【凛音編】その4『死なないとかマジチートだわ…え、人の事言えないって?』
-レナ視点-
超速再生…それは失われた身体を一瞬にして再生できるという恐ろしいチート機能だが…
一つだけ弱点がある。
それは、服は再生不可能であること。
つまりさっきのように身体消滅レベルの攻撃を喰らうと、素っ裸で再生してしまうのだ。
公然猥褻で普通に捕まる、主人公なのに。
戦闘に勝っても、人間的にぼろ負けである。
というわけで大事な場所を隠しながら俺は服を取りに行く。
もう数枚必要になるだろうから、余分に服を取っておく。
誰にも見つからずに服を着る事に成功した俺は、慌てて来た道を戻る。
「お待たせだな!おっ始めようか!!」
というか相手は女性ですか。
何だろ…美少女と言うより美女の部類だな。
「俺は凛音だ。見てくれは女だが、中身は男だ。」
見た目が女性で中身は男…?
「巷で有名なニューハーフ!?」
「ちげぇよ!俺は一回死んで幻想郷に来たんだが、なんでか幻想郷に来たら女性になってたんだよ!ニューハーフじゃねぇ!」
「そういう建前ですか」
「どんな建前だ!これが真実!」
あ、怒らせちゃった。
「…あんた、玲奈とか言ったな?死なない人間らしいが…色々ムカつくからぶっ殺す!」
そうして凛音は此方に向かって…
「ガハッ!」
胸に痛みが走る。
俺は胸に視線を落とす…
見事に心臓を貫く、一本の剣。
「マナの剣…斬れ味は抜群な伝説の武器だ…目には目を、不死身には伝説を。」
ブシャって噴水のように血が噴き出す。
「終いだ。俺の勝ちという形でな。」
うん、確かに、俺がただの人間ならそうだっただろう。
…が、伊達に修羅場潜り抜けて来た身じゃないんでな。
「…あぁ、そう。不死身も舐められたもんだな、心臓貫いただけで死ぬとは。ふざけんなよ…!!」
心臓に突き刺さる剣を左手で掴み、俺は右手を凛音に向けた。
「砲符『リヴァイバル・α』」
赤い閃光が、視界を塗り潰した。
-凛音視点-
いきなりビームぶっ放すとは、やはり不死身は色々とぶっ飛んでいる。
が、かわされないようにと自分の手を省みず、マナの剣の刀身を掴んだのは予想外だった。
あのビームをもろに喰らうのは絶対に避けなければならない。
そう直感的…いや、本能が吠えたように感じた俺はある行動を取る。
マナの剣を、自ら手放した。
そして身体を落とし、ビームを回避する。
チッと髪の毛の一部が燃えるのが聞こえたが、髪の毛で済むなら安いものだ。
相手は不死身とは言え、それを除けば普通の人間。
心臓に突き刺さる障害物をそのままにしたまま動くとは到底思えない。
しかも相手は不死身だ…
ほら、引き抜いた。
で、相手はその武器を使わないはずがない…
掴むだろうな、自分の武器として。
…使わせるかよ、あの剣は俺のものだ。
「うわっ、剣が消えた!?」
隙あり。
「そこだ!!」
玲奈の左肩に右手を押し付け…!
「パルマフィキオーナ!!」
左腕を、ビームとその熱で焼き切る。
幾ら再生機能があっても、切断部分が熱で壊死していれば、再生は出来ないのが普通だ!
「にゃろっ!!」
が、右腕は残っている。
お返しと言わんばかりに左頬が埋没した!!
「人間の出来る強さじゃないな、そのパンチはっ!!」
「他人の左腕焼き切っておいて、何言いやがる!」
とにかくにも、もう片方も斬っておいた方がいいだろう。
そう判断し、次の行動に出る。
再びマナの剣を呼び出し、俺は前に出る。
相手は武器持ちではない、ならばマナの剣は『リーチ』と言う意味でかなり有利に立てる武器になりえる。
「さっさと右腕もくれっ!!」
剣が奴の武器代わりの右腕を斬るべく動くが、奴には当たらずに空を斬る。
「させるかよ!砲符『リヴァイバル・β』!!」
またビームかよ、いい加減にしやがれ!!
「っとぉ!」
何だ、さっきより攻撃範囲が広い!
「そこだぁ!!」
直後、腹に入る、奴の拳。
「ぐっ…!」
まずい、このままラッシュを喰らう訳には!
「プロテス!!」
物理攻撃の威力を軽減出来る魔法の障壁を創る!
これで立て直しにかかれば…!
「そんな結界、叩き斬ってやる!」
なっ、奴は武器持ちだったのか!?
右手に握られた黒い剣が、それを物語る。
「おいでませ結界カッター!でぇやぁぁぁぁぁ!!」
クソッ、破魔能力付きの斬撃か!?
「ちっ!」
俺はこのままでは分が悪いと判断した。
妖力、魔力を補充しなくては。
ワールドデストロイヤーでかなり消費してしまった、このままではまともに技が使えなくなる。
「吹っ飛んでろ、バシルーラ!」
「うぉ、ちょ、待て、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
奴には一時離脱をお願いして貰った。
奴が遥か彼方へ飛んで行く、時間稼ぎはなんとか出来そうだ。
「今の内に…!」
マナの剣による魔力と妖力の補充。
これをした上で、さらに態勢の立て直しを図る。
「ベホマ」
体力が、元に戻る。
「ウォール」
物理耐性のある障壁と、魔法耐性のある障壁を同時に張る。
「確かにゆかりんの言うとおり、奴はただの不死身じゃないな…」
正直、甘く見ていた。
戦い方を考える必要がある。
時間は稼いだ、ここでどうするかが鍵だ。
下手に大技は出せないな…魔力・妖力切れは致命的。
ならば…物理戦闘、か。
と思った瞬間、何か気配がした。
奴か?何処に居る?
俺はマナの剣を構えながら、注意して辺りを見る事にした。
~今回の凛音が使った技について補足~
・ワールドデストロイヤー
「テイルズオブディスティニー」に出てくる有名なボス、バルバトス・ゲーティアの技。即死クラスの衝撃波を放つ。因みに射程距離は画面の見える範囲内と言うかなりぶっ飛んだ技である。
原作じゃこの技の発動を止められない=ゲームオーバーである。
・パルマフィキオーナ
「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に出てくる機体、ディスティニーガンダムの武装の一つ。手を相手に接近させ(と言うより押しつけ)、掌からビームを放ち敵を破砕する。疑似シャイニングフィンガーと思って頂ければイメージ出来るはず。
・プロテス
FFシリーズの魔法。かけた相手に対する物理攻撃ダメージを軽減出来る。上位魔法に「プロテダ」があるが、こちらは物理攻撃ダメージを大きく軽減出来るが持続時間が短めである。
・バシルーラ
ドラクエシリーズの呪文。かけた相手をぶっ飛ばし、戦闘から離脱させる。効かない事も。
・ベホマ
同じくドラクエシリーズの呪文。かけた相手の体力を全快する。一回につき一人にしか使えないが、上位呪文に「ベホマズン」があり、こちらは味方全体が対象で、全員の体力を全快する。
・ウォール
FFシリーズの魔法。プロテス及びシェル(魔法ダメージ軽減効果)を同時にかける。
次回予告!
ぶっ飛ばされたレナの次なる行動とは!?
そして、熾烈を極める凛音とレナの戦い!
というわけで次回
「その5『殴り合い』」
お楽しみに!