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「クロ、そのママってのは、止めなさい。」
クロが見るからに悲しむ顔を見せた。
爬虫類に感情があるとは思わなかったよ。
ドラゴンを爬虫類って言っちゃだめか。
「暁でいいよ、あ・か・つ・き。エルアもそう呼んで。この世界のことに関して私はまだ素人だし。エルアに知恵を借りないといけないだろうしね。」
それに、今現在、私にとって、この二人は家族のようなものだ。
離れてしまうには、ちょっと情が沸いた。
まだ、数時間なのに、可笑しいかもしれないけどね。
『マス・・・いいえ、暁さま。私は、あなたのお力になれることが至高の喜びなのです。おそらく、クロも。』
至高って、大袈裟な。
『あかちゅき、クロ、あかちゅきのために頑張るよ。あかちゅき、こいつらから、クロ守ってくれた。だから、今度はクロがあかちゅきを守るの。』
くっ、可愛いじゃないか。
舌ったらずなのが。
畦道で気を失っていると言うか、寝ている仮面の男達。
エルアが“許す”まで眠り続けるって言ってたけど、目覚める気配はまるでない。
凡人の私が、この世界で生き残り、生きていくためには二人の力がどうしても必要だ。
ははははは・・・。
ホント、早く夢から醒めないかしら。
まだ、夢だと思いたがってる自分にも呆れてしまうけど。
「とりあえず、寝床と食事の確保よ。」
夢の中でも腹が減る。
疲れた、風呂に入って眠りたい。
かすかな願い。
目覚めたら、本当に夢から目覚めてるかもしれないし、元の世界に戻ってるかもしれない。
『そうですね、暁さまの疲れは我々にとっても、悲しみの貯蓄。安心して眠れる場所を見つけましょう。』
エルアの言葉にハタっと止まる。
『あかちゅき?』
クロが首をかしげて覗き込む。
エルアも固まった私を心配そうに見ている。
あ、あることが頭を過ぎってしまった。
そう、あれよ、あれ。
アラフォーエステシャンとして、絶対必要なアイテム。
そ、それがないかもなんて・・・ぜ、絶対っ!夢から醒めてやる!!
つづく