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若い時分に好んで読んでいた本の内容を思い出す。
『物語ですか?』
「そう、私の世界には、こういった感じの違う世界に来ちゃった女の子のお話ってのが溢れてて、えーと、うーんと。」
異世界にきた子達が辿る数奇な運命ってやつ?
彼女達には何かしら使命ってのがあったんだよ。
私はエルアに自分の考えを語った。
「だってね、これが夢だとしたら、私の潜在意識の中にあるいつか読んだことのある物語が原案になっていると思うのよ。だから、その物語たちを思い出すことで、この世界を終わらせる切欠が作れると考えているんだ。」
エルアが黙ってしまった。
その目が少々残念感を孕んでいるのには、目を瞑ろう。
『本当に、我が主は、可愛らしい方ですね。』
おいおい、だから、アラフォー女に可愛らしいはちょっと、こっ恥ずかしいんだって。
いつか本で読んだことのある異世界トリップもの。
とある主人公は、爆破とともに異世界に招かれた。
自分がその世界に来た理由も分からないまま、彼女は、一人の青年と出会う。
青年は、ぶっきらぼうで、でもイケメン・・・ま、お話なんて、イケメンでも出てなきゃやってらんないか。
頼る人がその青年しかない彼女なんだけど、その世界で生活をしているうちに自分が何故、その世界に呼ばれたのかを理解するようになって、今まで自分と共に旅を続けていた青年が、“世界を統べるもの”であると知る。
青年はその名の通り、手に入れると世界を統べる力を持っていて、その力を得るためだけにこの世に生まれさせられたんだよ。
青年は、人ならざる力を持っていて、そのために人々からは恐れられ、孤独で、苦しんで、狙われて自分を守るために強くならざる負えなかった。
“世界を統べるもの”である彼は、自分を真の“世界を統べるもの”にしてしまう彼女を、最初は殺そうと考えていたけど、純真で優しい、けれど、根性のある少女に惹かれて愛を知り、二人で困難を乗り越えていく・・・ってな話だったはずだ。
万が一、自分が彼女のような宿命を背負っていたら堪らない。
このアラフォー女子にそこまでの根性と体力はないからだ。
いくら相手がイケメンだったとしても、平穏に暮らしたいと願う。
『主は、とてもお話がお上手ですね。』
なぬ?
気が付くと寝ていたクロまでキラキラと目を輝かせて私の語る物語を聞いているではないか。
『あかちゅき、もっと、もっとお話して?』
ええっー・・・。
町に入って、この疲れを取るのは、もう少し先になりそうだった。
つづく
何の話か分かります?
大好きな漫画です。
ちょこっと違う風に表現してますが。