第二十四話 狼は森にいる 一
「あー、えっと次は……確かそこの木を左です」
魔法の復活も確認し、俺たちは目的に向かって進み出す。
昼下がり、王都東の森でそんな声を漏らした。木漏れ日に満ちた緑の中、二頭の馬が息を吐き、俺が指差した方向へと進路を取る。
一頭目、もはや見慣れた漆黒の相棒、バートを操るコニーさんは腰から剣を下げ、薄手の革鎧を身に纏っている。これはさきほど王都を発つ際、店先に並んだ商品を即席で購入したものだ。もしかしたらサイズ等の不都合があるのかもしれないが、見た目には問題がないように思える。
今度は目線を上げて、前方へ。二頭目、赤茶色の馬に跨るのは、コニーさんとは対照的に幾らか年季の入った革鎧を着るアーシュさん。打ち込まれた金属の鋲からも、共にした月日が感じられる。
ちなみに今、この場に妖精使いの男はいない。奴はファンヌさんによって何らかの妖精対策を施され、隠れ家に置かれているらしい。吸血鬼のように逃げ出さなければいいが。
「ノーラ、次は?」
やってきた問いに考えを打ち切る。僅かに首を捻って後ろを見やり、声の主を見た。そして俺はすぐに前へと向き直る。上擦った声に乗せるのは掘り起こした記憶だ。
「し、しばらくはこのまま真っ直ぐです。はい」
馬が二頭でそれぞれにアーシュさんとコニーさんが跨っている。ならば俺はどこに乗っているのか。そう、コニーさんが居るのはすぐ後ろ、つまり俺は今、彼とバートに相乗りしているということになる。
俺を抱くような形で脇から両手を出し、前で手綱を握るコニーさん。必然的に体は密着して、ロープ越しに伝わる体温が何ともまあ、そんなに嬉しくはない。
「どうかしたか?」
「あ、いや、なにも」
気を紛らわそう。揺れる馬の上で眉間を抑え、刻まれた景色を思い出すことに集中する。
そうしていたら、先を行くアーシュさんがこちらを見ていることに気付いた。何やら小さく笑みを浮かべつつ、俺の顔に視線を投げかけている。
「しっかしまあ、大した記憶力だ。この道順を全部、爺さんから聞いてきたのか?」
続いて飛んでくるのは、あからさまに疑ったような言葉だ。
「えっと、まあ」
「……へぇ。教えられる爺さんも爺さんだな」
しかしそう返してやれば、気の無い返事を最後に追及は終わる。やっぱり彼にとってはどうでも良いことのようだ。きっと俺の反応を楽しんでいるだけなのだろう。まあ、それならそれでこっちにとっても都合が良い。
そんな風に考えれば、訪れる沈黙。耳に飛び込んでくるのは鳥の声と、風の音、心地良い馬の足音たち。道案内を続けながら、湿った空気に鼻をすすって視線を下げる。
揺れに合わせて遊ぶバートの黒いたてがみが見えた。そういえばこいつ、俺には全然懐いていなかったというのに今回は随分と素直に背を貸してくれた。もしかしてやっと心を開いてくれたということか?
少しだけ嬉しくなり、そのたてがみに手を伸ばしてみる。しかし触れる寸前、バートは鼻を鳴らして首を振った。きっと触るなという確固たる意志の表れだろう。まったく、どうやらご主人様の命令だから乗せてもらえているだけらしい。
少しだけ傷つきながらも案内を続ける。そうしたらやがて、記憶の終着点へとたどり着いた。
「ここ、です」
そう言えば、バートが足を止める。コニーさんが先に降り、俺を抱きかかえて地面へと下ろす。少し、いやかなり恥ずかしい状態だったが、今はそれに言及している場合ではない。そんなことよりも。
「おいおい、嬢ちゃん。本当にここか? 何にもねえじゃねえか」
馬から降りたアーシュさんが言う。そう、たどり着いた場所には何もなかった。森の奥にそびえ立つ崖の麓、辺りは濃緑の木々に囲まれていて、頭に刻まれた景色と差異はない。だけど唯一違うところがあった。
「ど、洞窟があるはずなんですけど」
記憶の中で確かに見た洞窟が、ここには存在しないのだ。岸壁には穴ひとつ無い。
そんなはずはないと辺りを見回してみても、どこにも洞窟は見当たらない。道を間違えたか? いや、不思議と細部まで思い出せる記憶だ、それはありえない。
ぺたぺたと岸壁を触るアーシュさんと、あたふたとする俺。そんな状態が数十秒。やがて隣のコニーさんが口を開く。
「……風だ」
「は?」
素っ頓狂な声を上げるアーシュさんの横へと進み、コニーさんは右手で崖に触れる。当然ながらそこも、他の場所となんら変わりは無い。だけどコニーさんは、確かに何かを感じ取ったようだった。
「僅かだが、この先から風が吹いている。きっと道があるぞ」
「本当か!」
「ああ、多分な」
「多分でもなんでもいい、とにかく俺が確かめてくる」
アーシュさんは数歩後ずさり、腕を構えて走り出す。向かう先は岸壁、コニーさんが示した場所だ。だが、彼は数歩足を踏み出しただけでその進みを止めた。
「……なあ、岸壁の厚さがどれくらいかわかるか?」
アーシュさんは苦笑いを浮かべて問う。しかし、コニーさんにもどうやらそこまではわからないようで、返されるのは「さあ」という短い言葉だけ。
「なら、確かめるのは止めだ」
俺は腕を組んで頭を捻る。アーシュさんが洞窟の存在を確かめようとしたその方法、恐らくは透明化の魔法を使って岸壁を突破するというものだろう。しかし岸壁の厚さがわからないことに気付くや否や、彼は確認を止めた。それはつまり。
「あんた、魔法を使うのに幾らか制限があるみたいだな」
コニーさんが代わりに、俺と同じ考えを投げた。
アーシュさんはため息を吐き、両手を上げて首をすくめる。
「……さあ?」
言及はしない、それが彼の選択のようだ。まあ、自ら弱点を確定させる必要もないということだろう。
そう納得したところで、もう一度崖に目を向ける。記憶を再び探ってみても、ここで間違いは無い。きっとコニーさんが感じ取ったものが正解の目的地だ。だけど入る術が無く、他の入り口にも心当たりはない。
さてどうするか。腕を組んだところで声が飛んできた。
「嬢ちゃんはもう帰っていいぞ。ご苦労さん。……俺は他の入り口がないか探してくる」
呆気ない労いの言葉を置いて、アーシュさんは崖沿いの森に消えてゆく。
果たせたのかはわからないが、俺の役目は終わった。だから横を向いてコニーさんを見上げる。今は凄くいいタイミングだ。聞いておきたいことがある。
「あの、リネーアさんの家で仰っていた気になることっていうのは……?」
出発する前に彼が口にしていた言葉、その真意を何の飾り気もなくストレートに問う。そうしたら返ってくるのは数秒の沈黙。だけどそれを抜ければ、答えはちゃんとやってきた。
「お前を襲った吸血鬼はあの鳥人間と組んでいた。そして鳥人間は道化師と組んでいて、道化師は村長と組んでいた。今から狙うのは別の吸血鬼だが、吸血鬼という特異な繋がりはある。そこから何かわかるかもしれない」
ゆっくりと、淡々と語られた言葉。大方は俺が考えていたことと同じだった。だけどやっぱり、改めて他人の言葉で聞いてみれば、不自然さを孕む思考であることに気が付く。
村長や道化師、鳥人間に繋がる何かを得たいのならば、こちらの吸血鬼ではなく俺を襲ったあの吸血鬼へと接触を図るべきで、今はそれができるかもしれない状況だ。
「私を襲った吸血鬼、また来るかもしれないんですよ。その考えなら、別の吸血鬼を狙うのは最善じゃないんじゃないですか?」
恐る恐る、だがしっかりと指摘をしてみる。コニーさんは決して馬鹿じゃないのだから、何か別の意図があるのかもしれない。だからそれを聞き出す。
コニーさんは目の前の岸壁を見つめたまま、小さな苦笑いを零した。
「そうだな。でもあっちの吸血鬼は人を殺せないって話だ。なら俺はアーシュに手を貸したほうがいいと思ったんだ。吸血鬼を二人捕まえられれば、それに越したことはないだろ?」
「……まあ、そうですね」
俺は納得して胸をなで下ろす。そうか確かにミレアスさんの言うことを信じれば、あっちの吸血鬼がファンヌさんを殺すことはない。それにもし彼女が生け捕りに失敗しても、俺が逃げさえすれば餌は存在し続ける。筋の通った話だ。
心の中で平手を打つ。
「じゃあ、えっと、私はそろそろファンヌさんのところに――」
ならば俺はさっさと帰ることにしよう。踵を返し、魔法を使おうとした。けれど視界の端に驚くべきものを捉えてしまった。
崖の反対、広がる森の木から覗く一つの手。茶色の幹の向こう側から手招きするそれは、真っ白な肌をした女性の手だ。おいでおいでと言うようにひらひらと揺れている。身体は見えないが、袖口は見えた。見覚えのある黒いコート、どう考えても奴だ。
「どうかしたか?」
振り向いたコニーさんに合わせて、白い手は幹に消える。
どうする? 知らせるべきか? 普通に考えれば、知らせるべきに決まっている。だがしかし。
「い、いえ、何でもないです。それじゃあ、お気を付けて」
俺はそう言って目を閉じていた。そしておまけに、頭の中に浮かべる行き先はファンヌさんのいる隠れ家ではない。
まぶたを上げれば、一段と頬を撫でる風とざらざらとした木皮の感触。頭には葉が触れ、靴が踏みしめるのは二股に伸びる茶色の幹。俺は木の上にいた。見送りを終えたコニーさんが目視でき、先ほど吸血鬼と思しき影があった木も見下ろせる位置に。
体勢を保ちながら下を見る。木の影にはやはりあいつがいた。黒いコートに身を包み、膝丈のスカートを履いて斜めがけの鞄を下げた吸血鬼だ。白い肌に白い髪、緑に溢れる森の中では嫌でも目立つ。
さらに奴は、はっきりと俺を見上げていた。こっちは瞬間移動をしたばかりだというのに、完璧に位置を把握している。そしてまたも手招きをして、今度は森の奥へと走り出す。ついてこいということだろう。
ごくりと唾を飲む。もはや心は決まっていた。望むところだ。俺は数度の瞬間移動を繰り返し、なかなかのスピードで走る吸血鬼を追う。やがてコニーさんのところからも大分離れた森の中、吸血鬼はその足を止めた。
「昨日ぶりだね、ノーラちゃん」
地面に降り立ち、相対する。
「どうも」
決して気は抜かず、距離は数メートルを保つ。何かしてくるようならば、すぐに逃げる。昨夜の二の舞になる可能性もあるが、やっぱりこれはチャンスだ。後に後悔するとしても危険を冒さなければならない場面だ。
「いやー、やっぱり太陽の下は気持ちいいね」
だがこちらの緊張感とは裏腹、吸血鬼は両手を上げて伸びをしてみたりなんかして、随分と呑気な感じだ。
地下室の時からそうだから、単にこいつはこういうキャラなのかもしれないが、その能天気な振る舞いがこちらを油断させる作戦でないとも言いきれない。
まあ何にしろ、ペースに乗ってやる義理もないだろう。
「用件は何ですか? 私をさらいに?」
平静を装って言えば、吸血鬼はあからさまに口を尖らせ、大きな瞳を細める。
「せっかく良い気分なんだからさ、そんな物騒な話にしないでよー」
物騒って……自分がしようとしていたことじゃないか。内心で呆れながら、もう一歩と距離を取った。そうしたら彼女はそれに呼応するよう、平然とした顔で一歩を踏み出す。距離は変わらず、さっきと同じまま。
まあ当然、俺に用があるようだ。
「……それで、何の用でしょうか」
だからもう一度、目を離さぬようにしながら問いかける。
互いの足元で揺れる草と、緊張感と共に音を立てる木々の枝。視界の端で動くそいつらのなかで、吸血鬼は風に揺れる髪を抑えて口を開く。
「なになに? ノーラちゃんもう忘れちゃったの? あたしとした約束」
そして目を大きく開き、両の口角を上げて笑った。随分と馬鹿にするような感じだ。けれどもまあ、もはやおちゃらけた態度にこちらが苛つき捕らわれることはない。問題なのはそんなことではなく、彼女が口にした言葉の内容だ。
「質問に答えるっていったでしょ? だから会いに来たんじゃん」
俺は小さく息を吐いた。どうやら吸血鬼はその態度とは裏腹、昨晩の取引をしっかりと覚えていて、今ここで自らの持っているカードを渡してくれようとしている。それは良い。いやむしろ非常に喜ばしい。だけど取引というのだから、こちらが情報を受け取るにもさし出さねばならないものがある。
そう、別の吸血鬼の居場所だ。
「でもあなたはもう捕まっていないじゃ――」
しかしそんな情報、もはや必要のないことではないか。そう投げかけようとして、口をつぐむ。いけない、別に相手が教えてくれるというのだから、それでいいではないか。お人好しになる必要もない。
一瞬だけ視線を外し、ちらりと後ろを見てからもう一度吸血鬼を見る。
「……さっき私と男の人がいた場所、今は塞がっているみたいですけど、あそこに洞窟があります。そこが別の吸血鬼の居場所らしいです」
ピンポイントに俺の前へ現れた時点でもう何かを知っていそうな気もするが、一応は取引だ。だからこちらがミレアスさんから得た情報を伝える。そうしたら吸血鬼はにっこりと笑った。
「うん、それはもう知ってる。でもあそこに吸血鬼はいないよ」
「え?」
「んー、さっき改めて確かめてみたけど、感じなかったから。吸血鬼がいるならすぐにわかるし、確実だよ」
感じる? 一体どういうことかとも考えるが、少しばかりの見当はつく。
「昨日の夜も今回も、そうやって私の居場所を知ったんですか?」
疑問に思っていたことに発言を当てはめてみれば、そんな答えが導き出される。確信のない想像ではあったが、人差し指を立てて笑う少女の姿を見ればどうやら合っているようだ。
「正解! 凄いねノーラちゃん!」
吸血鬼の特殊能力か、はたまた魔法なのか、とにかくどの程度かわからないとはいえ、この少女は特定の人物の居場所を把握することができる。それはとても厄介な能力だ。
僅かに眉間へシワを寄せる。しかしこちらのそんな態度など意に介さず、吸血鬼は笑顔で更に言葉を続けていく。
「でもねでもね、そんなに便利っていうわけでもないんだよ。ある程度近くの魂じゃないとわからないし、それが誰なのか感じ取るのも簡単じゃないんだ。それに――」
「常に把握できるわけでもない、だったか」
唐突に言葉を遮り、聞こえてくる男の声。耳に覚えのないそれは低く、響くようにこちらの身体全体を揺らす。
なんだ、誰だ。嫌な予感で立ち尽くせば、吸血鬼が向かい合う俺から視線を外し、ゆっくりと後ろを振り返る。こちらへと向けられた背中には、黒いコートを貫いて太く短い棒が刺さっていた。表から見れば胸の位置。
一体全体これはなんだ。最初はそう思った。だけど身体をずらし十数メートル向こうの林を見て、正体を理解する。
「で、吸血鬼、お前は何故こんなところで呑気にお喋りなんかしてるんだ?」
そこに居たのは淡々とボウガンに矢を装填する一人の男だった。弦は不自然とも言える軽さで引かれ、瞬く間に発射の準備は完了する。
しわくちゃのだらしないシャツと長い茶色の髪を揺らす男の風貌は、どこかアーシュさんを彷彿とさせた。しかし彼とは違い、今ここにいる男の目にはふざけた感じが一切見受けられない。そしてその直感はすぐに裏付けされる。
「そのガキが例の?」
口元を覆う髭の中、唇が動いたと同時、男はボウガンを構えてレバーを握る。矢は再び、吸血鬼の胸に突き刺さった。
まるでなんでもないことのように行われる行為。会話の最中に笑い、冗談を言うような手軽さで投げかけられる暴力は、不気味な静けさで辺りを支配する。
「そうだよフルマン。ノーラちゃんだよ」
しかしこちらは対照的、明るい口調で返事を返す。あんた胸に矢が刺さってるんだぞ、と突っ込みたくなるほどの能天気な声色で、吸血鬼は俺の名をフルマンという男に伝えた。その言葉を聞けば、非日常にあてられた思考が正常を取り戻す。まずい、やはりこの男も俺を狙う人間だ。
すぐに目を閉じる。あいつはどう見たってやばい。吸血鬼から情報を得るだとかそんなことを言っている場合ではない。
「ああ、そう。じゃあまあ……足くらい射ってもいいか」
ほら見ろ、やっぱりそうだ。フルマンの残酷な言葉を振り切るように頭をひねる。どこでもいいから逃げる。だけど閉じたはずの目は、何故だか景色が出来上がる前に光を取り戻した。
「ちょっとちょっと、ノーラちゃん! 逃げるの禁止! あたしとの話がまだ終わってないでしょ!」
またこれか。飛び込んできたのは、両の人差し指と親指で無理矢理にまぶたをこじ開けてくる吸血鬼だった。諭すようにやってくる言葉も、まるで今の状況がわかっていないようなもの。
こいつはどうあっても俺との取引を完了させたいらしい。こちらを捕まえるという目的よりもそっちのほうが遥かに大事だと言わんばかりの態度。というかむしろ、もはや俺を捕まえる気なんかないような……。
思考に割り込むように、痛々しい音が鳴った。
「おい吸血鬼、邪魔だぞ」
屈んだ吸血鬼の太ももに俺を狙った矢が突き刺さる。しかしそんな事など意に介することなく、少女は未だ俺のまぶたをこじ開けたまま凶器を持つフルマンに背を向け続ける。
「探すのは面倒だからさ、あたしがこの人やっつけるまでノーラちゃんは見物でもしててよ」
そう言って、吸血鬼はゆっくりと立ち上がる。そしてふくらはぎの矢を力任せに引き抜き、白い肌を血に汚して振り返る。
今、こいつは何と言った? 聞き間違いでなければその発言、こちらの味方をするような内容だ。恐らく知り合いであり、そして俺を狙う仲間であろう男を倒すと言ったのだ。
「えーっと、今なんて言った? まさか俺らを裏切るなんてことはないよな?」
驚いているのは俺だけではない。思わずボウガンを下げたフルマンが自らの髭を撫で、低い声を漏らす。だけどやっぱり、吸血鬼の調子は崩れない。背中の矢を二本引き抜いて、変わらぬ声色で言葉を返す。
「あなたをやっつけるって言ったんだよ。ノーラちゃんと話すのに邪魔なんだもん」
「……まったく、察しの悪いやつだな。二度目は聞き逃せないぞ」
相対する吸血鬼と、怒気を孕む髭面の男。少女の白い拳が開かれて、三本の矢が草へ落ちる。吸血鬼が腰を落とし、弾丸のような速さで走り出す。
闘いが始まった。