表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白雪姫は事件の夢を見る  作者: 赤羽 翼
プロローグ
3/85

プロローグ



 人に誇れるところはどこかと訊かれたら、おれには答えようがない。成績がいいならそう言えばいいが、あいにくとおれの成績は平均的。スポーツや習い事などを昔から続けている人なら、それを答えればいい。結果が出なくとも、何かを継続するということそのものに意味がある。しかしながら、おれ……生野亨うぶやりょうは、何を始めても長続きしなかった。いやそもそも、何かをしてみたい、という情熱が湧いたことすらなかった。


 こう言うと、もの凄く怠け者のように聞こえるだろうが、別段そういうわけでもない。生野亨という人間に自己評価を下すならば「テンションが低いわけでも、ノリが悪いわけでも、空気が読めないわけでもないが、物事に対する熱意に欠ける」といった感じだろう。


 周りの人たちが真剣に何かに打ち込んでいるのに、なぜおれは何もしていないのか。そう思ったことは何度かあったが、言うても両手で数えられる回数程度だ。基本的には、おれはそういう人間なんだからしょうがないじゃん、という気持ちが心の大半を占めている。残りの心で、「どこかに、おれのソウル興奮エキサイトさせるような、攻撃的アグレッシブ情熱的パッショナブルな何かはねーものか」、といった頭の悪いロッカーみたいなことを考えている。


 おれは自分のことを別に悪いとは思わない。ただし、つくづくつまらない人間だとは、思う。せっかく今年高校に入学したというのに、そしてもうすぐ一ヶ月が経とうとしているのに、まだ何もしていなかった。けれどどうしようもない。熱意が起こらないのだから。一度だけどこかの運動部に入ろうとしたが、興味もないのにだらだらと続けるのは他の部員たちに失礼だと思って、その考えを捨ててしまったのだ。この、いちいち人に気を使ってしまうところも、おれの性格の構築に一役買っているだろう。


 長々とおれのつまらない精神性を説明してきたが、ある日を境に、おれの生活に変化が訪れることになる。それは劇的な変化とはとても言えないし、人によってはだから何だよとなること請け合いである。しかし日々を平然とした心で何となく生きていたおれにとっては、この経験と、それを通じて出会った人々のことは、とても大切な時間なのだ。


 なぜあの日から変わったのだろう? 二度あることは三度あるという、先人たちの教えが正しかったのか? はたまたこれは、一匹いたら三十匹はいるという、G的なものなのか……。ともかく、すべてはあの『侵入者』から始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ