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王様、試合観戦する

「最近、イプがやけに剣を振っているなあ〜

学校も行かずほとんど1日中だ---。


まさかとは思うが、闘技大会に出るんじゃないだろうなあ〜


15歳でそれはないか---」


エルヴィアでは一年に一度、大きなお祭りとして闘技大会が開かれている。

王や貴族も観戦する一大行事だ。


優勝者は賞金と城の騎士として迎えられる。


アラン

「コリン、今年の闘技大会参加者名簿はできたか?


宰相コリン

「ええ、完成しています。60人ほどの参加者になりそうです。


アラン

「ちょっと見せてくれないか?


やはりあった-----!イプシロンの名前が。


アラン

「コリン、ちょっと頼みがあるんだが。

この15歳の少年は勝ち進んで怪我をすると危険だろう?


だから、一回戦の相手を優勝候補にして欲しいんだ。


コリン

「確かに、命を落とす事もあり得ます。予選では優勝候補のビサコジルと戦わせましょう。



「--イプ!

君にもしもの事があったら----許してくれ----



闘技大会の日はカラッと晴れた最高の日だった。

闘技場には王と貴族も列席し、華々しいファンファーレで幕が開いた。


民衆は熱狂している。あちこちで爽やかな飲み物や、ポテトを揚げたものやスパイシーな肉をパンにはさんだもの、甘いクリームたっぷりのクレープ等が売られ、それをつまみながら大騒ぎしている。

賭博も行われていて、みんなかけた選手を応援している。


闘技大会は殺し合いではない。

どちらか「まいった」と言ったら決着がつく。


アランは心配で心配で落ち着かない。

お付きの者に体調を心配されるくらいだ。


トーナメントは進み、いよいよ優勝候補ビサコジルと最年少選手イプシロンの戦いになった。


ビサコジルにはほとんどの民衆がかけていたのでものすごい割れんばかりの大歓声だ!


ビサコジルはゴリラのように大きくたくましく、イプシロンと並ぶと3倍はありそうに見えた。


ビサコジル

「坊や、ここは幼稚園じゃないぜ〜

間違えて来ちゃったか〜?

ガハハハ


会場も笑いに包まれた。


イプシロン

「ゴリラがこんな所に来ちゃダメだよ!

動物園に帰りなよ!


ビサコジル

「ガハハハハ!このガキいうじゃないか


またもや会場が盛り上がった。


アランは気が気ではない。


「何て事を言うんだーーーーーーー!イプーー!!

挑発してどうする!!!


ディート

「陛下、まさか一回戦でビサコジルと当たるとは驚きですね。


アラン

「ディートか、ああ、勝ち残ると危ないから僕が決めたんだ。


ディート

「何----ですって---

それは逆効果ですよ。


イプにとって、一番危険な相手なのに。


よりによって一回戦に持ってくるとは、つらい戦いになりますよ。


見る方にとっても。


アラン

「何を言ってるんだ?ディート----


試合が始まった。

イプはビサコジルの重たい攻撃をひらひらと交わす。


最初は手加減していたビサコジルだったがだんだん表情が変わってきた。


ビサコジルの大斧が本気のスピードになった。

ものすごい攻防だ。


会場は静かになってきた。


イプシロンはギリギリのところで斧を交わし、

懐に入る機会を狙っている。


あの斧がもし直撃したら、おそらく即死だろう。


アランは立ち上がった。顔面蒼白で足はガタガタ震えている。


アラン

「だ----誰か止めさせてくれ----


イプシロンの肩を大斧がかすり血が飛び散った。


アラン

「うあああああああーーーーーー!


ディート

「陛下落ち着いてください。

イプなら大丈夫ですよ。


イプシロンは傷つきながらも、斧に飛び乗り高く飛び上がった。


ビサコジルが斧を戻そうとしたが遅かった。


剣が首元にぴったりとつけられている。


ビサコジル

「まいった------


一瞬闘技場が静まり返ったが、凄まじい大歓声が響いた。


アランはへなへなと椅子に崩れ落ちた。


アラン

「早く治療を!


ディート

「2回戦まで少し時間があって良かった。

左腕だし問題ないでしょう


アラン

「何を言ってるんだ----ディート

ケガをしたんだ、棄権だろ。


ディート

「陛下、だからビサコジル戦は後の方で当たる方が良かったんです。

傷を抱えて戦う事になりますからね。


アラン

「だから、何を言ってるんだ!棄権だ


ディート

「棄権させたいのなら、ご自分で説得なさってくださいね。

イプは生半可な気持ちでこの大会に出たわけじゃないんですから


アラン

「わかった。

私が治療して、説得もする!


アランは選手の救急室に向かった。

宮廷医師が来ていたが戻るように言った。

王冠を入り口の棚にポンと置いて入る。


アラン

「や、やあイプ久しぶりだね。


イプ

「あ、ダニエルの友達のえっとアランだっけ。


イプの顔は自分の血で汚れている。


アラン

「僕が手当するよ。傷を見せて



左肩の肉が裂けているが骨までは達していないようだった。

やさしく血を洗い流し、局所麻酔の薬草を押し当てた。



イプ

「---いったああああ


アラン

「イプ、息を吐いて、力抜いて


イプはスーハースーハー息をしている。


いつもならアランはドキドキしてしまうのだが、今日ばかりはイプが心配でそれどころではない。


自分が切られたかのように苦しそうな顔をしている。


アランはイプをベッドに寝かせた。


イプ

「アラン、2回戦はまだ大丈夫だよね。


ああーー楽しみだなあ〜!


次はどんな相手だろう。


アラン

「え------


イプ

「さっきのおじさん強かったけど、僕に傷を負わせて油断したね。


僕を子供だと思ったのが間違いだよ。


アラン

「まさかとは思うが、その傷---


イプ

「うん、わざと当たったよ。

なかなかスキがなかったし


アランは息を飲んだ。


イプがとても大きく強く見えたからだ。


イプはニコッと微笑んだ。


アランは麻酔の葉を取ると、皮を傷口にきつく巻きつけた。


アラン

「イプ、傷口は後で縫う。

今縫っても裂けるから---。


だけどもう、これ以上傷は作るな。


アランはイプの顔の血を拭った。

そして、手のひらでイプの頬に触れた。


アラン

「約束だ。


イプ

「うん----わかった。


イプは微笑んだ。


アラン

「2回戦まで休んでろ。誰か呼びに来る。


イプ

「ありがと--アラン。


あのさ、アランって---ううん、なんでもないよ


アラン

「?」


アランは出て行った。


イプ

「アラン、似てる-----。


小さい時の記憶の中。


優しくて、かっこよくて、大好きだった人に、


顔も声も名前も覚えてないけど---。


なんだか似てる-----」


2回戦が始まった。


アランはもう心配しすぎてボロボロな顔をしている。


ディート

「どうやら説得できなかったようですねえ。


アラン

「イプは僕が想像してたよりずっと----大人だ。

ああ----だが心配で胸が痛い---


ディート

「ふふふ、イプより陛下の方が倒れないか心配ですけどね俺は。


2回戦はイプの素早いつきですぐに決着がついた。


その後も短期決戦、次々に破り、決勝戦もあっけなくイプの勝利で終わった。


アランは口をポカーンと開けている。


ディート

「俺、言いませんでしたっけ?

あいつは天才だって。




表彰台に上位3名上がったところで、王から賞金が手渡される。

アランの精神は崩壊寸前だった。


まさかこんな事になろうとは----。


アランは大きなため息をついて観念した。


アランはイプに賞金を手渡した。


アラン

「おめでとう---


イプ

「え?あれ?アラン---?え?王様?え-----


その直後、イプの身体が傾いた。


失血がひどく、気を失ったようだ。


アランは抱きとめた後、颯爽とイプを抱いて救急室に向かった。


それを見た女性達は、アランにあつい視線をおくり、ピンクのため息をついた。


イプの傷口を縫い、身体を綺麗にお湯で拭いてやった。


アラン

「よく頑張ったな。イプ----


アランはイプの頭を撫でた。


ディート

「このまま、陛下の部屋に連れて行きましょうか?


アラン

「バカなことを---。

ん--。ディートその手に持っている大きな袋はなんだ?


ディート

「ああ、イプにちょっとかけてたらこうなりましたよ。


つづく














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