俺の罪と罰
落ちて行く!
その浮遊感に、恐怖で吐きそうになる。
捕まる物など無い。
高所恐怖症気味の俺には辛い。
社員旅行で行った、関西のパークランド。
そこの、メガネの魔法使いの、アトラクションに乗せられ、ちびった実績のある俺に、
これは地獄だ。
どのくらい落ちているかわからないが、長く感じる、発狂しそうになる!
そう思っていた時、ついに地面に着いた。
ドスッ
「・・っがはぁっ・・ぐ・ふっ・・」
硬めのマットの様な、白い場所に叩き付けられた。
息が苦しい、全身が痛くて身動きが取れない。
なんだこれ?なんだこれ!ちくしょー!
「仕方がない、罪と罰の内容を伝えるぅ」
声はするが、苦しくてそちらを向くことができない。
もがいていると、声の方が顔の前に近づいてきた。
目の前に、あの尻がいた。
一つ目がこちらを見て、口を開ける。
なんだろう、すごく気持ち悪い。
嫌悪感というのか、『ググってはいけない』画像のアレに見える。
よく見ると肌?が汚い。
男性の、吹き出物がついた尻に、ありえない大きさの目。
開くたびに、ありえない程の、多くの歯が見える口。
ぞわりとする。
「なんなんだよ。いったい」
「聞けぇ、お前は前世界で、何でも出来る可能性を与えられながらぁ、何もしなかったぁ。
まさしく怠惰でクズの生き方をしたぁ。本来ならその力で世界を正しぃ、神に近づくことができた候補者だったぁ」
「は?なに言って・・」
「いくつかの試練と地獄を巡りぃ、魂を磨きぃ、多くの世界を修正、創造する立場を与えられた恵まれた者だったのにぃ、それを忘れ、周りに流されたぁ」
「よく、わからないんですけど?」
何、言ってんの?
そんな素晴らしい能力は無かったぞ?
自他共に認める不細工で、
学生時代は、小・中・高12年いじめられ続け、
自殺もできず、
だれにも相手されなかった、
そんなゴミ野郎だぞ。
見た目も、
学力も、
運動神経も、
財力も、
性格も、
家柄も、
何一つとして、
絶望しかない人間だったぞ?
何の可能性も無い、クズに何言ってんだ?
「お前はぁ何も良いところが無いと、思っていたんだろうなぁ。
だが、それが試練でぇ、その中でどうやっていくかを探すべきだったんだぁ。
お前には死ににくい精神とぉ、丈夫な体を与えたはずだぁ」
…ちょっと考えた。
心あたりがあるっていやー、ある。
確かに、どんな時も、自殺は頭に過ぎりながら、何とかしようとしていた。
風邪も滅多にひかず、大きな怪我や、病気は一切無い。
煙草を吸おうが、酒を飲もうが何とも無く、
ブラックな企業で、長時間労働も平気だった。
「けど、どうしようも無かったんだよ」
「お前はぁもう一度、地獄に落ちてもらうぅ。
この瓶にぃ、忍耐の証である『我慢汁』を溜めぇ、罪をあがなうのだぁ」
その言葉の後、頭上から小瓶が下りてきて胸に止まる。
次の瞬間、強烈な痛みと苦しさが胸を圧迫した。
「うがぁっ…!」
「今度こそ、成すべきことを成せぇ!」
また下に穴が開き、俺は苦しみながら落ちて行った。