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『うーんと、』

ドラゴンは蝙蝠のような羽を羽ばたかせ、地上から30センチほど浮いた。

おおおーっ、そうか、その翼は飾りじゃないんだな。

『えいっ!』

ドラゴンは空中に指で円を描いた。



摩訶不思議なものを見た。


私の想像の範疇を超えるオカルト、ファンタジー系のことが行われている現状に“これは、もしかしなくても、現実か?”などと思ってしまう。

だって、普段想像もしない、できないことが自分の見る夢の中に現れるか?

嫌な思いを振り切るように頭を振った後、私は再び目の前の現象に目を見張った。

ドラゴンが宙に書いた円の中は、白、黒、灰色のマーブル模様にうごめく違う空間のようになっていて、鋭い爪の身体の割に小さな手がソコに突っ込まれた。

な、何をしてんの?

『ドラゴンは、自分の宝物を自分だけの空間に補完する習性があるのです。』

側にいる精霊が教えてくれた。

へぇ~説明ありがと。

四次元ポケットってか?

『はい、ママ。ママの役に立てる?』

ちょっとだけ視線が下にあるドラゴンが見上げてくる。

爬虫類系の瞳が可愛いと今まで思ったことはないんだけど、こいつは何か可愛い。

はっ!か、可愛いとか思うのはすでに絆されてる証拠か?

「あー、あ、ありがと。そ、そうだ、あんた、名前は?」

そう聞くとドラゴンは項垂れた。

あれ?何か変なこと聞いた?


『卵から孵る時に、受け取り損ねたんだ。お姉ちゃんもお兄ちゃんも受け取り損ねたと思う。』

見るからにしゅんとなるドラゴン。

私は、精霊に救いを求め視線を送った。


精霊の話によると、ドラゴンは、卵から孵る時に親から名前をもらう。

しかし、この闇のドラゴンは、卵の時に誘拐されて、卵のまま会話を交わしていた姉や兄に“お前だけでも逃げろ”と卵のまま空から落とされたらしい。

空からの落下くらいで卵は割れないそうだけど、兄弟も思いきったことをするな。

で、さきほどの森でこっそり生まれて、親を探すのか、姉や兄達を救いに行くべきなのか、悩んで過ごして3ヶ月。

親から名前を貰えなかったドラゴンは、肉体的・精神的にも未熟らしく、親から名を貰えない彼らは別の方法を得て成熟していくということだ。

ま、私の夢だとして、ソコから先の設定を考えるのは無理だろうな。

少々精神的にも成熟しないまま誘拐団の連中に見つけられて、突然自分に危害を加えようとする、言葉の通じない相手に混乱して、大暴れしてしまったらしい。

「ドラゴンって、3ヶ月であんなに大きくなるの?」

『あれは、混乱のよる暴走ですね、ドラゴンの中で闇のドラゴンは然程大きなドラゴンではありません。』

暴走であんなにでっかくなるのか。

『混乱したまま力が暴走すれば、このドラゴンは、バーサーカーのように暴れて、周囲への危害は相当なものだったでしょうね。』

おお、怖っ。

よかったね、暴走が止まって。

『ママのお蔭。ママが僕の声を聞いてくれたから。』

ちっちゃい手が私の手に触れてくる。

思ったより暖かい鰐皮って感じだ。

と、失礼。

『でも、こんなに小さい身体になれるとは思わなかったよ。』

今のドラゴンは、せいぜい小学校4年生くらい?分かんないけど。

精霊がふうーっとため息を吐いた。

『ドラゴンは、己の声を聞くことの出来るものに出会うと初めての者を主と仮認定してしまいます。それは、人だけに限らず、ドラゴン以外の全ての種族に当てはまります。仮とは言え、主と出会うと言うことは、それだけで、ドラゴンにとって生きる意味になり、今まで使えなかった力が使えるようになるんです。小型化が可能になったのは、マスターが、そのドラゴンの声を聞いて理解したからでしょうね。仮とは言え、主となった者が、』

仮認定ね。

「じゃあさ、」

この後、私は精霊の言葉を無視するようにしてしまった行動を後悔することになるんだけどね。



つづく

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