王様、蚊帳の外
ここはエルヴィアの王女達が住む宮殿の温泉施設。
5人の王女は広い石造りの露天風呂につかりながら話をしている。
ベルベリン
「私---見ちゃったの。
お兄様の秘密!
お兄様の部屋にカーテンのかかった大きな鏡があるでしょう?
あれ---魔法の鏡なのよ。
しかもね、うつるのは銀髪の美少年!
「なんですって!?」
みんなが叫んだ。
オウレン
「お兄様は男性がお好きだったなんて---
ビスマス
「その美少年会ってみたいな!
アルブミン
「探しましょうよ!!
ロペラミド
「お兄様のお友達のダニエル先生ならご存知かもしれませんわ!
ダニエル先生にはいつでも遊びにおいでって言われてますもの!
聞きに行きましょうよ!
ベルベリン
「ロペラミドがいつになくやる気だわね。
クレオ
「僕も連れて行ってくれ!
ベルベリン
「きゃあ!ちょっとクレオ!
うら若き乙女の風呂場に来るんじゃないわよ!
クレオ
「気分転換に僕だって温泉に入りに来ただけだよ。
今の話、きになる。
兄上が僕以外の男をいつも見てるなんて!
今すぐ行こう。
ダニエル先生の所!
というわけで、6人は馬に乗り下町に向かった。
ちょうど、お茶の時間の頃合いで、ダニエルは快く皆を向かい入れた。
すぐさま美味しそうなクルミ入りのパウンドケーキと温かい紅茶が出てきた。
それはもうびっくりするような美味しいケーキで6人は話をするのを忘れて食べてしまった。
ダニエルは嬉しそうに眺めている。
ロペラミド
「先生、突然お邪魔してすみません。
ダニエル
「いいんだよ。待ってたんだから。
君たちが来るの。
アランの事聞きにきたんでしょう?
みんなは不思議そうな顔をした。
ベルベリン
「お兄様の部屋に魔法の鏡があるのを先生はご存知なの?
ダニエル
「もちろん。
あれは僕がディートづたいにあげたものだから。
オウレン
「先生が?
では、うつっている少年もご存知なんですね
ダニエル
「彼はイプシロン。
アランが拾った捨て子だよ。
アルブミン
「捨てられたの?かわいそう--。
ダニエル
「アランはとても彼を愛しているよ。
アラン本人も気づいてないほどどうしようもないくらいね。
ビスマス
「どおりで女っ気がないわけだ!
クレオ
「ただ、拾われたっていうだけで、この僕よりも愛されてるなんて、なんてやつ!
許せない!
ダニエル
「2人の関係はもっとずっと前に始まったんだよ。
この王国が出来て間もない頃の話だ。
さあ、僕の手に触れてごらん。
見せてあげるよ。
6人はダニエルの手に半信半疑で触れた。
その途端、アランそっくりだが年配の立派な王と銀色の長い髪の美しいエルフの娘の姿が頭に浮かんだ。
2人はしあわせそうに見つめ合っている。
エルヴィアを作ったイワン王はエルフの国から来たエルフの王女ファラーと愛し合うようになった。
だけど----イワン王はジヒドロとの戦いにファラーを巻き込みたくなかったんだ。
だからファラーを翼のエルフ族に預けた。
だが、ファラーはアルシオンを持つ兄の王子オールマンと一緒に戦いに出てしまった。
そして----ジヒドロとの決戦で、ファラーはイワン王の眼の前で切り裂かれた。
僕は見ていた。
イワンがファラーを胸に抱いて最後の言葉を聞くのを。
ファラーは言った。
「生まれ変わったら、2人で冒険の旅に出ましょう。
何にも縛られず---自由に---」
イワンは悲痛な叫びをあげた。
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6人の目には涙が溢れていた。
オウレン
「イワン王とエルフの王女の生まれ変わりが、お兄様とその少年なら、幸せになって欲しい。
クレオ
「兄上はその少年を城に呼び寄せて、一緒に暮らせばいいのではないですか?
ビスマス
「そうよ!王様なんだから
ダニエル
「アランはイプシロンを堅苦しい王宮や陰謀に関わらせたくないんだよ。
本当は今すぐにでも、イプシロンと一緒に旅に出てしまいたいだろうけど、
王様がいなくなるとこの国は内戦で多くの死者が出るだろう?
アランはそんな無責任なことできないのさ。
アルブミン
「お兄様は王様がいやなの?
みんなはなりたがるのに。
ダニエル
「そうだよ。
僕は長生きだからずっと前からアランを知ってる。
今度こそはアランを自由にしてあげたい。
ベルベリン
「それなら、話は簡単よね。
ロペラミド
「どうすればいいの?
ベルベリン
「クレオが王様になればいいのよ。
そして私達がクレオを支えるの。
オウレン
「私達が----。この国を守る---。
ロペラミド
「私達が----。
ビスマス
「なら、私、軍を指揮する女将軍になるわ!
ベルベリン
「私は宮廷行事とかそういうのがいい!
オウレン
「わたくしはお兄様に医術を習って、宮廷医師を取りまとめようかしら。
ロペラミド
「私は宮廷料理人を指揮したいわ。
アルブミン
「わたしは----えっと、後でゆっくり考える!
ベルベリン
「私達5人姉妹は他国へ嫁がない。
王を支える忠義心にあついイケメンと結婚して、
この国を守るわ!
ねえ、クレオ。
クレオ
「
それが兄上のためになるなら----。
僕は王にだって何にだってなるさ。
だけど、まだ僕には力が足りないんだ。
もっと兄上からいろんな事を学ばなきゃいけない!
兄上が僕を王の器だと認めてくれるように!
ベルベリン
「よく言ったわ!クレオソート!
大丈夫!私達がついているもの!
あとあんた、いい所の王女を娶りなさいよ!
例えば大国サルファの王女とか---。
急にクレオは顔を赤くした。
クレオ
「それは問題ないと思うよ---ごにょごにょ
ベルベリン
「まさか---もう?----やるわね!
ダニエルはのちに聖王クレオと5人の聖王女と讃えられる事になる6人の少年少女を頼もしそうに見つめた。
その時、扉が勢いよく開いて、イプシロンが飛び込んできた。
イプ
「ダニエルー!何かオヤツある?
あれ、お客様だった?ごめんなさい。
イプはどんな氷も溶かす太陽のような笑顔でニッコリと笑った。
5人の王女はその瞬間、ときめいた!
ダニエル
「イプ、アランの弟と妹たちだよ。
イプ
「そうなの!?
初めまして、僕はアランの友達でイプシロン。
イプってみんなは呼んでる。よろしくね。
その日からすっかりイプと6人は仲良くなり、
馬を丘の上まで走らせてピクニックをしたり、
川で水遊びをした。
クレオはイプの剣の腕前を見て、定期的に剣を教えてもらう約束をしたし、
王女達はダメだと思いながらも、イプの明るさと優しさ、神々しいほどの美少年っぷりにやられて恋せずにはいられなかった。
ある日、王宮の晩餐会でアランが何かソワソワしながら6人に話しかけてきた。
アラン
「やあ、今日は6人でどこかへ出かけていると聞いたけど。
何してたんだい?
6人は顔を見合わせてクスクス笑った。
アランは鏡でやきもきしながら見ていたのだろう。
ベルベリン
「私達に素敵な友人ができましたの。
その方と今日は川でピクニックしましたのよ。
アラン
「ほお、その友達って誰だい?
ベルベリン
「お兄様には秘密です!
アランは困ったように苦笑いをした。
つづく




