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「そろそろ、諦めてはどうです。」
自分にかけられた声だと分かっていながら、小さな身体を丸めて壁の方に向く。
「どうやったら、貴方の力を取り戻せるのです。」
懲りずに離しかける男。
「あの女を貴方が逃がしさえしなければ、貴方は、そのようなか弱い姿になどならずに済んだのに・・・。さあ、あの女の居場所を言いなさい。それが貴方の義務です。このままそのか弱い姿で一生過ごしていくつもりですか。」
小さくて黒い体の生き物が身体を起こして伸びをした。
「りう~。」
小さくか細い声だった。
その声を聞いて男の声に怒りが含まれた。
「何故っ!何故だ、どうして、その姿に甘んじているっ!貴方の力を奪って逃げたあの女の居場所を言えっ!取り戻して差し上げると言っているんだ!」
小さな生き物は再び身体を丸くして眠りにつく。
「黒の魔法使い・・・私は、貴方を諦めない。」
男の姿が部屋から消えた。
消えると同時に、小さな生き物、りうはため息を吐いた。
あの時、取り戻した自分の力だけで、彼女を連れてこの世界に帰って来た。
いや、帰って来たつもりだった。
場所は、ドラゴニア帝国、王城の自分の部屋。
その帰還の術に横槍を掛けてくる気配に気付いた時には遅かった。
空間と時空を移動する術の最中、術師は無防備になる。
その無防備な時を探り当てた者がいた。
一つの正しい魔術に干渉する魔術。
その魔術は、暁を廃しようとしていた。
子猫の姿から、本来の姿に戻ろうとしていた彼は、暁を守るため自分の魔術で彼女を覆った。
現実を受け入れることの出来ない暁は、全てを夢と思い込み、彼の魔力を浴びたまま干渉してきた魔術により開いた穴から出て行ってしまった。
追いかけようとした身体は子猫のまま。
そして、追い討ちを掛けるように飛んできた第二波の魔術により、彼は捕えられた。
「別に暁は、俺の魔術を奪っていった訳じゃない。俺が渡したんだ。彼女の体が、精神がこの世界に馴染むよう・・・。」
いずれ彼女は自分の魔力をその身に宿すことになるだろう。
「彼女が俺に会った瞬間、彼女に与えた俺の魔力は俺に戻ってくる。」
ため息と吐く。
彼は思う。
「彼女が自らの魔力を培うまで、まだ時がかかる。
それまでに、アイツが余計なことをしなけりゃいいが。」
巻き込んでしまったことは申し訳ないが、もう彼女は戻れないのだ。
ま、あいつと戦って、魔力とこの世界で生きる経験を積むのも彼女のためになるか。
だから、諦めて魔力を培っておいで。
暢気にもそんなことを思いながら小さな生き物は本格的に寝始めた。
「へっくしゅん!でやんで~ばろっちょっ!」
暁は飛び起きた。
ベッドの左右に小さくなって眠るクロと紅姫も、二頭身の姿でぷかぷかと空中に浮かんで寝ているエルアもちゃんといる。
ここは、龍騎士団の女性宿舎だ。
室温が低いわけでもない。
「くっそ、誰やねん。」
暁は再び眠りについた。
つづく




