4 主人公キター!!
「主人公キター!!」
遅刻ギリギリに入ってきた友人である岡本正人は俺を見るなり叫んだ。
朝から何言ってんだ、こいつは。大丈夫か?
彼、岡本正人は中学校からの友達だ。1年の時は別のクラスだったが今年は同じクラスだ。いまは机に突っ伏して寝ているもう一人の友人を加えた3人がいつもつるんでいるメンツだ。
「正人、頭大丈夫か?」
「頭のことは言うな。まだ心の整理がついていないんだ」
まさか、本当におかしくなったんじゃないよな。
「何言ってんのよ。アンタは」
一足遅れて入ってきた浜口ゆきねはたしなめようとして、・・・顔をそむけた。
「おい、なんで顔をそむけるんだよ? 正人が叫んでたのと関係あるのか?」
「・・・アタシのことは放っておいて。 大智とは関係なく、教室に入った途端、ブルーになっただけだから、大丈夫」
「それは大丈夫じゃないんじゃないか?」
彼女はもう一度「放っておいて」と言って、自分の机に着くと力なくうなだれている。
浜口ゆきねは正人の幼なじみで、正人と同じく中学校からの友人だ。赤毛でショートカットの元気な娘のはずだが、今は元気がない。
「っていうか、大智は主人公なのか? どうなんだ?」
正人が語尾を強めて詰め寄ってくる。
「そんなこと言われても、意味分かんないんだけど」
一人一人が自分の人生ヒストリーの主人公ってことなじゃないよな。
「実はな~、」正人が説明しようとすると、西園寺が遮る。
「ちょっと、岡本さん。もう先生が来ますわよ。早く自分の席にお戻りくださいな」
「そうだな。じゃ、昼休みに。」
授業の合間の休み時間じゃ時間が足りないらしい。
「実はここはギャルゲーの世界で、大智はその主人公。そして、オレはそのサポートキャラ・・・らしい」
空き教室に連れられての一発目がこれである。
なお、二人で出てくる時、杏子たちにお昼を誘われたが、「二人だけで話があるんだ」というと、うろんな目で見られた。
「ギャルゲーって、ゲームの世界? なんていうゲーム? どうやってゲームの世界になったっていうんだ?」
「ギャルゲーの名前は『ピュア○メモリー』 方法は、ほら、おそらく神様的なパワーで?」
「何で疑問形なんだよ」
「そんなん、オレが知るか! っていうか、早く彼女を作れ。それで、そのルートを確定させろ!」
逆切れすんな。そして人を指さすな。
そもそも、何でギャルゲーの世界だからって彼女作る必要がある?
彼女なんて無理に作るもんじゃないし、正直、めんどくさい。
「正人が彼女作れば良いじゃないか」
「その前髪! それが主人公の証だ。」
購買で買ったパンをかじり、正人の説明を聞く。
正人曰く、ゲームの主要キャラのプロフィールが見られるようになっていた。それによると、俺が主人公との表示されている。しかも、この異様なほど長い前髪は主人公だけらしい。
しかしながら、ゲーム世界に入り込んだ理由は分からない。
けれども、主人公である俺が彼女を作らないと、とんでもないことになるらしい。そのとんでもないという内容は教えてくれなかったが。
まあ、朝からの違和感はこれが原因と説明が一応だけどつくのか・・・?
視界が塞がれないので後回しにしていたけど、あとで切りに行こう。
「彼女については、前向きに善処するよ」
玉虫色と言うなかれ。
政治家も使っているんだから、これが正式な回答でも良いはずだ。
「っていうか、強制的にイベントが起きるはずだから・・・」
「じゃあ、なんで力説したんだよ」
男友達とその幼なじみが登場。
彼らは元々友人という立ち位置で、ゲームの世界になっても関係がほぼ変わっていません。
しかしながら、彼は自分たちがギャルゲーの世界にいると認識しています。
次の次くらいで、その男友達視点の話を書く予定です。