王様、弟と仲良くなる
エルヴィア王国国王アラントイン1世には、弟一人と妹5人がいた。
みんな、新しいお妃の子供で、アランとは半分しか血のつながりはない。
お妃、今は皇太后だが、からはアランの悪口や愚痴を散々言われて、みんなアランを憎く思っていた。
特に弟のクレオソートはそうだった。
アランはクレオを殺そうとしていると母から言われていたからだ。
ある日、クレオの初参加の狩りイベントが開催された。
クレオのお披露目が最大の目的であるが。
皇太后は気合を入れて、クレオに黄色のきらびやかな狩りの服装をさせた。
物語に出てくるような麗しい金髪の王子様といった感じだ。
それに比べて、アランはシンプルな髪の色と同じ様な茶色のチュニックを着ている。
王冠は適当に頭に載せている感じだ。
馬に乗ったアランはそっとクレオの横に来て言った。
アラン
「クレオ、その服装で森に入るのか?
クレオ
「ええ、いけませんか?
(兄上は私の方が王にふさわしい格好をしてるから、嫉妬されてるに違いない)
クレオは得意顔になった。
アランは少し眉をひそめたがそれ以上は何も言わなかった。
狩りが始まった。
クレオが兄よりもたくさん獲物を狩ろうと張り切って森の中に突っ込んでいった。
しばらくすると大きな鹿を見つけた。
逃げられたので追いかけていると周りから虫の羽音が聞こえた。
気がつくと、大きなスズメバチの大群がクレオの周りに渦巻いている。
慌てて馬を走らせたが、蜂に刺された馬は驚いて暴れ、クレオは投げ出された。
運よく段差のある所だったので蜂はどこかへ行ってしまったが、足を痛めてしまった。
かなり腫れてきて、段差を登れそうにない。
クレオ
「誰かーーーー!誰かあるかーーーーー!
叫んだが鳥のさえずりと虫の声が聞こえるばかりで静かだ。
少しづつ辺りが暗くなり始めた。
クレオは叫ぶ気力も体力もなくなり、ぐったりとしていた。
(このままここで死んでしまうのだろうか?森の土になって、誰にも知られず永遠にここで---一人きり)
クレオは寂しくて寒くて涙が出てきた。
その時、上から声が聞こえた。
「いたいた-----。」
段差を飛び降りてきたのはアランだった。
クレオ
「兄上---!」
クレオ
(殺される!!!!!!)
アラン
「大丈夫か?クレオ。
動けないのか?
アランはクレオの予想に反して、心配そうな顔をしている。
クレオ
「あ---------。
アラン
「足を痛めたのか?見せてみろ。
アランはクレオのブーツを優しく脱がせて腫れた足首を触った。
クレオ
「痛----!
アラン
「骨は大丈夫そうだ。
待ってろ。
アランは近くから木切れを拾ってくると添え木をして、自分のスカーフで固定した。
クレオ
「兄上はどうしてここがわかったんですか?
アラン
「お前が黄色い服を着ていたから、後をつけていた。
黄色い服は虫が寄って来やすいんだ。
森では危険だ。
クレオ
(兄上はそれで心配してくださっていたのか--。)
アラン
「さあ、行こう。皆が心配してる
アランはクレオを抱えあげた。
クレオ
(兄上---とってもいいにおいがする。)
クレオはアランの胸に顔をうずめた。
2人で馬に乗って陣中に戻った時には大騒ぎの最中で、皇太后まで駆けつけてヒステリックに叫んでいた。
アランは馬からクレオを横抱きにして降ろし、そのまま抱いてテントに向かった。
皇太后
「お前がケガをさせたのね!殺すつもりだったのよ!お離しなさい!!!!!
クレオ
「母上!
兄上は誰よりも私を心配して助けに来てくださったんです!兄上を侮辱する事はたとえ母上であろうと私が許しません!
冷たく鋭く言い放った息子に皇太后はショックを受けて固まってしまった。
アラン
「ディート、私の医療道具を持ってきてくれ。
ディート
「御意
クレオは嬉しそうにアランに抱かれている。
アラン
「しばらくは歩いてはいけないよ。
治るまでひと月はかかるだろう。
クレオ
「兄上が私の足を治してくださるんでしょう?
アラン
「治すのはクレオの体自身だ。
だが、早く治る様に薬を作り、私が様子を見よう。
クレオ
「兄上!ありがとうございます
クレオは一か月兄に会える事が嬉しかった。今までの分もいっぱい話がしたい、そう思った。
つづく