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うおっ!
思わず仰け反ってしまった。
破壊力満点な笑顔だ・・・。
おばさん、くらくらしちゃうよ。
かの人は、私の両手を持ち上げると自分の額に付けた。
『私と言う精霊を必要としてくださった、主に感謝します。』
いや、してない・・・とは、言えない状況でしょうか。
っていうか、精霊?
『ママは、僕のなのー!!』
突然、どんっと後ろから体当たりされた。
いや、抱きつかれたのか?
半透明の人が抱きとめてくれたけど、背骨折れるかと思ったわっ!!
『何を言う、主は、我が主であり、そなたの母ではない。』
『ちがうもん!ママだもん!!』
『子供とは言え、聞き分けのない!このように可憐な乙女がそなたを生む訳がなかろうっ!』
可憐じゃなくても、人はドラゴンなど産み落としません。
二人と言っていいのか分からないけど、言い合いしなさんな。
っていうか、可憐な乙女って・・・アラフォーですが。
「二人とも煩い。」
一言で、静まる。
「とりあえず、今夜の寝床とお腹も空いたから、どうにかしたいんだけど。私が見てる夢なのに思い通りにならなくて困ってる。知恵を貸して頂戴。」
ドラゴンと精霊とやらは、顔を見合わせた。
『ここから、ドラゴンで5分ほど飛んだ先に町があります。そこなら、今の時間でも宿屋なり、食事をする場所なりあるでしょう。』
私の前に跪いて語る精霊。
けどね、ドラゴンで飛んで5分ってよく分からないんだけど?
「宿屋か・・・金がないから、無理かもね。」
よく考えてそう思った。
金になりそうなものは、何もない。
唯一の財産だったアロマオイルの入った鞄は、見目麗しい精霊になってしまったし。
今来ている服も、たぶん、この世界の人にしてみれば奇天烈で、売ったとしても評価は両極端だろう。
ま、売ってしまうと着るものがなくなるから、売らないけど。
うんうん唸っていると精霊が声をかけてきた。
『お金なら・・・。』
えっ!あるのっ!
凄いっ!なんか、お金とは縁遠そうだと思ってたのに。
『私は、お金など持っておりません。』
心の中を読まれたのかそう言われ、おばさん、がっかりだよ。
『けれど・・・。』
精霊がちらっとドラゴンを見る。
なに?期待させといて、落とすなよ?
『闇のドラゴンの鱗は、高く売れますよ。』
にこにこにこ。
ドラゴンはきゅっと可愛い声を出して私の後ろにしがみ付く。
鱗って・・・。
「剥がすとか、可哀想だから、却下。」
幾らなんでも、痛そうだし?
『ママ・・・。』
いや、だから、ママじゃない。
『前に脱皮した時に落ちた鱗なら、何枚か持ってるよ。』
って、早く言いなさい!!
つづく