狩りに向かう途中のミーシャだった。

肩に長い弓を背負っている。


「シンじゃない。

あんた、また一人で来たの?

森には猪も出るから危ないのに」


 そう言って俺に近付いてくる。


「こんにちは、ミーシャさん。

大丈夫だよ、猪なら前に一人でやっつけたから」


 それを聞いてミーシャが顔を引きつらせた。


 それは二週間ほど前の事だ。

この前、一人で里へと向かう途中で猪に出くわしたのだ。

直ぐ様俺はファイアボールを放ったが、一発目は狙いが外れてしまった。

いきなりの遭遇に頭は冷静で無かったようで、術式の座標の指定が正確ではなかったのだ。

慌てて第二射を放とうと構えたと同時に猪は走り出し、突進してきた。

瞬時に火の魔法から土の魔法に切り替えて、俺の目の前に厚い土壁のアースウォールを作り出す。

その土壁に猪は勢い良く頭からぶつかってその場に倒れ込み、気絶した。

するとジノが上空から降りてきて、ふむ、と一声上げる。


「初めての戦闘にしては上出来だな。

火の魔法から土の魔法に瞬時に切り替えたのも賞賛出来る。

だが、一発目を外したのは問題だな。

危険な魔物相手ならその一瞬の隙が命取りになるぞ」


 そう言って俺の頭に手を置いた。

どうやらジノは俺をずっと見守っていたようだった。




 そんな事もあり、既に俺は猪狩りに成功している。


「どんな教育してんだか、あの馬鹿は。

とにかく危険は危険なんだから一人で彷徨くのは禁止。

帰りは私が送って行くから、一人で帰っちゃダメよ?

しばらく里にはいるんでしょ?」


 ミーシャがそう尋ねてきたので俺は頷く。


「それじゃお昼過ぎには私も里に帰ってくるから、それまでは里にいなさい。

またあとでね」


 ミーシャはそう言って大きく跳躍し、太い木の枝に飛び乗ると、跳躍を繰り返して木々を渡っていった。

本当に身軽な人だ。

今度狩りとかサバイバル技術とか教えてもらおう。

俺はそう思いながら里にある一つの家屋に向かい、その扉をノックする。

 扉を開けて出てきたのはオールバックの髪型の男のエルフだった。

この人はリリアさんの旦那のルーカス。

かなりのイケメンである。


「シンじゃないか。

またジノは君を一人で里へと来させたのか?

同い歳の子供を持つ身としては考えられん」


 ルーカスさんは呆れた顔をしてそう言った。


「こんにちは、ルーカスさん。

ジノはなんだかんだ見守ってくれてますから大丈夫です。

危なかったらすぐに駆けつけてくれますよ」


「君のその信頼はどこから来るんだろうな。

まぁいいか。それで、リアナに用があるのかな?」


 リアナとはリリアさんとルーカスさんの娘である。

俺と同じ歳の女の子だ。


「あー、リリアさんに用がありまして。

治癒魔法を教えてもらいに来ました」


 俺はルーカスさんにそう答える。

ルーカスさんは意外そうな顔をして、また呆れ顔に戻る。


「君は本当に魔法の勉強ばかりしているね。

うちの娘は魔法の勉強など大嫌いなのだが。

その違いなのか、娘と君が話してるのを見ても同年代とは思えないよ」


 そう言って嘆くルーカスさん。

そんな会話に割り込んで来た小さな影。

リアナである。


「シンくん!遊びに来たの?」


 リアナはお下げの髪型がよく似合う女の子だ。


「ゴメンね、リアナ、遊びに来たんじゃないんだ。

魔法の勉強をしにきたんだ」


 俺は頭を掻きながらそう言うとリアナは頬を膨らませ、不満顔になる。


「そんなの何にも面白くない。

ほら、こっちの庭にブランコがあるから。

パパが作ってくれたの。

一緒に来て!」


 俺は手を引かれ強引に連れて行かれる。

お、俺は勉強したいのにぃ、と思ったが、子供の遊びも付き合う事にする。

リアナは同年代のエルフで唯一俺と仲良くしてくれる存在だからだ。

他の子はあまり俺とは関わろうとしない。

大人ですら、リリアやルーカス、ミーシャを除けば俺と積極的に関わる人はいない。

ジノに理由を尋ねると、恐らく俺が人族だから、との事だ。

どうやらエルフからすると人族はあまりよく思われていないらしい。


 そんな訳で、俺にとって子供の友達と言える存在はリアナ一人。

そんなリアナの誘いは断り辛かった。

生前の地球では人との関わりを避けていたから、そういう事はなるべくは止めよう、と思っている。

人付き合いは大事だ。

大人になると余計にそう思う。


 リアナがブランコに乗り、俺がそれを押す役だった。

これ、俺は疲れるだけで何も楽しくないんですけど!?


「シンくんっ!もっと強く、高く押してみて!」


 お姫様からの命令である。

了解、と俺は答えて力を強める。

もうこれは鍛錬なのだ、と思う事にした。


「リアナ。シンくんにも乗せてあげなさい。

ゴメンね、シンくん。

せっかく遊びに来てくれたのに」


 いつの間にか庭に来ていたリリアさんが謝ってくる。

俺は苦笑いしながら首を横に振り、全然気にしてないから大丈夫です、と答えた。

というより、遊びに来た訳ではないんです。




 しばらくブランコ遊びをした後で、リリアさんがクッキーを焼いて持ってきてくれた。

それはもう絶品だった。


「リリアさん、今度作り方を教えてもらえませんか?」


 俺はリリアさんに頼み込む。

リリアさんは微笑んで頷いた。

それを見たリアナが手を上げる。


「あたしも!あたしも一緒にやるのー」


 と、アピールしてくる。

リリアさんはリアナの頭を優しく撫でて、皆で作りましょうね、と言った。

治癒魔法を鍛えてもらうのはもう少し後だな、と思いつつ、俺はクッキーをかじる。

やっぱ美味いわ、これ。


 そして俺は狩りから帰ってきたミーシャさんと共に帰宅した。

家に着くとガミガミとミーシャがジノにがなり立てていたが、ジノは平然とした顔で一言、「世話になったな」とだけ言った。

ミーシャは疲れた顔をして肩を落とし、こりゃダメだ、とボヤいていた。

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