『風神録予告編』動き出す意思
特別先行投稿、風神録編第一話です!
-???視点-
…ふむ、新たな異変が起ころうとしているな。
「そうですね。そして次の異変…それはこの世界にとってきっと大きな節目になる。」
時に、お前が蒔いた『種』は育っているか?
「ええ。一つが花を咲かそうとしています。この時に間に合って良かった。」
そうか。ならば最悪の事態は回避出来そうだな。
「それよりも、『あの日』が近付いてきています…あちらの状況はどうなっているんです?」
釈放は決まったそうだ。しかし、既に数百年もの時間が過ぎてしまっている…彼女の志が、この世界に通じるかどうか…
「通じさせなきゃならないんです。そのために俺は『種』を蒔いた…全てが花を咲かせた時、それは対話の時です。もう歴史は繰り返さない。いや、繰り返しちゃいけないんです。」
…だが、我等の直接の介入は許されない。それは解っているのだろうな?
「解っています。それを差し引いても、俺は彼女の志を引き継ぎたいと思った。だから俺は…」
お前の意志は私に届いている、だから私はお前を信じる。
…私の代わりに、彼女を頼む。
「ええ。来るべき和睦の為に。」
-???視点-
「…時は満ちた。今度こそ悲願を達成しようではないか。」
「この世界の支配…面白そうじゃん。私も協力するよ。」
二柱の神が、意見を一致させた。
それは行動開始の合図。
「解りました…では、行動に移りましょう。まずは…博麗霊夢、彼女を…」
この世界の宗教は一つで良い。
巫女は1人だけいればいい。
だから。
「殺しましょう。」
-???視点-
「ついに『奴』が行動を起こすようだ。…ついに、ついに俺は『奴』に…。」
「…悲願が叶うわけね。でも…」
「ああ。なるべく『あれ』は使わないようにする。出来れば使う事なく仕留めたいが、相手が相手だからな…きっと無理だ。」
「それでも、使いすぎは危険よ。本当に人間の枠から外れるわよ。」
だとしても構わない。
人間の枠から外れたとしても、俺は奴を…
「目的さえ果たせれば、俺はもうその力を使う事がなくなる。これが最初で最後だ…」
「その言葉が真実であることを願うわ。…必ず戻って来なさいよ。でないと許さないわ。」
もとより戻らないつもりはない、だが何が起こるかは誰にも解らない。
細心の注意を払うべきだなと自分に言い聞かせてから俺は答えた。
「ああ。」
-レナ視点-
俺は紅魔館で毎度の事ながら平和に過ごしていた。
やはり平和はいい。
異変が起きないというのは素晴らしい事だ。
「今日も平和だなぁ…」
俺は何もしなくていい時には、いつも庭で仰向けになって空を眺める。
雲一つない青天だ。
ふぅ…と息を吐く。
その後に思いっきり空気を吸う。
身体の中の空気が入れ換わったような気がして気持ちがいい。
秋が近付いていた。
近付く心地よい秋の空気を感じながら、俺はいつの間にかウトウトしていた。
「起きろ!おーきーろー!!」
なんか声が聞こえるが、誰の声か、言葉の意味すらまともに解らなかった。
目も開けたくなかった。
こういうこと、稀にあるよね。
「無理矢理起こすしかないぜ!恋符『マスタースパーク』!!」
で、無理矢理叩き起こされた。
いや、叩くと言うよりビームでぶっ飛ばされたと言った方が正しいか。
「痛ぇな!何すんだ!!ってあれ、魔理沙?」
ボロボロになりながらも俺は敵襲かと思い咄嗟に周りを見渡すと、そこには魔理沙が。
「全然起きないから叩き起こしたんだぜ!普通はこんなことしないけど、レナは死なないからいいかと思って!」
「だとしてもいきなりマスタースパークはないだろ!?」
照れ笑いしている魔理沙に全力で突っ込む。
自分の能力があってよかったと思えた瞬間でもあった。
「そんなことはどうでもいいんだぜ!それより大変だぜ!」
「どうした?」
「霊夢に殺人予告が来たんだぜ!」
「!!」
霊夢に殺人予告?
犯人は余程の自信家か馬鹿かの二択になる。
そもそもな話、事情はよく解らないが霊夢は幻想郷にとっては欠かせない存在だといつか紫から聞いた事がある。
つまり霊夢を殺すと言うのはある意味、幻想郷の全住人を一瞬にして敵に回す行為なのだ。
「…魔理沙、それが本当ならまずいな。霊夢は今何処だ?」
「博麗神社だぜ!」
「解った、魔理沙は紫を呼んできてくれ!俺は博麗神社に向かう!」
「解ったぜ!」
俺は博麗神社に向かった。
博麗神社に着くと、神妙な顔をした霊夢が居た。
「霊夢!大丈夫か!?」
「まだ何もないから大丈夫よ。それにしてもわざわざ果たし状まで書いて殺人予告だなんて…余程自信があるのか馬鹿なのか。」
霊夢が一枚の紙を俺に渡す。
目を通してみた。
『5日後に殺しに行きます。残り5日の命、有意義に使って下さいね。』
「…この手紙が何処の誰かから来たかは解らないけど、私に渡しにきたのは文よ。文は『今度出来る神社の巫女だって言ってましたが…』って言ってたわ。
文の事だから余程の事がない限り手紙を貰ったその日に配達する、つまり残り4日なわけね。」
はぁ…と溜め息をつく霊夢。
「魔理沙があちこちに飛び回ってるみたいね。レナが来たとなると、次はきっと…」
「噂をすれば何とやらよ。」
何処からか紫が現れた。
まぁもう慣れているから、何時もの隙間だと解る。
「話は魔理沙から聞いたわ。貴女を殺そうとする馬鹿がいるらしいわね。」
「馬鹿だけならいいんだけど、本当に殺しにかかれるほど強いのかもしれない。だとすればまずいしね。」
「それもそうね。まぁ…魔理沙にレナが居るんだから大丈夫だろうけど。」
「わざわざごめんなさい。こんな事に呼んでしまって。」
「構わないわ。貴女は少なくとも、此処に居る皆にとっては大事な存在…そんな貴女が死ぬ事になるのは、何としても避けなければならないわ。」
「…ありがとう、紫。」
…霊夢を殺そうとする奴は、絶対に許さない。
俺はどんな相手だろうと退かない、そう心に誓った。
時の流れというのはこういう時はかなり速い。
あっという間に5日が経ち、ついに霊夢が殺害されるとされる日になった。
「…来るなら来なさい。私を殺せるものなら殺してみなさい!」
「随分と威勢の良い方なんですね。巫女と言うからもう少しか弱い方かと思ってましたが。」
来た!
鳥居の真下に立つ、緑髪の…
緑髪の…
巫女さん?
霊夢そっくりの腋を露出した服。
色が青っぽい事を除けば霊夢と同じものだろう。
が、何処かで見たことがある顔だな…何処だっけ…
「あんたが私を殺そうと来た奴ね。たった1人で来るなんて、余程自信があるのね。」
霊夢が札を構え、戦闘態勢をとる。
「…ええ。『人間』の貴女には負けるはずがないんです。だって私…」
自信満々の笑みを浮かべ、彼女は言い放つ。
「神ですから。」
次回はもうしばらく待ってて下さいね!
というわけで次回
「人と神の争い」
お楽しみに!