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王様、赤ペン先生になる

アランは本日の謁見を終えて自室に戻ってくると、金色の王冠をポンとソファの上に投げ捨てた。

茶色の栗毛をクシャクシャとかきあげる。

用意されていたコーヒーを一口すすって、大きなため息をつく。

それからいつものように壁にかかった鏡に目をやった。


鏡の中にはいつものようにイプがいた。


珍しい銀色に輝く髪の毛は肩より少し上で切りそろえられている。

肌の色は雪のように白く、頬は花のように淡いピンク色をしている。

人形のように可愛らしい顔立ちで、南国の海のようなエメラルドグリーンの瞳が美しい。


アランはうっとりと眺めた。


僕のイプ------今日も、可愛い-------!


今はちょうど学校で授業を受けているようだ。

だが、よく見るとイプは目に涙を浮かべている。

そして、机に頭をぶちつけた!


どうした?イプ!?頭がおかしくなったのか?


机の上には語学のテスト問題用紙が置いてある。


もしかして勉強がわからないのか?


アラン

「ディート!ディートーーー


ディート

「今、取り込み中なんですがねえ-----


ディートは倉庫で女と抱き合っていた。


アラン

「やあ、きみ、ちょっと外してくれないか?


「陛下!?

失礼いたします!!


ディート

「いいところだったんですよ〜?


アラン

「聞いてくれ、大変なんだ。

イプが勉強ができなくて悩んでるんだ!


ディート

「--------

------------はあ


アラン

「イプにこれを届けて欲しい。わかりやすい問題を作ってみた。


ディート

「そんな回りくどいことなさらずに、城に召し抱えてじかに教えたらいかがです?

あいつももう仕事はできる年頃ですよ。

正直言って、剣の腕前は陛下のはるか先ですからね。


アラン

「いや、イプをこんなどす黒い陰謀の巣窟に連れてくるわけにはいかない。

皇太后に狙われてしまう。


だから、この問題を解かせたら、また私の所に持ってくてくれ。採点をして渡す。


ディート

「わかりました。しかしながら陛下、私も暇じゃありませんからね、伝書鳩を用意いたします。それでいかがですか?


アラン

「暇そうに見えたが気のせいか---


ディート

「オホンっ!!すぐに手配しますから自室でお待ちください。


家庭教師のトイン先生という名前で毎日、問題が届けられた。ディートの知り合いという事になっている。


鏡の中のイプは朝から頑張ってやっているようだ。



「えらいぞ!イプ頑張れ〜


アランはモーニングコーヒーを飲みながら応援するのが毎朝の日課になった。


「まずは簡単な基本からしっかりやる事が大事だからな。ある意味それさえできてれば生きていく上でそんなに必要じゃあない。


問題用紙にはいつも一言メッセージが添えられている。


「先生ありがとう!

イプより


「よく頑張っているね。その意気だ!

トインより


アランは手紙を愛おしそうに撫でた。


しかし、予想以上にイプの学力はひどかった。


「なぜだ?なぜこんなかけ算がわからないのかが僕にはわからない!


むむむう----


鏡の中のイプは楽しそうに問題を解いているが、ほとんど間違っている。しかも改善されない。


「直接教える事ができれば!!!何を考えて解いているかが聞き出せれば---!はあーー


一体何を考えているんだろう---僕のイプは


もはやアランは会議にも集中できない。謁見も上の空だ。


アラン

「ディート、もうダメだ---。頭がおかしくなりそうだ!直接、イプに教えたい。


ディート

「最初からそうなさればいいのに。


アラン

「早朝、一時間だけだ。うまく城を抜け出す。手伝ってくれ。


ディート

「そうですねえ、陛下、女装できますか?


翌朝、ディートは女装したアランを馬に乗せてすんなりと城を出た。


アラン

「なんだか、門番はいつも通りといった顔だったな。


ディート

「気のせいでしょう


イプの部屋に入る。アランは体の震えが止まらない。


ディート

「イプ、トイン先生を連れて来たぞ。


イプ

「え!!トイン先生!!?座って!!ちょうど僕先生の問題を解いてたんだよ!


イプは大喜びした。

アランは嬉しくて気絶しそうだ。


アラン

「イプ、ではこの問題を解いてごらんなさい。


イプ

「はい!先生


イプはやはり間違っている。


アラン

「どういう風に考えてこの答えになったのかしら?


イプ

「えっとね、5がすごく広がって、3もすごく広がって二つが混ざり合ったんだ。そしたら星みたいに散らばってたくさん流れ星になるように見えたんだよ。

トイン先生。


イプは眩しい笑顔でニッコリ笑った。


アランは降り注ぐ流星群を想像した。


アラン

「君は素晴らしいね。いいよ、君はそのままで。

ところで、学校で頭を机にぶつけたって話を聞いたけれど?

イプ

「ああ、あれは眠くって我慢してただけだよ。


アラン

「そうだったんだ!


それから、アランは城に戻った。


アラン

「ディート、イプはかけ算できなくても大丈夫だな。なにせ天空が見えるんだから!

天才だよ!!


ディート

「---------。


つづく



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