王様、おそわれる
無事にイプが帰ってきて、アランは大はしゃぎだった。
見た目はいつも通りだったのだが。
毎日、何か料理を作ってはディートに持って行かせたり、
菓子を好きな人に渡す「雪と愛の日」というわけのわからない、イベントを始めたりした。
もちろん、その日の前日から徹夜で手の込んだチョコレートスイーツをイプのために作った。
街では様々な菓子が売られたり、宿屋では特別な飾り付けがされたり、たいそう盛り上がってカップルがいくつも誕生した。
そうこうしているうちに、イプの体はすっかり良くなり、剣もふれるようになった。
そして、イプの誕生日が来た。
この日もアランは手の込んだケーキを焼いて、プレゼントと一緒にディートに持たせた。
今年のプレゼントは皮の手袋にした。剣を握りやすい特注品だ。
鏡の中のイプは喜んでくれていたようだった。
それをワインを飲みながら見つめる。
その時ふと思い出す。
イプを助け出した時のことを。
抱きしめた時のイプの身体の温かさを思い出す。
薬を口移しで飲ませた時の柔らかい唇を思い出す。
鏡の中でイプを囲んだ賑やかなパーティー。
急に寂しさがこみ上げてきた。
(何故自分はあの場にいないんだろう。)
アランは想像した。
一緒に歌を歌って、ろうそくを吹き消すイプ。
おめでとうと声をかけて、
ケーキを切り分ける。
イプに一番大きくて色々乗ってるのを渡してやる。
喜ぶ甘党のイプ。
色とりどりのプレゼント。
喜んだり大笑いしたりコロコロ表情を変えるイプ。
僕に笑いかけて、僕に冗談を言うイプ。
僕に甘えて、抱きついてくるイプ。
(今まで、鏡で見つめるだけで十分幸せだったのに---。
どうしてこんな風になってしまったのか。
ダメだ-----。
こんなに鏡を見るのが辛いなんて。)
アランは鏡のカーテンを閉めた。
(会いたい----。イプに)
そして、ワインをボトルごと飲んでそのまま寝てしまった。
「----ラン。
--------アラン。
声が聞こえて見ると、ぼやっとしたイプの姿が見えた。
アラン
「イプ----?
ああ---夢だ。
なんていい夢だ。
イプ
「アラン、酔ってるの?
アランはイプをベッドに引きずり込んで抱きしめた。
イプ
「アラン---!
アラン
「会いたかった。イプ。
そう言うとアランはイプのおでこにキスをして頭に頬を寄せた。
アラン
「イプは太陽のにおいがする。
君は僕の太陽だね---。
イプ---誕生日おめでとう。
イプ
「----。
抱きしめたイプの背中に何か硬いものがある。
夢にしてはおかしな感覚だ。
アランはじっとしているイプの顔を覗き込んだ。
真っ赤な顔をしたイプ。
エメラルドグリーンの瞳がアランを見つめた。
(まさか----。夢じゃないのか?)
アラン
「うわ-----
慌てて、起き上がろうとしたその時、何か黒いものが向かってきた。
剣が激しくぶつかる音。
イプのアルシオンがぼんやりと白く光り、黒い奴の剣を受け止めている。
イプはくるりと回ると黒いやつの剣を叩き落とした。
イプ
「そこまでだよ!
黒い奴は急に苦しみだすと床に倒れた。
イプ
「あ!
ディートが入ってきた。
「陛下!ご無事か!?
アラン
「ああ---。
ディート
「イプ!?何故ここに!?
イプ
「メトプレンの部下が僕に教えてくれたんだ。
刺客がアランを狙ってるって。
だから心配になってここに来た。
アラン
「ああ、イプは私を助けてくれた。
そいつは、おそらく毒を飲んだんだろう。
ディート
「こいつが首にかけているネックレス見たことがありますよ。
これは、アルドステロン教のものですね。
最近はやっている、宗教です。
アラン
「調べる必要があるようだな。
イプ、ありがとう。
君のおかげで助かったよ。
今夜はもう遅い。
王宮に泊まっていくといい。
アランの頭の中
(まずいぞ!僕はイプに何をしたんだ!!!
これは、なんだ--。
夢であってくれ!
誰か夢でした〜あははと言ってくれ!
うわあああああああああ、もうダメだ---
絶対ひいてる!
おかしい変態だと思われてる!!
助けてくれ!!!
もう人生終わりだ--------。)
イプ
「ううん、大丈夫。
すぐそこだから、1人で帰れるよ。
じゃ---ね--。
そういうとイプは窓から気に飛び移って降りていった。
ディート
「王宮の護衛、増やしたほうがよさそうですねえ---。
アラン
「ああ------
その後、アランは頭の中がパニックで転げ回った。
もちろん一睡もできなかった。
つづく




