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地獄の我慢汁 ~異世界で罪を償う物語~  作者: 鳶 檳榔
地獄の入り口
3/39

血の雨

ポツ・ポツ・ポツッ


「うんっ……?」

 顔にあたる水滴で目が覚めた。

 周りを見回すと、岩に囲まれていた。

 少し離れた場所から光が入っている。


「洞窟かな?・・」

 ゆっくりと上体を起こし、自分の手足を見る。

 薄暗いせいか、手足が茶色く、くすんで見える。

 格好は、死ぬ前に来ていた、半袖の黒いジャージだった。


「何だったんだあれ?ここどこだ?」

 とりあえず立ち上がり、光の見える方向に歩いてみる。

 裸足だったが、地面は砂の様で、特に痛みも無く、何とか歩ける。


 やはり洞窟の様で、外は薄明るく、雨が降っていた。

 不意に顔に着いた水滴を擦り、その手を見る。

「何だ?これ?」

 手の甲が茶色く、木の様だった。

 手の平には、赤い液体が付いていて、まるで血の様だった。


「え?どうなってんの?」

 顔や体をさわり、自分の体を探る。

 痛みは無いし、怪我もしていない。

 赤い液体は、顔に着いた水滴のようだ。それよりも・・・


「なんだか全体的に茶色い、木か?これ?」

 体全体が木になっていた。

 トゥレント?

 コボルト?

 ウッド・○ッカー?

 うん、最後のは違うな。

 なんか変な笑い声を出しそうだ。


 指も、手も、足も、今までと同じ感触で動くのに、材質が木だ。

 柔らか素材の様で、肘や肩だけじゃなく、関節以外の場所も曲がる。

 だが、基本的には今までと同じ、人間の関節が曲がるようだ。

 なんか変な病気に罹ったか?


 海外の病気で、少しずつ木になってくのを見たことがある。

 あれか?

 俺、看病してくれたり、見届けてくれる人居ないんだけど?

 いや、死んだから関係ないか?


「もしかして……人間では無くなってのか?」

 自分の顔や体を好きだった事は無いが、変化が大きすぎて、ショック状態だ。


 でも、もしかしてアレか?

 異世界転生ってやつか?

 スライムになったり、スケルトンになったり、ドラゴンになったり?

 んでもって、魔王になったり、勇者になったり、無双したり、ハーレム作ったり?

 

 …いや、こんな地味な、柔らかい木だと、あんまり期待できないぞ?

 『地獄』って、言ってたしなぁ。


「まあ、地獄に落とされた様だし、何でもアリなのかねぇ?」

 諦めの言葉を吐いて外を見ると、雨がおかしいことに気が付いた。


 小降りの雨なのだが、

 雨が赤い。


「血の雨ってやつですか?地獄っぽいけど、血の池じゃないんだな。

溜まれば池になるのか?」

 霧に近い小降りだが、色が付いているせいで、ひどく視界が悪い。

 明るいのに全く先が見えず、地面や岩壁が、赤黒くなっている。


 不意に地面が揺れた。

 ゴゴゴと音がして立っていられない。


「うおっ?なんだー?地震か?でかいし、長いー!」

 洞窟の奥からドンと音がする。


 振り向くと、天井が落ちてきていた。

 

「やべっ!」

 転がりながら外に出ると、洞窟が崩れて埋まってしまった。

 それと同時に揺れが小さくなり、収まったようだ。



 雨は止んでいない。

 ジャージ一枚で、

 木の化物姿で、

 血の雨の中に放り出されてしまった。

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