Extra…地之神、降臨
―レナ視点―
「んな…?」
いつの間にか、俺は一人になっていたようだ。
らぐなさんは「すまん、先に守矢神社へ向かっていてくれ!」と言ったきり行方不明、小悪魔は「敵が居る…撹乱するから先に行って」で離脱、幽々子は…あれ?
とにかく、俺は一人だ。
まぁ目的はあの3人とはいえ、見つからなければ戦いようもない。
俺は守矢神社に向かいつつ、索敵もしていた。
…と、そこに。
「ちょこまかと逃げるな!土着神『手長足長さま』!」
「捕まるのは嫌だからねぇ!酔符『鬼縛りの術』!」
なんか特撮ものでもあるかのような巨大な怪物みたいなものが、身動きできずにいる。
「な、何だ!?なんで神が縛られるんだ!」
「鬼だってある意味神様なんだよ!」
って、あれは萃香と諏訪子じゃないか!
「加勢するぞ、萃香!砲符『エキセントリックバルカン』!」
不規則に跳ねる弾が、巨人の身体をぐらつかせる。
「くっ…!増援か、しかも厄介な奴!」
と諏訪子が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる一方、萃香はというと…
「おっ、レナじゃん!いいとこに来たよ!あたしじゃ張り合うだけで精一杯でねぇ!レナ、支援頼むよ!」
張り合えるんなら支援いらない気がしたが、状況が状況なので支援をすることに。
「解った!一気に畳み掛けるぞ!『翼を求めし者』、展開!!」
相手の力の見誤りはもうしない、最初から全力だ!
「2対1なんて卑怯だ!ならこっちだって増援を使う、祟符『ミシャグジさま』!」
現れたのは、白い大蛇…ってめちゃくちゃ長くないか!?
「早苗のと勘違いしてもらっちゃ困るよ?こっちは本物、力はある!」
確かに、あの蛇からも強大な力を感じる。
早苗のあれとは違うようだ。
「…レナ、白蛇の方を頼まれちゃくれないか?あたしは本体をやるよ。」
「大丈夫か?随分と怪我してるようだが…。」
よく見れば、生傷が身体のあちこちにある。
「大丈夫大丈夫、こんな傷なんともないよ!」
そう言うなり軽く酒を口に含み、傷口に向けて噴射する。
「民間療法丸出しだ!」
「今までこれで治ってたから大丈夫!それより自分の心配をしな!」
…そうだ、それよりも問題なのは、この白蛇。
今まで妖怪という類の蛇なら倒したことはあるが、この蛇はまんま蛇だ。
つまり野生動物…野生動物はかなり戦いが巧いと、本か何かで見たことがある。
注意すべきはこの蛇なのかも知れない。
「…そうですね。これはキツイかもな…!!」
「どうした?いきなり怖気着いたか?ミシャグジさま、あれを頼みます。」
諏訪子は萃香と戦うべく、萃香の方へ向かう。
…人間vs大蛇。なんか某グラップラーみたいだな。
「落ち着け、俺…奴から来るのを待つんだ…」
痺れを切らして飛び込めば、奴の領域内に入り、カウンターを喰らいかねない。
ならば限界まで待って、奴から来るのを待つしかない。
此処からリヴァイバルを撃つという手もなくはないが、γ型はいいとしてもα、β型は撃つ時に僅かな隙が出来る。
その隙を突かれてしまったら終いだ。
「限界まで引き付けて…霊掌か。」
そう、狙いはそこ。
一撃、たった一撃に全力を。
「来いよ蛇…潰してやるからよ。」
僅かに恐怖が残るが、それを虚勢で振り払う。
右手に魔力を。目線は蛇の瞳。
「…」
準備は整った。
後は奴が動いた瞬間、そこを狙う!
「…」
蛇も俺を睨む。
動いた方が負け、それは蛇も知っているのだろう。
…諏訪子と萃香の戦いが向こうで起こっている中、此処だけが妙に静かだった。
「シャァァァァァァァ!!」
動いたのは蛇、一直線に俺に飛び掛かる。
「にゃろっ!!!」
その蛇の頭目掛けて拳を振り下ろす。
蛇には確かに拳は当たった、手ごたえもあった、だが…
「ぐぅっ!!」
拳が当たったのは蛇が俺を咬んだ後だった。
「見事なり、人間。私と刺し違えるとは、なかなかだな。」
「なんだ…蛇が喋ってる?」
激痛、さらに毒を入れられたようで目の前がふらふらしているが、その声だけははっきりと聞こえた。
「人間、貴様は妙だな。まだ生きている。」
「一応死なないことになってるんでね…!」
そういえば、毒では試したことがなかったな。どうなるんだ?
「良かろう。貴公に頼みがある。このままでは『命が消える』…我が主と対になる者だ。」
諏訪子と、対…?
「八坂…神奈子か?」
「ああ。このままでは何かが起こる。敵であることは承知だが、どうか止めて貰いたい。」
「…何故だ?」
「我らは戦いを、血を望まない…使役される身だが、思いはそうだ。」
「…そうか。なら、見るだけ見よう。この身体で止められるかは解らないが…」
「感謝する。ならば、戦うふりをして貴公を神奈子の方へ飛ばす。後は頼んだぞ。」
「…頼まれた。」
蛇に飛ばされる俺。
途中、諏訪子と萃香の姿が見えたが、互角の戦いのようだ。
「…これで良いのだろう?」
「ああ。これで準備は整った。」
「まさか貴公の姿を今一度見るとは思わなかった。が、借りは返したぞ。」
「ああ、そうだな。」
「彼に何かあるのか?」
「何かは解らない。だけど、彼に関しては見てみたかった。地獄の資料で興味を持った、それだけだけど。」
いずれ彼には会うことになる。
私の世界で…
次回、風神録編最終話。
ラストを、見逃すな。