ある日の事、美少女に殺されかけた奴がいたんだって
第3.5章…スタート!
ですが早速道草してます。
ストーリーがマジで進むのは次回から!
これはとある妖怪が綴った、一週間分(?)の記録。
ー第1日目ー
「私と殺し合いをしましょう?」
「待て、経緯も事情も見えないのに殺されるとかありえないんだが。」
理由は簡単、貴方を殺したいから。
でも、このやり取りはもはや日常と化している。
「私を満足させなさい、それが貴方の役目よ。」
そう言って、何時ものように戦いを始める。
…でも、この戦いが楽しかったりする。
彼はある日、突然やってきた。
『俺は殺したい奴が居る。だが、このままではどう考えても殺せない。…奴を殺す方法を、一緒に考えてくれないか?』
そんな事を言っていた。
見ず知らずの男に何も言う事はない、そう思った私は問答無用で彼を殴った。
彼は気絶した。
流石にこのまま殺してしまうのもなんか癪だったので、私は気絶した彼を家に運んだ。
暫くすると、彼は目覚めた。
『う…此処…は…?』
「私の家よ。私のせいで貴方が死んだって事になると色々面倒だから。」
と言っても、死んだら死んだで向日葵達の栄養になったのだけど。
『そうか…優しいんだな、君は…』
優しい…意外だわ、そう捉えられたなんて。
でも、まんざらではなかった。
それ以上になんか顔が赤くなったのを感じて、見られるまいと彼を殴ってしまった。
また、彼は気絶した。
数時間後、彼はまた目覚めた。
「お腹、空いたでしょ。それなりに食べられるものを用意したから、勝手に食べて。」
『済まない。頂くよ。』
彼はそれはそれはとても幸せそうな顔で、私が用意した食べ物(アップルパイと言うそうだ)を食べていた。
というより、がつついていた。
『これ美味いぞ!君が作ってくれたのか?』
「一応、ね。口に合ったみたいで良かったわ。」
こんな会話をしたのは何時以来かしら。
…たまに紫と幽々子が来た時にくらいしか会話してないわね。
でも、こんな会話もすぐに終わる。
用事さえ終われば、彼は居なくなる。
さっさと終わらせよう。
「…で、貴方が殺したいと言うのは誰の事なのかしら?」
『は?』
アップルパイを頬張っていた彼が首を傾げる。
「相談に乗ってあげてるの。で、誰なの?」
『〇〇〇。』
その名は、余りにも予想外だった。
「なっ…!?貴方、本気なの!?」
『本気だが?』
この男…余りにも馬鹿げている。
「だとしても無理だわ。貴方、人間じゃない。人間ごときに殺せる相手じゃないわ、諦めなさい。」
瞬間、彼の顔が曇った。
『…そうか。俺は…無力なのか…』
彼はそう言ったきり、黙ってしまった。
翌日、彼は私の前から姿を消した。
唯一あったのは、置き手紙一枚だった。
『少しの間だったが世話になった、わざわざ押し掛けて済まなかった。
俺の事は忘れてくれ。そうした方がきっと良い。』
「…」
日常が、戻った。
ー第2日目ー
今日も何時ものように彼と殺し合う。
今思えば、こうして彼と殺し合いが出来るというのは奇跡だったのかもしれない。
「なかなかやるようになったじゃない。」
「そりゃどうもっ!!」
まさか、彼に傷を付けられる日が来るとは。
彼は確かに強くなっていた。
…彼が私の前から姿を消した数日後。
ある客がやってきた。
『いやぁ、まさか貴女に取材出来る日が来るなんて思いもしませんでしたよ。』
射命丸文…昔から私に取材をしつこく申し込んできた烏天狗。
「今日は気分が良いの。奇跡ね、貴女は。」
いくら相手がしつこい烏天狗でも客は客。
私は彼女を家に入れた。
「で、取材って何なのかしら?」
『ええ…最近、何か面白い事ありました?』
「面白い事…ねぇ。」
あ、そう言えば。
「男が来たわ。それも変な。」
『それは面白い事ですね!詳しくお話を聞かせて下さい!』
予想以上の食い付きに少し驚いた。
『…へぇ、そんな事があったんですか。』
「大体これで話は終わりよ。」
しかし、相手は釈然としない顔をしている。
「どうしたの?」
『その話、勿論全て本当なんですよね…?』
「ええ。貴女に嘘をつく理由なんてないもの。」
暫く彼女は何か言いたそうに口をもごもご動かしている。
「言いたい事があるならはっきり言いなさい。『面白くなかった』って。」
ところが、此処から少し驚く展開になる。
『いやぁ…もしかしたらその人、私の知り合いなのかもしれないんですよ。』
「何処に居るの?」
あれ、私、なんでこんな事聞いてるのかしら?
『今から会いに行きますか?』
「ええ。」
な、なんで?
彼の事なんて、私にはどうでもいいのに。
…来ちゃった。
『多分彼だと思うんですよ。おーい!』
ドンドンと戸を叩く彼女。
そして、戸が開いた。
『何ですか編集長?今日は仕事じゃ…って…』
そこには、数日前に私の家に居た彼が寝惚け眼で立っていた。
「あ、貴方!何処に行ったかって心配になったじゃない!」
せめてあの時、一言かけて欲しかったのは確かだった。
『編集長…これは…どういう事で…?』
彼はまだ事態を理解していない様子だ。
私はなんかイラついて、彼を殴った。
やっぱり彼は気絶した。
『置き手紙の字を見て、貴方じゃないかと思ったんですよ。やっぱり合ってた!』
『それにしても、よく此処まで来てくれたんですね…すいません、少し待っててくれませんか?』
「…?」
彼はニコリと笑い、こう続けた。
『アップルパイのお礼、したいんで。』
「…」
目の前には、簡単な料理が並んでいた。
ピカピカに炊けているご飯、豆腐と玉葱の味噌汁、そして鯖の塩焼き。
『ささ、お口に合うか解りませんが、召し上がって下さい。』
「い、いただきます…」
ご飯を少し食べてみた。
「!!」
美味しい…ご飯って、こんなに美味しいものだったの!?
『流石だね、一人暮らしする男の子は料理が上手いってやつですか!』
『そこまでは…』
えへへと、彼が照れ臭そうに笑う。
「…」
私は無性に叫びたくなるような衝動に駆られた。
…とりあえず、この衝動をどうにかしたかった。
だから。
「貴方!」
バンッ!!と机を叩き、私は彼を指差して言った。
「明日から私の家に住みなさい!!」
『…え?』
一名程「これはスクープ」と言いたげに目を光らせるのが居たが、そんなのは関係なかった。
ー第3日目ー
今日も何時ものように彼と殺し合いをする。
正直な話、彼にも私にも、相手を殺そうと思う気はないだろう。
私はあったのだが、段々となくなってきた。
いつの間にか、ただのじゃれ合いになっていた。
彼を家に連行して3日。
彼はそわそわしていた。
というのも、どうやら私を意識しているらしい。
女として私を見ている部分もあるのだろう。
でも、それは私も同じだった。
私の話を聞いてくれる人が、傍にいる。
今までなかったことで、私は気が付けばずっと話をしていた。
…それは他愛もない話で、酷く退屈するような話なのに、彼は笑顔で聞いてくれた。
「…そう言えば、貴方…強くなりたいのよね?」
『ああ。強くなって…あいつを殺す。それが俺の…生き甲斐なんだ。』
1つだけ、彼が強くなる方法があった。
だけどそれは、失敗すれば彼は死ぬ。
それに、暫くは彼の声を聞けなくなる。
何故だろう…それはとても嫌だった。
『…』
彼は私を睨んでいた。
『なんで…なんで黙ってたんだ。』
彼が強くなる方法。
それは、彼をある世界に送り込む事。
これだけなら問題はない、けれど…それは…
「貴方が…死ななければならないのよ。」
彼の死が絶対条件だった。
『…』
彼の願いを果たすには、死ななければならない。
そして、送り込まれたその世界で、その世界の王とも言われるある人物に認められる強さを持たなくてはならない。
強さがなければ、彼の願いは果たせない。
生半可な事ではなかった。私もそれの苦しさを知っているから。
「私…貴方に死んで欲しくないの…」
彼には死んで欲しくない。
すると、彼は私の頭に手を置いて、こう言った。
『気持ちは解るよ。でも…俺は…やっぱり死ななきゃならない。』
だけど。彼はそう置いて、続けた。
『それはあいつを殺す為じゃない。…君を守れるような強さを手に入れたいからだ。君を守れるなら、あいつだって殺せる。だってさ、君はとっても強いから。』
「!」
『残念だけど、今の俺じゃ君は守れない。俺は弱い人間だ…だから、強くなる。約束するよ…強くなって、帰ってくる。必ずだ。』
「なんで…なんでそこまでして、私を守りたいの?」
彼は暫く黙り…答えた。
『…もっと早く気付くべきだった。』
彼の腕が、私を包む。
『君が好きだから。』
「えっ…!?」
すすす、好き…!?
『大切なものだと思ってるから。それじゃ駄目か?』
あ、あわわわ…
『俺は君を愛してる。』
え、えええっ!?
「私は妖怪よ!化け物なのよ!」
さらに私は強く抱き締められる。
『知るか。妖怪だろうがなんだろうが愛してる事に変わりはない。』
「…わ、解ったわよ…で、でもっ!!
必ず帰って来なさい!約束よ!」
『ああ。約束は守るよ。』
彼はその後、死んだ。
でも、それは強くなる為。
いつか必ず帰って来る…その約束と共に。
ー第4日目ー
今日は彼と殺し合いはしなかった。
代わりに、彼と家の中で話をした。
あの時のような、他愛もない話。
でも、私と彼はあの時と変わらず笑い合っていた。
「今日は一緒に寝てあげる。」
「マジで!?暖かいんだよな…太陽みたいだもん。」
「誰が抱き枕にしていいって言ったのよ…」
「駄目?」
「冗談よ。でも、私を抱き枕にするんだから、当分寝かさないわよ?」
「それは楽しみだ。」
彼は無事に戻って来た。
戻って来たその日はずっと彼にくっついて泣いた。
そして、寝かさなかった。
「今夜はずっと寝かさないぞっ☆」
『ちょ、どうしたんだ、いきなり…あぁぁぁぁ!!!!!』
一週間分書かなきゃいけないみたいだけど、これ以上はただのおのろけにしかならないので此処で終わるわ。
「ねぇ、最後に一つ聞いていい?」
「ああ。」
「今でも私の事、好き?」
「当たり前だ。」
「じゃ、名前で呼んで。」
「ああ。…愛してるよ、幽香。」
「私も。ずっと一緒よ?」
「…ずっと一緒だ。」
ー射命丸文の追記ー
これは本にしていいレベルですので、本にしちゃいました。
『とある下っ端記者と妖怪の恋物語』
文々。新聞社より発売中!
ーとある下っ端記者の追記ー
編集長ぉぉぉぉぉぉ!!!!?
何してくれたんすかぁぁぁぁぁぁ!!!!?
ー妖怪の追記ー
あの烏天狗…今度会ったらただじゃ帰さない…!
絶対しばき倒してやるわ…!!
ゆうかりんと結婚するという夢を昨日見たんだ。
その夢を少し書き換えたんだ、すまない。
面白かったからどうせならと言う軽い気持ちで書いたんだ、すまない。
というわけで次回
「平和ってどうして簡単に吹き飛ぶんだろうね」
お楽しみに!