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遠くで声が聞こえた。

「駄目だ、暁っ!そっちに行っちゃ!」

りう?

人間はね、光の方へと行きたくなるもんなんだよ?

暗闇から声がする。

りうと同じ声だったけど、とりあえず、無視。

だってさぁ、私の夢にチョッカイ出してくるなんてさぁ・・・。

私は、目覚めたいのっ!

言うこと聞かない、りうは、反省してなさっ・・・あれ?

何?光は何処?

「暁、これだけでも持って行って!」

りうの声がした方向からキラキラ光る塊が飛んできた。

「あ痛っ!」

受け取り損ねたソレはとても硬くて、私の頭に命中。

仰け反るように後ろに倒れた私は、底がない落とし穴に吸い込まれていった。

「何なのよ~!!アラフォーなめんなっ!りうの馬鹿ぁ!!マグロの刺身、もうやんないからっ!!」

叫ぶ私の耳にりうの声が届いた。

「探すから、きっと、逢いに行くから!!」

おう、会ったら、ぶん殴ってやる。

って、動物虐待か?

あ~夢よ醒めて・・・。


ハッと目を覚ました。

体中が痛い。

って言うか、何だ?ココ・・・。

聞いたことのあるような虫の音。

鈴虫?

頬を撫でる風、目を開けると外灯一つない畦道。

天高くあるのは、

「・・・なんじゃありゃ・・・。」

思わず目を擦っ、う、腕が痛くて上がらない。

「頭打ったか?月が2個見える。」

二重に見えるのは、月だけ。

足元の石も、自分の手も二重には見えない。

「はははっ・・・。」

スウェットの上下の上に白衣を着た姿の私。

ルームシューズを履いていて助かったのは、やはり畦道。

こんな道を裸足で歩いた記憶は、さすがにアラサーの私でも経験ないことだ。

まあ、普通の靴よりしっかり小石の感触はあるけどね。

手には、小さなアタッシュケース。

何で、コレを持っているのか、さっぱり分からない。

これは、私が作った精油が入っている。

時々お客さんの家に行って仕事をする時に持ち運ぶものだ。

「うそでしょ?日用品は?食べ物は?っていうか、ココ、どこなのよー!!」

私の声は悲しく辺りに木霊した。


叫んで少し我に返った。

アタッシュケースを開けて、とりあえず、心を落ち着かせようとイランイランの小瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぐ。

で、どういう訳か傷だらけで痛々しい身体の痛みを落ち着かせるためにクラリセージ、ローマンカモミールの精油の小瓶の蓋を開けて次々に匂いを嗅いだ。

最後に大好きなラベンダーの香りを嗅ぐ。

「ふうっー。」

きっちり蓋を閉めてケースに戻し、蓋をする。

震えていた手が幾分落ち着いてきたのか、その振動を収め、痛みも引いていったように思う。

アロマテラピーで、完全に病気や怪我が治るわけじゃない。

治療が出来るわけじゃないけど、パニクっていたこの時の私には、効果はあるだろう・・・。

「ん?」

私は、目を見張った。

非常識な2つの月ではあるが、夜とは言え明るいこの畦道。

確かに傷付いていた腕や足の傷がゆっくりと消えていくのを目撃したからだ。

「な、何で?私のって言うか、精油オイルに、治療効果はないはず・・・。」

暫く考えた。

耳に届く虫の声だけがやたら大きく感じられた。



つづく

8/19誤字修正

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