【光編】その1『始まりはいつも突然に』
今回より「幻想の運び屋」とコラボです!
-紫視点-
私はあの時と同じように、歪みの中の扉だらけの部屋に居た。
だが変わった事があった。
まず1つ、多数ある扉の1つが板を打ち付けられて封印されていた。
もうひとつ、ノートの記述が増えていた。
私はそれに目を通した…
『さて、君のおかげで1つ確実に変わった。まずは礼を言おう。だが、まだ扉はある。是非、扉を開き、新たな世界を見てくれたまえ。』
「2つ目の別の世界…どうなっているのかしら?」
私は扉を開け、中に入った。
閉まる扉に刻まれる文字。
『幻想の運び屋』
-???視点-
今日も何時ものように、彼女…稗田阿求の家の前でトラックを停める。
「光、ちょっと良いですか?」
「え?」
何時もの阿求なら真っ先に『乗せて下さい!』と目をキラキラさせて言うのだが、今回はそれがない。…なんで?
「今日も乗せて貰おうと思って、玄関に行ったら…これが…」
阿求から渡される小包。
本当に小さな段ボール箱に入っているようだ。
「それと、その箱の上に、これが…」
続いて渡される茶色い封筒。
封筒には達筆な文字で『上松光様』と書かれている。
「俺宛て…?」
俺は封筒を開け、中のものを引っ張り出した。
「なになに…?」
中には便箋と、小さな押しボタンが1つ。
俺は便箋から目を通すことにした。
『上松光様へ
この小包を、ある場所へ届けて頂きたいのです。
届け先は…彩埼玲奈。彼に届けて下さい。宜しくお願い致します。
追伸
この宅配は数日かかるので、お仕事を終えてから取り掛かって頂くと有り難いです。
宅配の準備が出来ましたら同封のボタンを押して下さい。』
「直接運び屋の方に置いてくれりゃ良かったのに…」
俺は聞こえるはずもないと思いながらも、依頼人に少し愚痴った。
「でも誰からなんでしょうね?」
「阿求じゃないの?」
俺は阿求か、彼女の家族からかと予想していたが…
「違います。それに、彩埼玲奈なんて人、私は知りません。」
「そうか…」
だが、届け先の住所が書かれていない。
何処に届ければいいんだ?
「数日かかるらしいし…まずは仕事を終わらせよう。」
「そうですね。」
仕事を終わらせ、やることをやってからこの宅配をしよう。
俺は阿求を乗せて、何時もの通り仕事に戻った。
「ふぅ…疲れた…」
途中、阿求を下ろし、ガソリンも補給。
だが、まだやることはある。
「『突然ですが、急用のため5日程休業致します。皆様にはご迷惑をお掛けしますが、何卒ご了承下さい』…と!」
この貼り紙をしておかないと、普通に荷物が集まってしまう。
「あ、早速準備しているんですね。」
「そうなんだよ……………………なんで阿求が?」
さっき下ろしたはずなのに…
「取材と称してついてきました!」
「……………解ったよ、ついてきていいよ。」
「わぁい!」
「その喜び方は何となく駄目な気がする!何となくだけど!」
そんなショートショートをしながらも、準備を整え、いよいよ俺と阿求はトラックに乗り込んだ。
「このボタンを押せばどうなるか…押してみよ、なんとかなるさ…」
「ポチっと!」
「え!?もう押したの!?」
その瞬間、トラックがガタリと揺れた。
「な、なんだぁ!?」
「く、車が落ちてます!」
「マジかよ!阿求、俺に掴まっててくれ!!」
「はい!」
トラックがまるで蟻地獄に喰われるように沈んでいく。
…俺達は、そこで意識を手放した。
次回予告ー!
光はどうなる…!?
というわけで次回
「その2『届け先は何処に?』」
お楽しみに!
※今度こそ次回更新は2日後くらいになると思います。